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2018年1月28日日曜日

もっと、トリフェニルホスフィンオキシドを減らせ!

先日、日本橋のお多幸でランチしてきたときのメモです↓


-とうめし定食 (670 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
名物の"とうめし"、煮物 (おでん?)、大根サラダ、沢庵漬け、蜆の味噌汁、薬味の葱のセットの定食。
とうめしのご飯の上に載っているお豆腐は、ふわっふわで、甘じょっぱいツユで煮込まれていて味が良く沁みている。豆腐に厚みがあるので、中心部までは達しておらず、味のグラデーションが楽しめる。ご飯は薄めの茶飯(醤油で炊いているらしい)で、米粒がしっかり立っていて、かなり硬い。甘じょっぱいツユは硬めのご飯に合うと思うけどボクにはちょっと硬過ぎる。薬味の刻み葱がアクセントとして秀逸で、とうめしのシンプルな良さを損なうことなく、良いアクセントになっている。
煮物は、大根、煮玉子、牛すじ、こんにゃく、葱。何もしっかり味が沁み込んでいて色が黒いが、意外と穏やかな味で、普通に旨い。個人的には、こんにゃくと葱が特に旨いと思った。
沢庵は甘めの濃い味でボク好み。大根サラダはしゃっきりしていて、すっきり爽快。味噌汁は、まぁ普通(具の蜆は嬉しい)。
CP高く、とうめしのお豆腐は文句なしに旨いんだけど、ご飯の硬さだけが硬すぎてボクには合わなかった。
こういうのがこの値段(たった670 JPY)で社食にあったら、毎日食べたいね。


この"とうめし"っていう料理は基本もの凄くシンプルじゃないですか?なんとか自分好みにカスタマイズしつつ再現できないかと思い、やってみました↓

-オトコのとうめし-
-RATING- ★★★★☆
-RECIPE-
(1) 近所のスーパーで売っている地元のお豆腐屋さんの木綿豆腐一丁を4枚に切り分け、鍋に入れる。
(2) 「上野藪そばつゆ」を100 cc加える。
(3) 「人形町今半すき焼わりしたストレートタイプ」を100 cc加える。
(4) 火にかけて、煮立ったら弱火で10分間煮込む。
(5) キッチンペーパーをかけ、stood overnight。
(6) 翌日、一合炊きの羽釜でご飯を炊く(ヒトメボレ使用)。かめびしの薄口醤油小さじ1を加えて炊く(30分給水させた後、火にかける。強火で4-5分で沸騰する。沸騰したら蓋をして最弱の弱火で8分。炊き上がったら20分蒸らす。)
(7) 葱を適量刻んでおく。
(8) お豆腐の鍋を火にかけて、温め直す。
(9) 茶飯を茶碗によそって、お豆腐を載せ、ツユを適量掛け、topに刻み葱を適量載せて出来上がり。
-REVIEW-
ご飯はボク好みのちょい硬め。はっきり言って、味はかなりいい線いってると思います。個人的な感想としては、お豆腐と調味料はいいものを使うのがキモと思いました(上野藪と今半のツユ使ってまずいわけないです)。


閑話休題


以前、「トリフェニルホスフィンオキシドを減らせ」と題したお話をメモしましたが(see http://researcher-station.blogspot.jp/2013/08/blog-post_25.html)、その時に読んだ文献を凌駕する勢いの文献が出たので、そのメモです。

「たゆたえども沈まず」さんでも取り上げていましたが、こんな文献を読んでみました↓

Removal of Triphenylphosphine Oxide by Precipitation with Zinc Chloride in Polar Solvent
J. Org. Chem., 2017, 82, 9931-9936.

Wittig反応や光延反応などで副生するトリフェニルホスフィンオキシド (TPPO)をカラムクロマトすることなしに効率的に除去するというお話で、"永遠のテーマ"感満点のお話です。

TPPOの除去法は"永遠のテーマ"感たっぷりなだけあって、これまでにもワークアップ過程でTPPOを除去する試みが報告されています。例えば、

a) Modified Merrifield Resin (Lipshutz et al. Org. Lett., 2001, 3, 1869-1871.)
Merrifield ResinとNaI用いた除去方法。TPPOだけでなくTPPの除去にも有効。Stilleカップリング、根岸カップリング、鈴木カップリング、熊田・玉尾・コリューカップリングで配位子に用いたTPPを除去できる。Staudinger反応後の過剰のTPPとTPPOの除去もできる。官能基許容性に優れ(アミンやアルコールがあっても大丈夫)、単離収率に影響を及ぼさない。

b) オキサリルクロリドでワークアップ (Gilheany et al. Org. Biomol.Chem., 2012, 10, 3531-3537.)

Wittig反応とAppel反応について実施例が示されています。TPPOとオキサリルクロリドがシクロヘキサンに難溶性のクロロトリフェニルホスホニウムクロリドを与えることを利用したワークアップ法です。
あとWittig反応に関してですが、この処理はオレフィンのE:Z ratioに影響を及ぼさないことに加えて、原料のアルデヒドは概してシクロヘキサン層に溶解しないことから、残存したアルデヒドの除去にも効果を発揮します。

c) 高結晶性TPPO錯体の形成 (Margaret et al. J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, 639-640.)
酸性プロトンをもつ化合物とTPPOが結晶性の高い錯体を形成すること利用してろ別するという狙いと思います(この論文はTPPOと酸性プロトンを持つ有機化合物が錯体を形成して結晶性の高い大きな結晶になりますよという話で、反応系からのTPPO除去が目的ではないです)。この文献では以下の化合物がTPPOとの錯体を形成すると報告されています。
共結晶の作り方は、トルエンに溶かして室温でゆっくりエバポするというものです(トルエンに溶けない場合は、THF aq.からエバポ)。

d) AcOHを使ったワークアップ (信越化学, US Patent 5,292,973 Mar 8, 1994.)
Wittig反応後に反応液に水を加え、分液して取り出した有機層をヘキサンで溶媒置換した後、そこに酢酸を加えると、生成したオレフィンを含むヘキサン層(上層)と、副生するTPPOを含む粘度の高い酢酸層(下層)に分離する。下層を分離することで、TPPOを95%以上除去可能。

e)  TPPO-DIAD-H2錯体をろ別 (Bristol-Myers Squibb, J. Org. Chem., 1996, 61, 7955-7958.)
上記Schemeの上段の反応に場合、トルエン中で光延反応を行い、加水分解までやった後、塩酸を加えてpHを6-7に調整し、析出しているTPPO-DIAD-H2(1:1)錯体(単結晶X線結晶構造解析で確認している)をろ別することで80-85%のTPPO-DIAD-H2錯体を除去できます。続いて水層を取り出して塩酸で酸性として目的物を結晶化させます。この結晶化過程で少量の酢酸を添加することで不純物を溶液中に留めておくことができます。この手法でカラム無しで目的のカルボン酸を98%以上の純度で得ることができます(TPPOは0.1%未満)。

f) TPPO-MgCl2錯体をろ別 (AbbVie, Org. Process Res. Dev., 2013, 17, 666-671.)
see http://researcher-station.blogspot.jp/2013/08/blog-post_25.html)


で、This Workですが、著者らが開発したのは、こちら↓

(1) TPPOが生成(副生)する反応の終了後、普通にワークアップしてcrudeを取り出す。
(2) crudeをEtOHに溶解し、ZnCl2を作用させてZnCl2(TPPO)2 adductを形成させる(室温でオッケー)。
(3) ろ液を濃縮して、残留物をアセトンに懸濁させ、アセトンに溶けない過剰のZnCl2をろ別
(4) 最後のろ液にはTLC分析でTPPOはコンプリートにnd.で、カラムクロマトする必要なし

という方法です。

TPPOがルイス酸と錯体を形成するという性質を利用している点は、fのOPRDの論文と同様ですが、極性溶媒中でTPPO成分をろ別することで分離するというところが画期的です。ポリマー担持試薬以外は低極性溶媒中でTPPO成分をろ去して除くのが一般的なので、これは凄いです(やっぱ低極性溶媒だと溶解度の問題から、適用できる化合物の制約が大きい)。

そして本論文の代表的な実施例はこちら↓

1st Carbazole-forming Reaction


2nd Corey-Fuchs Reaction

3rd Mitsunobu Reaction

かなりイケてるTPPO除去法と思いました。

あと、この論文でちょと驚いたことがもう一つ。実験操作の動画がSIにアップされてます。こういう時代なんですね。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

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