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2008年7月9日水曜日

CH/pi Interaction in Classical Resolution (2)

前回のブログの続きです。

AIよりも高い分割能を示すABI。この結果から↓

ナフチル基の導入により、ABI分子間、ABIと酸分子間でのCH/π相互作用が、難溶性塩の(結晶構造の)安定化に効果的に効いていることが示唆された。

と主張しています。で、これを検証するために、X-線結晶構造解析により、ABIAIの塩を比較しています↓

A) 2-(3-methylphenyl)propionic acid (2-m-tolylpropionic acid)との難溶性塩の比較

1st 両者の水素結合ネットワークは、難溶性塩結晶の安定化へ同様に寄与している。
a) アンモニウムカチオン、カルボキシレートアニオン、水酸基からなる、2回らせん軸を中心に有する水素結合ネットワーク(21-column)が同様に構築されている。
b) 21-column中の分子配列はほぼ同一で、21-columnの充填様式がよく似ている。

2nd カルボン酸のキラル中心に結合したメチル基とアミンのπ平面とによって構成される両者のカラム内CH(sp3)/π相互作用は、難溶性塩結晶の安定化へ同様に寄与している。

3rd カルボン酸のフェニル基の3-位のメチル基と、隣接するカラムのカルボン酸のフェニル基から構成されるカラム間CH(sp3)/π相互作用
→この相互作用は例外的(他のカルボン酸との組み合わせからなる難溶性塩結晶中には観察されなかった)。ただ、C・・・π平面の距離とカルボン酸分子の配向は両者間(ABI塩とAI塩でちょっと違う)。
*C・・・π平面の距離を使っているには、X-線解析からはH原子を正確に位置づけられないからだっそうです。ちなみに、C・・・π平面の距離は決定できる。また、安定化エネルギーに寄与する必須因子はC・・・π平面の距離から決定できることが知られているらしいです。

4th 隣接するカラムの二つのアミンから構成されるT-型のカラム間CH(sp2)/π相互作用は、両者で全然違う。ABI塩の方がより堅固でより安定化されている。
ABI塩結晶→2つの相互作用がある(3.29Å, 3.58Å)
AI塩結晶→1つしか相互作用がない(3.69Å)

5th ちなみにefficiencyは、ABI (0.56) > AI (0.54)ね。


B) ibuprofenに対するキラル認識能

1st efficiencyは、ABI (0.48) >> AI (0.06)

2st ABI塩ではT型のCH(sp2/π相互作用(2つね)がみられるが、AI塩ではみられない。

3nd ABI塩結晶で、ナフチル基のスライドが観察された。すなわち、隣接する21-columnのABI間で、CH(sp2/π相互作用(1つ)と、ABIの5員環部分のメチレンとπ-平面との間にCH(sp3)/π相互作用がみられた。しなやかなCH/π相互作用。


C) 3-phenylbutyric acidに対するキラル認識能
β-キラルカルボン酸とアミンジアステレオマー塩形成によるキラル認識は、一般的に難しいと言われています(キラル中心が分割剤のキラル中心から離れてるからね)。

1st efficiencyは、ABI (0.45)に対して、AIはゼロ。

2nd AI塩結晶は、反転中心(i-column)を持ち、カラム中には3-phenylbutyric acidの両方のエナンチオマーが含まれる。

3rd ABI塩は、21-columnを形成し、3-phenylbutyric acidの一方のエナンチオマーから構成される。

4th 3-phenylbutyric acidのα-メチレン基とγ-メチル基が、ABIのπ-平面との間にCH(sp3/π相互作用を形成する。この相互作用がABIと3-phenylbutyric acidの配置を固定し、キラル認識に寄与する。



ABIのナフチル基のしなやかさが効いてるってことかな。



まあ、以上のような感じで色々とつたない文章で述べてきましたが、百聞は一見にしかずなので、この論文に興味のある人は、生文献のステレオ・ビューを見て下さい。よく分かります。


光学分割(結晶化を利用した)って、実用性重視で、あまりロジカルなアプローチによる光学分割現象の研究ってあんまりないと思います。貴重な研究成果と思います。

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