「知財・特許業務マニュアル〈下巻〉」を読破しました。
法律とかそういった決まりごと関連の書籍は、正直退屈ですね。でも、興味深い内容もあったので、少々メモしてみたいと思います。
1) パテントマップ
特許戦略の本なので、特許情報をビジュアル化したものである「パテントマップ」に関してけっこうな頁が割かれています。
で、特にコンキチが興味を覚えたのが、この本の著者(有機化学系)の1人が現役時代にちょっとした遊びで作ったものらしい、メタロセン触媒によるオレフィン重合のパテントマップです。
x軸にモノマーの種類
y軸に触媒の中心金属
z軸に特許件数
を3次元プロットしたパテントマップなのですが、マッピングしてみた結果以下のことが分かったそうです。
a) エチレン、プロピレン、スチレンをモノマーに使ったものが多い。
b) エチレンの重合で使われる金属は、TiとZrが多い。
c) プロピレンの重合で使われる金属は、TiとZrが多い。
d) スチレンの重合で使われる金属は、Tiが多い。Zrはゼロ。
で、ここで見えてくるのが
「スチレンの重合にはなんでZr cat.が使われてない訳?」
ということです。
本書では、この話題に関する詳細な追跡の記述もなく、またコンキチも専門外なので、実際上述したような「気づき」から具体的にどういった展開が可能かはよく分かりませんが、技術の視覚化によって、第三者がまだ気付いていない何かを見出すツールとしてはかなり有益かと思いました。
企業戦略、企業規模、ビジネスモデルによって上記リサーチは、ROIが必ずしも良いとは言い難い場合もけっこうあるかと思いますが、考え方としては見習いたいですね。
2) 特許出願戦略
コンキチは所謂化学工業というセクターに属する仕事に携わっています。で、そこで製造される製品というのは、パソコンとかTVとか車といった、はっきりとした、それ固有の形状を有さないものなのです。ジュースとか酒とか砂糖とか塩といった、言われてみないとそれとは認識しがたい物質が製品よして製造されてくるのです。しかも、B to Bビジネスしか営んでおらず、エンドユーザーが手にする製品の中に微量しか入っていない場合もあったりします。
で、そんなセクターに属する会社が、新規製造技術を開発してそれを守ろうとした場合、どういった方法がベストかということを考えさせられましたね。特許化を目指すべきなのか? それともノウハウとして保護し、隠密に先使用権は確保しておくという戦略の方が良いのか?ということです。
しかもプロセス・イノベーション的な発明の場合、果たして競合他社の特許侵害を見抜くことがどれほどできるのかはなはだ疑問があります。
企業のモラールにかけるだけでは、いささか白痴的ではないかということです。
今までコンキチは、上述したようなことをあまり考えたことがなかく、はっきり言って素人ですが、少しづつ勉強して行きたい気持ちは芽生えました。
3) 「筋の良い」テーマ
本書では、「筋の良い」テーマを生み出すためにはということにも言及していて、
イマイチくんな(研究)テーマが多いのは、
考える時間、そしてその前に、構造化(解析された情報が整理されている状態)された情報を準備することの重要性を組織としてあまりにも軽視してきた。考えごとをするのも、そのための材料を準備して下ごしらえをするのも、仕事ではない、対価を払うべき価値のある生産活動ではないとみなされてきた。だからこれまでわれわれは、筋の良いコンセプト(研究テーマ)を生み出すための投資、つまりは調査研究への投資をわずかしか行ってこなかった。
と断じています。
正直、この本はとても良いとは言い難いと思いますが、上記主張はコンキチと全く同意見ですね。TOCにもちょっと通じるところがると思うし。
本来知識集約型であるべき研究開発活動を労働集約型活動と見なしてきたことにそもそもの間違いがあるんだろうと思います。こういうパラダイムの転換を達成できた企業のみが、研究開発型の企業として生き残って行くのだろうなと感じています。
以上、コンキチの心にとまったことを幾つかメモしてみました。まあ、コンキチは二流大卒のしがないなんちゃって研究員なので軽く流し読みして下さい。
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