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2016年7月24日日曜日

アルデヒドからエステルへ

夏ですね。

千葉の渋谷こと柏Cityのお寿司屋さんに行ったときのメモです。

-福鮨 memo-

-上にぎり (1,600 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
赤身、(多分)中トロ(×2)、小肌、雲丹、穴子、蝦蛄、平目、烏賊、鮪をたたいた細巻き、伊達巻、お吸い物のセット。
蝦蛄は詰め、それ以外は(雲丹も含めて)煮切りでいただく。全てのお寿司で、ネタとシャリの一体感が抜群。シャリが口の中でハラハラとほどけていく。
赤身はしっとりとした舌触りで、心地よい酸味と濃蜜な旨味。
(多分)中トロは赤身よりも脂がのっていて(当たり前だけど)、柔らかい食感。余剰な脂感は一切感じず、とても上品な旨さ。
小肌は、topにお酢の香りがふんわり。口に含むとお酢の香味とともに小肌の香味が漂う。お酢の良い香りが立つ心地良い酸味と、赤ちゃんの様に可愛らしい小肌の食感と味わいには、咀嚼する度に笑みがこぼれる。
雲丹は軍艦ではない。シャリに山葵をつけて、その上の雲丹を優しく掬って載せる。久々に旨い雲丹を食べた(と思う。それから、オレにはこの雲丹の味わいを表現できるだけのボキャブラリーがない)。
穴子も旨い。ボク的に穴子は、白焼き、天ぷら、刺身以外は好まないんだけど、けっこう旨かった。柔らかく、ほっくりした食感。詰めではなく煮切りを塗っているためか、味も締まっていて良い。
蝦蛄は、蟹と海老を足して2で割ったような味。とても濃厚な味。好きなネタではないんだけど、なかなか旨かった。
平目は、程よくしっとり柔らかく、少しだけ脂が回っている感じか。とっても良い感じ。
烏賊がとても旨い。ネットリ感、淡白さ、味の濃さの全てが愛おしい。完成度の高い味わい。
細巻きは普通にとても旨かったです。細巻きっていいなって思いました。
お吸い物はm白身の魚を炙ったものが入ったお椀で、とても上品な味。白身の魚も旨し。
たった1,600円でこれだけのものが喰えるのは超絶お得と思いました。

-ばらちらし (1,300 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
具(ネタ)は、鮪、穴子、(白い)貝、烏賊、鱵、白身(鯛か?)が酢飯の上の配置よく盛りつけられていて、その頂点に伊達巻が鎮座し、おぼろが振りかけられている。
まず、伊達巻からいただく。まるで、良く出来たカステラのようで、そのフワフワした独特の食感が心をウキウキさせる。
魚介ネタはどれもそつがなくしっとりとした食感と穏やかな味で旨い。その中でも印象深かったのは、貝と白身。
貝は適度な弾力で噛み応えが心地良く、味はとても淡白。ほんのり香る貝っぽい香味に心くすぐられる。普段は好んで貝を食べないんだけど、これは良い。
白身は、しっとりとした吸い付くような食感と、何とも言えない淡白な味が旨い。
あと、山葵が旨い。辛味、香味ともに申し分なく、硬派な味でvery good!
それから、優しく薄く味付けされた干瓢がまぶされてるんだけど、これがとても嬉しい。
そして最も秀逸なのがご飯。米の粒が一つ一つ立っていて、そのふっくらした食感は何とも言えない。とてもマイルドな風味。はっきり言って、このご飯(酢飯)が一番旨い。
ちなみに、ネタには煮切りと詰め(穴子だけ)があらかじめ塗ってある。ボク的には、煮切りだけでは少し物足りなかったので、お醤油をちょっぴりつけて食べる。
穴子は個人的な嗜好から白焼き、刺身、天麩羅以外好きじゃないんだけど、ここの穴子は口の中に入れると瞬時に壊れてしまいそうな繊細な柔らかさで、嫌いではない。


店内は黒と白を基調としたシンプル&シックな造り。カウンターは豪快かつ洗練された造形。詰めは鮑を使っているとか。
また行きたいな。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Metal-Free Direct Oxidation of Aldehydes to Esters Using TCCA
Org. Lett., 2015, 17, 3666-3669.

エステルの合成法はというと、古典的なところではカルボン酸誘導体(酸塩化物、酸無水物、活性エステル)に対するアルコールの求核置換反応が挙げられますが、エレガントが代替法としてアルデヒドとアルコールの酸化的エステル化がある言います。アルデヒドとアルコールの酸化的エステル化は、中間体にヘミアセタールを経由し、ヘミアセタールを酸化することで達成されます(Chem.-Eur. J., 2008, 14, 6302.; Dalton Trans., 2014, 43, 13460.)。


で、このような合成法には、酸化剤にI2 (Tetrahedron, 2015, 51, 5915.)、Oxone (JOC, 1968, 33, 2525; OL2013, 5, 1031.)、PhI(OAc)2 (ARKIVOC, 2006, 162.)。NIS (ACIEE, 2008, 47, 9458.)、NaClO (TL, 1982, 23, 4647.; Synth. Commun., 1996, 26, 2633.)、pyridinium hydrobromide perbromide (Synlett, 2004, 2739.)、H2O2 (Green Chem., 2011, 13, 3350.)を用いるメタルフリーな方法が報告されていますが、多くの場合、立体障害や中間体のヘミアセタールの不安定性に悩まされ、メチルエステルの合成やより活性の高い芳香族アルデヒドの使用に限られます。

遷移金属(Rh, V, Pd, Au, Cu)を用いた(ヘミアセタール経由の)合成法も報告されていますが、化学両論量の試薬が必要であることに加えて、過酷でセンシティブな反応条件であるために基質一般性に制限があります。


近年、NHCを用いた合成法が報告されていますが、芳香族アルデヒドと脂肪族アルデヒドのどちらかにしか有効ではなく、1級アルコールとカップルングさせる場合は大過剰のアルコールが必要となります。
ref.
meta-free version: OL, 2008, 10, 4331.; JACS, 2010, 132, 1190.; JACS, 2012, 134, 12374.
transition-metal catalysis version: Adv. Synth. Catal., 2013, 355, 1098.

で、既報の問題点を挙ったところでThis Workです↓

29 examples, 60-95% Yield

立体障害やヘミアセタール形成を回避して、酸クロ経由でアルデヒドをエステルへと導きます。

因みに、アルデヒドから酸クロへと誘導する合成方は既にあります。例えば、
S2Cl2 (Ber. Dtsch. Chem. Ges., 1894, 27, 2540.)、 tert-pentyl hypochlorite (Gazz. Chem. Ital., 1936, 66, 639.)、tert-butyl hypochlorite (JOC, 1982, 47, 1360.)がありますが、文献が古すぎたり、力強く問題があったりします。This Workと同様にTCCAを用いた合成法も報告されていますが(Central Glass, EP Patent 2006274A1)、3,3,3-trifluoropropionyl chlorideを合成するための一手法という位置付けで、合成法も洗練されてはおらず、収率も低いです(しかも、エステルではなくカルボン酸が目的物でone-potでない)。

さて、This Workに戻りますが、この反応溶媒効果が顕著で、CH3CN、Et2O、CPME、THF、アセトン溶媒中ではアシルクロリドが生成しません(基質にベンズアルデヒドを用いて検証)。

基質一般性はこちら↓

芳香族、脂肪族、嵩高い基質でも万遍なくそこそこの収率で反応が進行します。しかもマイルドな条件で。さらに、キラルなアルコールを用いても申告なラセミ化は起こりません(SIにHPLC Chartが添付してあるんだけど、ピーク形状があまり良くないね)。

ただ、ファースト•ステップの酸クロ形成にrt., 5 daysを費やしているのはもうちょっと短縮出来ないのかなと思います(速く反応が進行する基質もあるのかもだけど、分からない)。それから、ジクロロメタンしか適用可能な溶媒がないのは哀しいけど、マイルドだし、試薬の使用量は良い線いってると思うので頑張って欲しい反応だなと思いました。

以上、二流大出のテクニシャンのメモでした。


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