2022年3月26日土曜日

"1,2-" or "1,4-", That is the Question (extra operation)

2020年の四月。緊急事態宣言前に見事なコの字型のカウンターのある居酒屋に行ったときのメモです。
お店の周囲には、その筋の人(大きいお友達や目が大きい女の子好き)が沢山いて、ちょっと通い難いです。

-赤津加 memo-
住所:千代田区外神田1-10-2

-瓶ビール (中瓶) (650 JPY+tax)-
赤星です。


-お通し-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
帆立みないな貝の身だろうか?
香味豊かなドレッシングが掛けられている。
ぷるぷるして、とっても軟らかく、僅かに漂う魚介の風味が旨し。






-ほや塩辛 (650 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ふんわりと漂ってくる磯のいい匂いが食欲をそそります。辛すぎない程度にキリッと効かせた塩味は素晴らしい塩梅。ホヤの身はフレッシュ(fresh)でねっとりと吸い付くような食感。とっても軟らかいんんだけど、しっかりした弾力も楽しめる。
自然な甘みと洗練した味わいで、今まで食べたほやの塩辛のかなではベストかも。
文句なしに旨い!


-鶏もつ煮込み (800 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
具材は、鶏もつ、鶏皮と皮にくっついているお肉、お豆腐、こんにゃく、葱、玉葱。白味噌仕立ての優しい味のあっさりした上品なおつゆ。鶏もつとお豆腐がメインで、お鍋がグツグツの状態で提供される。
鶏皮はプルプルの食感でとっても軟らかく、マイルドな味がしっかり染み込んでいる。で、皮にくっついているソリッド(solid)めなお肉の食感とのコントラストが楽しくて食べ飽きしない。
鶏もつは肝テイストが野趣的。全体的に上品な味わいのお鍋の良いアクセントになっている。
お豆腐はプルプルの絹ごしで、味しみはない。
葱と玉葱で南蛮感ふんだん。
満足感の高い鍋料理に仕上がっています。


-日本酒 菊正宗 (本醸造) 一合 (500 JPY+tax)-
熱燗にしてもらう。












-たたみいわし (600 JPY+tax)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
軽く炙っただけのようで、焦げ目ままったくついていない。
ほんのり温もりをかんじる程度の熱量で、サクッという食感は"和"的なスナック。
しらすの滋味もしっかりあって、普通に美味しいと思うんだけど、ボク的には炙りが足りてなくて欲求不満。
焦げ目がついたくらいがいいんですよ、たたみいわしは。
ちなみに、食べログにはしっかり焦げ目のついた写真が載ってました↓
次行ったときは、せめてこれくらい炙ったのを出して欲しいです。


閑話休題


以前、α,β-不飽和カルボニル化合物の"1,2-還元 vs. 1,4-還元"に関する連作メモを書きました↓


で、その後(今回)、この関連で新たなネタ(知見)を発掘したのでメモしてみたいと思います。

古い文献なんですが、こちらです↓

Reductions of conjugated carbonyl compounds with copper hydride - preparative and mechanistic aspects
J. Org. Chem., 1977, 42, 3180-3188.

かつてプロセスケミストだったボクが最も愛してやまない金属ヒドリド還元剤であるSodium Bis(2-methoxyethoxy)aluminum Hydride (SMEAH)を使った1,4-還元のお話です。


Red-Al (SMEAH)

業界的には、Red-AlとかVitrideと言った方が分かり易いでしょうか。ぜんぶ同じ化合物です。

以前、α,β-不飽和カルボニル化合物の1,4-還元はDIBAL-Co(acca)2がファースト・チョイスなんじゃないかというメモしましたが、やっぱデータの数が少ないので(特にエノン)、セカンド・オピニオン的なものの一環として本報をメモります。最初に言っとくけど、万能procudureではないですし、Red-Al単独の使用ではなく、銅と合わせて使います。

ということで、活性種はこちら↓

Red-Al (NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2)だけでなく、LiAlH(OCH3)3もイケイケです。で、これらに金属ヒドリド試薬にCuBrを作用させるとある種の錯体を形成します(構造不明。brown-black suspensionになる)。

以下、"Li complex"と"Na complex"を使ったα,β-不飽和カルボニル化合部物の還元の収率と選択性です↓

溶媒効果がデカイです。
それと、"complex"以外にもLiCuH2を試してます。LiCuH2は1,2-還元選択的ですね。

因みに、LiCuH2はこんな感じで調製され、その組成は元素分析でアサインされています(J. Chem. Soc. Chem. Commun.1974, 157.)↓

MeLi + CuI → MeCu + LiI
MeCu + MeLi → LiCuMe2
LiCuMe2 + LiAlH4 → LiCuH2 (yellow solid) + LiAlMe2H2


三段目の"Na complex"を使った反応は81% Conv.です。


"complex"は1,4-還元選択的で、LiAlH(OCH3)3はほぼ選択性なし。LiCuH2(50% Conv.)は(やっぱ)1,2-還元選択的です。

お次は鎖状エノンの還元です。
鎖状になると"Na complex"の方が好成績です。そして、Cuなしではやっぱ1,2-選択的です。


カルコンは難しい基質なんだそうで、主生成物は高分子量の化合物のようです。




環状エノンの1,4-還元には"Li complex"が有効で、鎖状のα,β-不飽和カルボニル化合物の1,4-還元は"Na complex"は有効。但し、鎖状のβ-アリール置換-α,β-不飽和カルボニル化合物は低収率といったところでしょうか。

ただ、鎖状のβ-アリール置換-α,β-不飽和カルボニル化合物の低収率っぷりを改善する策がないわけではありません。具体的には、過剰の"Na complex"に-78˚Cで2-ブタノールを一気に加えて、そこから5分以内に基質を投入するという荒技です。選択性が向上するけど、試薬(金属ヒドリド)も壊れていくとう、全くもってスケールアップには向かない方法なので、忘れた方が無難でしょう。

とまあ、本報のメソッドは完璧とは程遠いんですが、そもそも1,4-還元に完璧メソッドが存在しないので、選択の幅を広げるという意味でいいんじゃないかと思います。

ところで、先頃、日本の化学系ポータルサイトのビッグネームであるケムステさんで「危ない試薬・危険な試薬の便利な代替品」という記事が掲載されましたが、ボク的にはここに、

LAH→Red-Al

を追加したいと思います。

未だに過去のレガシーから脱却できずに、LAH最強還元剤伝説を盲信し、バカの一つ覚えみたいにLAHを使い続ける人がいますが、もうやめましょう(危ないから)。
Red-AlはLAHと同等の還元力があると言われ、有機溶媒への溶解性も抜群(60-70 wt%のトルエン溶液として市販)、熱安定性も高く(refluxオッケー)、工業プロセスで普通に使用されています(LAHは工業プロセス使用禁止の会社が多いと思います)。

Red-Alに幸あれ!

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の1,4-還元メモでした。