2006年10月23日月曜日

Trialkylzinc(II) ate complex

今回は有機合成化学の話です。

ちょっと真面目に有機合成化学の論文を読んでみました。
読んだのは、

Highly Efficient Alkylation to Ketones and Aldimines with Grignard Reagents Catalyzed by Zinc(II) Chloride
M. Hatano, et. al.
J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 9998-9999.」

コンキチ的には、なかなかスマッシュ・ヒットなペーパーでした。

Grignard試薬とケトンの反応で、ZnCl2を加えて反応を行うと、Grignard反応に特有の副反応である、β-ヒドリド還元やエノール化を効果的に抑制することができるという話です。しかも、ZnCl2は触媒量の使用でも良いというのが凄いです。

こういった、エノール化を抑制するのに有効なadditiveは、CeCl3なんかが有名ですが、高いし、化学量論量使わなければならないというのが最大のネックだとコンキチは思っていました。

本報ではイントロで、CeCl3以外にLiCl、LiClO4、FeCl2、LnCl3・2LiClの化学量論量の添加や、R3MgLiの使用(RLiが1~2eq.必要)も有効であると言及しています(不勉強なコンキチは知らなかった)。

で、本報のなにが凄いかというと、繰り返しになりますが、安価なZnCl2触媒量使用するだけで、大きな効果が得られるということでしょう。しかも、反応性の低いアルジミンに対してのエンハンス効果も認められています。

既にやられていそうなアイデアですが、画期的な効果だと正直思います。Grignard反応は有機合成化学の世界にあって、最も汎用性の高い反応の一つであり、Grignard反応を使って生み出される化学製品は数多に渡ることは間違いありません。その反応の効率を高めることは、目的物の精製を容易にし、RMEを高め、エコ・フレンドリ-な合成の実現につながります。社会的意義が高い!!!

ちなみに、ベンゾフェノン(結構還元され易い)とEtMgCl(結構塩基性高い)の反応では、ZnCl2の添加なしで反応を行うと、アルキル化が25%、β-ヒドリド還元が72%で進行するのに対して、10mol%のZnCl2を添加して反応を行うと、アルキル化が84%、β-ヒドリド還元が15%と大きな改善がみられています。この反応はZn(II)アート錯体「R3ZnMgCl」が反応活性種であると考えられます。

Supporting Informationをみると、THF中Grignard試薬に触媒量のZnCl2を加えた後、ケトンを加えるという手順で実験が行われていますが、ZnCl2とケトンのmixtureにGrignard試薬を滴下していったらどうなんだろうとか、溶媒効果とかはどうなるのだろうとかという興味が湧いてきます。

シンプルでスマートないい論文だなーと思いました。個人的に絶賛ですね。

あと、β-ヒドリド還元やエノール化といった副反応は、Grignard試薬の塩基性と求核性、ハロゲンの種類、基質の還元され易さとか、溶媒の塩基性とかに依存し、結構気になる場合があります。特の低分子量のGrignard試薬(EtMgXとか)を使って上記副反応が深刻だと、可燃性ガスが大量に発生することになって、安全上の問題も発生します。

Grignard反応は、普通の教科書だと意外と単純な反応としてかたづけられてしまいがちですが、以外と奥が深いんですよねえ。
コンキチ的にはこんな本で勉強するこがいいんじゃないかと思います↓


以上、二流大出のなんちゃって研究員の感想でした。

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