先日購入した「プロセスケミストリーの展開」を読んでいたら、コンキチの興味をそそる寄稿があったのでメモしてみます。
件の寄稿のタイトルは「アルツハイマー型痴呆治療剤アリセプト重要中間体に関する新製造法」で、元文献は↓
Tetrahedron, 2001, 57, 2701-2710.
Large scale synthesis of N-benzyl-4-formylpiperidine through partial reduction of esters using alminum hydride reagents modified with pyrrolidine
エーザイの研究グループの報告です。
ちなみに特許登録済みです(特開2000-136183)。
内容は、実用的な「エステル→アルデヒド」への金属ヒドリド還元の企業化です。エステル→アルデヒドへのトランスフォーメーションというと、教書的にはDIBAL-Hが思い出されますが、確か超低温が必要で、マルチパーパスな反応釜では対応できないはず。そこをハンドリングが容易なRed-Al (VITRIDE, たしか65~70%くらいのトルエン溶液で売っているはす)を使って、マイルドな条件で上記トランスフォーメーションを達成するというプロセス化学のお手本みたいなお話です。
研究の発端は、Donepezil hydrochloride (Aricept)というアルツハイマー型痴呆治療剤の中間体であるN-Benzyl-4-formyl piperidineのプロセウ改善です。従来の合成法はこんな感じ↓
デメリット(改善余地)として、(i) Wittig試薬が汎用性が低く高価(そうなの?)で、(ii) 原子効率の低さが挙げられています(あと、Ph3P=Oの除去が面倒かも)。
ターゲット化合物の合成法を調査した結果、安価な出発物質を使用したこんなスキームがあったそうです↓
還元のステップは、-78℃でDIBAL-Hを作用させ、92% yieldで目的物をGETできます。
ということで研究の主題は、マイルドな条件で部分還元を達成できる還元剤を開発することになります。DIBAL-H以外の「エステル→アルデヒド」のトランスフォーメーションの報告例に、Red-Alを2級アミン(N-メチルピペラジンとかモリホリン)で修飾した還元剤を用いた例があって(反応温度は氷冷下)、実機対応可能そうな感触ということで、Red-Alベースの金属ヒドリド還元の検討がまじまったのです。
まず文献記載のN-メチルピペラジンとかモリホリンで修飾したRed-Alを試してみたところ、この基質ではオーバーリダクションがけっこう進行してしまう模様。で、2級アミンのスクリーニングを行った結果、ピロリジンを使うとアルコールの生成が最も抑制可能でした。こうして、Red-Alをピロリジンで修飾したRed-ALPを用いた検討が行われて行くのです。
続く.....
Tweet
0 件のコメント:
コメントを投稿