とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Monday, February 12, 2018

遷移金属を捕獲せよ!

神田の"よなよなBEER KITCHEN"に行ったときのメモです。


-ハレの日仙人  Hare no Hi Sennin (730 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
バーレーワインタイプ。Alc. 8.5%。苦味度:68 IBU。色度:80 EBC (ブラウン)。
strawberry-like, ripe apple like, 杏様、sweet, etc.な複雑玄妙で魅惑的な香り。
fruityでrich, mellowなtaste。濃厚かつ良質なfortified wineのようなsweetなコク深い味わいに心を揺さぶられる。finishの心地よい渋みが心憎い。fruitが数年かけて熟成するとこういう味になるのかなっていう感じの香味と思いました。究極のビールの一つと思います。

-よなよなリアルエール Yona Yona Real Ale (830 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
アメリカンペールエール。Alc. 5.5%。苦味度:36.5 IBU。色度:24.5 EBC (カッパー)。
リアルエールなので常温に近い温度で提供される。提供時は泡が大分下がっていて、泡が上がるめで待ってから飲むように言われる。
泡がとってもcreamy。バナナを基調とした少しspicyな香り。tasteは紅茶を想起させる上品な味わいで、締まったスレンダーな甘さを感じる。温度上昇に伴って、香味の拡散性が劇的に高まる。ちょっとおいて、温度が少し上がるのを待ってから飲むのが良いと思う。

-元祖かぶらぎ豚 Pork Plain (650 JPY+tax)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
外はパリッと張りがあって、中はfreshな肉々しさ。普通に美味しい一品。



閑話休題



こんな文献を読んでみました↓

Dithiocarbamates: Reagents for the Removal of Transition Metals from Organic Reaction Media
Org. Process Res. Dev., 2015, 19, 1369-1373.

クロスカップリング反応に威力を発揮する遷移金属は、反応の触媒としてはとってもいいヤツですが、残留物としてはなんとも嫌なヤツです。特に、医薬品合成のレイト・ステージでパラジウムが触媒するクロスカップリングがあった暁には、残留パラジウムに神経を尖らせることになるのでしょう。

で、本報のお題は、ある種のジチオカルバメートが遷移金属除去にとっても効果的だというお話です。

さて、著者等がジチオカルバメートが遷移金属の除去に有効だということを見出した経緯を書きましょう。
発端は、(Bristol-Myers Squibbの)著者等のグループがHIV attachment inhibitorの中間体である3の合成研究です。反応終了後、オープンエアでEDTA洗浄することでCuの除去を試みました。EDTAで銅を除去するためには銅の酸化状態がCu2+でなければならず、スケールアップすると、Cuを望みの酸化状態にすることが難しくなりました。さらに、KOH, O2, Cuのコンビネーションによって4が副生するといいます。

要は、EDTA洗浄で効果的に銅を除去するためにはエアレーションして酸化状態をCu2+に揃えてやればいいと思うんだけど、そうするとKOH, O2, Cuの影響で副反応(4の副生)が促進するというわけです。なので、このシステムでは、低酸素濃度下でのCu除去が必須となります。

文献調査の結果、ジチオカルバメートが、30年以上もの間、工業的な水処理において、ppbレベルの重金属の除去に使われていることが分かりました(Plat. Surf. Finish., 1982, 69, 67-71.)。ジチオカルバメートは、酸化状態に関係なく、殆どの遷移金属と安定な錯体を形成しするそうです(Transition Met. Chem., 2006, 31, 405-412.; Prog. Inorg. Chem., 2005, 53, 71-561.; Prog. Inorg. Chem.200553, 1-69.)。

このような情報をキャッチして、バルク供給している三つのジチオカルバメートを使って、Cu除去の検討を開始します。

Commercially Available Dithiocarbamates 
(readily available in bulk quantities)

因みに、ジチオカルバメートは、pH 7.0以上で安定で、低pHでは分解してアミンとCS2を放出するという性質があります。

で、検討の結果、毒性とパフォーマンスを考慮して、APDTC (Ammonium PyrrolidineDiThioCrabamete)を採用します。除去操作は至って簡単で、

a) 反応後、50度まで冷ます
b) 窒素雰囲気下、APDTA (30 mol%使用しているCuI に対して2.27 eq.)を加えて1時間撹拌
c) セライト濾過し、さらに精密濾過(孔径: 1 µm)

です。処置後の有機層の残留金属濃度は、APDTA処理した後の濾過温度が50℃で、20-24 ppm (15 g〜90 kg scale)。30˚Cで3 ppm (156 kg scale)です。そして、4の副生も0.10%(HPLC area %)に抑えられます。

さらに、種々の遷移金属錯体を溶かしたモデル溶液(4000 ppm)を作って、金属に対して2.2 eq.のAPDTCで同様の除去操作を行うと、Pd, Cu, Al, Fe, Ni, Ruは<10 ppmの濃度まで除去できました(Rhは<10〜85 ppm)。

それでは、最後にUllmannカップリング (1+23)以外の反応例への応用をメモしてフィニッシュしたいと思います↓

Miyaura Boration

Heck reaction


Sonogashira Coupling


Ru-catalyzed Hydrogenation

使った金属に対して、たった2.2 eq.のジチオカルバメートを作用させて濾過するだけで、こんなに高効率で金属を取り除けるなんて、マジ驚きです。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。


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Friday, February 9, 2018

このアプリがしゅごい:TLC Chemistry Tools

日本最古の居酒屋との呼び声が高い神田司町の"みますや"に行ったときのメモです。

-谺 (熱燗) (350 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
特に可もなく不可もなしのおサケです。

-まぐろさしみ-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
厚めに切り出された赤身は瑞々しく、口に中でハラハラと解けていく(自身ないけど、メバチマグロでしょうか?)。薬味の山葵は多分本山葵。あとレモンが添えられている。で、驚いたのが、レモンの酸味と赤身がけっこうよく合う。大根のツマは少し太めに切り出されていて歯ごたえが楽しめる。

-どぜう丸煮-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
泥鰌と薄めにスライスされたささがきごぼうの煮物。ツユは甘く、薄めの味付け。泥鰌一匹を丸々口の中に放り込んでいく醍醐味はいいね。比較的素に近いであろう泥鰌の味を楽しめるのが良い。あと、牛蒡と泥鰌ってよく合うなって思った。ささがきごぼうは苦手なんだけど、かなり薄く小さく削り出されたものは、なかなか良かったです。牛蒡の
土臭くてbodyの強い風味がアクセントとしてGood。
ツユは最初からぬるい状態で提供される。ボク的にはアツアツの方が断然好きだな。

-肉豆腐 (450 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
「どぜう丸煮」とは違って、かなりアツアツの状態で提供される。味はあまり染み込んでいない。っていうか、殆ど染み込んでない。豆腐は不恰好な形に切り出された木綿で、その見てくれとは裏腹に、抜群に旨いレベルで、味、歯応え共に秀逸。
お肉の方は、けっこうくさ味が木になるレベル。

-カレーそば (700 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
しっとり感、ツユとの調和、それから蕎麦のちょい溶け感が出ていて悪くない。居酒屋でこのクオリティなら充分か。



店内は古風ながら小綺麗で、けっこう広い。テーブル席の他に小上がりの座敷が幾つかある。清潔感のある和的な雰囲気を楽しめる佇まい。但し、さっぱり分煙されていないので、近傍で煙草を吸っている人がいると少し残念な気持ちになります。
禁煙キャンペーンのポスターがあまり目立たないところに貼ってあって、ちょっとうけます。


閑話休題


ども、(自称)Apple信者のコンキチです。
Appleと言えばiPhone。iPhoneと言えばアプリ。みなさん、iPhoneアプリ使ってますか〜?
ボクは、化学クラスタの端くれとして、ACS Mobile (powered by American Chemical Society)を愛用しています。


新着論文をチェックするアプリは他にもあるけど、老舗だけあってACS Mobileが一番使い勝手がいいと思います。化学クラスタのキラーアプリと言っていいんじゃないでしょうか。iPhone 3G登場からもうすぐ10年。化学アプリもいろいろリリースされてきたと思いますが、ボク的には、ACSの巨大なコンテンツをバックボーンに持つこのアプリは、長きに渡って化学クラスタ最強アプリの座に鎮座していました。

しかし、およそ半年前、とうとうACS Mobileを打ち負かすアプリとの邂逅を果たしました。その名は、

TLC Chemistry Tools


無料アプリです。


名前の通り、有機合成実験化学者にとって、最も馴染みの深い簡便かつ基本的な分析法であるTLC (Tin Layer Chromatodraphy)向けアプリです。その機能は(ざっくり言うと)、

i) TLCプレートの選択的画像取り込み
ii) Rf自動計算
iii) レポート出力

です。

はっきり言って画期的なアプリと思います。ボクはいままでTLCをあげたら(展開したら)、板をコピー機でコピーして実験ノートに貼り付けていましたが、TLC Chemsitry Toolsを使いまじめてからは、iPhoneで撮影したTLC画像をプリントアウトして実験ノートに貼り付けています。これでコピー機を発色剤が付着したシリカゲルで汚すこともなくなりました。正に、ボクにとっては、

神アプリ

なのです。ついでに、漢字Talk 7.5を彷彿させるアイコンデザインに、往年のマックユーザーは涙することでしょう

以前はTLCプレートをコピーするのが嫌で嫌で仕方がありませんでしたが、今では、"どんとこいTLC分析"というくらいTLCプレート画像を実験ノートに貼りたくて貼り付けたくて仕方ありません。他人のあげた(展開した)TLCも自分の実験ノートに貼り付けたいくらいです。

さて、TLC Chemistry Toolsへの賛辞はこれくらいにして、その使い方を簡単に紹介したいと思います。

1st Step   画像取り込み

(1) アプリを起動するとGalleryが立ち上がる(左の画像)。
(2) Galleryの"+"をタップすると真ん中の画像のようになる。
(3) 真ん中の画像のアイコンをタップすると撮影モードに(右の画像)。撮影されるのは赤く囲まれた部分。アプリは積極的に長方形状のものを補足しようとする。目的のTLCブレートが赤で覆われたとことでキャプチャー(撮影)する。

2nd Step   画像編集

(4) 撮影すると左の画像に(下にスクロールしたのが真ん中の画像)。撮影するたび、アイコンの左側に写真が貯まっていく。
(5) 「Crop」ボタンを押すとトリミングモードに(右の画像)。四隅の"◯"を動かして不要な部分をトリミングして"Complete"(この機能はまず使わなくてオッケー)。

3rd Step   Rf値計算


(6) 「Modify」ボタンを押して左の画像へ。上下の△▽マークを動かして、Rf値算出に不要なエリアを赤くする。 アイコンをRf値を算出したい目的のスポットにドッラグしてBack。
(7) Rf値が計算されている(右の画像)。最初からRf値がオートで計算されている場合もある。

4th Step   プリントアウト


(8) 「Export」ボタンを押しと左の画面に。"ScreenShot"を選択するとスクリーンショットが保存される(右の画像)。
(9) 画像をメールでPCに送り、適当な大きさで印刷する。ボクは、ワード(MS Word)に印刷の向きを横にして貼りつけて、2アップで印刷してます。

以上が、ボクのスタンダードなTLC Chemistry Toolsの使い方です。
日付、移動相、Noteの入力欄があって、TLCのデータ管理メモも充実していると思います。

どうですかこのアプリ、実験化学者的にとって、かなりイケてると思いませんか?
このアプリの普及活動に人生の一部を捧げたいと思う、二流大出のテクニシャン (研究補助員)の化学アプリ覚書でした。

P.S.   TLCプレートを手書きで実験ノートに描いている不心得者がいるけど、手書きのTLCの画って多くの情報が欠落してしまうので、ホント勘弁して下さい。





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Thursday, February 8, 2018

Iodomethane Power Make-Up!

龍潭っていう沖縄料理のお店に行ったときにメモです。

-琉球クラシック (580 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
新里酒造。Alc. 25%。3年古酒。
穏やかながら重厚感のある香り。仄かにpowderyで、green調のbotanicalな香り。tasteはmildで、アルコールの重さを全く感じない。穏やかなpowdery (イランイラン様), green, botanical tasteで、ほんのり上品なsweetさを感じる。finishに心地よいbitter。この焼酎、かなり旨い。


-海ぶどう (600 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
まず、磯の香りが一閃。海を想起させる。塩味は上品で良い塩梅。塩辛いという感じは全くない。そして、フィニッシュにはイクラみたいな魚卵ライクなtasteが微弱に漂う。
海ぶどうを添えられている甘めのポン酢に付けて食べると、ポン酢の塩味と海ぶどうの淡白さのコントラストがはっきりして面白い。ポン酢をつけることで、味に強度up↑し、独特の可愛らしいプチプチした食感とのシナジーを感じる。と同時に、魚卵ライクの味の強度もup↑。食感、味ともの非の打ち所なし。

-豆腐チャンプルー (730 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
具材は、豆腐、豚肉、キャベツ、もやし、人参、ニラ。(木綿だと思うけど)豆腐の食感ともやしの瑞々しくシャキッとしていて柔らかい食感、キャベツはシャッキリ感の残っている。野菜に旨味を全面に出した薄化粧な味付けで、塩味の利かせ方が絶妙。いくらでも食べられる勢いの旨さ。


閑話休題


こんな一連の文献を読んでみました↓

An Efficient New Protocol for the Formation of Unsymmetrical Tri- and Tetrasubstituted Ureas
Tetrahedron Lett.199839, 6267-6270.

A New Protocol for the Formation of Carbamates and Thiocarbamates using Carbamoyl Imidazolium Salts
Tetrahedron Lett.199940, 2669-2672.

Carbamoylimidazolium salts as diversification reagents: an application to the synthesis of tertiary amides from carboxylic acids
Tetrahedron Lett.200344, 7485-7488.

Carbamoylilidazolium and thiocarbamoylimidazolium salts: novel reagents for the synthesis of ureas, thiourea, carbamates, thiocarbamates and amides
Tetrahedron200561, 7153-7175.

Achieving functional group diversity in parallel synthesis: solution-phase synthesis of a library of ureas, carbamates, thiocarbamates, and amides using carbamoylimidazolium salts
Tetrahedron Lett.200849, 5279-5282.


CDIとMeIのコンボで多置換の非対称ウレア、カルバメート、チオカルバメート、tert-アミドを合成するというお話のメモです。


要は、Carbamoylimidazolium saltsがカルバモイルカチオン等価体として優れているので推して参りますっていうお話で、N,N-二置換カルバモイルイミダゾールをヨードメタンでメチル化して活性化するのがキモです。

さて、カルバモイルカチオン等価体には以下のものがあります。


Isocyanatesは学部の教科書に必ず出てくる一置換カルバモイルトランスファー試薬で、1級アミンとトリホスゲンから合成されます(アシルアジドのCurtius転位は置いておく)。トリオホスゲンの使用は少し憂鬱になりますね。
Carbamoyl chlorideは、最も広く用いられているN,N-二置換カルバモイルカチオン等価体ですが、市販い品は限られているので、多くの場合トリホスゲンを使って合成することになるでしょう(憂鬱です)。さらにこの手の化学種は安定なものばかりとは限らず、不安定なものもあります。
Carbamoylimidazolesは、N-一置換体であれば、カルバモイルカチオン等価体として機能しますが、N,N-二置換体は極めて安定で、求核剤の求核攻撃を受け付けなくなります。

Liebigs Ann. Chem.1957609, 75-83.; Org. Lett.201214, 2814-2817. 

ところで、アシルイミダゾールをN-アルキル化すると、共鳴安定化が崩れ、求核攻撃に対する反応性が増すそうです(J. Org. Chem., 1982, 47, 4471-4477.; Synthetic Commun., 1973, 3, 111-114.; Chem. Pharm. Bull., 1982, 30, 4242-4244.)。この"活性化"の着想をN,N-二置換カルバモイルイミダゾールに応用したのがCarbamoylimidazolium saltsで、N,N-二置換カルバモイルカチオン等価体として効果的に機能します。合成に使う試薬はCDIとMeIで、トリホスゲンに較べて圧倒的に好感触です。収率は概してエクセレント。


ざっくりした物性はこんな感じです↓


そして、ウレア、カルバメート、チオカルバメート、tert-アミドへのトランスフォーメーションはなかなかパワフルです↓

それから、選択性がちょっと興味深いです↓



ステップ数は増えちゃうけど、使い勝手の良さそうな反応と思いました。
機会があったら使ってみようと固く胸に誓う二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。



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Wednesday, February 7, 2018

アルデヒドを取り除け!!!

ホントにたまにだけど、お昼のお弁当に食べている神田志乃多寿司のお稲荷さん(志乃多寿司)のメモです。

-太巻詰合せ (1,047 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
太巻×2、お稲荷×4、干瓢細巻×4の詰め合わせ。
控えめの酸味の酢はJuicyで、口の中での解け具合は良好。
稲荷は、油揚げが少しゴワゴワした食感で、穏やかに甘く、酢飯との調和具合が良い。
干瓢巻は、張りのある海苔の食感が楽しく、干瓢にコク深く甘い味が染み渡っている。
太巻の具が秀逸。胡瓜と蓮根のカリッコリッとした食感と玉子のフワッとした柔らかさと上品な味わい、それから干瓢と椎茸に深く染み込んだ滋味深い甘さにシナジーが素晴らしい。


神田志乃多寿司の営業時間は朝7:30から午後6時。朝の通勤途上で買うのに便利です。但し、火曜は定休日なので気をつけろ。それから、茶巾は9:30からです。


閑話休題


有機合成系ブログの各所(「ケムステ」さんや「たゆたえども沈まず」さん)で既に(とっくの昔に)取り上げられているけど、ボクも読んでみました、この文献を↓

Liquid-Liquid Extraction Protocol for the Removal of Aldehydes and Highly Reactive Ketones from Mixtures
Org. Process Res. Dev., 2017, 21, 1394-1403.

モデル化合物(エステル、アルコールとかいろいろ)とアルデヒドの等モル混合物からアルデヒドを効率的に取り除くっていうお話です。アルデヒドのbisulfite adductが概して水溶性であることを利用して、液-液抽出によりモデル化合物が溶解している有機相とアルデヒドのbisulfite adductが溶解している水相とを分離するという原理です。

アルデヒドと亜硫酸水素ナトリウムとの付加体 (α-ヒドロキシスルホン酸ナトリウム)は、概して結晶性であり、アルデヒドの精製に利用できることが古くから知られています(bisulfite addutを結晶として取り出し、塩基などで処理して再生する)。もう20年近く前の話だけど、ボクは大学(院)を卒業して香料会社に就職したんだけど、香料化合物にアルデヒドはけっこう多いので、上司に速攻教えてもらいました。
あと、アルコールを酸化してアルデヒドにして、重亜硫酸ソーダ水溶液で酸化剤をクエンチして液-液抽出したら、アルデヒドがなくなっちゃったなんていう笑い話も聞いたこともあります(bisulfite adductとして水相におちてただけ)。
なので、こういった知見は多くのケミストに周知されていて、企業でもノウハウとして独自に蓄積されているんだろうと推察します。ただ、系統だったまとめは見たことがなかったので、細かいprocedureを提示してくれた本報はけっこう価値が高いと思います(本報でも、ラボでは主にアルデヒドの精製に使われ、ラボ以外ではアルデヒドの除去に多様されると書いてあります)。
それから、浅学で知らなかったんですが、反応性が高ければケトンも付加体を形成するんですね。勉強になります。

さて、標準的な手順はこちら↓

Step 1   精製したい化合物 (1.4 mmol)とアルデヒド (1.4 mmol)をMeOH (5 ml)に溶解する
Step 2   satu. NaHSO3 aq. (25 ml)を加え、30 secシェイク
Step 3   水 (25 ml)で希釈し、10% AcOEt in Hexane (25 ml)で抽出

対象となるアルデヒドや基質(アルデヒドと分離したい化合物)によっては、

a) 極性の低いアルデヒドや脂肪族アルデヒド→Step 1のMeOH (5 ml)をDMF (10 ml)にチェンジ。Step 3の中抽出回数を2回に増やすし、DMFを除くため水洗3回(25 ml, 10 ml, 5 ml)。
b) 電子リッチなオレフィン(cirtonellal, α-terpineol, α-pinene)を回収する場合は、電子リッチなオレフィンと反応するSO2の溶解度が小さいヘキサンを抽出溶媒に用いる

といったモディファイが必要となります。


このアルデヒド除去法が適用可能な基質(非アルデヒド=アルデヒドと分離したい化合物)として、エステル、カルボン酸、アミド、臭化アリール、tert-アルコール、ベンジルアルコール、フェノール、ニトリル、塩化ベンジル、エポキシド、アニリン、アセタールが適用可能です。逆に禁忌なのは、塩基性の高いアミンです(bisulfite ion (pKa 7.2)との酸塩基反応によるため)。

この手法でアルデヒドならおしなべて高効率で除去できます。
ケトンの場合は、除去率に大きな差がでて、そのSubstrate Scopeはこんな感じです↓



それでは、最後に二流大出の一テクニシャン(研究補助員)の生意気な感想で締めたいと思います。この論文は、広範な基質一般性を示している点については評価に値すると思うけど、少し素人臭さを感じるんですよね。こんなところが↓

A) プロセスの雑誌(Org. Process Res. Dev.)なのに、飽和の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を使っている。プロセスケミストは飽和溶液なんか絶対使わない。そもそも、基本的に飽和溶液を作るのはけっこう難しい。さらに、亜硫酸水素ナトリウムの飽和溶液の濃度は43-44%程度になると思うんだけど、猛烈に濃いよね。しかも、高濃度の亜硫酸水素ナトリウム水溶液って凄く臭い(健康に悪そうな匂い)です。で、たった1.4 mmolのアルデヒドを取り除くのに飽和溶液を25 mlも使用しています。正直、魅力半減です。

B) 「分液操作だけでアルデヒドを取り除く」っていうと、いかにも簡便な感じがするけど、30秒間ずっと分液ロートを振ってるのはけっこうキツイから(この前、時計見ながらやってみた)。当然、処理量が増えればよりキツくなります。この論文の手法って、ラージスケールでより真価を発揮する感が高いので、"stirring (撹拌)"という操作に方が(プロセス的にも)好ましいと思います。はっきり言って、もっと低濃度の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を使って数時間撹拌でもいいとボクは思います。

C) 実際の反応の後処理にこの除去法を使った例が欲しかった。


それから、最後の最後に一言↓

粉物の亜硫酸水素ナトリウムは、ピロ亜硫酸ナトリウムと(Na2S2O5)の混合物だから、気をつけろ!

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Saturday, February 3, 2018

女には向いてる職業

先日、大宮のecuteに入ってるかにチャーハンの店に行ったときのメモです。

-半熟たまごのかに玉チャーハン (800 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
玉子の半熟加減はGood!カニも普通に風味が出ていていい感じ。チャーハンの味付けは、少し胡椒強めだけど、いいと思う。パラパラ系のチャーハンで、そのパラパラ感は秀逸。しかしながら、チャーハン部全体が湿っていて、味も水っぽくなっていていけない。この水っぽさが全てを台無しにしている。食感も雑炊やお茶漬けチックになってしまっている。他が良かっただけに残念。


ところでこのお店、行く度に味にばらつきがあると思うんだよね。(普通のベーシックな)かにチャーハンを2回食べたことがあるんだけど、

1回目の感想
-RATING- ★★☆☆☆ 
-REVIEW- 
ご飯はパラパラほどけて良い食感。口の中で気持良くほぐれていく感じ。味付けはおとなしく、パンチに欠けてやや欲求不満。チャーハンの中に入っているキュウリとレタスは、ボク的にどう考えてもチャーハンの味とは不協和音以外の何ものでもない。あと、カニがはっきり言って不味い。
(see http://researcher-station.blogspot.jp/2013/06/friedel-crafts.html)

2回目の感想
-RATING- ★☆
-REVIEW-
パラパラ感が秀逸。(個人的にチャーハンとは合わないと思っている)レタスとキュウリが入っているけど、その量は軽微。そのため食感のアクセントとなっていて悪くない。かにの身は少し冷たいが、嫌な匂いはほとんど無い。味付けはなかなかいい感じ。欠点は少し塩辛さが気になる程度。


やっぱ、調理担当が複数人いるとこういうこともあるのかな?もしそうだったら、同じお金出してるのに出てくる商品のクオリティが違うわけで、ちょっと不愉快かな。


閑話休題


タイトルにいきなり「女」とか書いてしまって、女性並びにフェミニストの皆さん、すみません。P. D. ジェイムズの「女には向かない職業」へのオマージュなだけです。


「女には向かない職業」と言えば私立探偵ですが、橘玲氏曰く、女性にオススメな職業(=女には向いてる職業)があるそうです。橘氏の著作「専業主婦は2億円損をする」に書いてあったんですが、それはスバリ、

看護師

です。

何故看護師が女性にオススメなのかを、幸福に絡めて以下に解説(橘氏の本の紹介を)していきましょう。

橘氏の書によれば、幸福とは自由(=自己決定権=好きなように生きる)のことであり、それを具現化するためには経済的に独立していなければいけないとあります。要は、お金が重要っていうことです。

ところで、人間には三つの資本があると言います。それは、金融資本(お金)、人的資本(働く力)、社会資本(絆)の三つです。金融資本(お金)を最初からたくさん持っている人はまずいないでしょうし、社会資本(絆)はお金(経済的独立)には直結しません。従って、「お金を稼ぐ力」=「はたらく力」である人的資本が最も重要な資本となります。そして、多くの人は人的資本を使って仕事をしてお金を得ます。なので、仕事選びが重要になってきます。

それでは次に、仕事の種類を考えてみましょう。仕事には、マックジョブ、スペシャリスト、クリエイターの三種類があって以下のような特徴があります。

(1) マックジョブ:マニュアル化された仕事。仕事を労働とみなす。収入は低い。マニュアル通りにやっていれば責任を問われることはない。典型例はマクドナルドのアルバイトやバックオフィス業務。

(2) スペシャリスト:高度プロフェッショナル。大きな責任を担うかわりに高い収入が期待できる。仕事をキャリアとみなす。拡張不可能な仕事。典型例は医者や弁護士などの士業。

(3) クリエイター:拡張可能な創造的な仕事。仕事を天職とみなす。成功確率はとても低い。クリエイターはサラリーマンにならない。典型例は起業家、作家、アーティスト。

これらの三つの仕事のうち、マックジョブは低収入でうだつが上がらず、クリエイターは成功確率が低すぎるので、普通の人はスペシャリストを目指すのが順当でしょう。スペシャリスト=高度プロフェッショナルと書きましたが、そのスペクトラムは広範と思います。なので、自分の力量(人的資本の大きさ)に合致した難易度のスペシャリストを目指すというのが現実的と思います。

ということで、女性にオススメな - 分かりやすい括りの - 職業は、

医者や弁護士ほど難易度が高くなく、やりがいと収入、おまけに安定も兼ね備えたスペシャリストの仕事、ついでに大半が女性である

看護師

なのです。

参考までに、2015年の正看護師、准看護師、保育士、介護士の平均年収は以下の通りです↓

正看護師/ 478万円
准看護師/ 395万円
保育士/ 323万円
介護士/ 378万円

どうですか、進路に悩んでいる女子高生の皆さん、看護師を目指してみませんか?
離婚して一人で生きていかなければならなくなっても、職歴のない専業主婦なんかと違って、食いっぱぐれることはないと思いますよ(依存しない生き方=自己決定権=好きなように生きる)。あと、個人的にはリケジョ(女性研究者=パリバリのスペシャリスト)なんかもいいんじゃないかと思います(白衣は女を三分上げます。多分。)。

でも、平均年収478万は、ちょっとっていうか、結構安いよね。

以上、二流大出の心はマックジョブ従事者なテクニシャン(研究補助員)の読書感想文でした。




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Monday, January 29, 2018

"N"か"O"か?

三ノ輪にある土手の伊勢屋の元五代目?(谷原 秋光さん)が浅草で手がける天丼屋「下町天丼 秋光」に行ったときのメモです↓

-天丼 - ロ : Tendon - RO (1,900 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
天タネは、穴子一本 / イカのかき揚げ / 海老一本 / 野菜。野菜はししとう。海老がプリンプリンで瑞々しい。穴子はフカフカでいい感じの力強い香味。イカは柔らかく弾力に富む。
衣は薄く、サクッと揚がっている。甘じょっぱいタレは旨く、天婦羅にBest Match!
はっきり言って、天婦羅はとても旨い。
でも、ご飯が全然ダメ。べっちょりしていて、折角の天婦羅の旨さを台無しにしている。米粒も小さい感じ。
天婦羅は★★★★★、天丼として★★☆☆☆
丼もの屋で飯が不味いのは致命的。悔い改めて欲しいと思いました。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

N- versus O-alkylation: Utilizing NMR methods to establish reliable primary structure determinations for drug discovery
Bioorg. Med. Chem. Lett., 2013, 23, 4663-4668.

ところで、例えばピリドンなんかをアルキル化した場合、N-AlkylationとO-Alkylatiotionのどちらが起こっているのかといったことが問題になるかと思います。


まあ、単純なピリドンくらいであれば、N- versus O-の判定はFT-IRが有効かもしれません(C-O伸縮振動 〜1640 cm-1)。しかしながら、複雑な化合物になってくるとIRピークが重なったりして判定がつかなくなることもしばしばでしょう。

そこで、著者らは、ピリドン類に限らずN-アルキル化とO-アルキル化が問題となるな官能基を有する化合物の位置選択性を判定する方法を提案しています。

それは、

Method 1: HMQCと HMBCで1H-13Cの結合をみる
Method 2: ROESYで1H-1Hの空間的距離をみる
Method 3:13C NMRの化学シフトを比較する (HSQC測定が便利)

の三つのうち、少なくとも二つを組み合わせることで正確に置換位置 ("N-" or "O")を決定することができるというものです。

ボク的に興味深いのは、13C NMRの化学シフト比較で、本報でも8つのN- versus O-の組み合わせに対して多くの紙面を割いて紹介しています↓


括弧内の数値はACD/NMR Predictorsで計算させた数値です。昔から13C NMRの計算値は実測値と良く合ってたけど、ドンピシャですね。で、新しくできた結合の炭素のケミカルシフトは、O-アルキル体がより低磁場に、N-アルキル体はより高磁場に現れ、その差は少なくとも10 ppm以上あります。プレリミナリーな構造決定には13C NMRの化学シフトの値が大きな威力を発揮するんではないでしょうか(HSQCで測定すればサンプル量も節約できるし)。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のNMRメモでした。


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Sunday, January 28, 2018

もっと、トリフェニルホスフィンオキシドを減らせ!

先日、日本橋のお多幸でランチしてきたときのメモです↓


-とうめし定食 (670 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
名物の"とうめし"、煮物 (おでん?)、大根サラダ、沢庵漬け、蜆の味噌汁、薬味の葱のセットの定食。
とうめしのご飯の上に載っているお豆腐は、ふわっふわで、甘じょっぱいツユで煮込まれていて味が良く沁みている。豆腐に厚みがあるので、中心部までは達しておらず、味のグラデーションが楽しめる。ご飯は薄めの茶飯(醤油で炊いているらしい)で、米粒がしっかり立っていて、かなり硬い。甘じょっぱいツユは硬めのご飯に合うと思うけどボクにはちょっと硬過ぎる。薬味の刻み葱がアクセントとして秀逸で、とうめしのシンプルな良さを損なうことなく、良いアクセントになっている。
煮物は、大根、煮玉子、牛すじ、こんにゃく、葱。何もしっかり味が沁み込んでいて色が黒いが、意外と穏やかな味で、普通に旨い。個人的には、こんにゃくと葱が特に旨いと思った。
沢庵は甘めの濃い味でボク好み。大根サラダはしゃっきりしていて、すっきり爽快。味噌汁は、まぁ普通(具の蜆は嬉しい)。
CP高く、とうめしのお豆腐は文句なしに旨いんだけど、ご飯の硬さだけが硬すぎてボクには合わなかった。
こういうのがこの値段(たった670 JPY)で社食にあったら、毎日食べたいね。


この"とうめし"っていう料理は基本もの凄くシンプルじゃないですか?なんとか自分好みにカスタマイズしつつ再現できないかと思い、やってみました↓

-オトコのとうめし-
-RATING- ★★★★☆
-RECIPE-
(1) 近所のスーパーで売っている地元のお豆腐屋さんの木綿豆腐一丁を4枚に切り分け、鍋に入れる。
(2) 「上野藪そばつゆ」を100 cc加える。
(3) 「人形町今半すき焼わりしたストレートタイプ」を100 cc加える。
(4) 火にかけて、煮立ったら弱火で10分間煮込む。
(5) キッチンペーパーをかけ、stood overnight。
(6) 翌日、一合炊きの羽釜でご飯を炊く(ヒトメボレ使用)。かめびしの薄口醤油小さじ1を加えて炊く(30分給水させた後、火にかける。強火で4-5分で沸騰する。沸騰したら蓋をして最弱の弱火で8分。炊き上がったら20分蒸らす。)
(7) 葱を適量刻んでおく。
(8) お豆腐の鍋を火にかけて、温め直す。
(9) 茶飯を茶碗によそって、お豆腐を載せ、ツユを適量掛け、topに刻み葱を適量載せて出来上がり。
-REVIEW-
ご飯はボク好みのちょい硬め。はっきり言って、味はかなりいい線いってると思います。個人的な感想としては、お豆腐と調味料はいいものを使うのがキモと思いました(上野藪と今半のツユ使ってまずいわけないです)。


閑話休題


以前、「トリフェニルホスフィンオキシドを減らせ」と題したお話をメモしましたが(see http://researcher-station.blogspot.jp/2013/08/blog-post_25.html)、その時に読んだ文献を凌駕する勢いの文献が出たので、そのメモです。

「たゆたえども沈まず」さんでも取り上げていましたが、こんな文献を読んでみました↓

Removal of Triphenylphosphine Oxide by Precipitation with Zinc Chloride in Polar Solvent
J. Org. Chem., 2017, 82, 9931-9936.

Wittig反応や光延反応などで副生するトリフェニルホスフィンオキシド (TPPO)をカラムクロマトすることなしに効率的に除去するというお話で、"永遠のテーマ"感満点のお話です。

TPPOの除去法は"永遠のテーマ"感たっぷりなだけあって、これまでにもワークアップ過程でTPPOを除去する試みが報告されています。例えば、

a) Modified Merrifield Resin (Lipshutz et al. Org. Lett., 2001, 3, 1869-1871.)
Merrifield ResinとNaI用いた除去方法。TPPOだけでなくTPPの除去にも有効。Stilleカップリング、根岸カップリング、鈴木カップリング、熊田・玉尾・コリューカップリングで配位子に用いたTPPを除去できる。Staudinger反応後の過剰のTPPとTPPOの除去もできる。官能基許容性に優れ(アミンやアルコールがあっても大丈夫)、単離収率に影響を及ぼさない。

b) オキサリルクロリドでワークアップ (Gilheany et al. Org. Biomol.Chem., 2012, 10, 3531-3537.)

Wittig反応とAppel反応について実施例が示されています。TPPOとオキサリルクロリドがシクロヘキサンに難溶性のクロロトリフェニルホスホニウムクロリドを与えることを利用したワークアップ法です。
あとWittig反応に関してですが、この処理はオレフィンのE:Z ratioに影響を及ぼさないことに加えて、原料のアルデヒドは概してシクロヘキサン層に溶解しないことから、残存したアルデヒドの除去にも効果を発揮します。

c) 高結晶性TPPO錯体の形成 (Margaret et al. J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, 639-640.)
酸性プロトンをもつ化合物とTPPOが結晶性の高い錯体を形成すること利用してろ別するという狙いと思います(この論文はTPPOと酸性プロトンを持つ有機化合物が錯体を形成して結晶性の高い大きな結晶になりますよという話で、反応系からのTPPO除去が目的ではないです)。この文献では以下の化合物がTPPOとの錯体を形成すると報告されています。
共結晶の作り方は、トルエンに溶かして室温でゆっくりエバポするというものです(トルエンに溶けない場合は、THF aq.からエバポ)。

d) AcOHを使ったワークアップ (信越化学, US Patent 5,292,973 Mar 8, 1994.)
Wittig反応後に反応液に水を加え、分液して取り出した有機層をヘキサンで溶媒置換した後、そこに酢酸を加えると、生成したオレフィンを含むヘキサン層(上層)と、副生するTPPOを含む粘度の高い酢酸層(下層)に分離する。下層を分離することで、TPPOを95%以上除去可能。

e)  TPPO-DIAD-H2錯体をろ別 (Bristol-Myers Squibb, J. Org. Chem., 1996, 61, 7955-7958.)
上記Schemeの上段の反応に場合、トルエン中で光延反応を行い、加水分解までやった後、塩酸を加えてpHを6-7に調整し、析出しているTPPO-DIAD-H2(1:1)錯体(単結晶X線結晶構造解析で確認している)をろ別することで80-85%のTPPO-DIAD-H2錯体を除去できます。続いて水層を取り出して塩酸で酸性として目的物を結晶化させます。この結晶化過程で少量の酢酸を添加することで不純物を溶液中に留めておくことができます。この手法でカラム無しで目的のカルボン酸を98%以上の純度で得ることができます(TPPOは0.1%未満)。

f) TPPO-MgCl2錯体をろ別 (AbbVie, Org. Process Res. Dev., 2013, 17, 666-671.)
see http://researcher-station.blogspot.jp/2013/08/blog-post_25.html)


で、This Workですが、著者らが開発したのは、こちら↓

(1) TPPOが生成(副生)する反応の終了後、普通にワークアップしてcrudeを取り出す。
(2) crudeをEtOHに溶解し、ZnCl2を作用させてZnCl2(TPPO)2 adductを形成させる(室温でオッケー)。
(3) ろ液を濃縮して、残留物をアセトンに懸濁させ、アセトンに溶けない過剰のZnCl2をろ別
(4) 最後のろ液にはTLC分析でTPPOはコンプリートにnd.で、カラムクロマトする必要なし

という方法です。

TPPOがルイス酸と錯体を形成するという性質を利用している点は、fのOPRDの論文と同様ですが、極性溶媒中でTPPO成分をろ別することで分離するというところが画期的です。ポリマー担持試薬以外は低極性溶媒中でTPPO成分をろ去して除くのが一般的なので、これは凄いです(やっぱ低極性溶媒だと溶解度の問題から、適用できる化合物の制約が大きい)。

そして本論文の代表的な実施例はこちら↓

1st Carbazole-forming Reaction

2nd Corey-Fuchs Reaction

3rd Mitsunobu Reaction

かなりイケてるTPPO除去法と思いました。

あと、この論文でちょと驚いたことがもう一つ。実験操作の動画がSIにアップされてます。こういう時代なんですね。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

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