つけ麺って食べ進めるうちにスープが急速に冷めていくじゃないですか。だからあまり好きじゃなくって、そんなに食べないんだけど、昨年食べたつけ麺のメモです↓
-麺屋中川會住吉店 つけ麺並盛り (780 JPY) memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
並盛りで麺200 g。麺は冷たく、太くモチモチの浅草開化楼製極太麺。十数分の茹で時間を要する。麺自体が美味しい穀物の旨さがする。
スープは魚介系と獣系の香味(豚ガラ、鶏ガラ、宗田節、かつお節、昆布、野菜、フルーツを20時間以上煮込んでつくる)。粘度が高くトロトロで濃厚も、くどさは感じない。
麺とスープのマッチングは良好。具は焼豚、メンマ、あと何かの野菜で普通に美味しい感じ。麺のボリュームによりスープの温度は急速に低下するが、麺の冷たさは氷水で締めた冷たさではなく、スープの温度低下による不快感はあまり無い。
閑話休題
「年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学
」のメモの続きです。
今年の上半期はピケティが流行ったかと思いますが、8年くらい前はリチャード•フロリダ教授の「クリエイティブ・クラスの世紀」が流行ったと記憶しています(原題は「The Rise of the Creative Class」で、アメリカでは2002年に上梓されている)。で、このフロリダ教授の研究成果を受けてだと思うんですが、10年程前、アメリカでは町の住み心地をよくすることで都市の経済を活気づけようとする政策が多くの都市で実践されたことがあったそうです。
フロリダ教授はその著作の中で、今後"クリエイティブ・クラス"という平たく言えば知識労働者の台頭が顕著になると述べています。"クリエイティブ・クラス"はハイテク産業に代表されるクリエイティブ産業を牽引する人材です。そして、クリエイティブ産業はその周辺地域に大きな富をもたらし地域経済を活性化させるので、クリエイティブ・クラスを惹付ける都市を構築して、経済を発展させてウハウハしようという訳です。
フロリダ教授の主張を超簡単に相当荒っぽく要約すると、
a) これからの労働者はクリエイティブ・クラスとマックジョブに二分される(学者先生はマックジョブなんていう下品な言葉は使わないですが)。
b) クリエイティブクラスを引きつける都市でクリエイティブ産業が集積する(Google, Apple, Microsoft, etc.)。その結果、地元経済がウハウハ。
c) クリエイティブクラスを惹付ける都市は寛容性が高い。例えば、ゲイなどの同性愛者やボヘミアンにも寛容な都市とか。なので、都市の(潜在的)クリエイティビティーを測るのにゲイ指数が有効だ
d) さあ、クリエイティブな産業が集積する都市を造るために、クリエイティブ・クラスが好む生活の質の高い都市を作ろう!!!=充実した文化とリベラルな気風を保持するクールな町を構築しようぜ!!!性的マイノリティーにも寛容になろうぜ!!!
っていうところかと思います。
see
http://researcher-station.blogspot.jp/2007/12/blog-post.html
http://researcher-station.blogspot.jp/2008/07/rise-of-creative-class.html
そんなこんなで多くの都市(ピッツバーグ、デトロイト、クリーブランド、モービル、etc.)がクリエイティブ・シティー構築のために、フロリダ教授の処方箋を受け入れてクリエイティブ・クラスに好まれるであろう快適性を追求した都市に再開発に取り組んだそうです、相当の金をかけて(いまも実行中らしいです)。
しかしながら、本書(「年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学 」)の著者は、そのフロリダ教授の考えは原因と結果を混同していると述べています。すなわち、イノベーション産業の集積するクリエイティブ・シティーは、堅実な経済基盤が形成されたからこそ、充実した"生活の質"(充実した文化とリベラルな雰囲気とか)が備わったのであって、その逆ではないと主張します。
例えば、シアトルは現在押しも押されぬクリエイティブ・シティーの雄ですが、シアトルにイノベーション産業が根付いたのは、最初からクリエイティブ・クラスにとって魅力的な環境が整っていたからではなくて、活気溢れる魅力的な都市になったのはハイテク産業の雇用が生まれたあとであると言います(1980年代は暗いムードに覆われていて、住民は大挙して町を脱出していた。
逆に、クリエイティブ・クラスにとって魅力的な環境が整っていると考えられる都市であるにも関わらず、クリエイティブ産業を呼び込めずにいるという例があります。タリーブランド(超一流の交響楽団や美術館などの文化施設、おしゃれな繁華街を擁している)やサンタバーバラ(風光明媚で気候がよく、リベラルな気風)、マイアミ、サンタフェ、ニューオーリンズなど(充実した文化とリベラルは雰囲気)がそうだと言います。
また、アメリカ国外に目を移してみると、イタリアやベルリンも同様と言います。
イタリアはライフスタイルが魅力的な国だが、先進国のなかで最もイノベーション産業の形成が遅れているといいます。イタリアの停滞の原因は、クリエイティブ・クラスの供給不足ではなく、クリエイティブ人材の需要が少ないことであり、それはイノベーション産業を惹付けられない経済システムだということです。
ベルリンはドイツでは抜きん出て刺激的で創造的な都市であり、ヨーロッパで屈指のクールな町であるにも関わらず、堅実な経済基盤を築けておらず、主たる産業は観光業という残念な現実があります。
(ベルリンの壁崩壊後、ヨーロッパ中から多くの創造性に富んだ人材(大学教育を受けた若いフランス人や、スペイン人、イタリア人)が流入し、リベラルな雰囲気を備え、多くのハイレベルな公共アートスペース、ヨーロッパの主要都市で有数の安さを誇る不動産相場、充実した託児サービス、質の高い学校、充実したインフラ、実験精神、二つの動物園、三つの有力オペラハウス、七つの交響楽団、無数の美術館や博物館を有しいるが、この10年以上、ベルリンはドイツ国内で最も失業率が高く(全国平均の二倍近く)、住民一人当たりの所得の伸びは国内で下から二番目という体たらく)
とまあこういった具合に、クリエイティブ•クラス好みの環境を用意すればイノベーションハブを築けるとう考えは肯定できかねる感じです(特に、ベルリン)。
つまり著者の主張は、「生活の質の高さは、優秀な人材を引きつけ、都市を経済的に成功させる助けにはなるが、それだけでは経済の停滞した都市をイノベーションハブに変える原動力にはなりえない」というもので、フロリダ教授の主張を真っ向から否定するものです。
このブログでは度々フロリダ教授の論を推してきましたが、本書を読むとフロリダ教授の説は"鶏が先か、卵が先か"的間違いであるように思われます。
まだ、つづく.....
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