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2007年7月27日金曜日

GC in CHEMICAL REVIEWS (2)

コンキチは工学部出身です(ほんとは理学部の方がよかった)。で、工学とは実学であると考えています。

先のブログで、Chemical ReviewsのGreen Chemistry特集に触れ、環境志向の高まりを感じた旨を記しました。ただ気になるのは、Green Chemistryとお題目を銘打つと、各々にカテゴライズされた、ぱっと聞いてみてグリーンちっくなテーマにスポットが当たりがちのような気がして、その辺りがちょっと気にかかります。

例えば、

Organocatalystを使ってメタル・フリーな反応を開発しました。でも、CH2Cl2溶媒Death!!!!!(涙)

とか、

イオン性液体中で反応を行うことで、素晴らしい反応性と選択性で反応が進行します。でも、使ってる触媒が超絶高価で有毒なんだよね(テヘヘ)

といった、カテゴリにこだわるあまり、根底にあるコンセプトとの整合性を欠いている論文とかは –勿論そういった新たな知見は有益であるとは思うけれど-果たして実学たりえるのだろうかと思うわけですよ。

あと、

超臨界CO2ってとってもクリーンだよね!でも、当社では設備投資できませんから!残念!!!

というような実行の容易さに係る問題とかが軽視されがちなような気がするのです(そんなこと気にするのは自分だけかもしれませんが…..あんまり勉強してないし)。

あと、コンキチは所謂カテゴライズされたGreen Chemistryに関して、はっきり言って門外漢なので、

例えば、

他品種少量製造を行っていて、扱う化合物の頻繁な切り替えが必要となる場合、イオン性液体なんか使ったときの釜の洗浄ってどうなの?

とか、

何回リユースできるの?繰り返しリユースしてたら、不純物が蓄積して反応に悪影響を与えたりしないの?なんていうことも気になりますね(この辺は要勉強ですかね)。

で、何が言いたいかというと、カテゴライズされたGreen Chemistryでなくても、より実学を志向した、しかも導入が容易な”Green”な反応にもっと光をあててもいいんじゃないの?ということです。

例えば、このブログでも過去に取り上げた↓

Trialkylzinc(II) ate complex」なんかは、簡便な方法で収率が向上し、精製も容易になり、E-ファクターを低減させ、コスト的にも優位性があそうだし、RMEも向上するでしょう。そして、これまでのやり方を大きく変えなくてもよいというこいとに価値があるとも思いますね(教育も少しですむし、やり方を変えることに伴う心理的バイアスも少ない)。

それからこの論文↓

Trichloroisocyanuric/TEMPO Oxidation of Alcohols under Mild Conditions: A Close Investigation
J. Am. Chem. Soc., 2003, 68, 4999-5001.

プール水処理剤とかに使用されていて安価なTCCA(trichloroisocyanuric acid)を共酸化剤に使って、TEMPOを触媒で回すという反応で、溶媒もアセトン水溶液で取り扱い易い。マイルドな条件でけっこうクリーンな気がします。(アニソール骨格を持つ基質だと、アルデヒドで酸化が止まる。また、オレフィンを含む基質だとジクロロ化も進行するとようです。系内に水が存在しないと、アルデヒドで反応が止まる的な記述もあり、興味深いです)

リファレンスに同じ著者が投稿した「アルコール→カルボニル化合物」というトランスフォーメーションに関する論文(Org. Lett., 2001, 3, 3041.)があるので、チェックしてみたいのですが、Organic Lettersはコンキチが勤務する会社では購読してないのですぐには入手できず残念です。

あと、Jacobsenの開発した、Hydrolytic Kinetic Resolutionなんかは、Chem-Stationで「触媒が安価・無害・空気/水に安定、触媒使用量は少なく(0.5-5mol%程度)回収再利用が可能、基質一般性は高く選択性はほぼ完璧、ほぼneat条件の溶媒量、バルクスケールでも実施可能(実際に本反応はRhodia Chirex社(USA)およびダイソー株式会社(日本)により工業化されている)など、不斉触媒の要請条件をほとんど満たす、現時点では最も理想に近い不斉触媒反応といえる。」と絶賛されています。

ref.
J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 1307-1315.
Org. Synth., 2006, 83, 162-169.

上記反応は、catalysisにカテゴライズされるのかもしれませんが(でもcatalysisはカテゴリ的には極めて広範すぎると思う)、反応を環境調和型にブラッシュ・アップしていく研究っていうのが、もっと大々的にとりあげられてもいいんじゃないかなあと思う次第なのです(コンキチが知らないだけで、既に十分注目されているのかもしれませんが…..)


以上、ダークサイドに墜ちた、某二流国立大でのなんちゃって研究員の呟きでした。

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