近年、GSC (Green Sustainable Chemistry)が注目を集め、Atom Economyであったり、ソルベント・フリー、有機分子触媒、イオン性液体、超臨界流体、フルオラスソルベント、相間移動触媒、Aqueous Reaction、マイクロリアクター、リサイクルといったGSCを志向した論文が日増しに増えてきているように感じるコンキチです。
一昔前までは、全合成を完遂するため、高い選択性や週率を出すためなら、どんな手段をも駆使するぞといった感じの論文が主流だったように思うのですが、いよいよアカデミックな世界でもパラダイムが回り始めたのかと感じる今日この頃です。
とまあ、環境調和志向が台頭してきたことは良しとして、そのグリーン性はどの程度のものなのかということを表す指標が必要な訳で、著名なジャーナルでそのような環境指標を用いてプロセスの評価を定量化した論文というのはあまりないように思います。ということで、一応プロセス化学を生業とするコンキチが、巷で噂の環境指標を下記にまとめてみました。
(「医薬品のプロセス化学」を多分に参考にしました)
(1) Atom Economy (原子経済)、Atom Efficiency (原子効率)
Barry M. Trostによって提案された指標。トランスフォーメーション自体のグリーン性を評価する指標でる。
Atom Economy (%) = 目的物の分子量÷化学反応式左辺の全原子量×100
ref. B. M. Trost, Science, 254, 1471 (1991).
(2) RME (Reaction Mass Efficiency)
Glaxo Smith Klineの研究者によって提案された指標。試薬の使用量や収率が加味され、実際の合成プロセスにより即した指標といえる。
REM (%) = 目的物の原子量÷実際の使用当量を乗じた原料の分子量の和×100
ref.. A. D. Curzon, D. J. C. Constable, D. N. Mortimer, V. L. Cunningham, Green Chemistry, 3, 1 (2001).
(3) E-factor (E-ファクター)
Sheldonによって提案された指標で、生成物1 kg当りの廃棄物の重量(kg)。E-ファクター100とは、1 kgの目的物を得るのに100 kgの廃棄物が発生するという意味。反応に直接関与する原料以外の溶媒、触媒、シリカゲル、中和に使う酸・塩基等も考慮される。より製造プロセスを意識した指標といえる。
E-ファクター (kg) = (原料の総重量-目的物の重量)÷目的物の重量
ref. R. A. Sheldon, Chem. Ind., 7 Dec., 903 (1992).
(4) EQ (Environmental Quotient)
E-ファクターに環境に与えるインパクトの大きさを表す係数Qを乗じた指標。例えば、同じ廃棄物1 kgでも食塩と重金属では環境に対するインパクトが全く異なる。こうしたインパクトを加味した係数Qを各廃棄物量の乗じてE-ファクターを計算し直したもの。Sheldonが提唱。
ref. R. A. Sheldon, Chem. Ind., 7 Dec., 903 (1992).
以上4つ程指標を挙げてみましたが、これ以外にもDowの「Eco-Efficiency」、Bayerの「Eco-Check」、BASFの「Eco-efficiency analysis」といった企業毎の環境マネジメントがあるようです。
上述した環境指標のリファレンスを見てみると、考案された年代は意外と古く、1993年4月から1999年3月まで大学に在学していたコンキチとしては、Ecologyという哲学に対して無頓着であったことに恥じ入るばかりです,,,,,
ISO14001といった環境マネジメントシステムを導入している企業も多いかと思うのですが、単に社会的な流れだからという理由で認証取得しているという企業も多々あるのではないかと思います(想像)。コンキチの勤務する会社でも認証取得していますが、化学プロセスの環境評価に費やされる時間は少なく、環境指標を用いた管理は皆無で多分に定性的な議論のみが行われています(っていうかISOのコンサルタントにしてもそれくらい指導して欲しい)。全ての化学会社は、最低でも上記環境指標による管理を行うべきと思います。それが、化学会社の最低限のCSRかと思います。
PS. RMEのリファレンスについては、RSCのWeb Siteからダウンロードできるので、そのうちじっくり読んでみたいと思います。
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