「絶望の国の幸福な若者たち」を読了しました。
最近テレビへの露出も結構ある新進気鋭の社会科学者、古市憲寿氏(1985年-, 慶大SFC→東大院)の著作です。
閉塞感が叫ばれ、若者の不遇や活力の低下がオトナ達によって主張されるようになって久しい今日この頃の日本、賃金は上がらず就職氷河期真っただ中ではあるけれど、物価が下落し高度に洗練された社会インフラが非常に安価に利用できる現在にあって、若者はけっこう幸せだと言います。今を生きる若者は総じて幸福であると著者は説きます。
まあ、いろいろと著者の主張が展開がシニカルでシャープな調子で展開されているんだけど、その中で気になったのは以下の点↓
1) 若者論は大人の自分探しである
→まあ、懐古趣味をチクリと皮肉ってるよね
2) 日本がわけのわからないお祭り気分に包まれたバブル期に戻りたいだろうか。地価や物価が高騰する中で、今から見ればしょぼい「シティーホテル」でまずい「フランス料理」を食べて「トレンディ」する時代に?
→超ウケル。バブルなんて成り上がりものの酔狂なゲームだったのかな?
3) 戦争とは本来ジェノサイドを目指すものではなく、できる限りインフラや人命を残しつつ、最小限の被害で統治機構の破壊を目的とする外交手段である
→戦争は政治(外交)の一形態だってことをよくわかってるね
本書は社会学の脆弱性を前提として書かれていて好感が持てました。あと、「幸福」とは自分の手の届く範囲における相対的問題ということなんだろうなと思いました。そして、現在の幸福度のステージが低いほど幸福感が高い(今後のステージアップが期待できる)という著者の主張は、行動経済学のプロスペクト理論とも合致するような感じで興味深いものがありました。
ただ、日本の高度経済成長(ジャパン・アズ・ナンバーワン)が国家主導のもと達成されたという論には、はなはだ違和感を覚える(少なくとも、産業政策に関しては、国家主導が無策だったっていうのは世界のコンセンサスだと思う)。
それから、最後に佐藤健との対談は、プロモーションの一貫にしかみえず、はっきり言って蛇足以外のなにものでもないと思いました。
まあ、総じて面白い読み物と思った二流大出のなんちゃって研究員でした。
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