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2015年7月27日月曜日

カップリングでニトリルつっこんでみました (Buchwald Group)

昨夏、泥鰌を喰いに行ったときのメモです↓

-両国どぜう 桔梗家 memo-

-丸鍋 (1,200 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
淡白な身。一口で全てをたいらげられる醍醐味。味付けは甘いんだけど、くどい甘さではない。濃いめの味付けと思うが、淡白な泥鰌にマッチしている(白い御飯にも良く合う)。葱を大量に鍋に入れるんだけど、この葱がBest Match!
白い御飯の上に、泥鰌と葱を載せて食べ進める醍醐味の凄さ。感動が迸る。泥鰌は既に柔らかくなっていて、葱がしんなりしてきたら食べごろ。どういて泥鰌はこんなにも可愛らしいんだろうかと思いました。

-御飯 (200 JPY)-

-どぜう汁(丸) (200 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
上品な味噌仕立てで旨い。泥鰌が顔が見えると、思わず笑みが溢れてしまう。

-ビール 大 (黒ラベル) (600 JPY)-

-鯉のあらい (800 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
酢みそとワサビ醤油のどちらかを選ぶ(ワサビ醤油をセレクトした。ちなみに、ワサビは粉ワサビ)。鯉は初めて食べたんだけど、少し乾いたような感じでちょっと硬めのしっかりした身。少しだけ"肉"を想起させる食感(といっても"魚"感が圧倒的だけど)。歯応えは十分で、口の中でハラハラとばらけていく。淡白ながらも、力強さを感じる味。finishのearthyな味わいが特徴的。
総じて、面白い味。ワサビ醤油より酢みその方が合うような気がした。人魚の肉ってこんな感じなのかな?と言う気持ちが心をよぎる一品。


閑話休題


ちょっと古いけど、こんな文献を読んでみました↓

A General, Practical Palladium-Catalyzed Cyanation of (Hetero)Aryl Chlorides and Bromides
Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 10035-10039.

Buchwaldのグループの報告で、彼らの開発した第3世代パラダサイクルを使ってクロスカップリングでニトリルを導入してベンゾニトリルを合成する話です。

ベンゾニトリルの古典的な合成法としは、Sandmyer反応やRosenmund-von Braun反応がありますが、大過剰のCuCNが必要であったりと、まあ問題があります。

Rosenmund-von Braun Reaction

(Sandmyer反応は多分に注意を要するジアゾ化を介し、Rosenmund-von Braun反応は(多分)適用基質は主にヨウ化物で高温を要する)

あと、比較的最近、Buchwald等はRosenmund-von Braun反応のimprovementを報告しています↓
Ar-Br: 9 examples, 70-98% Yield
Het-Br: 6 examples, 74-95% Yield
J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 2890-2891.

このimprovementは、ハロゲン交換-シアノ化のドミノ反応で、反応条件は銅の使用を触媒量に抑えており、従来のRosenmund-von Braun反応と比較して非常にマイルドなもので、官能基許容性が高いです(フリーのO-H, N-Hがあってもオッケー)。NaCNは使用しなければならないものの、サンプルワークレベルではかなりイケてる方法と思います。それでも、Buchwald曰く"still have limitations"だそうです(具体的には言及してなかった気がする)。

ところで、パラジウムが触媒するシアノ化の最初の例は1973年(Takagi et al., Chem. Lett., 1973, 471-474.)で、画期的な進歩ではあったが再現性に問題があったようです(要はメチャメチャ堅牢でない=脆弱)。そもそも、シアニドが触媒毒であることが問題で、シアニドの触媒毒としての作用を低減するための手法が開発されてきました。例えば、

a) 還元剤の添加 (Tetrahedron Lett., 2000, 41, 3271-3273.; シアニドソースにはZn(CN)2を使用)
b) NaCN, KCN, Zn(CN)2の有機溶媒に対する溶解度の低さを利用する

といったものが。

しかしながら、NaCN法は厳格な禁水条件が必要で、さらにMCN (M=Na or K)を使用する場合は、溶解性と再現性を担保するために磨り潰してからの使用が求められたりします。Zn(CN)2はこの種の反応で官能基化された基質に対して最も広く用いられているシアニドソースで、その毒性はNaCNやKCNのおよそ10%程度の毒性だといいます。それでも毒性はあるわけで、より毒性の低いシアニドソースを用いたアプリケーションが求められていると言います。

で、登場した無害シアニドソースがK4[Fe(CN)6](無毒の食品添加物)です。K4[Fe(CN)6]をシアニドソースに使ったアプリケーションには次のようなものがあります。

(1) Beller and Weissman
aqueous二相系。PTC存在下、140˚C以上の反応温度が必要(Eur. J. Org. Chem., 2008, 3524-3528.; Tetrahedron Lett., 2008, 49, 4693-4694.)

(2) Huang and Kwong
1:1 organic/aqueous 混合溶媒を使用し、マイルドな条件でシアニドトランスファーを実現する。適用基質に制限があり、5員環のヘテロサイクルを基質に用いた例は殆ど無し(Catal. Lett., 2010, 139, 56-50.; Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49, 8918-8922.; Org. Lett., 2011, 13, 648-651.; Tetrahedron Lett., 2011, 52, 7038-7041.)。

(3) 田辺三菱製薬 (Org. Proces Res. Dev., 2014, 18, 693-698.)
Pd(OAc)2, P(o-tol)3, Na2CO3, DMAc-toluene, 135˚C。医薬品のプロセス開発。基質一般性は不明。最近の報告なので、本報に記載なし。
see http://researcher-station.blogspot.jp/2014/11/blog-post_25.html

無毒なK4[Fe(CN)6]をシアニドソースに使用した反応は魅力的ですが、それでも、そこそこの高温が必要だったり、汎用性に乏しかったりといった問題が解決されていないようです。

そこで、This Workですが、Buchwaldらは次に挙げるさらなるimprovementの実現に注力します。

1) 中程度から低い触媒添加量でAr-Clへの適用
2) 広範囲なHet-Xへの適用。NH基を有する5員環ヘテロサイクルへの適用。
3) 反応温度100˚C以下で、1 hr以内に反応完結。

これらの課題を解決するために鋭意検討(スクリーニング)した結果、次のschemeで示されるソリューションが見出されました。


第三世代パラダサイクルと幾つかの嵩高い配位子との組み合わせで、優れた基質一般性を実現いています。



あと、Buchwaldらは触媒サイクルにおけるtransmetalationステップについてこんな検討しています↓

この結果から、K4[Fe(CN)6]の鉄中心からのシアニドの解離には熱が必要なことが示唆されます(つまり、K4[Fe(CN)6]はKCNなどより活性が低い)。

Ar-Clとも余裕で反応する活性の高さ、無毒のK4[Fe(CN)6]を使用しつつ反応温度をそこそこリーズナブルに抑えているあたり、短い反応時間、基質一般性の高さと、本報で提示された手法は非常に魅力的と思います。著者等が、"General"、"Practical"と銘打つ気持ちは分かりますが、まあ、後はPrecatalystの値段が問題かなと思う二流大出のなんちゃってテクニシャン(研究補助員)のメモでした。


2015年7月26日日曜日

BEER FEST 2015

一昨日(金曜)、駒形どぜうで軽く腹ごしらえした後、筑波に向かい、今回で4回目を迎えるTSUKUBA CRAFT BEER FEST 2015でクラフト•ビールを腹一杯呑んできました。そのメモです。

駒形どぜうで喰ったのは、どぜうなべ (1,750 JPY+Tax)、ご飯 (300 JPY+Tax)、ふり袖正一合 (700 JPY+Tax)。

まずはおサケが提供される。

-ふり袖正一合 memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
お店の人に、ぬる燗か常温がおすすめと言われ、ぬる燗でお願いする。心地よい酸味と果実実が広がり、なかなか良い。
徳利がカクカクした形で面白い。

程なくして、メインの丸鍋が炭火で熱せられて到着。もう既にけっこう煮込まれている。

-どぜうなべ memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
泥鰌は淡白でいながら、bodyが強く、最高に旨い。そして、とても可愛らしい食感。割下はかなり薄めの蕎麦汁ライクな味。鍋は終始炭火でグツグツ煮込まれている状態なので、干上がらないように適当に割下を継ぎ足しながら食べる。なので、当然、食べ始めと終盤では味の染み込み方が異なり、食べ終わり近くでは、割下が大分染み込み、味も濃くなっているが、嫌らしいくどいさを纏うことはなく、最後まで美味しく食べられる。
薬味は定番の葱の他に山椒と七味が用意されている。葱はしんなりとしてからでも良いが、freshな状態で食べても旨い。葱は薬味としてかなり強力な部類に入ると思うが、どんだけ掛けても泥鰌にはベストマッチ。山椒も試してみる。悪くはないが、素で喰うか、葱だけ載せて食べた方が旨い(と思う)。それから、葱は掛け放題なのが嬉しい。

暑い盛りに、炭火でグツグツいって熱量を帯びた泥鰌を肴に燗酒を煽る醍醐味は最高に気持ち良かったです。汗は沢山吹き出てくるけど、入れ込み座敷の開けた空間に居ると、なんか爽快な心持ちになって良いです。


こうして、適当に腹が満たされたところで、TX浅草駅まで散歩かたがた歩いて移動し、いざ、筑波へ向かいます。

TSUKUBA CRAFT BEER FESTの会場は、今年もつくばセンター広場(TXつくば駅から歩いてすぐ)。毎回思うんだけど、やっぱ筑波は人のトラフィックが少なく、のんびりした雰囲気で、FESTの運営も基本グダグダなので、肩に力が入ることなくビールを楽しめて良いと思います(運営はグダグダだけど、ビールの味は特級品だ)。

まず一杯目にセレクトしたのは、ボクの大好きなシャトーカミヤのビール↓

-Chateau Kamiya CHERRY BLOSSOMS YEAST BEER (Large 500 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
シャトーカミヤの桜の花から採取した酵母を使って醸造したビール(流行の花酵母ですか?)。
Citrus noteが特徴的。fresh, fruity。爽やかかつ華やかで軽やかな味わい。心地よい爽快感とまろやかな口当たり。
Alc. 7%。

ビールのあてには筑波ハムの山賊焼き (500 JPY)を合わせてみました(筑波ハムの出店は昨年(だけ)なかったみたいだけど、今年は復活していて良かったです)。

二杯目は、大好きなスタウトスタイルのビール。

-Iwate kura Beer Oyster Stout (Medium 500 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
牡蠣の身と殻を使用した濃厚な黒ビール。
味噌ライクな香り、甘い香り。earthyなtasteがたまらない。high roatで、それに由来していそうな酸味とsweetness、滑らかで穏やかに超絶濃厚bodyが最高に美味しい。黒部氷筍ビールに似ていると思った。
Alc. 7.0%。

この黒ビールを呑んでいる最中に、突然の豪雨に見舞われ、一時雨宿りのために避難。


猛烈な雨量で、ちょっと焦ったね。まあ、ご愛嬌ですよ。


そうこうしている内に雨も上がり、気を取り直して三杯目もいわて蔵ビールから、

-Iwate kura Beer Japanese Spice Ale SANSYO (Medium 500 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
山椒の実エール。
山椒フレーバーが効いたfresh, citrus, fruityなビール。実際、リアルに山椒が使用されている(昨年のFESTで呑んだBLUE MAGIC SPECIALの山椒シトラスIPAは山椒不使用で山椒風味を演出したビール。それとの対比が面白い see http://researcher-station.blogspot.jp/2015/01/craftbeer-fest-2014.html)。
山椒の爽やかな部分(清涼感)が良く出ていて、最高にスカッとする。香りがとっても素晴らしい。Alc. 5.0%。

この辺から大分酔いが回ってきたけど、四杯目。

-Tokorozawa Beer The Dark Horse (Large 500 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ブラックIPAスタイル。
なんとも言えない複雑で楽しい甘い香りはsweet cake-like。心が浮き立つ。tasteはsweet, roast, bitterと申し分ないfull bodyで文句無しに旨い。
説明書きによると、「パッションフルールのアロマ」ということだけど、パッションフルーツってこんな匂いなのか?(今度試してみたい)
Alc. 5.0%。

四杯もビール呑んで腹一杯になったので、もう帰ろうかと家路に足を向けた瞬間、目に飛び込んできた「古代米」の文字に心奪われ、最後に泣きの五杯目↓

-Aqula Beer Wild Rice Amber Ale (Small 300 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
古代米アンバー。American Amber Aleスタイル。古代米を使ったビールで、古代米の色だけでボディカラーを決めているという一品(カラメル麦芽不使用)。
もう大分酔っぱらっていたので自信はないけど、玄妙で深みのある良い香りは秀逸。コクがあって、まろやかで、爽快感があるビールに仕上がっていると思いました。
Alc. 4.5%。


いやぁー、泥鰌と日本酒とクラフト•ビールって本当にいいものですね。
人生が豊かになりますよ。

ビバ、クラフト•ビール!!!




2015年7月8日水曜日

財政破綻と住宅ローン

去年行ったラーメン屋のメモです↓

-ラーメン吉田屋 ラーメン (680 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
豚骨醤油だろうか?スープはoily, creamyのあっさり系。塩味は十分。スープの表面に油が浮いている。
麺は中太の縮れ麺。歯切れ、弾力、味良し。啜るとoil coatされたようなスープとマッチしている。
具は、海苔、ホウレン草、焼豚。焼豚(といっても煮豚だろうが)が凄く柔らかい。この柔らかさは少し感動的。
オーダー時に、麺の固さ、味の濃さ、脂の量の好みに対応してもらえる(今回は全て"普通"でオーダー)。


閑話休題


ギリシャの国民投票で財政緊縮策が受入れ拒否されましたね。しかも、けっこうな大差で。先月末は預金封鎖チックなことが起こったりとワクワクしてしまいます。ホントにデフォルトしちゃうのか?ボク的には、日本国債のデフォルトも他人事ではないと感じているので、ギリシャのデフォルト後の世界はちょっと興味津々です。

とりあえず「(ギリシャの)民主主義とは借金を踏み倒すことと見つけたり」なんて思いました。

デフォルトと言えば、日本の(実質的)財政破綻を謳った書籍はもう随分前から多数刊行されていて、ちょっとオオカミ少年的感がありますが、だからと言って、我が国の国家財政は安泰だなんて考えるのはおバカさんの発想と思います。

だって、

日本の人口動態(人口)予測
2010年から減少
2030年   1億1500万人 (65歳以上老年人口比率 31.8%)
2050年   9500万人 (65歳以上老年人口比率 39.6%)

日本の借金(国と地方の債務合計)
1994年   450兆円
2000年   700兆円
現在   1000兆円超

らしいじゃないですか(橘玲著「臆病者のための億万長者入門」に書いてあった)。

要は、日本は税収の源泉である就労人口が激減していて、社会保障費を使いまくる老人が増加しているのに、借金は増えまくっていて(年間50兆円のペースで増加)、減る気配がない。まともな脳ミソのある人間なら"日本の借金は増えることはあっても減ることはない"と考えるはず。国債の国内消化余力も底が見えはじめていると言われてる今日この頃、日本国債のデフォルト回避には恒常的な財政ファイナンスしかねんじゃね?って思うのはボクだけでしょうか?(素人考えだけど、継続的財政ファイナンスは通貨の信用を毀損し、高インフレを誘起して、実質的デフォルトと大差ないような気がします)。

因に、2014年3月末の家計、民間企業、一般政府(中央政府、地方公共団体、社会保障基金)の資産と負債の額はこんな感じらしいです↓

家計の金融資産額/ 1,630兆円
家計の負債額/ 368兆円
----------------------------------------
民間企業の金融資産/ 942兆円
民間企業の負債/ 1,274兆円
民間企業の現金•預金/ 232兆円
民間企業の借入金/ 342兆円
----------------------------------------
一般政府の負債/ 1,158兆円
一般政府の資産/ 534兆円

一般政府は負債額1,158兆円に対して534兆円の資産を保有しているといいますが、インフラや年金なんかも計上してあるはずだし、取り崩してさしつかえない資産をどれくらい現金化できるのかを考えると、ちょっぴり暗澹な心持ちになります。

そもそも、借金の清算なんていうのは額が小さいうちにやっちゃうのが圧倒的に楽チンなわけで、今までそれが出来なかったのにこれから出来るなんて到底思えません。むしろ、借金激増してるし。

と、ここまで前振って、土地真理教に洗脳されている日本人が最も大好きな借金であるザ•住宅ローンについて考えてみましょう(ボクも十数年前は洗脳されていて、住宅ローンを組んでしまいました。とても後悔しています)。

住宅ローンには変動金利と固定金利がありますが、(実質的)財政破綻して高インフレになれば変動金利利用者は、支払い利息の上昇によってけっこう厳しい状況に陥るはずです。スーパーカッツカッツで変動金利で借入していたら、瞬殺される可能性が高いと思います。

でも固定金利だったら、常識的に考えれば、支払額が全期間に渡ってコンプリートに決まっていて債務者にとってリスク(不確実性)ゼロだから、インフレで通貨価値が減価すれば実質的借金(元本と利息)負担は減少してウハウハになるはずです。しかしながら、「国債パニック」を読んで、軽く残念な気持ちになりました。 

だって、民間の固定金利という契約は、大幅なインフレが起こった際には、反古にされる可能性があるって書いてあるじゃないですか。なんでも、融資契約書にはそういう意味のことが、そっと書かれているはずらしいです(真剣、恐ェェェェェー)。

因に、ボクは御上(国家権力様)の息の掛かった住宅金融支援機構のフラット35(厳密にはフラット20)を利用しています。で、「国債パニック」の著者(逢沢明)曰く、ハイパーインフレになってもフラット35は(民間金融機関の固定金利のローンにみられる特別条項的なものは記載されていないようなので)契約した金利が履行される可能性が民間固定金利ローンよりもかなり高いそうです。"可能性が高い"というのは、要は、機構は国交省と財務省が所管する独立行政法人なので、国家権力様の高度な(?)政治判断によっては固定金利でも金利が操作されるとかされないとか.....

ところで、自分で借りといて知らなかったんだけど、「国債パニック」ではフラット35の仕組みが次のように簡単に説明されていています。

1st 債権は取扱金融機関から住宅金融支援機構へ譲渡される
2nd 機構が債権を信託銀行などに信託する
3rd 機構は信託した住宅ローンを担保とする不動産担保証券を発行(証券化)し、投資家に販売される

ちなみに、不動産担保証券を購入する市中の投資家とは金融機関や機関投資家がほとんどだそうです。で、信用リスクは機構が負い、期限前償還リスクは投資家が負うという仕組みになっているそうです。取扱金融機関はリスクフリーで手数料を稼ぐってことでしょうか(証券会社みたいだな)。

以上、まとめると、

(1) 民間金融機関(要は銀行)から長期固定で住宅ローン借りたから、ハイパーインフレになれば借金チャラになるぜっ、ハハハハハァていう考えは危険

(2) フラット35だと、ハイパーインフレで勝ち逃げできる可能性がある

(3) 国家権力様はフラット35の契約を反古にする可能性がある(戦後の農地改革でオレの実家は没落した)

こんなところでしょうか?


マイナンバー(国民総背番号制)の導入や国外財産調書制度は国家財政破綻対策なんじゃないかと勘繰っている二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

2015年7月5日日曜日

メタルフリーで、2˚, 3˚アミドのカルボニルをテゥルンテゥルンにします

去年の夏に穴子を喰いにいったときのメモです↓

-あな太郎 memo-

-お通し-
-REVIEW-
赤身と冷奴。
赤身は3枚の小片で、口の中でほろほろとほろけていく。
冷奴は梅和えで旨い。刺身の薬味には、山葵と万能ねぎがつく。

-あなご刺身 (1,000 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
淡白で、噛むほどにやんわりと脂が染出てくる。鰻(刺身)や河豚に似た弾力がある。少し野趣的なところのある香味が口の中に広がる。薬味に、山葵と万能ねぎがつく。

-あなご白焼き (1,180 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ロースターで焼いた後、表面をバーナーで炙ってから提供される。淡白で締まった身に焼いた香ばしさが映えて旨い。温もりのあるうちに食べるのがgood!薬味の山葵と良く合う。レモンも添えられていたが、レモン汁は強すぎると思う。

-西の関 花 (550 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
冷蔵庫で冷やされていたものを饗される。鼻につき過ぎない程度にいかにも日本酒といった感じのアルコールの立ち上がりがある。強い甘みが印象的。甘ったるい甘さではなく、嫌みの無い甘さ(ひこ孫の甘みを強烈にした感じ?)。それでいて、middleまで穏やかな味で、finishにいかにも日本酒的なキックを感じる。はっきり言って、面白い味。

それにつけても、やっぱり穴子は白焼きが最高に旨いなと思いました。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Metal-Free Reduction of Secondary and Tertiary N-Phenyl Amides by Tris(pentafluorophenyl)boron-Catalyzed Hydrosilylation
J. Org. Chem., 2014, 79, 7728-7733.

アミドをメタルフリーで触媒的にヒドロシリル化-加水分解して、アミンを合成する話です。で、気になる触媒はこちら↓


Tris(pentafluorophenyl)boron

です(オレも15年くらい前に使ったことある)。

「アミド→アミン」というトランスフォーメーションですぐ思いつく古典的な合成法は金属ヒドリド還元ですが、最早お約束の領域ですが、化学両論量の試薬が必要なことに加えて、概して選択性に乏しく、副生成物を与えたりして精製が難しくなったりします。

それから、接触還元は極めて稀で、制限が多いようです。最近の例としては↓

(a) ruthenium-triphos catalyst (Magro et al.)
高温(164˚C)、比較的高圧(40 bar) (Chem. Commun., 2007, 3154-3156.)
or
10 bar, 高温(200˚C) (Chem. Eur. J., 2013, 19, 11039-11050.)
が必要

(b) bimetallic Pt-Re触媒 (Burch et al.)
120˚C, 20 barが必要。基質一般性についてあまり探索されていない。
(J. Catal., 2011, 283, 89-97.)

(c) Pd/Re/graphite触媒 (Stein and Breit)
一般性があり、高収率(34 examples, >90% Yield)。幾分高い圧力が必要(160˚C, 30 bar)。
(Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 2231-2234.)

これらの反応は官能基許容性に乏しいです。そういった問題点があるためか、最近、触媒的ヒドロシリル化によるアミドの還元が注目されているそうです。

最近の報告例としては↓

i) 遷移金属の例
Rh, Mn, Ru, Os, Ir, Pt, Pd, Re, Fe, Inといった金属触媒を用いた報告があるようですが、それらの多くは高価で、反応条件は高温を要するので熱に弱い基質には適用しがたいものがあります。

ii) Zn(OAc)2, Zn(OTf)2 (Beller et al. Chem.- Eur. J.201117, 12186-12192.) 

20 examples中、18 substratesで50-93% Yield。アミド結合の窒素の置換基が嵩高い基質2例は<1% Yield。窒素周りの立体障害に弱い感じ。アニリドはno reactionで、メチルチオ基とケトンは適用不可です(ケトンは還元される)。ハロゲンはオッケーで、アルコール性水酸基もオッケー(これは注目に値するらしいです)。

21 examples, 50-86% Yield
sec-アミドの還元はtert-アミドの還元よりも難しいことが良く知られているそうで(ヘェー、やっぱ活性水素あるからですか?)、Beller等はZn(OTf)2とTMDS(tetramethyldisiloxane)の組み合わせでsec-アミドの還元を成功さえました(Zn(OAc)2とTMDSのコンビネーションではダメ)。Zn(OTf)2-TMDS systemの特徴としては、
a) 電子的効果は小さい
b) アミド結合周りの両サイドの立体の混み具合が収率に大きな影響を与える
c) 置換ベンジルアミンもオッケー。ハロゲンの還元も起こらない。
d) ケトンとフリーのアミンにはダメ(ケトンが還元される)
といった感じです。この手法は、過去の研究における制約の殆どを克服しているらしいです。

Zn(OAc)2-(EtO)2SiMeH system、Zn(OTf)2-TMDS systemともに官能基許容性が高く、


あと、既にメタルフリーの報告もあります↓

iii) Tf2O-Hantzsch ester system (Charette et al.)


J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 18-19.

この反応もアミドの置換基(どっち側でも)が嵩高くなると収率が低下しますが、ケトンがあっても大丈夫です(他官能基許容性は、エステル、α,β-不飽和エステル、ニトリル、エポキシド、アルキン、エーテルがオッケー)。

このTf2O-HEH systemをsec-アミドの還元に適用するとsluggishな感じになるので、sec-アミド向けにimprovementしたのがこちら(tandem Et3SiH/HEH reduction)↓

14 examples, 71-90% Yield
J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 12817-12819.

窒素原子周りが嵩高くてもけっこうイケイケな感じです。官能基許容性が高く、ニトリル、ニトロ、アジド、エステル、tert-アミド、α,β-不飽和エステル、アルキンがあってもオッケー。

また、HEHによる二段階目の還元を行わずにworkupすることで、イミンやアルデヒドを合成することもできます。
17 examples
•quenched in basic conditions → imine: 65-99%
•crude mixture is hydrolyzed in the presence of aqueous buffer of citric acid and THF → aldehyde: 64-96%

Tf2O-HEH systemのデメリットとしては、高価なcofactor、極めて反応性の高いTf2O使用、極低温条件が挙げられています。


さて、Previous Worksの話はこのくらいにして、本題のThis Workです↓


発端は合成スキーム記載の化合物の合成で、はじめはコンベンショナルな金属ヒドリド還元等を試みましたが、
a) LAH→脱ハロゲン化が速やかに進行
b) DIBAL-H→X=Brで50% Yield。X=Iだと脱ハロゲン化が起こる
c) AlH3 (in situ generated)→二重結合が還元される
d) Zn(OAc)2-TMDS→高温が必要だけど有効。ca. 80% Yieldも副生する脱ハロゲン体の分離精製が困難

Zn(OAc)2-TMDS systemでけっこう収率が良かったからか、著者等はより強力なLewis酸であるB(C6F6)3に着目します。因に、B(C6F6)3が触媒するアミドのhydrosilylative reductionが1報だけ報告されていますが、アミドの還元(成功)例は3例だけだったり、ベンズアミドには不活性だったりと、十分に探索•最適化されていませんでした(エナミン、エノン、イソシアネート、エノールエーテルの還元にも適用している)。


Tetrahedron Lett., 2009, 50, 4912-4915.

で、著者等はB(C6F6)3-TMDS systemでアミドの還元の最適条件をなんやかんやと探索•設定し、基質一般性を検討します。


反応速度の違いは(生成する)amine-B(C6F6)3錯体の結合の強さに依存すると考えられます。こんな感じに↓
aN-フェニルアミンは塩基性は脂肪族アミンに較べてが極めて弱いので、弱い結合の錯体の形成が期待される=反応が速い
b) tert-アミンはより塩基性が強いが、水素結合を形成するためのNHが無い=だから反応が進行する
c) secondary N-allylアミンは、B(C6F6)3のフッ素原子と二股に分かれた水素結合を形成する=強い結合の錯体を形成=反応が止まる

最後に著者等は主張するウリは↓
1) マイルドな還元
2) 定量的に近い収率(反応が進行する基質はおおむね)
3) 精製が容易(普通のクトマトで過剰のTMDS、反応したTMDSのカス、ボロン触媒で除去できる)
4) 反応温度が低温
5) 短い反応時間
6) 官能基許容性の高さ(アルケン、ニトロ基、アリールハライドが許容)
です。

基質に大分制限があるけど、はまれば面白そうな反応と思いました。
でも、特に問題となる官能基がないんだったら、"BH3-THF錯体でよくね?"って思うボクは悪い人間でしょうか?
以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。