Pages

2007年6月3日日曜日

有機化学の書

有機化学美術館へようこそ ~分子の世界の造形とドラマ [知りたい★サイエンス]」を読了しました。


コンキチもシクロアワオドリンには腰が砕けました(笑)

さて本書の中身なのですが、 有機化学界のホットなトピックスが網羅的に記載されていて、「一般の人にも有機化学をもっと良く分かって欲しい」という想いが感じられました。やっぱり、時代の先端を進む話題はエキサイティングで、興味を引きつけますからね、そして、(有機)化学の専門知識があまり無い人に対しても理解が進むように、できるだけ分かり易い表現を試みていて非常に腐心しているなあと思いました。それでも初学者には理解しづらいところ(専門的な概念)もあると思いますが、インターネットが発達した今日にあっては、Web上での検索で相当程度は解決されるのではないかと思います。

あと個人的には、超分子化学や不斉配位子、デンドリマーといったトピックスは、読んでいるうちに自分の学生時代が想い起こされ、少し胸が熱くなってしまいました。

ちなみにコンキチの学生時代の研究テーマはClassical Resolutionで、まあはっきり言ってローテクですが、超分子化学的要素(Chiral Discrimination)もある訳で、なんとか超分子的なコンセプトで修論を構成できないかと、超分子化学の入門書であるレーンの「超分子科学」なんかを読んでみたりたものです。

また、扱っていたのがキラル化合物であり、かつ同じ講座の隣の研究室では、C2対称の不斉リン配位子の研究とかをやっていたので、不斉合成なんかは多少は勉強したものです。

あと、コンキチの担当教官から独立して隣の学科の助教授になった先生の研究室ではデンドリマーをやってたりして、今後どういう風に研究が展開されていくんだろうかと、興味深い想いで発表を聞いたりしたものでした。

コンキチの学生寮の友達は、 カリックスアレーンを使った不斉比色認識とかの研究をやっていて、同じ学科の隣の講座ということも幸いして、呑みながら化学の話をしたりもしたものです。

cf. Y. Kubo, et al., Nature, 1996, 382, 522.

そういえば、授業でタキソールの全合成の雑誌会もやったなあ(ダニシェフスキーとニコラウのグループのを)。

研究室の夏合宿のとき、先生が若い頃、ウッドワード研に留学してビタミンB12の全合成のプロジェクトに参加して、クロロメチル化のステップが採用されて。「King of Alkylation」と言われたといって喜んでいたなあ。

………

化学に憧れ、焦がれ、心棒していた、熱い鉄のような情熱を持っていたあの頃の自分が想い起こされ、柄にも無く少し目頭が熱くなるのを感じてしまいました。企業という大学以上に制約があり、政治が跋扈する組織で、自分が化学に対してどういうスタンスで向き合って行くのが良いのだろうかということに想いを馳せるこの頃です。

とまあセンチな話はこれぐらいにして、「有機化学美術館へようこそ ~分子の世界の造形とドラマ [知りたい★サイエンス]」は紛れも無い良書であるので、幅広い層に広く読まれればいいなと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿