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2013年11月17日日曜日

続・有機化学者による有機化学者のため(?)の恋愛小説

一応、お仕事=有機合成化学のコンキチです。

突然ですが、喜多喜久さんの「恋する創薬研究室」を読了しました。

この物語の舞台は、帝國薬科大学という架空の大学の創薬研究室。主人公は、そこで超高活性抗インフルエンザ薬の創薬プロジェクトに参加している不器用な有機合成系実験女子(M2)です。で、この女子と同研究室に所属する助教男子との(まずあり得ない)恋模様を中心に物語が展開していきます。

ミステリのお題は、一応「密室」と「犯人当て」。全体的なストーリーは、ライトミステリ+ケミストリー+ラブコメで、読んでいて恥ずかしくなる文章、一般人(非化学クラスタ)にちゃんと伝わってるのか?と思われる専門用語、分かり易すぎるトリック(もどき)、少女マンガタッチのストーリー(本の表紙も'80年代のりぼんやマーガレットに出てきそうな絵だ)は、まさに喜多喜久の真骨頂の発露と言えると思います。オタッキー心をギュギュっと鷲掴みです。

ネタバレになると思うけど、この作品は「十角館の殺人」(綾辻行人)、「Another」(綾辻行人)、「アクロイド殺し」(クリスティー)から着想を得ているに違いないとボクは見ています。

あと、TLC、NMR、LC-MSなどに加えて、本作ではLAHまで登場してなかなかのマニアックぶりです。これは化学クラスタにはたまらない感じです。

以上まとめると、この本は「有機合成化学系オタッキー」をターゲッティングしていると思いました。

しかしながら、この作品のレベルは、ケミストリー三部作や桐島統子教授に較べると大分落ちると思います。理由はファンタジーやメタサイエンスというぶっとんだ要素が欠如していることに加えて、ミステリとしての質がちょっとイマイチ過ぎるからです。ボク的には、ラブコメをメインに据えて、ケミストリーとファンタジー(or メタサイエンス)で味付けして、ミステリ色は匂わす程度の隠し味的要素としてつかうのが喜多作品ではベストと思いました。

喜多喜久さんには、ライトミステリ+ケミストリー+ラブコメ+ファンタジー (or メタサイエンス)のシナジーで頑張って欲しいなと思う、二流大出のテクニシャン(実験補助員)の生意気な独り言でした(東大卒の喜多先生に生意気言ってすみません)

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