とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Wednesday, August 15, 2012

超Grignard反応への新アプローチ

<CHABUTON>で食ったラーメンのメモです↓

-夜とんらぁ麺(780 JPY) memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ニンニク漬込み特性醤油ダレを使用した豚骨醤油ラーメン(か?)。充分なコクが有り、ややoily。スープに浮いている豆板醤にも似た「辛味ニンニク」を混ぜると味がまとまる。具は、ネギ、チャーシュー、メンマ、ニンニク。麺は極細のスナック系で美味しい。スープは上品なニンニク風味で、思ったより麺の絡まない。


閑話休題


上半期にこんな論文を読んでみました↓

Added-Metal-Free Catalytic Nucleophilic Addition of Grignard Reagents to Ketones
J. Org. Chem., 2012, 77, 4645-4652.

Grignard反応の1,2-付加の選択性をあげるお話です。

18 examples

1,2-付加の選択性を向上させる方法としては、CeCl3、LiCl、LiClO4、FeCl2、LnCl3・2LiClといったLewis酸の化学量論量の添加や、R3MgLi(RLiが1~2eq.必要, Org. Lett., 2005, 7, 573-576.)やZnのアート錯体(J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 9998-9999.; Synlett, 2010, 321-324.; Chem. Commun., 2010, 46, 2674-2676.; J. Org. Chem., 2010, 75, 5008-5016.)の使用が報告されています。
Trialkylzinc(II) ate complex

cf.
http://researcher-station.blogspot.jp/2006/10/trialkylzincii-ate-complex.html
http://researcher-station.blogspot.jp/2008/10/trialkylzincii-ate-complex.html
http://researcher-station.blogspot.jp/2011/03/grignard.html


で、これらの方法はカルボニル基の活性化やGrignard試薬の求核性を高めるというアプローチだと思うんですが、本報のアプローチはGrignard試薬の会合状態に着目しています。

Grignard反応が協奏機構(求核付加機構)で進行する場合、Grignard試薬2分子が関与した6員環遷移状態を経て目的の1,2-付加体が得られます。一方、Grignard反応のメジャーな副反応であるエノール化やβ-ヒドリド還元はGrugnard試薬が1分子が関与した6員環遷移状態を経由します。

ここで、著者らはNBu4ClがGrignard試薬のSchlenkの平衡を2量体の側に偏らせることを予想し(J. Chem. Soc. D: Chem. Commun., 1970, 8, 470-471.)、それにより1,2-付加体を与える遷移状態の形成を促進させるアプローチをとります。
さらに、DGDE (diglyme)がGrignard試薬に配位することによる求核性の向上も狙います。

で結果ですが、通常のGrignard反応条件に較べて選択性が大幅に向上します。収率のアップ率は最大50%超にまで達します。さらに、Grignard試薬のハロゲン部分はClでもBrでもオッケー。ちなみに、NBu4Cl、DGDEを単独で用いてもかなりの効果があるけど、両方一緒に使った方が効果大です。

また、著者らは四級アンモニウム塩と配位性のadditiveをいろいろ試していますが、NBu4ClとDGDEが最も良かったです。

どうってことのない試薬の組み合わせで、高効率を実現するっていうのは、ボクは好きです。それから、Schlenk equilibriumをdimericにshiftさせる(実際そうにっているかは分からないけど)っていうアプローチも温故知新的で面白いと思いました。機会があったら是非使ってみたい反応と思います。

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Tuesday, August 14, 2012

善意でいっぱいの法律が逆効果を発揮する (Super Freakonomics)

Super Freakonomics」の感想メモの続きです。

ズバリ、よかれと思ってやったのに逆効果になっちゃたよという事例が紹介されています↓

a) 障害を持つアメリカ人法 (ADA)
障害を持つ被雇用者を差別から守るために作られた法律。
結果→雇い主は最初から障害を持つ人を雇わなくなり、障害を持つアメリカ人の仕事が減っている(障害を持つ人がろくに仕事をしなくても、罰を科したり解雇できなくなることを懸念した)

b) 絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律
所有する土地が絶滅の危機に瀕している生物にとって住み良いかもしれないと思う→大急ぎで木を切り倒し、自分の土地を対象生物にとって住みにくい環境にする

c) ゴミ回収代金をゴミの分量に基づいて決めるようになった政府
ゴミの分量に応じて回収代金が高くなれば、ゴミ低減のインセンティブになると考えた
結果→
・ゴミ袋をパンパンになるまで詰め込む(シアトル・スタンプ)
・森に不法投棄(ヴァージニア州シャーロツヴィル)
・食べ残しをトイレに流す→下水道がネズミで溢れる(ドイツ)
・ゴミ処理税を導入→裏庭でゴミを焼却する家が急増し、環境・公衆衛生上の問題(アイルランド)

d) 旧約聖書に残るユダヤの法律
債権者は安息年(7年ごと)に債権を放棄しなければならない
結果→安息日のすぐ後にお金を貸して、5年目と6年目に貸し渋る(定期的な貸し渋りが発生)


ちなみにこういう善かれと思って逆効果っていう事例が最近の日本にもありましたね(確信犯的にやってるのかもしれないけど)

そう、貸金業法改正や派遣法改正です。
see http://researcher-station.blogspot.jp/2009/09/blog-post_23.html

改正貸金業法と改正派遣法に施行による悪影響の定量的な評価っていうにがよくわかんないけど、それらの悪影響が社会問題化していることがメデイアで数多く報道され、ちょっぴり硬派な漫画でもネタにされたりなんかしたと思います。しかも、この二つの法律は、上述した障害を持つアメリカ人法 (ADA)と旧約聖書に残るユダヤの法律の例と酷似していると思うんですが、どうでしょうか。

こういった法律をつくる人達の多くは俊才だ(多分)。日本では、東大、京大をはじめとする旧帝大や、私学の雄である早慶出身者が多数だ(多分)。そして、他国の過去の事例なども存在していて、歴史に学べば「善意でいっぱいの法律が逆効果を発揮する」事例は激減するはずと思うんだけど、必ずしもそうはなってないと思います。

で、その原因っていうのは、おそらく↓

バカな国民にも分かり易いパフォーマンスをしとかないと選挙でアピールできないから、とりあえず善意を全面に出した法律つくって弱者の味方のアピールしときますか。結果は逆効果かもしれないけど、バカな国民はそんなのきちんと検証しないからカンケーネー

っていう感じの確信犯なんだろうなと思う二流大出のなんちゃって研究員の夏休みのつぶやきでした。


つづく.....

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Sunday, August 5, 2012

実験経済学の誤謬 (Super Freakonomics)

Super Freakonomics」の感想メモの続きです。

実験経済学に関する、ジョン・リスト(シカゴ大教授, 経済学者)の仕事が紹介されています。

実験経済学(実際の人間を被験者にして実験室のなかで経済理論を検証する)っていうっていう学問分野があります。実験から経済理論を検証できるなんてちょっぴり魅力的な感じがしますが、「実験室での発見がいつも現実にも当てはまるとは限らない」ということを述べています。

すなわち、実験室での実験には幾つかのバイアスがかかっているということです。以下、どのようなバイアスがあるか列挙↓

(1) 選択バイアス
大学の実験室で学生を対象にした実験は、「研究に参加すると自主的に申し出て、調査員とその後会い続ける大学2年生に絞った科学」にしかならないという指摘がリスト以前にもあったようです。また、自主的に申し出てくる人達は、「科学のお役に立ちたい連中」であることが多く、申し出ない人達に比べて、認められたいという欲求が強く、権威主義的ではないう。

(2) 監視
監視が与える影響は強い。例えば、パトカーが近傍を通りかかったときのドキリとしたり、監視カメラの存在を気にしたことはないだろうか?
実験をやっている教授は裏手にいて出てこないかもしれないが、参加者がどのような選択をしたか記録している。誰かが見ている前でセコイまねはしたくないというバイアスがかかる。
人間の目の写真を置いておくだけで、同僚(教授たち)が休憩室にある飲み物代を入れる箱への入金額が3倍知覚になった(ニューカッスル・アポン・タイン大, メリッサ・ベイトソン(心理学)が行った実験)

(3) 文脈
人間の行動は「インセンティヴ、社会規範、判断の枠組み、過去の経験から拾ってきた教訓の組み合わせ」に左右される。
人間が実際やっているように行動するのは、具体的な状況の下で与えられた選択肢とインセンティブに対して、そういう行動をするのが一番得るものが大きいろ思うからでる。実験室という文脈は避けようも無く人工的で、実験者の意図に誘導されてしまう。スタイン・見るグラム(イェール大)の電機ショックの実験やフィリップ・ジンバルド(スタンフォード大, 1971年)の監獄実験などが例として挙げられている。


以上のような実験経済学に係るバイアスを著者は指摘しています。まあ、(社会科学の)実験が全てこのようなバイアスに支配されていて全くの無価値であるとは 思いませんが、社会科学実験を咀嚼するに当たっては、心に止めておきたい指摘と思いました。

続く.....

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レヴィット vs. 橘玲 (Super Freakonomics)

Super Freakonomics」の感想メモの続きです。

橘玲氏(http://ja.wikipedia.org/wiki/橘玲)は、その著書「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」の中で、才能の先天性に言及して、才能が無ければ努力はムダ(無駄な努力)で、行動遺伝学を論拠に「やってもできない」といことを主張しました(see http://researcher-station.blogspot.jp/2010/10/blog-post_11.html, 行動遺伝学ってそこまで強力なのかっていうつっこみを入れたくなります)。

一方、スティーヴン・D・レヴィット(シカゴ大学経済学部教授。ジョン・ベイツ・クラーク・メダルの受賞者。)は本書で、「努力の勝る才能無し」というようなことを言っていたと思います。

この真っ向から対立する意見のどちらに軍配が上がるか興味深いです。

ところで、レヴィットがそういった結論を下したのには統計学的なデータに基づいていたと思います(たしか...)。で、分かっているだけで、才能が先天性に依存しないということを以下の事例で例証しています↓

a) ラマダンが及ぼす胎児への影響
→ラマダンの影響を受けた胎児は、障害を持つものが多い

b) スペイン風邪が及ぼした胎児の健康と生涯所得への影響
→スペイン風邪が流行ったときに母体のいた胎児は、健康状態が良くなく、生涯所得が低い

c) スポーツ選手にみられる相対年齢効果(これってかなり有名な話だよね)

step 1: 生まれ月が早いと成長が早い
step 2: 成長が早いと所属チームで活躍する可能性が高い
step 3: 活躍すれば試合に出るチャンスは更に増える
step 4: 試合に出るチャンスが増えれば更にレベルアップする
step 5: レベルアップすれば地域トレセンに選ばれる可能性も高くなる


橘氏は自己啓発の女王様に対するアンチテーゼの意味も込めて「やってもできない」と主張したんだと思いますが、行動遺伝学で例証された科学的エビデンスを拡張しすぎているような気がします(ボクは全くの門外漢なのでイメージだけでそう考えてますが)。ただ、「やればできる」というのも万能な処方箋ではないとも思います(経験的に無駄な努力というものが存在することを我々は知っている)。

「やればできる」と「やってもできない」の戦いはボクの中ではまだ決着がつきそうにありません。まあ、「やらなければ始まらない」とか「正しい努力」といったあたりが大人の落としどころなのかなと思う二流大出のなんちゃって研究員でした。

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Saturday, August 4, 2012

売春婦の値段 (Super Freakonomics)

大分後れ馳せではありますが、「Freakonomics」の続編「Super Freakonomics」を読んだので、ちょっとメモってみます。今回のメモは、ズバリ「売春婦の話」です↓

1910年初頭の売春婦の平均週給は70ドルで、これは現在の年収76,000ドルに相当するそうです。

一方、現在、シカゴで立ちぼしている典型的な売春婦の週給は350ドルだそうで、年収換算(× 52 weeks)するとざっくり18,200ドル。

ここで質問↓

Question   1世紀の間に売春婦の稼ぎは、実質、およそ四分の一に減少したが、それは何故か?

Answer 1    現在、婚外セックス は売春にとって代われる選択肢になり、有料セックスの需要が減るに従って供給する人たちの稼ぎも減った。

Answer 2   100年前のシカゴでは、罰(逮捕)を受けるリスクのほとんど全部を売春婦が背負っていた。供給する側を牢屋に放り込めば、希少性が生じ、必然的に価格は高くなりる。
売春婦の給料は、強い需要を満たせるだけの女の人を呼び寄せられるほど高くなければならなかった。

ところで、本書では売春や麻薬といった違法行為の市場の取り締まり(規制)にも言及している。すなわち、違法サービスを供給する側を取り締まると、そこに希少性が生じ、必然的に価格が高くなり、供給サイドになろうとする人が市場に参入してくるといいます。従って、非合法な財やサービスの市場を破壊したいなら、欲しがる人(違法市場のコンシューマー)を取り締まった方が効果的と結論しています。

あと、(アメリカの)売春婦は、顧客カテゴリーに応じて価格差別化戦略をとっているそうです。具体的には、黒人の客よりも白人の客に平均9ドル高いプライシングをしていて、ヒスパニックはその中間ということです。で、こういった価格差別化が可能な商品には条件があって↓

(1) もっと払ってもいいと思っている種類に属することがはっきりわかる特徴をもった客がいること(肌が黒いか白いかという特徴は分かり易い)
(2) 売り物が転売され、鞘を抜かれてしまうのを売り手が食い止められること(売春は転売は現実的の不可能)

こういった商品の例として、売春、飛行機、美容院が紹介されていました。

なかなか興味深いです。つづく.....

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