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2008年7月21日月曜日

共有地の悲劇

昨晩、(山本モナがあっという間に降板した)サキヨミをみていたら、救急車の話をやっていました。緊急性を要さない救急車をタクシー代わりに使ってしまい、真に救急を必要としている患者の救済が滞るという問題についてです。

まさに、


共有地の悲劇


と思いました。

共有地の悲劇とは、共有資源(おカネを払わない人の利用を排除することが不可能で、かつ人が利用すると利用可能量が減少するような性質を持つ財)が過剰利用される性質を表す比喩。

番組では、「有料化に賛成」派と「有料化には反対」派との間で救急車の有料化に関して話が進んで行きました。

それぞれの言い分はこんな感じだったように思います↓

a) 「有料化に賛成」派→救急車の利用に一定の心理的障壁を構築するために、有料化という(負の)インセンティブの設定が必要。

b) 「有料化には反対」派→モラルの問題。緊急性の判断が困難。真に緊急性のある患者の使い控えが生じる。

まあ、両者の言い分にはそれぞれ一理あるとは思いますが、コンキチは「有料化に賛成」派ですかね(悔しいけど)。

まず、反対派に対するコンキチの意見↓
・「モラルの問題」っていうのはこれまでの様々な問題について語られてきたけれど、啓蒙活動なりなんなりやって成果がどの程度挙がっているのかは疑問だな(自分は懐疑的です)。マスゴミにはその辺のリサーチもやって欲しい。
・緊急性は定量化できないから難しいね。また、当事者ではなく、受け手側(医療機関)が症状を聴いて緊急性を判断する試みを実施している自治体もあるようだけど(番組でやってた)、判断ミスをゼロにすることは困難(っていうか不可能だと思う)だと思うし、素人目には訴訟リスクを背負うことになると思うんだけど勇気あるなあと思った。
・「真に緊急性のある患者の使い控えが生じる」っていうのは可能性としては、充分考えられる。有料化されれば当然発生するトレード・オフだろう。「モラルの問題」について啓蒙するより、こっちの方の啓蒙した方が効果があるような気がする。事例毎に対処法をレクチャーする。ただ、どうやって国民に広く周知させるかが難しいかなと思う(とりあえず、学校教育に組み込む)。

自分、交通事故で骨折して歩けなくなったことがあります(出血もしたね。白い骨見えてたし)。で、近くを通りかかった人が119してくれました。素人考えだけど、この場合数時間程度放置されていても命に別状はなかったと思います(超絶痛かったけど)。つまり、(命の喪失に係る)緊急性はなかった。でも、救急車で運ばれることに対して非難する人はいないでしょう。人の常識とかはあてにならないので、ケース・スタディーを徹底して欲しいな。

まあ、反対派の論拠としては「人命は地球より重い」に収斂していると思います。ただその場合、無法者(タクシー代わりに救急車を利用する人)のせいで救急車が足りなくなって、生命の危機に陥る人の人命もまた地球より重いのです。「効用>>弊害」が明らかならば、有料化すべきだと思う。

次に有料化についてコンキチが思うところを書きます↓
・やっぱり共有地(共有資源)の保全には、適切なインセンティブを設定して障壁をつくることが重要だと思う。
・経済的インセンティブを設定する場合、その多きさには注意を払うべきと思います。例えば、「ヤバい経済学」に載っていた保育園の事例にこういうのがあります↓

親が午後4時に子供を迎えにこなければならないという決まりの保育園があり、親達はよく遅れてくると言う。で、10分以上遅れた場合は、その親には毎回3ドル(子供1人あたり)の罰金をとることにしたところ、週に8件の遅刻が20件に増えた
see http://researcher-station.blogspot.com/2007/06/freakonomics.html

「税金払ってんだから無料で救急車使うのは当然」と主張する人々は、経済的な見地から救急車利用を考えているとコンキチは思います。ただ、救急車には道徳的な側面も当然あると思われます。なので、有料化する場合、あまりに安いプライシングをすると上記保育園のような事態が発生すると思います。すなわち、

i) 道徳的インセンティブが消え去り、完全に経済的インセンティブへとインセンティブが転移する。
ii) 道徳的インセンティブ>>救急車の利用料金

こういうことが起こる。安い費用で心理的負担となる道徳的インセンティブを消し去ることができる。

有料化する場合は、プライシングにま充分な配慮が必要でしょう。あと、真に救急性の高い患者を救済するために、料率を複数準備するのもいいかもしれないと思います。例えば、
救急性 無料
救急性 2万円
救急性 4万5千円
救急性皆無 20万円
とか。
(この番組に出演してた勝間和代氏もプライシングに差を付ける議論があっても良い的なことを述べていました。でも、反対派の人達は、「有料」か「無料」の二元論で思考してたみたいで、全然議論がかみ合ってなかったような気がした。二元論は白黒はっきりするような気がして、一見分かり易そうなんだけど、稚拙なんだよね。結局、なにも解決しない。中間(グレー)の議論が重要と思いました。)

あと、救急車の費用は税金で賄われています。つまり、ムダに使われる救急車の利用料は我々国民が負担しているのです。なので、救急車をムダに利用した人から使用量を徴収するということは、税金からの拠出が減ることを意味すると思うのですが、いかがでしょうか?

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