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2016年5月4日水曜日

外食産業の憂鬱 (2): それはソバなのか?

人形町で食べた天丼のメモです↓

-天ぷら 中山 天丼 (1,100 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
沢庵と蜆の味噌汁付きです。
天丼は黒くて、硬派な醤油flavorが特徴的。今まで食べたことのある天丼のタレと較べて、相当辛いです(でも旨い。蕎麦の例えると並木の薮のツユのようだ)。
タネは海老×2、キス、穴子、茄子。
アツアツのご飯の上に揚げたてでアツアツの天ぷら、この醍醐味は、北の国からの五郎さんばりに「堪らない」。
海老はプリップリで、キスはホクホク。穴子はキスより濃い味でしなやかな食感かつホクホクしている。キスと穴子は、その淡白な味にやや荒々しくて無骨で硬派な味のタレがベストマッチ。さらに、このタレとご飯の相性が抜群でとても旨い。やっぱ、甘めのタレより辛めのタレの方がご飯に合うよね
丼の中に小宇宙を感いる一品でした。
あと、沢庵のひなびた味が郷愁を誘って良かったです。また食べに行きたい。


閑話休題


「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。」という本のメモの続きです。

(いるかどうか知らないけど、このブログの愛読者ならご存知の通り)お蕎麦大好きコンキチです。

ということで、今回のお題は「蕎麦」です。
蕎麦はもっぱら食べ歩くのが好きだけど、家でも乾麺を茹でていただきます。家で蕎麦を食する場合、乾麺も蕎麦つゆも銘柄は決まっています。あんまり教えたくないけど、乾麺は、おびなたの「蕎麦通のそば」か「更科八割そば 」、つゆは上野藪そば総本店プロデュースの「上野藪そばつゆ」を使っています。いまこところ、このコンビナーションがボクの中のベストです。ボク的にはこのコンビネーションでゆで太郎の100億倍は旨いです。
(「上野藪そばつゆ」は近場のスーパーで売っていないので、切らしてしまったときは、ヤマサの「江戸蕎麦芝大門更級直伝せいろつゆ」を使ってます。あと「竹やぶのつゆ」もいいんだけど、ちょっと高いんだよね。)


ところで、スーパーなどでお蕎麦(乾麺)を選んでいると、"蕎麦"として売られているのに、蕎麦粉よりも小麦粉リッチな"ソバ"が散見されます。っていうか、【蕎麦粉>小麦粉】な商品はむしろレアです。
では、何故【小麦粉>蕎麦粉】な商品が大手を振って店頭に並んでいるかというと、そばの乾麺はそば粉が最低3割入っていればいいからです(法律で決まっている)。
ボク的には蕎麦粉よりも小麦粉の方が多い代物がそばと称して売られていることが不愉快でしかたがありませんが、これはまだマシなほうです。というのも、立ち食いそばの場合は、消費者(顧客)がそば粉の含有率を確認する術はなく、そば粉の含有率が1割、2割は当たり前だというのです(JAS法等の法律には抵触しない)。ついでに、リン酸塩を加えると舌触りがツルツルするそうです。
さらにもう一つ、国内で流通しているそば粉の8割は中国やアメリカ産だと言います。

そいいえば、以前、あの柏竹やぶの阿部孝雄氏が書いた「竹やぶの蕎麦」を読んだんだけど、平成の世になってそば粉は8割強が輸入で、国産は輸入の4.5倍の値段だといいます(多分、平均してだと思う)。そして、寒暖の差のある高地でとれたうまいそば粉は2%程度しかないと。平成9年当時、そば粉一俵(45 kg)が(ピンからキリまでで)3千円から12万円までの価格帯を形成していたそうです。これは、IKKOばりに

どんだけぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜

っていう感じです(だって40倍だせ)。小麦粉ミックスすると、原価差は異次元級ですよ。さらに、ツユに対する投資を考えると、旨い老舗系とコスト•カット&薄利多売系チェーン店との原価差は銀河系スケールでしょう(笑)

まぁ、笑い事ではないんですけど、このことは日本の食の質が劣化している証左と思います(お蕎麦だけじゃないけど)。

ついでに書かせてもらうけど、「三たて(挽きたて、打ちたて、ゆでたて)」が金科玉条のように絶対的に旨いんだとアピールしているコスト•カット&薄利多売系(チェーン)店もあるようですが、阿部氏は「三たて」はつきつめると(必ずしも)うまくないと宣います。一言で言うと個体差ということになろうかと思いますが、もうちょっと詳しく書くとこんな感じかな↓

(1) 挽きたて
•粉の香りや味がバラバラになり、味がまとまらずちぐはぐになり、味がまとまらなくなる。
•前日に挽いてうまいものもあれば、1週間置くとうまいものもある。
•玄蕎麦も収穫したてのものより、3ヶ月くらい置いたものを挽いたほうがうまくなるそばもある。勿論、新鮮なうちに挽いたほうがうまい場合もある。

(2) 打ちたて
•打ちたてのそばをゆでるとき、釜の中に入れても沈まずに浮いてくる(こねたときに含まれた空気のせい?)。こういうそばを無理にゆでてもシャキッとしたつやのあるそばにならない。
•竹やぶでは、少なくとも冬場で30分以上、夏場でも20分以上は置く

(3) ゆでたて
•水で洗ってすぐに出すと、水がそばに多くからまって、そばの風味が半減する(水切れの問題)。
•生そばの場合、ゆでたあとアッと言う間にのびてしまうので、水が切れるか切れないかくらいのタイミングがベスト(と阿部さんは思っている)。


あと、グルメ蕎麦漫画「そばもん」でも、けっして間違いではないとしつつも、「三たて」の不完全性を指摘しています。漫画「そばもん」では、竹やぶの阿部氏とは見解がいささか異なります。以下、「そばもん」の見解です↓

(1) 挽きたて
問題なし。挽きたては香りもよく、作る側から言ってもよくつながり作りやすい(古い粉ほど扱いにくい)。

(2) 打ちたて
•打ちたてのそばは、まだ粉と水分がなじまず、空気も抜けていない→湯の中に潜ってくれない→つかっているのは半分だけ=空煮え=芯がありくちゃくちゃする
•切ってから時間が経ちすぎたそばは重くなり、釜の下に沈んでしまって浮いてこない。
•夏場なら30分、冬場で1時間はおいてから煮るのがちょうどいい。

(3) ゆでたて
•(当たり前だけど)水がちゃんと切れていないと、水っぽい。
•藪系の店は「茹でたて」を出すが、ちゃんとひと水切ってある。

さらに、「そばもん」によると、「三たて」は元々そば屋から出た言葉ではないそうで、田舎の習慣から生まれたと言います。
a) 農作業の後に振る舞われるそばを大勢で食べるときに、一度にみんな茹でるので、後に食べる人の分は、切れたり、くっついたり、団子になったりしてしまうので「茹でたてがよい」。
b) 粉も古いとつながらないから「挽きたてがよい」。
c) 麺にしてからあんまり放っておくと、ひびが割れたり、切れたりするから「打ちたてがよい」。
という牧歌的な戒めということらしいです。まあ、ちょっとしたドメスティックなヒューリスティクスですね。

大分話が脇道に逸れた感がありますが、要は、コスト•カット&薄利多売系チェーンが、そのソバに付加価値を付与するためには、消費者に情報を摂取させるしか術がないということです。

以前も書いたけど、いつものあれです↓

客はソバを食ってんじゃない!!
情報を食ってるんだ!

です。
see.
http://researcher-station.blogspot.jp/2009/08/blog-post_02.html
http://researcher-station.blogspot.jp/2013/06/b_19.html

cf.
http://researcher-station.blogspot.jp/2014/04/blog-post.html

ボクも情報ではなく、料理そのものを食べるように気をつけたいものです。
二流代出のテクニシャン(研究補助員)の外食メモは、まだつづきます.....


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