とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Sunday, March 27, 2011

オキシ塩化リンを安全にクエンチせよ

実験嫌いな実験(ガテン系)化学者のコンキチです。

(昨年)こんな文献を読んでみました↓

Hydrolysis of Phosphoryl Trichloride (POCl3): Characterization, in Situ Detection, and Safe Quenching of Energetic Metastable Intermediates
Org. Process Res. Dev., 2010, 14, 1490-1500.

多分、ボク達有機化学系実験化学者って、常にスマートな反応の設定を心がけていると思います。でも、人生必ずしも思った通りに事が進まないわけで、不本意ながら泥くさい力技的な反応条件をチョイスすることもあります(まあ、安全性、コスト、入手容易性、根本的の他の条件では無理等々色々理由はあると思います)。

ところで、POCl3を使った反応は、かなり過剰量のPOCl3を使用せざるを得ない(泥くさい条件)場合があり、かつ余剰のPOCl3の失活は、大きな発熱を伴い、その発熱が制御できなかった場合は内容物な吹き出してしまうこともあります(運が良いのか、ちゃんと気をつけているからか、ボクはまだない)。

で、本報のお題は、その「Safe Quenching」です↓

多分常法と呼ばれるクエンチ方法は、水を加えるというのが一般的かと思います。ところで、POCl3の加水分解はこんな感じにで↓テップワイズに進行します。


k1 > k2, k3 >> k2


というわけで、POCl3を(大)過剰に使った反応液を水でクエンチすると、準安定なHPO2Cl2 (phosphorodichloridic acid)が系内に存在することにわるわけです(X-ray, 31P NMRで同定)。で、こいつがさらに加水分解を受ける過程で発熱し、それが蓄熱すると反応が一気に加速し吹いちゃったりするのでしょう。

著者等がインプルーブした反応例です↓


Left sideは所謂常法。Right sideはimprovementです。改良法では、NaOHを加えてpH 6-7をキープしながらクエンチすることで、HPO2Cl2の生成を避け、NaCl, と安定なNa2HPO4を発生させることで、熱的に安全なプロセスとなっています。

次、大量にPOCl3を使うことになったら、試してみようかなと思います。

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Earthquake 2011 (4)

大地震から2週間余が経過した今日この頃。コントロール下にない福島第一原子力発電所では、放射能を周辺環境に垂れ流し続けています。真綿で首を絞められていいる気持ちでいっぱいになります。

東北地方を中心とした津波による被害も甚大ですが、首都圏に居を置くものとして、最大の関心は原発に注がざるを得ないです(福島はもとより、近隣の宮城をはじめとする東北も同様のリスクにさらされてるし)。

ところで、今回の一連の騒動で一つだけはっきりしたことがあるとコンキチは考えています。

東京電力は信用•信頼に値しない組織


ということが極めて明確に例証されたと思います。

例えば、先日原発で作業していた下請け協力会社の作業員が被爆しましたが、

a) 作業当日の事前の線量計測はしなかった
b) 汚染された水たまりに短靴で入り、足の皮膚に直接放射性物質が触れ局所被爆した
c) 東電、2号機の高放射線量を事前把握 作業員らに伝えず(作業員が被爆したのは3号機)

といった原発を扱う会社としてはあり得ない程の危機管理能力の低さを露呈しました。もう、純粋に空恐ろしいよ。暗澹たる気持ちですよ。今は批判より団結なんていう人もいるようだけど、そんなこと言ってたら手遅れになりかねないと思います。

あと、学者先生はいたずらに安全を煽らないで欲しいな。理由は、放射能汚染に係る問題は、クリティカルなダメージを負った場合の損失が深刻すぎると思うから。そもそも、安全だなんて誰も言えないんじゃないの(別にゼロリスク症候群じゃありませんが)。まず第1に、収束の目処なんて全然たってないじゃないですか?どれくらいの期間(数日?数週間?数ヶ月?数年?)、どれくらいの量の放射性物質が垂れ流されるのかっていうことが誰にも分からないですよね。

それから、原子力関連技術に加えて漏洩した放射性物質による人体•環境に対する影響って、広範な学問領域に股がってるとコンキチは思うんだけど、安全を煽ってる先生は自分の(限定された)専門領域に基づいた視点からしか考察してないような気がする(っていうか、それしかできないんじゃない)。全領域に精通するエキスパートっぽい人がデータを詳細に分析して網羅的にレポートしてる気がしないんですよね(もし、包括的かつ信頼性の高い分かり易いレポートがあったら教えて下さい。あと、原発が制御下にないんだから最悪を想定せざるを得ないよね)。

ついでに、放射線関連事故って事例そのものが圧倒的に少ないんじゃない?もしそうなら、確率論的な考察ってあまり意味ないんじゃないなんて気もします。リスクは去り、ブラック•スワン(ナイトの不確実性)を警戒しなければいけないんじゃないかと二流大出のなんちゃって研究員は思うのでした。とりあえず、遠ければ遠いほど身を守るのには向いているというのだけは真理なのでしょう。
(俺の心配が杞憂に終わりますように)



追伸
魚喰いのオレとしては放射性物質による海洋汚染も気になるところです。

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Thursday, March 24, 2011

ピリジンは反応する

桑田佳祐の「銀河の星屑」を聴きまくってテンション上げてるコンキチです。

←このアルバムに収録されてる。


で、(昨年)こんな文献を読んでみました↓

Reaction of Dichloromethane with Pyridine Derivatives under Ambient Conditions
J. Org. Chem., 2010, 75, 4292-4295.

よく、ボクたち実験(ガテン系)化学者はCH2Cl2中でピリジンを使う反応をよくやります。で、本報は、Ambient Conditionでピリジンとジクロロメタン(溶媒)が反応し得るていう話です。

Reactivity of Pyridine Derivatives toward DCM (reaction time = 2 months)
Pyridine Derivative
Reaction
pyridine
Yes
DMAP
Yes
4-tBu
Yes
4-NH2
Yes
3-NH2
Yes
4-(4'-pyridyl)
Yes
2-Cl
No
3-Cl
No
2-NH2
No
2-CH3
No
2-(CH2)2OH
No
2-(CH2)3OH
No
2-CH2SH
No (Thiols react with DCM)

ジクロロメタンのモノ置換体は検出させず、2置換体の生成が確認されています。

あと、「有機合成の落とし穴 -失敗例から学ぶ成功への近道」によると、トリエチルアミンとかもジクロと反応するんだよね↓




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Monday, March 21, 2011

超Grignard反応

(昨年)こんな文献を読んでみました↓

Zinc(II)-Catalyzed Addition of Grignard Reagents to Ketones
J. Org. Chem., 2010, 75, 5008-5016.

Zinc(II)-catalyzed Grignard additions to ketones with RMgBr and RMgI
Chem. Commun., 2010, 46, 2674-2676

以前、名古屋大の石原先生のグループが報告した論文で、Znのアート錯体(R3ZnMgCl)を触媒的に形成させて、ケトンやアルデヒドに対するGrignard反応の1,2-additionの選択性をあげるっていうのがありました(J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 9998-9999.)2006年7月-9月の速報部門で"Most-Accessed Articles"の第1位)。

see
http://researcher-station.blogspot.com/2006/10/trialkylzincii-ate-complex.html
http://researcher-station.blogspot.com/2008/10/trialkylzincii-ate-complex.html

で、これはとっても素敵な反応なんですが、有効なのはRMgClだけで、反応性の劣るRMgBrやRMgIでは効果が薄いという欠点がありました。そして、今回読んだ論文はそのインプルーブメントです。

反応の基本条件は基質(ケトン)に対して、「RMgX (1.1 eq., X=Cl, Br, I), ZnCl2 (10 mol%), TMSCH2MgCl (20 mol%), LiCl (110 mol%), THF, 0℃」というもので、おしなべて高活性で、嵩高い基質と嵩高いGrignard試薬の組み合わせでもGood Yieldです。

触媒サイクルは↓
(1) ZnCl2 + TMSCH2MgCl → (TMSCH2)2Zn
(2) (TMSCH2)2Zn + [RMgX][LiCl]n' (+ [MgX2]m'[LiX]n'' ) → [R(TMSCH2)2Zn]-[Li]+[MgX2]m[LiX]n
(3) ate錯体のカチオン部分がカルボニル基を活性化し、R基が付加
(4) (TMSCH2)2Znが再生

また、アート錯体の設計において、著者らがTMSCH2-基に着目したのは、

a) TMSCH2-基が反応に関与しないダミーリガンドとして働く
b) シリル基のβ効果によるアルキル基の求核性の向上(Si-αCのσ軌道からZnのp軌道への電子供与)と、TMSCH2-Zn結合の安定化(Znの占有d軌道からSi-αCのσ*軌道への逆供与)。

が期待されたからです。

結果、著者等に思惑通り高活性な触媒システムが完成しました。

あと、アート錯体のカチオン部分も活性に影響を与えて、その序列はLewis酸性の高い順で、


Li+ > [MgCl]+ > [MgBr]+


になります(カルボニル基をより活性化する)。

こうして、著者らはアート錯体のアニオン部分とカチオン部分を巧みに設計して、触媒的Grignard反応によるカルボニル基への選択的1,2-付加を開発したわけです。特に、MeMgIや、RClからの調製が難しいGrignard試薬に対して有効と思いました。

(あと、素朴な疑問として、TMSCH2MgCl抜き=ZnCl2とLiCl添加の系ではどんな結果になるか興味あります)

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Sunday, March 20, 2011

"Waste as Catalyst/Co-catalyst" Strategy

(昨年)こんな文献を読んでみました↓

Improving the Atom Efficiency of the Wittig Reaction by a “Waste as Catalyst/Co-catalyst” Strategy
Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49, 4976-4980.

Wittig反応は最も良く使われる反応の一つと思いますが、副生するトリフェニルホスフィンオキシドにはいつも悩まされます。で、著者らは、Wittig反応で出た、本来であれば廃棄物であるPh3POをLewis塩基として使うことで、反応をタンデム化し、原子効率(というよりE-ファクター)の向上を図ります。


コンセプトとして面白いと思いました。

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加速装置としてのMgCl2

(昨年)こんな文献を読んでみました↓

MgCl2-Accelerated Addition of Functionalized Organozinc Reagents to Aldehydes, Ketones, and Carbon Dioxide
Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 27, 4665-4668.

MgCl2によって有機亜鉛試薬の反応性が上がるっていうお話です。例えば↓
他、19 examples, 60-98% Yield。

5 examples, 73-98% Yield。

で、MgCl2は、additiveとして加えるんじゃなくて、Zn試薬の調製過程で発生させます。例えば、



PhI + Mg + ZnCl2 + LiCl → PhZnI•MgCl2 (ACIEE., 2006, 45, 6040.)


あと、イブプロフェンの短段階合成も可能↓


MgCl2によるエンハンス効果を筆者らは、遷移状態において、カルボニル基に配位しているR3ZnClがMgCl2に置き換わるわけですが、MgCl2の方がR3ZnClより強いLewis酸であるため、カルボニル基をより活性化されるからだろうと考察しています。


機会があれば使ってみたい反応と思いました。

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Thursday, March 17, 2011

MANEGEMENT

今流行の、故ピーター・ドラッカーの「マネジメント - 基本と原則 [エッセンシャル版]」を読了しました。

[エッセンシャル版]だからだろうと思いますが、主張の論拠がpoorと感じざるを得ませんが、言ってることは常識的でなかなかためになるお言葉が列挙されていると思いました。特に印象に残ったことをメモしてみます↓

a) 真摯さ
ドラッカーは、マネジャーの資質として「真摯さ」を最も重要視しています(っていうか、「真摯さ」を欠く人間はマネジャーの資格なしとまで言っている)。しかも、「真摯さ」は学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質であり、始めから身につけていなければならない資質と位置づけています。確かに「真摯さ」の感じられない上司にはついて行けないなと思いますが、「真摯さ」の具備とは、そうとうハードルが高いと思いました。「真摯さ」は本書で何度も出てきます。

b) 消費者運動はマーケティングにとって恥である
とドラッカーは宣います。何故なら、消費者運動は、マーケティングが実施されてこなかった証左であるから。ただ、消費者運動は、マーケティングを企業活動の中心に置かざるを得なくなるという点で、企業にとって機会であるとも述べています。あと、個人的に塾や予備校の存在は、公教育の恥と思います。しかしながら、公教育においてマーケティングが活動の中心になっているとは感じられませんね

c) プレーイング・マネジャーとしての(多分ミドル)マネジメント
コンキチはけっこう意外に思ったのですが、ドラッカーはマネジャーがプレーイングマネジャーとして働くことを推奨しています。それは、マネジメントとは一つの仕事で、マネジャーが専念しなければならないほど時間を要する仕事ではないからだそうです(これとは対照的に、トップマネジメントはマネジメントに専念しなければならないと述べていたと思った)。マネジャーに十分な仕事がないと、部下の仕事をとってしまうそうです。ミドルの皆さん如何ですか?

d)マネジメントの必要性
マネジメント•チームの不在が企業の凋落を招き、マネジメント•チームの存在が凋落からの復活を果たすそうです。大分古い話だけど、例) フォード、シーメンス、三菱、GMなど。

e) マネジャーの資質
<以下引用>
事実、うまくいっている組織には、必ず一人は、手をとって助けもせず、人づきあいもよくないボスがいる。この種のボスは、とっつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。(中略) 何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。
<引用終了>

f) 意見の対立を促す
GMのアルフレッド•P•スローン•ジュニアは、全会一致の会議の席上でこう宣ったそうです↓
「では、意見の対立を生み出し、問題の意味について理解を深めるための時間が必要と思われるので、次回また検討することにしたい」
と。
で、意見の対立を促すメリッットとして、
(1) 不完全or間違った意見によってだまされない。
(2) 代案をGETできる
(3) 想像力を引き出せる
があるそうです。

g) マネジメントの世界は組織の外部にある
マネジメントは成果に焦点を合わせなければならないとドラッカーは宣います。で、成果は組織の外部にしかなく、組織の内部にあるのは努力だけで、内部で発生するのはコストだけといいます。そして、企業がゴーングコンサーンたるためには、イノベーションと起業家精神の発揮が不可欠といいます。

この他にもウィットに富んだ示唆に溢れる内容が沢山書いてあると思いました。

マネジメント研修とかで、どこの馬の骨とも分からない講師がコントロールする予定調和なセミナーを聴くよりも、この本を読んだ方がコストパフォーマンスが全然良いと思います。

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Tuesday, March 15, 2011

Earthquake 2011 (3)

福島の原子力発電所で緊張が高まっている。いたずらに不安は煽りたくないけど、東電が件の原子炉をコントロールできていないことが例証されてしまった。

批判するのは簡単だと非難されそうだけど↓

a) 東電の会見にはいささか真摯さに欠けている
b) 政府はもっと東電に介入すべき
c) さっさと技術支援を請うべき
d) リソースを最大限の投入しろよ

と思います。喫緊の課題は、どう考えても原発問題だろ。

ついでに株式市場も凄いことになってる。とりあえず、直ぐに売却可能な有価証券は、金のETFとUS MMF, セゾン投信で扱ってるVangard Global Balanced Fundを残して全部売っぱらったけど、はっきり言って判断が遅れたな。まあ、仕方が無い。

ところで、今回の震災で受けた被害の甚大さが、日を追うごとにひしひしとその重みが伝わって来るようです。復興は不可能ではないと思うけど、その道のりは前途多難で、明らかに我々にはダウンサイジングが求められるでしょう。

ダウンサイジングっていうのは、人間が最も苦手とする分野という認識があり、平時においては実現困難と思います。しかしながら、日本人は大きな国難を前にすると、大いなるチームワークを発揚する気質があり、結果困難を退ける力があるような気がします。今回の災害はあまりにも大きく、戦争に匹敵するほどの国難といっても過言ではないでしょう。受難の刻は長引きそうですが、我々日本民族(民族なんて言葉を使うのは好きじゃないけど)の能力に期待したいと思います。

被災地の親族•知人の無事が少しだけ分かった今日この頃、証券会社に電話して「(自分の)資産はどうなってしまうんだ?」的な問い合わせをする人は、金融市場から早々に退出した方がいいと思いました。

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Monday, March 14, 2011

Earthquake 2011 (2)

今日会社に出社してみたのだけれど、思いのほかsmoothに辿り着くことができた。鉄道の運行状況には大分混乱があったけれど、(ボクが利用した路線の)乗客のマナーは極めて良好なもので、日本人も捨てたものではないと柄にもなく少し感動した。

会社に行ってはみたものの、ボクが使っている研究棟で出社可能だった人は少数で、前途の多難さを改めて認識した。

電力供給の不足の影響や、鉄道の運行状況の影響もあって、今日は再結を仕込み、半ドンで早々に帰社。今日から数日に渡って自宅待機の指示が出たので、とりあえず、自分でできる生産的なことをしようと思っています。有機化学のお勉強、なかなか読めていなかった論文、読みかけの経営学の本、家の風呂掃除等やることは沢山ある。

それから、田舎の親類•知人に関して、幾つかのポジティブな情報を入手することもできた。

福島の原発に関しては、あいかわらず予断を許さない状況が続いている。いたずらに不安を煽るつもりはないが、想定の範囲を超えたこの状況に正直逃げだしたい気持ちで一杯だ。自分の生き様について、もっと真剣に考えた方がいいかもしれない。


とりあえず、試練の刻はまだまだ続きそうだ。

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Sunday, March 13, 2011

Earthquake 2011

とんでもないことが起こってしまった。

関東大震災を超える未曾有の規模の大地震に襲われ、ボクの田舎は地獄絵図の様相を呈している。もともと「涙」なんていうセンチな体液を簡単に分泌するようなWetな人間ではないけれど、感応度逓減性が働いて、もう殆ど悲しみさえ感じないような気がする。

はっきり言って、両親には全く連絡がとれない。地元の親類や知人の何人かは死んでしまったかもしれない(ボクの母校(高校)は山の上にあるから無事で、避難所になっているらしい)。

それに加えて、福島の原発の動向が気がかりだ。素人だから良くわからないけど、予断を許さない切迫した状況には違いない。放射性物質の大規模な拡散だけは避けて欲しいと切に思う。

ところで、地震発生の時刻、ボクは東京の研究所にいたんだけど、水浴の水がバシャバシャ飛び散る様をみたときは、軽く「死」っていう言葉が頭をよぎったな。3歳の頃、宮城県沖地震を経験したボクは地震には幾分自信があったのだけれど、そんなものはあっという間に吹っ飛んだ。

避難解除後実験室に戻ったら、幸いなことに水浴の水とオイルバスの油が飛び散ったくらいで他に被害は確認されず(あと、水素のラインは電磁便が閉じた)、事業所に設置してあるNMRもクエンチした様子はなく一安心といった感じだった。
(ショートカラムかけて、2Lのナスフラスコで受けてたんだけど、意外と大丈夫だった)

まあ、これだけ大きい揺れだったから、交通機関は完璧麻痺だろうと予想して会社に泊り、やれやれといった感じで軽く宴会モードでテレビをみていて、東北ではとんでもないことになっているということに気がついた。

テレビで繰り返し流される残酷ショーを目にして、ボクの悲しさを感じるスイッチは完全に吹っ飛んだ気がした。ボクの中学の同級生や高校の友達の多くは地元(県内)に残っている。昨夏同窓会をやったばかりだ。彼等彼女らの顔が脳裏をよぎった。ただ唯一、地震発生が昼間だったことだけはラッキーだったと思った。

カタストロフは常に一瞬で、それに続く苦しみは長いスパンで続く。これから日本の国力が試されるのだろうと思う。

とりあえず、ボクは明日出社して通常通り実験に励む予定です。他にできることも思いつかないし。


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Wednesday, March 9, 2011

有機化学者による有機化学者のため(?)の恋愛小説

一応、お仕事=有機合成化学のコンキチです。

ところで、最近巷で話題(?)のファンタジー系研究ラブコメディ「ラブ・ケミストリー」を読了しました。

ズバリ、テーマーは東大農学部の大学院(M2)に在籍し、難攻不落の天然物の全合成に取り組んでいる絶食系天才有機合成化学者のラブストーリー。本書では、一般人にはかなりハイブローな専門用語(NMRとかHPLCとかTLCとか不斉中心とか)やマニアックな化学者の話題が頻繁に登場していて、これで大衆ウケするのかよ?と少々心配になってしまうのですが、なんと、あの「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞作品なんだそうです(マジ、スゲー)。

個人的にミステリ(サスペンス)としての出来は凡庸と思いましたが(あと、ラストの急展開に若干の疑義を呈したい)、作品全体としては超オモシロい作品に仕上がっていると思いました。特に、有機合成を生業としている人間にはたまらない感じでいっぱいと思います。

っていうか、コンキチももうかれこれ十数年前になるけど、学校(東大とは違ってあまり賢い大学ではなかったけど)の研究室でシコシコ有機化学実験してたんだけど、この小説読んでかるくその当時にトリップすると同時に凄く主人公に感情移入できましたね。今でこそ結婚して子供もいるけど'(一応恋愛結婚で、奥さんは大学の同級生ね。っていうか、オレ奥さんとしかつきあったことないし)、学生時代の自分も、この物語の主人公同様草食系で、人生で女の子に告白したことなんて皆無ですからね(勿論、男の子に告白したことない)。

で、個人的に一番精神にジャストミートしたのは、このフレーズ↓
「それは強者の理論だ。僕たちは心が繊細なんだよ。その脆さたるや、TLC用のキャピラリーとどっこいどっこいだ。すぐにポキリと折れてしまう」


とっても共感できる


理系男子は恋愛に関して奥ゆかしくて、つつましやかな生き物なんだよ!(とボクは声を大にして主張したい)

それにつけても、著者は製薬会社勤務っていうけど、本業の傍らこんなオモシロい小説書くなんて、そのプロダクティビティたるや凄まじいですね。有機合成やってる人は絶対買いの一品と思いました(男子だけじゃなく女子も)。


あと、これから目薬はビタミンB12入りのを買う事にします(ちなみにコンキチの指導教官だった教授は、若い頃ウッドワード研に留学してビタミンB12の全合成に携わり、1工程採用されたそうで、King of Alkylationって言われたって自慢してました)。

以上、量上げしたら反応がなかな完結しなくて、若干困ってる二流大出のなんちゃって研究員のつぶやきできた。


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