グランスタに入っている、かんだやぶそば五代目堀田康太郎監修のお店に行ったときのメモです↓
-江戸せいろう蕎麦 memo-
-せいろうそば (600 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
grassyで野趣的な香りのする緑がかった蕎麦は、太すぎず、細すぎずの中庸の太さで、角の立った食感でありながら、柔らかさもある。ツユは力強いbody。しっかりとした甘さと辛さでコク深い。蕎麦をつけて啜ると、蕎麦の甘さが花開く(これは凄い)。蕎麦のフレーバは仄かに立つ感じ。
-かけそば (600 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
"かけ"のツユはかつお節の上品で良い香りが柔らかく立つ。蕎麦はせいろそばと同一か。少し柔らかいが、食感はなかなか良い。ツユには上品な辛さがあって、とても旨い。
蕎麦は外一。ツユは木樽で1週間以上寝かせたかえしと2種類の鰹節と利尻昆布を煮詰めた出汁を合わせてさらに1昼夜寝かせた蕎麦汁。
店内はモダンかつシックで、こじゃれた造りです。
そういえば、かんだやぶそばが復活したので、そろそろそっちの方にも足を運びたいです。
閑話休題
しつこく光延反応の話を書きます(光延反応のインプルーブメントについて徒然なるままに書いていきます)。
主に、
The Mitsunobu Reaction : Origin, Mechanism, Improvements, and Applications
Chem. Asian J.,
2007,
2, 1340-1355.
新光延試薬 (TCI寄稿論文)
Development of New Synthetic Reagents in Mitsunobu Type Reaction
YAKUGAKU ZASSHI 2001,
121, 567-583.
Alcohols Inversion : Beyond the Mitsunobu (American Chemical Society Division of Organic Chemistry)
などを中心に読んでみたので、そのメモです。
•DCAD (Di-p-chlorobenzyl azodicarboxylate)
CAS# 916320-82-6
Mw. 367.18
50,100 JPY / 10 g (Aldrich)
m.p. 108-110˚C
室温で保管できる安定なオレンジの結晶性の固体
DEAD, DIADと同等の反応性。
DCAD-H
2は難容性で、CH
2Cl
2で薄めて濾過することで、66-82%回収可能
DCAD-H
2は高極性で、シリカゲルカラムによる分離が容易
Org. Lett.,
2006,
8, 5069-5072.
see http://researcher-station.blogspot.jp/2008/11/new-mitsunobu-reagent.html
•DMEAD (Bis(2-methoxyethyl) azodicarboxylate)
CAS# 940868-64-4
Mw. 234.21
75,000 JPY / 100 g (WAKO)
m.p. 40-41˚C
DEADと同等の反応性
DMEAD-H
2は水溶性で、aqueous workupで除去可能
DMEAD-H
2は高極性で、シリカゲルカラムによる分離が容易
Chem. Lett.,
2007,
36, 566-567.
see http://researcher-station.blogspot.jp/2015/02/dmead-alternative-to-dead.html
•DBAD (di-tert-Butyl azodicarboxylate)
CAS# 870-50-8
Mw. 230.26
32,300 JPY / 25 g (Aldrich)
m.p. 89-92˚C
6 examples, 30-69%
Tetrahedron Lett., 1999, 40, 4497-4500.
DBADとDBAD-H2は塩酸で処理すると分解し容易に除去できます。あと、ホスフィンにdiphenyl-2-pyridylphosphineを使うと、ホスフィンも対応するホスフィンオキシドも水層に落とせます。
因に、diphenyl-2-pyridylphosphine (CAS # 37943-90-1)の価格は
18,800 JPY / 5 g (Aldrich)
17,100 JPY 5 g (TCI)
DBADとフェロセニルタグをつけたホスフィンを使った例もあります↓
9 examples, 89-94% yield
Adv. Synth. Catal., 2006, 348, 1058-1062.
フェロセニル基はredox-switchable phase tagとして働きます。反応終了後。FeCl3でフェロセニルタグのついたホスフィンオキシドを酸化して生成するカチオンは非極性溶媒に溶解せず水層に抽出されます。ホスフィンオキシドを水層におとした後、塩酸処理してDBAD-H2を分解して除去します。
•Azo reagents tagged with cyclodextrin-binding groups
Tetrahedron Lett., 2004, 45, 6653-6656.
アダマンチルユニットのついたDAD試薬はcyclodextrin-bounded silica gel上で保持時間がメチャクチャ長くなるので生成物との分離が容易になる(アダマンタンはシクロデキストリンに強く取り込まれるゲスト分子らしい)。
•Fluorous azo reagents
J. Org. Chem., 2004, 69, 8751-8757.
fluorous azo reagentはmedium-pressure fluorous chromatographyで、fluorous phosphineはfluorous solide-phase extractionで除去するようです。
•Phosphonium ion tagged reagents
Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 1415-1420.
tetraarylphosphonium perchlorateがジエチルエーテルに溶けないことを利用し、反応終了後、エーテルを加えてホスホニウム塩を析出させ、濾別します。
(エーテルを使うのがお上品じゃないですね)
•Polymer-supported reagents
J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 52-53.
上記試薬はROMP (ring opening methathesis polymerization)によって合成されます。これらの試薬は両方ともTHFに溶解しベタイン形成できるので反応が進行します。で、これらの試薬がAcOEtに溶けないことを利用して除去します。
不溶性のポーマー担持試薬(ホスフィン、アゾ)は沢山報告されているようですが、その不均一性故、両者(ホスフィン、アゾ)の同時使用は避けられていたそうです(どちらか一方が溶けないといけない)。
それらか、もう1例↓
Mol. Diversity, 2005, 9, 305-316.
グリシドールのアニオン重合により合成されるこれらのポリマー担持試薬は、樹枝構造を持ち、全てのポリマーはpreciptation/filtrationで除去できる。
•Toy's Organocatalytic Mitsunobu Reaction
J. Am. Chem. Soc.,
2006,
128, 9636-9637.
化学両論量のDEADを使った場合(普通の光延反応)よりも収率が低下。2 eq. の酢酸が生成するので、pronucleophileが十分にacidicでないと副生成物(acetate)が生成する。
この方法の2nd genaration (improvement)として、4-ニトロ安息香酸を3,5-ジニトロ安息香酸に換えて反応を行うとacetate副生を抑制できる(Synlett 2010, 7, 115.)。
•Catalytic Mitsunobu Reaction with an Iron Catalyst and Atmospheric Oxygen
Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 4613-4617.
see http://researcher-station.blogspot.jp/2015/03/catalyticmitsunobu-catalytic-mitsunobu.html
•Tsunoda reagents
DAD系光延試薬には所謂p
Kaの壁があります(pronucleophleのp
Kaが9以上になると収率が低下し、13以上になると全く反応が進行しなくなる)。ホスホラン系の角田試薬はこのp
Kaの壁を打ち破るために開発された試薬です。
反応後に生じるco-productはアセトニトリルとトリアルキルホスフィンオキシド。R'=Me (CMMP)の場合、副生するトリメチルホスフィンオキシドは水溶性が高く、分液操作で除去できる。R'=Bu (CMBP)のときに副生するトリブチルホスフィンオキシドは高極性でカラムで簡単に取り除けます。
あとホスホラン試薬の特筆すべき点は、(裸の)トシルアミドをpronucleophleに使えることと思います。(裸の)トシルアミドをオリジナルの光延条件に処すとホスフィントシルイミドが生成します。
しかしながら、CMBP条件では適用可能です。例えばこんな感じ(CMMPではダメ)↓
ということで、ホスホラン系の角田試薬は"p
Kaの壁"を軽く超越するパワーが備わっているように感じますが、懸念すべき点もあると感じます。まあ、ボク的には角田試薬は使ったこともなくて、基質一般性的な部分も網羅しるわけではないので、自信はあまりないんですが、立体障害にいささか弱いんじゃないかと思います。角田試薬は熱に対して安定なので加熱すれば収率は改善するんですが、proelectrophileに二級アルコールを使って室温で反応させた場合、意外と低収率だったりします。
最後にホスホラン系試薬の性質ですが、CMBPは液体、CMMPは固体。どちらも酸素と湿気に非常に弱く、かなり気難しい試薬と思います(使ったことないけど)。CMBPはシリンジで秤量して使い、CMMPは小分けして瓶全てを使い切るか、THF or ベンゼン溶液にして秤量する。基本、Wittig試薬なのでケトンとも反応するんだけど、エステルと反応することもあると言います。
CMBP (CAS # 157141-27-0)
110,900 JPY / 25 g (TCI)
CMMP (CAS# 176325-83-0)
74, 900 JPY / 10 ml (0.5 M in THF) (Aldrich)
•Tunoda's Azo Reagents
こちらも"p
Kaの壁"を克服するために開発された試薬。コンセプトは酸性度の小さいHAからプロトンを引き抜けるように、光延試薬の塩基性を高める目的で電子供与性の大きいアミノ基本を導入したというものです。
アゾジカルボキサミド類はDEADよりマイケル受容体としての反応性が低下するため、光延ベタイン形成のためにはTPPより求核性が高いTBP(tributylphosphine)を使用しなければなりません。
TMP(trimethylphosphine)を使った方が、上の置換基が小さいので収率が向上することに加えて、水溶性の高いトリメチルホスフィンオキシドが副生するので、便利な気がしますが、TMPは発火性なので、使わない方が無難でしょう。
これらのアゾ試薬の特徴ですが、全て粉もので再結晶により精製可能で、デシケーター内で長期間保存できます。水やアルコールなどの求核性のある溶媒中では、徐々に分解してアミンが遊離してきます。
また、対応するジヒドロ体は全て結晶性が高く、光延反応後、ヘキサン、エーテルを加えて析出させ、ろ別することにより大半を取り除くことができます。極性も高いため、カラム精製での容易に除去できそうです。さらに、TMAD-H
2とDHTD-H
2は水溶性なので、aqueous workupによる除去も有効です。
一般的に、光延反応は立体障害に弱いと言われていますが、立体障害の大きい基質に対して光延反応を敢行する場合は、TMAD存在下に
p-メトキシ安息香酸を作用させるのが良いそうです。
ただ、これらのアゾ試薬には欠点があって、こんな副反応が起きる場合があります↓
(この副反応対策のために、閉環しにくい中員環のDHTDが開発された)
ついでに、DEADに較べて反転率が低いようです。
(「DEADだと収率が低いときでも、立体化学は完全に反転する」って書いてあった)
TMAD (CAS# 10465-78-8)
28,800 JPY / 5 g (TCI)
•Mukaiyama's Protocol
J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 10538-10539.
J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 7359-7367.
DEADよりも適用可能な基質が広がります。pronucleophileとして酸、フェノール、アルコールが適用可能。通常の光延反応よりも立体障害に強く、tertiaryアルコールも適用可能です。
•Sulfonate Inversion (Shi et al.)
Tetrahedron Asymmetry, 2010, 21, 277.
スルホナートのS
N2で、求核剤にカルボン酸のアルカリ金属塩を使うと、脱離反応と競合するそうです。それに対して、ソフトなアンモニウム塩やCs塩を使用することで、脱離を緩和できますが、Shi等の開発したソリューションはもっとコンビニエントで、
in situで調製したアミン-カルボン酸錯体がS
N2選択的な求核剤として働きます。
官能基許容性は、エステル、アセタール、アリルスルホナートがあってもオッケー。
反応温度が割と高めだけど、これで反転が約束されるなら、one step増えるけど、凄く便利と思いました。
最後に光延反応の反応機構をメモしてフィニッシュです↓