←最近、富乃宝山を呑んでます。多分、フェアバリューで購入できました(1,500円で買った)。
西酒造も事故米騒動に巻き込まれて大変と思いますが、頑張って欲しいです。コンキチは応援します。
ニューウェーブ系の富乃宝山。死ぬ前に一度呑んでみた方が良いでしょう。
さて、こんな文献を読んでみました↓
対称ジエステルの実用的な選択的モノ加水分解反応-現状と展望-
Highly Efficient and Practical Selective Monohydrolysis of Symmetric Diesters: Recent Progress and Scope
有機合成化学協会誌 Vol. 66, No. 10, 2008
対称エステルの高選択的モノ加水分解によるハーフエステルの合成です。で、例えばこんな↓反応なんですが、
1) NaOH pellets (1eq.), MeOH, r.t., 60-70min, Yield < 10% (yellow, paste-like) 2) THF/aq. NaOH (2eq.), 0℃, 60-70min, Yield quant. (white solid) という結果になるそうです。軽く驚きです。過去に同様の報告例もなしだとか。 この反応の発見は、プロセス開発というのが目的ではなく、教育目的でごく少量のハーフエステルを少しでも楽に得たいという思いから、偶然発見されたのだそうです。 ref.
J. Org. Chem. 2000, 65, 5834.
Chemical and Engineering News, 2001, January 22, 90.
以下に本反応のメモを少々↓
a) 基質
エステルユニットの疎水性の増加に伴い、加水分解されにくくなる。
ref. Tetrahedron Lett. 2000, 41, 10163.
b) 溶媒効果
THFと水の比率が重要。上記schemeの反応における実験操作は、1.2 mmolの基質をTHFに溶かし、total 22mlとなるように水を加え、氷水浴下で塩基を加えるというもの。
THF%(v/v), Reaction time, Isolated yield, Rate constant (L•mol-1•s-1)
73%, 8 h, 88%, 3.26±0.02×10-3
60%, 6 h, 30 min, 81%, 6.06±0.12×10-3
47%, 5 h 20 min, 84%, 1.10±0.02×10-2
33%, 3 h, 90%, 2.06±0.23×10-2
20%, 70 min, 94%, 2.56±0.06×10-2
7%, 70 min, >99%, 4.70±0.02×10-2
3%, 70 min, >99%, 4.81±0.10×10-2
0%, 70 min, >99%, 4.59±0.07×10-2
反応速度に及ぼすTHF比率の効果が大きい。あと、THFの割合が20%以上に増えた時には、しばしばゼリー状の水和物が生成し、撹拌•抽出が困難になることがあったそうな(ref.Chemical Engineering Science 2001, 56, 4747.; J. Chem. Eng. Data 2005, 50, 2058.)。
Solvent-freeで高収率っていうのが興味深いです。
THF以外のの溶媒では↓
反応条件は、co-solvent (2 ml)-water (20 ml)ね。
Co-solvent, Yield, Rate constant (L•mol-1•s-1)
THF, >99%, 4.70±0.02×10-2
CH3CN, >99%, 4.85±0.40×10-2
MeOH, 90%, 3.73±0.50×10-2
EtOH, 86%, 3.48±0.06×10-2
2-PrOH, 88%, 3.29±0.02×10-2
CH2Cl2, 9%, 8.60±0.27×10-4
None, >99%, 4.59±0.07×10-2
で、著者の考察↓
当初はこの反応が、一般によく報告されている二相反応のように有機溶媒と水との二相反応と想像したが、この仮説は間違いであり、この条件では少量のTHFは水に溶けていて単一相をなしており、そこに有機分子であるジエステルが第二相として反応に参加したものと思われる。THFはジエステルが反応系によくなじむのに寄与しており、これは原料のジエステルが固体である場合は、はじめにTHFに溶かしてから反応を行えるという利点にもなる。
また、著者は、
この溶媒でる水への馴染みにくさが原動力となってdesymmetrizationが起きるには、筆者が気づいた限りでは図らずも本反応が最初の例の1つである。
と述べています。
c) 塩基の効果
上記schemeに反応では、
Base (2eq.), Reaction time, Yield
LiOH, 60-70 min, >99%
NaOH, 60-70 min, >99%
KOH, 30-40 min, >99%
CsOH, 30-40 min, >99%
僅かにKOHとCsOHがLiOHやNaOHよりも反応性が高いという程度。
ref. Bull. Chem. Soc. Jpn. 2005, 78, 498.
基質にdimethyl glutarateを用いると、
反応性: KOHとCsOH > LiOHやNaOH
選択性: KOH > CsOH > NaOH ≥ LiOH
d) 温度効果
反応温度の上昇に伴い(Base 2eq.)、ジカルボン酸の生成が増加。選択性を保つために、0℃近辺の低温を保つことが必要。
e) Monohydrolysis of malonic acid diester
基質、塩基の種類•量を変えて検討しています。塩基の量は1 eq.前後でベスト•プラクティス
ref. Tetrahedron Lett. 2008, 49, 4434.
あと、実用的な大量合成にもTRY↓
基質濃度を上げ、CH3CN-H2O系、KOH (1eq.), 0-4℃で反応を行い、蒸留して、158.3 gのDimethyl malonnateから対応するハーフエステル114.8 gがGETできるそです(81% yield)。
f) その他
コハク酸ジメチルやアジピン酸ジメチルのモノ加水分解にも有効で、ノルボルネンやその炭素-炭素二重結合を還元した基質のトランスジエステルでは、exo選択的に加水分解が進行する。
ref.) Tetrahedton Lett. 2003, 44, 8567.
凄くシンプルな反応で、これまでに研究がやりつくされている気がしていたのですが、凄い成果と思います。注目と賞賛に値する仕事と思いました。
何事も再考する姿勢が重要と思い直す、二流大出のなんちゃって研究員なのでした。
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