2014年12月31日水曜日

Sodium Dispersionの新展開

今年の春(増税前)にヨドバシAKIBAに行ったときに入った居酒屋のメモです↓

-芋蔵BARメモ-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
先付け (320 JPY)は、おかわり自由の塩ダレキャベツ。漬け物tasteでしんなりとしている(★★☆☆☆)。おかわり自由とはいえ、たいして旨くなくて、食いたくないものを320円で押し付けられるのは不愉快。
で、注文した料理は蛍イカの沖漬、菜の花の天ぷら。
蛍イカの沖漬 (330 JPY)は4杯のホタルイカの上にカブのスライス、さらにその上に生姜が乗っている。少し生臭さがあるも、厭な感じではなくfresh (★★★☆☆)。
そして、菜の花の天ぷら (480 JPY)は、はっきり言ってしょぼい。全然旨くない (★☆☆☆☆)。
とまあ、料理はイマイチだったけど、焼酎の品揃えには目を見張るものがあります。その焼酎からチョイスした大石のロック (500 JPY)は鉄板の旨さでした(★★★★★)。
あと、天ぷら食べたときにモルツ中瓶 (620 JPY)を合わせてみました。ボク的に瓶ビールはモルツ推しなので、この点は評価しています。

月曜の7時過ぎくらいに入店して、全然混んでなかったんですが、菜の花の天ぷらの提供が異様に遅くて、この店のオペレーションってダメダメじゃね?って思いました。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Evaluating a Sodium Dispersion Reagent for the Bouveault-Blanc Reaction of Esters
J. Org. Chem., 2014, 79, 6743-6747.

新しいsodium dispersionをBouveault-Blanc還元に応用し、その効率を大きく改善できたというお話です。

Conventional Method of Bouveault-Blanc Reduction

反応は金属表面で起こるため、金属が良く分散していることが重要だそうで、in situでディスパージョンをつくる際、高速撹拌が重要になるといいます。通常、金属ナトリウムを小片にカットしたものが使用されますが、そういった古典的手法だと再現性と安全性に問題があるそうです。
また、反応は加熱下で行われるようですが、高温はClaisen縮合や加水分解といった副反応を加速させます。
低温下での反応も可能なようですが、その場合、EtOH/NH3溶媒系かNaKの使用が必要となります(やりたくないです)。

This workですが、本報で著者らは、粒径5-15 μm(high surface area)のNa-D15という名前のsodium dispersionを調製し、これをBouveault-Blanc還元に応用しています。

Na-D15は自然発火性がなく、大気中、シリンジやピペットで取り扱うことができます。さらに、Na-D15は工業的生産が既に確立されているそうです(市販されていて、Pentagon Fine Chemicals Ltdが売ってるそう)。

そして、Na-D15をBouveault-Blanc還元に適用してみると、0℃でも反応が進行するという高活性さでした。で、最適条件はこちら↓

16 examples, 73-98%

Na-D15のアドバンテージは↓

(1) Na-D15は4.5 eq.の使用だけで良い(4 e- reductionなので実質1.125 eq.)
(2) 基質一般性が高い (ArF, ArCl, ArOMe, ArSMe, ArNH2, 孤立オレフィンがあってもオッケー)
(3) マイルドな反応条件
(4) 通常のBouveault-Blanc還元でみられる副反応を抑制
(5) Na-D15は取り扱い易い

といった感じです。

また、本論文における最大スケールは25 mmol scale(0.5 mmol scaleと比較して収率に大きな変動なし)なので、ちょっとしたサンプルワークには十分使えるんだろうと思います。

ところで、金属ナトリウムを用いた類似反応にアシロイン縮合があります。で、アシロイン縮合に関する日本語wikipediaのページをみてみると、

「アルカリ金属のディスパージョンはPTFE(テフロン)と激しく反応するため、PTFE皮膜の撹拌子の使用は避ける」

って書いてあるんですけど、その辺りはどうなのかな?っていう一抹の疑問が残りました。0℃だったら大丈夫なのか?そうなのか?情報が欲しいです。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。


Annual Income 2014


テレサ•リズボン(ロビン•ターニー)大好きなコンキチです。

THE MENTALISTのSeason 5をみたんですが、とってもよかったです。

J. J. ラローシュのタッパーの中身が明かになったり、レッド•ジョンの正体が大分絞られてきたりと、クライマックスに向けて準備が整ってきたのではないでしょうか。Season 6がとても待ち遠しいです。


閑話休題


2014年の年収(給与収入)はこんな感じになった中流真っただ中のコンキチです↓


世間では名目賃金が上昇しているというのに、年収減で悲しい気持ちでいっぱいです。
(基本給とボーナスは増えたけど、残業大幅に減らしたから仕方ないのですが)

ところで、民主党が下野して以来、ほぼ一本調子のアゲアゲ相場で、皆様におかれましてはそこそこウハウハしていることと推察致します。おそらく、これは俗にいう"バカでも儲かる相場"なんだろうと思います。だって、ど素人のコンキチでさえ200万近く儲かりましたから(税金を考えると軽くブルーになりますが)。

a) 民主党政権下での円高•不景気政策の終焉
b) 日銀が2%のインフレ目標達成するまで金融緩和するという円安要因
c) アメリカ経済の回復とQEの出口戦略
d) GPIF関連報道

まともな知能があれば、どう考えても、ドル買い/円売りと米国株買い、あと短期的には日本株買っとけば儲かることが万人にまるっとまる分かりな感じでいっぱいだったじゃないですか。

で、こういった"バカでも儲かる相場"が出現すると、所謂資産運用でこの後の人生をまっとうできるぜなんて考えて、専業投資家を志向する人も出てくるんだろうと思います。だって、会社行って働かなくても生活できるんだからウハウハですよ。通勤時の満員電車や、アホな上司•同僚からの解放、自由な時間というパラダイスが待っています。

ボク的には専業投資家になる気も才能も全くありませんが、そんなに専業投資家ってパラダイスなんでしょうか?とても疑わしいです。

ということで、コンキチの給与収入を基に、専業投資家になることの合理性を考えたいと思います。

例えば、ボクの2014年の給与収入を基に考えてみると

給与収入 885万円
社会保険料 113万円
所得税 56万円
住民税 50万円

で、可処分所得はざっくり666万円になります(実効税率25%)。

仮に、

税率20%
運用利回り(好意的に)年率10%
国民年金保険料 15,250×12=198,250円

で、夫(本人)に加えて無職妻と子供2人の世帯を想定して、どんだけ儲ければ同等のキャッシュ•フローがGETできるかざっくり勘定してみると税引前で960万くらい必要で、資産が9,600万円くらいないといけないと思います(多分、国民健康保険料が65万円くらいかかると思う see http://5kuho.com/html/keisan.html)。しかも、会社勤めだと企業年金(退職給付制度)や福利厚生(健保組合が健全なら人間ドック受診の補助とか、+αの給付があったりとか、まあ他にもある)の補助あるので、専業投資家は既に持っている1億を年率10%で運用しても(税引前で1千万稼いでも)まだ割が合わないと思います(例えばオレの場合、保険診療内だったら、1レセプト2万円/月が上限になるから、生命保険の負担が軽減される)。

ボク的には運用利回り10%をコンスタントにたたき出す人って、相当運用が上手で、殆ど存在しないと思います。こういったことを鑑みると、凡人は専業投資家になってはいけないという真理っぽいものが浮かんできます。要は、資産運用(財テク)に現を抜かすよりも、人的資本(お勉強)に投資した方がよろしいんだろうと。


ということで、

社畜に幸あれ

という気持ちで2015年を迎えたいと思う、二流大出のテクニシャン(研究補助員)でした。

それにつけても、パトリック•ジェーン(サイモン•ベーカー)って、最高にセクシーでクールだよね






2014年11月25日火曜日

カップリングでニトリルつっこんでみました (田辺三菱製薬)

今年のまだ寒い時期(増税前)に久しぶりに上野藪そばに行ったんですが、鉄板の旨さでした。そのときのメモです↓

-上野藪そば総本店メモ-

-きつねそば (850 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
蕎麦はかなり細い。大分柔らかくなっているが、心地よい食感が残っていて、噛のが楽しい。雑味がなく根底にひそんだ力強いbodyを感じる蕎麦。
ツユは全体的に少し辛めの締まった味で、酸味が特徴的。といって、濃いわけではなく、むしろ薄めと思うんだけど、味が足りてないわけではく、蕎麦にmatchした上品なツユと思った。
具にはお揚げと葱が浮かんでいる。油揚げは薄く、oilyさを感じさせない上品かつ充分な旨味のあるお揚げに仕上がっている。そして、葱がとても旨い。心地よい甘味がたまらない。温蕎麦の一つの完成形なんだろうと思いました。

-揚げぎんなん (690 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
表面がやんわりoily。肉厚で凄くジューシーなプリップリな銀杏で、ホクホクする。かかっている粗めの塩がまた旨い。fresh, juicyで滋味深い味。絶品の域と思いました。

-ヱビス中瓶 (650 JPY)-


何度行っても良い店です。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Practical and Scalable Synthesis of a Benzonitrile Derivative via Palladium-Catalyzed Cyanation with Potassium Ferrocyanide
Org. Process Res. Dev., 2014, 18, 693-698.

田辺三菱製薬のプロセス改善の報告です。

まずはじめに、下に示すようなベンゾニトリル誘導体のメディシナル •ルートを開発しました↓


そして著者らは、このメディシナル •ルートに対して、二つのドローバックがあると指摘します。

一つ目は臭化アリールからニトリルに誘導するまでのステップ数の多さで、二つ目は、極低温条件です。これらの問題点を改善するために、著者らは臭化アリールの1段階でのシアノ化を試みます。で、最初に試した条件はこちら(Weissman's conditions)↓


"CN"ソースであるK4[Fe(CN)6]は安価で、食品添加物としても使用されている無毒な物質で、 全てのシアニドが反応に関与するようです。要は、いいヤツです。それにも関わらず、製造スケール(企業化)での報告が僅かしかないのは、シアニドは潜在的な触媒毒であるため、一般的にシアニド源を溶かさない反応条件が求められ、これがスケールアップを難しくしているそうです。

あと、上記schemeの条件で反応を行うと、88-100%コンバージョンで、ホモカップル体が最大0.53 area%副生して、これの除去が困難だそうです。ついでに、XPhosは特許で保護されています。

ということで、クロス•カップリングによるシアノ化の条件検討を進めていきます。

その結果↓

a) スクリーニングの結果、リガンドはP(o-tol)3がベスト
b) DMAc-toluene混合溶媒。
触媒の失活は、高濃度の"CN"ソースの存在下、Pd(0)が酸化されて[ArPd(CN)3]-, [HPd(CN)3]-, [Pd(CN)4]2-といった不活性種の形成によってもたらされると考えられる。また、"CN"ソースにK4[Fe(CN)6]を用いた反応で、Pd(CN)4]2-がゆっくりと形成するという報告があります(J. Am. Chem. Soc., 1998, 120, 8527.)。貧溶媒にトルエンを用いることで、"CN"ソースの濃度を低減を試みた。トルエンの効果は明確ではないが、期待通りに働いた。また、トルエンrefluxは溶存酸素の脱気効果が期待できるかもしれない(Org. Process Res. Dev., 2014, 18, 246-256.)。
c) K4[Fe(CN)6]•H2Oの物質移動が律速
d) 溶存酸素の影響によって再現性が低下
e) magnetic stirringによるK4[Fe(CN)6]•H2Oのすりつぶし効果が顕著。市販品を砕いてimpeller stiringで反応を行っても効果なし。43 vol% PhMe in DMAc中では、100% DMAcより粒径が大きい。overhead stirringで<43 vol% PhMe in DMAcであれば、K4[Fe(CN)6]•H2Oの粒径の大きさに問題なさそう

といったことが分かってきました。

で、最適条件です↓
160 kgスケールに量上げしても、トルエン-DMAc混合溶媒の組成を調整することで、満足いく収率と純度に仕上げることに成功しました。

めでたしめでたしと言いたいところですが、ボク的には微妙な気持ちもします。確かにステップ•エコノミーは非常に優れていると思いますが、クロス•カップリングでシアノ基を導入する反応は、少なくともこの基質に関しては、ちょっと気難しい反応のような気もします。

メディシナル•ルートのn-BuLiを使った極低温反応は、教科書的にはマイルドなコンディションで実行できるGrignard試薬に置き換えることが可能なはずです。一瞬、モルホリンユニットを持つ基質ではGrignard試薬の調製が難しいのかなとも思いましたが、下記Grignard試薬が市販されているので、問題はなさそうです。


クロス•カップリングでシアノ基導入はチャレンジングな試みで、それを制したのは素晴らしいと思うけど、オレだったら、きっとGrignard試薬を使うと思います(原価計算したわけじゃないから、なんともいえないけど)。でも、サンプルワークでは積極的に使ってみたいかな

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。




2014年11月23日日曜日

"投票"という"行為"は果たして正しいのか?

10年以上振りにコンデジを購入したコンキチです。



←この小さな体躯と、スピードアクセスがガジェットとして優れていると思うんですよね。
実際、凄く重宝しています。


閑話休題


衆議院が解散されましたね
ボク的には、アベノミクスは失敗に終わり、我が国がスタグフレーションに覆われるのではないかと夢想しています。でも、自民党よりも"マシ"な政党が全く見当たりません。まあ、最初から投票する気ありませんけど。

よく、投票人口比的一票の格差を問題にしてる人とか、投票することは意思表示でありとりあえず選挙に行こうとか言ってる人がいますが、無責任極まりないと思いますね、ボクは。

だって、民主主義のデフォルトって、

バカの意見も尊重しなくちゃいけないじゃないですか

バカの一票も賢人の一票も価値は一緒ってことです。


っていうことで、今度の選挙に向けてボクこう言いたいです↓

バカは投票を控えろ
賢人の一票とバカの10票分を等価交換せよ

と。

まあ、でも投票人口比的一票の格差なんて定数減らせばあっという間に解決できるのに、そんな簡単なことさえできない政治屋さん達に投票するのもバカくさいですけどね。

ついでに、我が国の社会保障費に端を発する財政問題なんて、欲の皮の突っ張った有権者(老人)とそれにおもねる政治屋さん達とのデキレースじゃないですか。一千兆円超の借金を自分たちの孫子の代に押し付けて、逃げようとしてる浅ましさを感じます。

そう考えると、投票所になんかに行く暇があったら、政治に依存しない生き方を考えた方がいいと思う、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の休日の昼下がりでした。

2014年11月16日日曜日

tert-BuONaを酸化的開裂に使ってみましょう

昨日、艦これ秋イベントを終了したオタッキーのコンキチです。


とりあえず、秋月、Prinz Eugen、野分、大鯨、朝雲、清霜、天津風といったレア艦をGETできました。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Transition-Metal-Free and Chemoselective NaOtBu-O2-Mediated Oxidative Cleavage Reactions of vic-1,2-Diols to Carboxylic Acids and Mechanistic Insight into the Reaction Pathways
Org. Lett.201416, 2876-2879.

NaOtBuと酸素でビシルナジオール (vic-1,2-diol)を酸化的に開裂させてカルボン酸を得るというお話です。

コンベンショナルな同種のトランスフォーメンションというと遷移金属(Cr, V, Mn, Ru, W)のオキソ錯体を方法があるそうですが、高温(up to 70˚C)が必要であり、選択性が低いケースもあるようです。

で、This workです↓


ウリは遷移金属フリーとマイルドな反応条件です。

電子吸引基を持つ対象なvic-1,2-ジオールだと、反応はスムースに進行します(70-96%)。それに対して、電子供与性置換基を持つ基質では収率が低下します(60%)。

塩基にNaOiPr、NaOMe、NaHを使用しても反応が進行します(収率はNaOtBu > NaH > NaOiPr > NaOMeの順)。

そして、著者等に提案する反応機構はこちら↓


低温で反応を行って、benzyl誘導体の生成も確認しています。


あと、vic-1,2-diolユニットに加えてアリルアルコールユニットを有する基質の場合、vic-1,2-diolユニットの酸化的開裂とアリルアルコールユニットの酸化がone-potで出来ます↓


NaOtBuと酸素を組み合わせることで、マイルドコンディションで酸化が進むなんて驚きです(って、既視感を覚えますね http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ja904224y)。


2014年11月9日日曜日

固体亜鉛試薬がカップリングを変える?

おでんやさんのメモです↓

-大多福 memo-

-お通し(前菜2点盛)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
冷製の魚(鮪か?)の煮物が印象的。冷たくて、心地良い硬さの身。上品ないい味で、ヒンヤリとした感触が面白い。


-がんもどき-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
箸で 割くと椎茸の香りが拡散して食欲がそそられる。銀杏も入っていて凄くrichな味。尾張家のがんもと甲乙つけ難い。
(銀杏が入っていないときもある)

-焼とうふ-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ほんのりといい感じに出汁が効いてとても好き。豆腐の食感もgood。

-巻ゆば-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
クセになるような乙な味。ちょっと香ばしい感があって、出汁がサポートしている感じで良い。

-大根-
-RATING- ★★★
-REVIEW-
あっさりして上品な出汁をふんだんに吸い込んだ大根。出汁の旨さを存分に楽しめる。大根の甘味に加えて、汁の旨味の洪水が上乗せされて押し寄せてくる。出汁の味を味わうのには、大根が一番だなとしみじみ思いました。

-キャベツ巻-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
玉葱と挽肉を胡麻油で炒めたものがキャベツで巻いてある。やっぱり、キャベツの葉はかなり歯応えを失っている。味付けがマイルドな分、キャベツを深く味わいたいと感じ、その食感が気になってしまう。おでんには向かないタネと思いました。

-うずら卵-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
穏やかな出汁には、普通の玉子よりもうずらの卵のほうが合ってるんだろうと思う。卵の味が濃厚で旨いです。

-茶飯 (650 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
新香と赤だし付き。胡瓜と大根の新香の味が心に染みる。茶飯はほんのり甘味がある。これにおでんの汁を掛けていただく。お出汁は薄味だけど、昆布のフレーバーが凄く濃厚かつ上品。飯を搔き込むと旨さの波が口腔に、胃袋に、五臓六腑に押し寄せてくる。
それでも、中程まで食べ進めると飽きてくるんだけど、そこに薬味(葱とセリみないなもの)を加えると、もう一段階味が花開く、なかなか旨し。

-ねのひ純米の酒 (580 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
雪冷え→やさしい味。穏やかな味。フィニッシュに甘さがほんのりと立つ。
→人肌よりも幾分熱い程度の燗。あまり自己主張せず、丸みのある味わい。それに加えて、ほんのり果実味を感じさせる甘さが立ち昇る。

-葱まぐろ-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
絶品!まぐろが柔らかくて、心地良い弾力があって、ジューシー。滋味深い味が滔々と染み出てくる。からしをつけると、これまたとても旨く、鮪の味が引き締まる。葱は上品な出汁を充分に吸っていて、何とも言えないとろっとした絶妙の旨さ。で、鮪と葱を交互に食べると、味のコントラストが楽しめて旨面白い。感動的な味。

-鶏玉子-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
玉子の表面には大分色が付いているが、そこはあっさり出汁なので、玉子の味がしっかりと楽しめる。まず黄身の味が押し寄せ、次いで周囲の白身そして出汁の旨さといった順番で味のウェーブが来る。お出汁が玉子の味を引き立てている。

-小玉葱-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
もの凄く秀逸。しんなりとしつつも、一個まるまるの形を保った小玉葱は、食感も楽しめる。で、良く煮込まれていて甘味を醸す繊維の隙間に美味しいお出汁がしたたり落ちるほどに入り込んでいる。この出汁と葱・玉葱系の相性が抜群。素材の甘味ととろっとした食感、そのに出汁由来の昆布の旨味のシナジーがとても旨い。驚くほどの旨さ。

-錫んチロリでだされる燗酒 (700 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ベースの酒は多分白鶴の樽酒。白鶴の樽酒は吞んだことがなかったけど、樽酒というと樽の木様の香りがけっこう立ってるというイメージがありますが(例えば、菊正宗とか)、錫のチロリで燗をつけられたその酒は、思いの外マイルドで、クセが無く吞み易いサケだった。それから、"錫のチロリ"が凄くいい雰囲気出してて楽しいです。
カウンター限定のようです。

-ヱビスビール大瓶 (750 JPY)-

-茶そば (680 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
ツユはけっこう甘い。少し気になるくらい甘く、濃いめだ。茶蕎麦は緑が鮮やかで、角が立っているように思う。薬味は山葵と万能葱。万能葱はボク的にはいただけない。これを食べていたとき、店主とのトークが猛烈に弾んでいて、ちょっと蕎麦の味から注意が逸れてしまったんだけど、多分、凡庸な味だったんだと思います。

 大多福のホスピタリティーは凄いです。おでんは食べ易く直前に切って出してくれる。店主のトークは面白いし、店員の接客も良いです。カウンターでしか食べてないんだけど、テーブル席ではミニおでん鍋がセットされて常にアツアツのおでんを楽しめるようです。
あと、おでんのツユはつぎ足し。生前、中村勘三郎が月一で訪れていた店らしいです。オレが通いたいから、みんな来ないで欲しいです。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Synthesis of Solid 2-Pyridylzinc Reagents and Their Application in Negishi Reactions
Org. Lett., 2013, 15, 5754-5757.

Knochel等の報告です。

鈴木カップリングにおいて、2-ピリジルボロン酸はその不安定さ故に反応はイマイチな場合がしばしば起こります。この問題に対するコンベンショナルでベストな対策はMIDAエステルやピナコールボロネートの使用ですが、2-ヘテロアリールボロネートで一般的にみられるプロトデボロネーションが懸念されるためか、穏和な条件が求められ、一般性にも乏しいようです。

本報では上述した問題のソリューションとして、air-stableな固体亜鉛試薬を用いた根岸カップリングを提案しています。

で、著者等が提案する亜鉛試薬は二つ。"2-pyridylzinc pivalate"と"2-pyrydylzic halide complex"です。

"2-pyridylzinc pivalate" approach
まず、"2-pyridylzinc pivalate"に関してですが、著者等が最近開発したorganozinc pivalate approachを2-pyridyl位でのカップリングに適用しました(Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 9205-9209.; Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, 9428-9432,; Org. Lett., 2013, 15, 1302-1305.)。


Zn(OPiv)2は無色透明固体で、ピバル酸とジエチル亜鉛から定量的に調製できる(空気、湿気に安定)。

2-pyridylzinc pivalateは流動性のある固体として得られ、不活性雰囲気下で安定です。空気中では1時間の放置プレイで10-31%分解します(空気中での長期保存は無理だが、秤量する分には問題なし)。

で、2-pyridylzinc pivalateを使った根岸カップリングです↓

14 examples, 67-98% Yield

官能基許容性はケトン、エステル、フリーのN-H、ニトリルがオッケー。また、カップリング反応条件において、トレース量の水や酸素があってもオッケーです(テクニカルグレードの溶媒を使ったり、"under air"で反応を行っても収率が殆ど落ちない)。


"2-pyrydylzic halide complex" approach
次に"2-pyrydylzic halide complex"を使ったアプローチですが、この手法は2-pyridylzinc halideにリガンド(溶媒分子)を作用させ錯形成させることで、湿気に対する安定性を増強させるというもので、いくつか先例(チックな報告)があります。例えば、Cherette等のbipyridyl-ligated zinc carbenoidesは大気中での安定性が改善されています(8ヶ月反応性を保持 J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 4508-4509.)。また、Sheverdina等はアルキルおよびアリール亜鉛化合物を1,4-ジオキサンの錯体として結晶化させています(Dokl. Akad. Nauk SSSR, 1959, 124, 602-605.; ibid, 1959, 128, 320-322.; ibid, 1960, 134, 853-855.)。それから、Noltes等の調製した有機亜鉛化合物は錯形成させたものの方が錯形成させていないものよりも加水分解されにくいようだという報告があります(J. Orgnomet. Chem., 1964, 1, 377-383.; ibid, 1965, 3, 222-228.)。

で、著者等の開発した方法はこちら↓


6種類のリガンド(2,2'-ビピリジン、テトラメチルエチレンジアミン、N,N'-ジメチルピペラジン、N-メチルモルホリン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン)のスクリーニングを行った結果、錯形成したのは1,4-ジオキサンと1,2-ジメトキシエタンの二つで"ligandles (THF錯体, THF中で反応を行っているので)"よりも空気中での安定性が格段に向上します(1,2-ジメトキシエタン錯体は1,4-ジオキサン錯体のざっくり半分くらいの安定さ)。

それで、dioxanate試薬の空気中での安定性はというと、1時間経過で96%残存、1日経過で66%残存、10日経過で5%残存といった具合です。

そして、dioxanate試薬を使った根岸カップリングです↓

11 examples, 61-99% Yield

因に、dioxanate試薬の分解物は反応を邪魔しません。

以上、著者等は2タイプの固体亜鉛試薬を用いた根岸カップリングを提案したわけですが、ボク的には、turbo Grignardを使って調製した有機亜鉛ピバレートを用いて根岸カップリングするっていう方法に大きな魅力を感じました。

n-BuLiは極低温を必要とするし、有機リチウム試薬が残存していた場合、それをエバポするのは気分が悪いです。また、dioxanate試薬の空気安定性は魅力的ですが、亜鉛試薬の収率(ヨードメトリーで決めてる)がイマイチなことに加えて、カップリングに使う触媒もマニアックな感じがして、気軽に使える感じがしません。それに対して、有機マグネシウム試薬の熱安定性とマイルドな条件下でのハロゲン-金属交換反応は、よりプラクティカルで魅力的と思うんですよね。

それから、ちょっと思ったんですが、亜鉛試薬の調製も根岸カップリングもTHF溶媒中で行っているので、"one-pot"でも良くね?って思うんですが、どうでしょうか?(多検体サンプルワークでは、一方のカップリングパートナーを固体でストックできるっていうメリットがあると思うけど)。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

2014年10月18日土曜日

カップルカップル

両国のお店のメモです↓

-博多屋台上がり からくさや memo-

-お通し-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
(このときは)絹ごし豆腐に胡麻油、塩吹き昆布の線切りがかかったもの。塩吹き昆布はかなり塩味が効いていて、その塩味と昆布の旨味、それから胡麻油の香味が淡白なお豆腐の味と融合してexcellentな味を醸し出している。

-名物焼ラーメン (780 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
(よく豚骨ラーメンに入ってる)極細麺が熱せられた鉄板に載せられてジュージュー音をさせながら提供される。「生卵をよくかき混ぜてから食べてください」と言われたので、そのようにやってみると良い具合に卵が熱せられて変性して良い感じ。極細麺の上にはベビースター(?)も載ってるんだけど、極細ラーメンのしっとり感と一部強熱されて焦げて軽くパリパしした香ばしい感じに加えてベビースターのサクサクパリパリ感の食感の融合が楽しいです。味付けは甘めのソースでちょっと濃いめでジャンキーtaste。明太子入りの辛みそマヨネーズをかけるとジャンクさup↑の面白ジャンクフードと思いました。

-濃厚鶏レバ刺 (780 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
とっても旨い。身は薄く切られていて食感が心地よい。また、冷凍感のないヒンヤリした温度がとても良い。控えめな胡麻油の味付けの加減がgood。お肉の味はあっさりしていてcreamy、そこにやんわりしたoily感、それでいてレバー特有の力強いbodyにネギとニンニクチップのコンビネーションがとても良く合う。ヒンヤリとしてテゥルンテゥルンな食感にネギのシャキシャキ感とチップのパリパリ感の融合がシナジー効果を出している。生臭さが殆どなく、旨さが口の中いっぱいに迸る絶品。

-本格もつ鍋 (1,050 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
モツは、周りがぷりゅんぷりゅんの脂エリアで中心にキュっと締まった筋肉質ユニットがある。他の具はシンプルにニラとキャベツのみ。
first impressionは味噌ベースかと思ったけど、どうだろうか?スープはエバラ焼肉のタレをもの凄く上品にした感じの軽やかにしてジャンキーなtaste。唐辛子と少し大きめに刻まれたニンニクでさらに香味付けされている。ニンニクのパンチが凄く効いていてvery good(翌日、注意が必要)。あと、キャベツにスープの味が染みてとても旨い。

-生ビール-
銘柄はアサヒ

-白霧島・黒霧島 (各380 JPY)-
neatで一杯380円。ロックにすると氷代50円がかかる。


なかなか楽しい店と思いました。他のメニュー(酢もつ、地鶏のタタキ刺、辛子れんこんとか)にもトライしてみたいと思います。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Catalytic Direct Cross-Coupling of Organolithium Compounds with Aryl Chlorides
Org. Lett., 2013, 15, 5114-5117.

塩化アリールと(ヘテロ)アリールリチウムのカップリングの話です。

有機リチウムのクロス・カップリング反応への適用は、その反応性の高さゆえに選択性を欠くため、難しいものがあります。しかしながら、有機リチウム化合物へのアクセシビリティーには魅力があります。

塩化アリールはその反応性の低さから、クロス・カップリングパートナーとしての使用頻度は高くありませんが、低コストかつ入手容易性が高いところに魅力があります。

で、反応性の高すぎる有機リチウムと反応性の低い塩化アリールをカップリングさせちゃおうっていうのが本報です。

ちなみに著者等は最近、有機リチウムと臭化アリール or 臭化アルケニルとのクロス・カップリングを達成しています(Nat. Chem., 2013, 5, 667.)。この反応の鍵となるのは、トルエン溶媒中、配位子にPtBu3を使うことで、高選択性と高収率を実現させています(リチウム-ハロゲン交換やホモカップリングは抑制される)。

とまあ、既に臭化アリールとアリールリチウムのカップリング反応は開発されているんですが、それでも塩化アリールとの反応はチャレンジングだと言います。

一般的に、嵩高く立体障害の大きいジアルキルビアリールホスフィンやNHC配位子が、有機ホウ素、有機亜鉛、有機スズ、有機マグネシウムとのカップリングに対して有効であることが知られていることから、著者等はそういった配位子を選択して反応開発を行いoptimal conditionsを見出します。

This work
21 examples, 76-98% Yield

触媒システムは、Pd-PEPPSI-IPentかPd2(dba)3/XPhos。Pd-PEPPSI-IPent(52,800 JPY/g, Sigma-Aldrich)は市販されていて、air stableだそうです(ちなみに、Sigma-AldrichでXPhosは876,300 JPY / 100 g)。

どちらの反応条件もhigh yield, mild conditions (rt. to 40˚C), short reaction times (40 min to 4 hr)。Pd-PEPPSI-IPentを用いる場合は、ArLiのslower additionと高濃度での反応が良いそうです。

チエニルリチウムとの反応では、TMEDAの添加と高温(40˚C)が必要となります。また、嵩高いオルト置換有機リチウムとの反応は、室温で反応が進行し、高収率で目的物を与えます。

あと、こんなことも出来ます↓

まあ、有機リチウムを使ってるので、シンプルな基質しか使えませんが、基質の電子状態に関わらずおしなべて収率は良く、機会があったら使ってみたい反応と思いました。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

2014年10月13日月曜日

Catalytic Reductive Dehydration

増税前に行った東京のラーメン屋のメモです↓

-鮮魚らーめん五ノ神水産 らーめん銀だら搾り (780 JPY) memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
入店すると猛烈なタラの匂いが充満している。そして、湿度が凄く高い。店員は3名(平日昼)は皆おしゃれな帽子をかぶってる。箸は無骨な形状の竹箸。
で、ラーメンはというと、
麺は細〜中細のストレート。エッジが立っていてモチモチしていて少し蕎麦に似た食感で旨い。
スープはタラの香りがプーンと立ち昇り、タラの香味は充分。非常に濃厚かつクリーミーなスープ。粘度も高い。動物的な感じられないが、魚臭さがいささか鼻につく。この魚臭さで好き嫌いが分かれるところと思うが、このクセの強さは"ラーメンらしさ"を出すための演出だろうか?
具は鶏の照り焼き、ブロックメンマ、葱等。メンマはなかなか旨い。鶏の照り焼きはラーメンに合わせるにはやや淡白と思った。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Catalytic Reductive Dehydration of Tertiary Amides to Enamines under Hydrosilylation Conditions
Org. Lett., 2014, 16, 680-683.

ヒドロシリル化を介した還元的Dehydrationによってtert-アミドからエナミンをつくるお話です。

ヒドロシリル化を介したアミドの触媒的還元反応に良く知られた反応ですが、たいていアミンへと誘導され、エナミンへの誘導(エナミンでとめる)はあまり探索されていません。

1996年に、hydrosilylation protpcolを用いたアミド→アルデヒドというtransformationをBuchwald等が報告しており、中間体としてエナミンを経由します(Ti(OiPr)4-Ph2SiH2 system, Angew. Chem. Int. Ed., 1996, 35, 1515.)。

それから、本報と同様にtert-アミドからエナミンを作るという報告が永島等が報告しています↓

Chem. Commun., 2009, 1574-1576.

この手法を著者等は"only catalytic system"であり、"high selectivity and yield"と述べています。

で、This workです↓
11 examples, 65-96% yield

はじめ著者等はNHC/ironベースの触媒システムで検討を行いましたが、まあ、色々検討した結果、NHCリガンドも鉄触媒が無くても反応が進行することを見出し、optimalな触媒はKOtBuであることを見出しました。

また、用いるシランは、PMHS (polymethylhydrosiloxane)、TMDS (1,1,3,3,-teramethyldisiloxane)、Ph2SiH2、(EtO)2MeSiHはダメで、(EtO)3SiHと(MeO)3SiHのみがアクティブです。

それから溶媒効果が大きく、THFが最適で、2-MeTHFでもTHFと同等。トルエンでそこそこ反応が進行するも、ジクロロメタンとアセトニトリルではNo Reactionです。

官能基許容性ですが、アルデヒド、ケトン、イミンを含む基質はダメ(孤立オレフィンはオッケー)です。

あとこの反応、反応中のガス(おそらく水素)が発生するといいます。

このことから、脱プロトン化プロセスにおいてヒドリドが塩基として働いている可能性が示唆されます。

ウリ:遷移金属フリー
特徴:tert-アミド→エナミンっていう反応で、触媒にアルコキシドを使ったはじめての例


以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の論文メモでした。

2014年10月12日日曜日

tert-ブチル基の化学 Extra Operation : tert-ブチルエステル合成の新手法

今はもう無くなってしまった(閉店してしまった)八かく庵 柏高島屋ステーションモール店のメモです↓

-豆腐屋ご膳 (増税前 1,580 JPY) memo-
-RATING- ★★★
-REVIEW-
・京とうふ藤野豆乳 (★★★☆☆)
僅かに乳様の香り。豆乳嫌いのボクでも普通に飲めるあっさりとした味。
・出来立ておぼろ豆腐 (★★★☆☆)
"出来立て"と言うだけあって、温かい状態で提供される。木綿豆腐派のボクとしては大満足という感じではなかったが、普通に旨い。それから、秀逸なのは調味料。出汁醤油はけっこう甘味が効いていて上品かつ軽やかな香味で豆腐に良く合う。
あと、塩がとても旨い。滋味深い味。驚くほど豆腐の味を凄く引き立てる塩だ。
梅胡麻は、醤油 or 塩と組み合わせてアクセントとして使うのが良い。
がおかわり自由がうれしい。
・豆腐の彩り揚げだし (★★★★★)
"彩り"部分は、それって必要?と思うが、全体としてかなり旨い。豆腐は軽く揚げてあって、あっさり上品な味わいで食感は大分柔らかい。出汁もそれに合わせてあって比較的薄味で上品な味に仕上がっている。
・豆腐の茶碗蒸し (★★★☆☆)
薄味で上品に仕上がっていて普通に美味しい。しかしながら、ボクの大好きな銀杏が入っておらずがっかり。
・豆腐屋のおばんざい二種
・寄せ豆腐と揚げ湯葉のサラダ
・豆腐田楽二種 (★★★☆☆)
一つは甘い味噌。もう一つは柚子で味付けされた味噌。
・五穀米のちりめん山椒のせ (★★★★★)
これは真剣に旨い。どうでもいいけどとても旨い。日本人好みの味。
・京漬物
・豆腐とおぼろ昆布の味噌汁 (★★☆☆☆)
はっきり言って、いまいち。

-十富 純米酒 (冷酒, 680 JPY) memo-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
苦・甘・酸・渋の味がしっかり出ている。絵に描いたような淡麗辛口。フィニッシュにおいて、切れ上がっていく辛さが特徴的でexcellent。top noteに好ましい苦みを想起させる香りがある。また、温度上昇に伴い、甘味が強まる。

-京山水 (燗酒, 650 JPY) memo-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
燗の温度はnearly人肌で嬉しい。ほんのりと甘さが漂う。淡麗辛口だが、根底に酸・辛・渋・苦がバランス良く存在する。

あと、このお店のお子様ランチなんですけど、とてもお得と思います。内容は、エビフライ、ゆばナゲット、豆腐ハンバーグ、おむすび、オレンジジュース、わらび餅、サラダに加えて大人と同様に出来立ておぼろ豆腐(おかわり自由)が付いて、500円。

なかなかいい店と思いました。関東には新宿と横浜に店舗があるので、機会があったらまた入ってみたいお店と思います。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Preparation of tert-Butyl Ester via Pd-Catalyzed tert-Butoxycarbonylation of (Hetero)aryl Boronic Acid Derivatives
Org. Lett., 2014, 16, 1836-1839.


25 examples, mostly 32 to 94 % yields

新しい(ヘレロ)アリールカルボン酸のtert-ブチルエステル合成法のお話です。

(ヘテロ)アリール誘導体のアルコキシカルボニレーションは、Grignard試薬やリチウム試薬とクロロギ酸アルキルや炭酸ジメチルなどの反応により合成できるようですが、極低温が必要となるそうです(イントロにそう書いてあったけど、Grignard試薬の場合はホントに極低温が必須なの?って思います)。

さらに、操作性の良い条件下でのtertiaryエステルの合成はチャレンジングであると言います。

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ちなみに、最近報告されてたアルコキシカルボニレーションによるtert-ブチルエステルの合成に次のものがあります↓

Skrydstrip et al. Org. Lett., 2012, 14, 284.




まあ、これらの手法だと、COは扱いたくないし、有機金属試薬は官能基許容性が低いしってところなのでしょう。
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さて、This Workの話に戻りますが、著者等の開発したBoc2Oをカップリングパートナーにクロスカップリングは"novel protocol to synthsize tert-butyl esters"なんだそうです。で、その特徴なんですが、塩基が必要ないというのが一番の特徴と思います。このことについて、著者等は、パラジウム触媒のBoc2Oへの酸化的付加によってtert-ブトキシド等価体が形成し、それが続くtransmetalationの際に必要となる塩基の役割を果たすのだろうと推測しています(っていうか、塩基(無機baseとかtert-BuOK)を加えるとBoc2Oの分解が促進されるためか収率が低下してしまいます)。

実際、フェニルボロン酸のピナコールエステルを用いた反応をGC-MSでモニターすると、Boc2Oの分解によって生成したbaseが存在することが確認されています。

ちなみに、最適条件は、「5 mol% Pd(OAc)2, 15 mol% Ph3P, solvent: anhydrous dioxane, 100˚C」です。

それから、基質一般性の特徴ですが
(i) ピリジンボロン酸のピナコールエステルは(電子リッチでも電子プワーでも)moderateからgood Yield
(ii) エーテル、アルキル、ビニル、エステル、ニトリル、アミノ基は許容
(iii) 3-ピリジルボロン酸ピナコールエステルでは他の置換基の置換位置の影響は軽微
(iv) シアノ置換ピリジンボロン酸ピナコールエステルのうち、嵩高い基質は収率減
(v) ピリジン環に対するピナコールボロネートの置換位置は収率に影響する(4-位で激減)
(vi) 芳香環がベンゼン→ボロン酸が良い
(vii) 芳香環がピリジン→ピナコールボロネートが良い
といった感じです。

で、著者等の提案する反応機構はこちら↓

著者らは本法を"more direct, convenient, novel route"といっていますが、ホントそうだなって思いました(ジオキサンが最適溶媒っていうのはちょっと気分悪いけど)。

ボク的には機会があったら使ってみたい反応と思う、二流大でのテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

2014年10月5日日曜日

tert-ブチル基の化学 (4)

ども、チバラキ在住のコンキチです。今年のまだ寒い時期にいったチバラキ地方のお寿司屋さんのメモです↓

-伊澤家 にぎり盛合せ (1,380 JPY) memo-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
まぐろ(2貫、中トロか?)、蛸、海老、玉子、イクラ、とびっこ、白身、帆立、烏賊に味噌汁付き。烏賊がネチョネチョしていて嫌な味が広がっていただけない。あと、軍艦のシャリがネッチョリしていてダメ。白身はなんか不思議な感じな味も悪くはない。
全体的にシャリの食感がどうかと思うレベル。ネタの鮮度もいいとは全く思わなかった。はっきり言って、沼津魚がし鮨に方がマシなレベルと思いました。とりあえず、ボクに二度と行かない店リストにランクインしました。
このお店、当時は食べログでけっこう高評価だったんですが、まあ、評価者の母数が少ないからこんなもんなのでしょう。


閑話休題


前回のブログの続きで、tert-ブチルエステルの開裂についてメモします↓(Recent Developments on the Synthesis and Cleavage of tert-Butyl Ethers and Esters for Synthetic Purposes and Fuel Additives Use (Current Organic Synthesis20129, 137-148.)のメモの続き)

Green's Protective Group in Organic Synthesisには、tert-ブチルエステルは、マイルドな塩基性加水分解条件、ヒドラジン、アンモニアに対して安定で、その開裂は中程度の酸加水分解で達成され、副反応を抑制するために、生成するイソブテンやtert-ブチルカチオンをスカベンジする必要があると書いてあります(多分。あと、酸加水分解の他に強塩基条件下での加水分解例とかも載ってる)。


tert-ブチルエステルの加水分解による開裂は、(i) 古典的な付加-脱離機構か、(ii) tert-ブチルカチオンの特異的な安定性に起因する酸素-アルキル結合の開裂があります。

Green's Protective Group in Organic Synthesis同様、本総説も酸加水分解を中心として、比較的最近の報告が紹介されています。以下、それらのメモ↓

・Brønsted acids (Synlett, 2010, 812-816.)
・85% H3PO4 (73-100% Yield, J. Org. Chem., 2006, 71, 9045-9050.)
N-Cbz、ベンジルエステル、酢酸エステル、グリコシド結合は不活性。但し、ベトベトしたリン酸エステルの形成が深刻なドローバックとなる。
・硝酸 (3-4 eq.), CH2Cl2, 0˚C, 2 hr (Tetrahedron, 2000, 56, 3625-3633.)
チロシンのようにベンゼン環が活性化されたアミノ酸だと、環が定量的にアルキル化される。メチオニンにような含硫黄アミノ酸は酸化してスルホキシドになる。
・96% H2SO4, CH2Cl2, ambient temp., 6 hr (89-98%, Tetrahedron Lett., 2005, 46, 2075-2078.)
シンプルな基質に限定される。
・"microwave, 3-4 min" or  "p-TsOH•H2O (2 eq.), solvent free" (73-96%, Synth. Commun., 2004, 34, 3017-3020.)
シンプルな芳香族エステルに限定される
・Silica gel, 120˚C (quant., Bull. Korean Chem. Soc., 2009, 20, 230-232.)
シンプルな基質に限定
・Silica gel, toluene, reflux, 0.5-7 hr (68-94%, Tetrahedron Lett., 2001, 42, 5163-5165.; J. Med. Chem., 1997, 40, 2525-2532.; Tetrahedron Lett., 1997, 38, 5069-5072.)
極性の高い基質は親和性が高く反応が速い。Fmoc-アミン、アミド結合、trimethy;silylethyl エステル、エチルエステルは影響を受けない。
・ZnBr2 (5 eq.) (62-91%, Tetrahedron Lett., 2000, 41, 2847-2849.; J. Org. Chem., 2004, 69, 6131-6133.)
電子供与性基を有する芳香族・脂肪族エステルに対して有効。電子吸引性基があるとダメ。アルコール、アミドのようなLewis塩基は反応を阻害する。
・montmorillonite KSF, CH3CN, reflux, 3-5.5 hr (80-95%, Synlett, 2002, 826-828.)
ベンジルエステル、メチルエステル、アリルエステル、酢酸エステル、オレフィン、カルバメート、エーテル、ハライドは影響を受けない。
・CeCl3•7H2O (1.5 eq.), NaI (1.3 eq.) (86-91%, J. Org. Chem., 2001, 66, 4430-4432.)
シンブルな基質にはBest。他のエステルがあっても選択的。N-Boc, tert-ブチルエーテルとは反応する。アセトニトリル中、リフラックス (24 hr)条件にして、CeCl3•7H2Oの溶解度をあげてやると、N-Bocは影響をうけないらしい。

・I2 (30 mol%), water, CH3CN, reflux, 4-5 hr (82-92%, Tetrahedron Lett., 2006, 47, 4921-4924.)
(他の)エステル、二重結合、N-Bocは影響を受けない。
・Yb(OTf)3 (5 mol%), CH3NO2, 40-50˚C (90-99%, Indian J. Chem. Sect. B: Org. Chem. Incl. Med. Chem., 2012, 41B, 157-160.)
(tert-ブチル以外の)エーテル、(他の)エステル、N-Fmoc、N-Cbzは影響を受けない。tert-ブチルエーテルとtert-ブチルエステルに対する選択性無し。
・PhMe2SiH (1.2 eq.), triruthenium cluster (1-3 mol%), 40˚C, 7 hr (Eur. J. Org. Chem., 2010, 1021-1025.)

・hexafluoroisopropylalcohol, 100˚C, microwave irradiation (82-96%, Tetrahedron Lett., 2010, 51, 2244-2246.)

こんな感じですか。



ところで、そういえばGreen's Protective Group in Organic Synthesisの第5版が発売されましたね

kindle版が安くて、日米両国で購入可能です。


以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のtert-ブチル基メモでした。