とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Sunday, July 8, 2018

流行ってるぜ〜、パラダサイクル (3):そしてG3へ

北千住の路地裏の洋食屋さんでランチしたときのメモです。

-わかば堂 memo-

-国産牛肉赤ワイン煮 (1,150 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
サラダ、スープ、ライス、セットドリンク付き。スープは濃いめのコンソメベースか?ソーセージ輪切り、ニンジンみじん切りなどが入っている(ニンジンのみじん切りの軟らかい食感が良い)。 メインの赤ワイン煮の肉は僅かに獣臭がして食欲をそそる。肉質は軟らかく、繊維がハラハラと解けていく。弾力も楽しい。味付けは薄めで、僅かに渋みも感じる(ソース由来か)。肉の旨味を存分に味わえる。 ドリンクはエスプレッソをチョイス。苦味走った深い味が良い。


-ランチスパークリングワイン (350 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
やんわり甘く、締まった感じで、梅酒likeなtaste。悪くない。 サッポロの樽詰スパークリングワイン ポールスターか?


ホントに隠れ家的な立地と佇まいのお店。落ち着いたシックな雰囲気を醸し出している。スタッフは全員女性で、お客も女性客が圧倒的。フェミニン感がいっぱいで入りにくいけど、また行きたいお店。


閑話休題


今回はPd G3に関するお話で、Buchwald教授のPd触媒デザインの総論的な論文である

Design and preparation of new palladium precatalysts for C-C and C-N cross-coupling reactions
Chem. Sci., 2013, 4, 916-920.

を中心にメモしていきます。

パラジウムが触媒するカップリング反応には、ホスフィンが配位した0価のパラジウムを効率的に発生させることが重要となります。一番直線的な考えとしては、売ってる"Pd(0)ソースを使う"ですが、容易に入手可能な市販のPd(0)ソースの問題点には次のようなものがあります↓

a) Pd2(dba)3やPd(PPh3)4のような市販のPd(0)ソースは、望みの反応を阻害する配位子を含んでいる(J. Am. Chem. Soc., 1997, 119, 5176-5185.)。

b) 市販のPd2(dba)3は純度が一定でない (Organometallics, 2012, 31, 2302-2309.; http://chemistry4410.seesaa.net/article/261041452.html)

こういった問題を回避するために、Pd(OAc)2やPdCl2といったPd(II)ソースを使用することが考えられます。その場合、系内でPd(II)→Pd(0)へと還元しなければなりませんが、このパラジウムの還元が不十分であることがしばしばです。

近年、上述したようなパラジウム触媒の活性化に起因する問題を解決するために、簡単に活性化可能なprecatalystが開発されていて、pyridinestabilized precatalyst (PEPPSI)、ligated allylpalladiumchloride precatalyst、mine-derived precatalyst、palladacycle-based precatalystが報告されています。そして、本報のお題は(当然)パラダサイクルprecatalystです。

Buchwald教授はパラダサイクルprecatalystとして、これまでにPd G1 precatalystとPd G2 precatalystを開発してきました。そして、MITの化学者やMerckのプロセスチームが数多くの成功を獲得してきたそうですが、次にような欠点に苦しめられてもいたとのことです。

Drawbacks of Pd G1
Pd G1 precatalysは、そのオリジナルの合成には3段階を要しSchlenkを使用しなければならず、不安定な中間体を経由しなければなりません。
J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 6686-6687.

なんでSchlenk使わなきゃいけないかはよく分かんないけど、MeLiを使うのは憂鬱になるよね。
Vicente等がPd(OAc)2から出発する別法を報告していますが、トリフルオロメタンスルホン酸を使用し、イオン交換のステップが入ることが問題の(面倒な?)ようです(Organometallics, 2011, 30, 4624-4631.; Comments Inorg. Chem., 2007, 28, 39-72.; Organometallics, 2003, 22, 5513-5517.)。

Drawbacks of Pd G2
Pd G2の欠点は分かりやすくって、
(1) tBuXPhos, BrettPhosといった嵩高い配位子の錯体は調製できない。
(2) 溶液状態ではあまり安定ではない
です。

そして、これらのPd G1とPd G2に係る欠点を克服すべくBuchwald教授が開発したのがPd G3 Precatalystです。

Pd G2の"Cl"を非配位性かつより電子吸引性の"OMs"に置き換えることで、Pd(II)中心周りの立体障害を軽減し、より電子不足にしてPd G2よりも広範囲の配位子との錯体を調製することが可能になりました。勿論、tBuXPhosやBrettPhosも適用できます。


しかも、μ-OMsダイマーは400 gスケールでの合成実績があります(この論文が出た時点で)。さらに、μ-OMsダイマーと配位子からin situでprecatalystを調製して反応に用いることもできます(15-45 min位でprecatalystが調製できる。これはスクリーニングに便利)。

1H NMRの測定結果からPd G2と比較してPd G3のPd中心が電子不足であることが示唆され、単結晶X線結晶構造解析の結果からPd G2のクロリドアニオンが解離していないのに対してPd G3のメシラートアニオンは解離していることが分かり、Buchwald教授の目論見が見事例証されています。

それでは、Pd G3の触媒活性の凄さをみていきましょう↓

まずは、鈴木-宮浦カップリングです。

極めてプロトデボロネーションしやすいと言われるボロン酸を使って高収率です。

次、tert-butyl acetateのα-arylationです。

そして、C-Nカップリング (Buchwald-Hartwigクロスカップリング)やC-Oカップリング。




それから、ニトリルもつっこめます。



Pd G3、かなりパワフル

です。基本、前の世代と少なくとも同等以上の触媒活性を堅持していると言います。それでいて、欠点を克服しているのですから大したものです。

ここで、Buchwald教授の第一世代から第三世代までのパラダサイクルprecatalystの特性をまとめると、こうなります↓

G3、ハンパないって!!

そんな気持ちでいっぱいになりますが、次回、G3からさらなる高みを目指したPd G4メモに続きます.....

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のパラダサイクルメモ「Pd G3編」でした。

Labels:

Friday, June 29, 2018

孤独のグルメ聖地巡礼 in 八丁堀:とってもニラリッチなニラ玉なんです。

突然ですが、シブヤに行ってきました。しかも、八丁堀にある。
最近、孤独のグルメ聖地巡礼ごっこがクセになっているんですが、本日深夜0時17分放送予定のお店「中華シブヤ」さんに行ってきました(最寄駅は宝町です)。

ところで、八丁堀って江戸時代に船を通すために掘られた長さ八丁の掘の名前に由来するんですってね。

では以下、メモです。

-中華シブヤ memo-

-ビール (480 JPY)-
中瓶になります。「ビール」とオーダーすると黒ラベルが出てきましたが、スーパードライもあるようです。
やっぱ、油リッチな中華には、さっぱりした淡色ラガーが合います。

-エビチリ (650 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ソースが普通に旨い!大振りのエビは、歯を入れると表面に張りを感じ、内はプリプリでfresh。それから、ケチャップの旨味が映えます。お店の人は"チリ"と略して呼んでいます。






-ニラ玉 (650 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
オムレツ風に玉子に覆われたニラ玉。玉子からはみ出ているニラのfreshな香りと玉子の柔らかみのある良い匂いが漂う。
玉子は表面にはある程度の硬さがありつつも内部はトロトロ感があって絶妙な仕上がり。
玉子の覆いの下には"大量のニラ"と豚肉が隠されている。はっきり言って、ニラの量は驚くほど大量で、まさにニラリッチ。ニラはとってもfreshでgrassyな香味rich。豚肉もしなやかな食感で普通に旨い。そして、玉子・ニラ・豚肉の三者のシナジーは小宇宙が弾ける旨さ。
味付けがまた絶妙で、やさしい甘さで程よい塩味。濃過ぎず薄過ぎずで、中華としてはあっさりめと思うけど、存在感のある味でなんとも旨い。そして、心安らぐ味に仕上がっています。ふんだんに油を使っていると思うんだけど、油の重さを全く感じません。


このお店、ホールは男子(といってもおじさん)、厨房は女子(といってもおばさん)が担当です。6人がけのテーブル2つに、4人がけのテーブル3つの計24席。雰囲気は普段使いの街の中華屋さんで、その狭さ故に落ち着きます。
中国料理→本場の味を再現
中華料理→日本人向けにアレンジ
と言いますが、中華シブヤはまさに"中華"であって、高度にジャパナイズされた中華屋さんと思いました。

あと、他のお客さんが食べてたチャーハンが美味そうで気になりました。追加注文しようか逡巡したんですが、加齢とともに「量」が食べれなくなってきていて、今回は断念しました。近いうちにチャーハン喰いに行きたいです。

近所にあったら通い詰めること必至の店と思いました。

以上、孤独のグルメ聖地巡礼放送先取りメモでした。

Labels:

Thursday, June 28, 2018

流行ってるぜ〜、パラダサイクル (2):G2へのIMPROVEMENT

クラフトビール大好きコンキチです。ということで、うまいクラフトビールショップ
のCRAFT BEER MARKETに行ったこきのメモです。

CRAFT BEER MARKET 淡路町店

-お通し (300 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
ガーリックがやんわり効いているポテトサラダ。 

-アウトサイダーブルーイング マスカット・ベリーA バーレーワイン (480 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
Alc. 9%。
champagne-like note。木苺様の香り。イチゴジャム様の味。とっても柔らかくてデリケートな香味。とても可愛らしい。まるで、呑む苺。 Excellent!!! 


-COEDO 毬花 〜Marihana〜 (780 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
Alc. 4.3%。
tea-like note,grassy note, grapefruit note,etc. grapefruitを基調とした圧倒的な香味。 finishはgrapfruitのbitter。 インドの青鬼をmildにした感じのtaste。



CRAFT BEER MARKET 吉祥寺店

-ハーヴェストムーン バーリーワイン (千葉) (480 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
100 ml。All. 8.0%。
strawberryの香り。適度なroast香。中程度の渋味とbitter。その中からstrawberryの香味が立ち昇る。そして、cake-like。メチャクチャ旨いぞ!!!




-Stillwater Artisanal Surround (メリーランド) (480 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
Alc. 10.0%。
alcoholic, minty, 少しだけcamphor's(?)で清涼感のある香り。
tasteはもの凄くfull bodyで、earthy, bitter, high roast。圧倒的にpowerfulでとっても美味しい。



-自家製腸詰 (580 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
表参道「TAMA」秘伝の熟成された旨味を再現。10〜14日間かけて熟成させているらしい豚バラとロース、背脂で仕込む腸詰めは中国のメイクイルー酒と沖縄の白コショウ・ピイバチで香り付けされているらしいです。
で、食べた感想です↓
スライスされた状態で提供される。独特のクセになりそうな酸味が特徴的。solidな食感で乾いた感じがしてジャーキー感がある。凝縮感のある深い味わいでちょっと面白い味。ビールのつまみとして最適。薬味には葱と甘辛味噌が付く。そのまま食べて良し。葱と合わせて良し。味噌を塗って食べて良し。全部(葱と味噌)載っけて良し。


閑話休題


第二世代 (Pd G2)のメモです↓

第一世代のprecatalystは、弱い塩基では室温で活性化できないという問題点があって、それを改善したのが第二世代のprecatalyst (Pd G2)です。
Buchwald教授等は、Albert等の開発したトリフェニルホスフィンの配位した2-アミノビフェニルのパラダサイクル(J. Organomet. Chem.2005690, 422-429.; J. Organomet. Chem.2007692, 4895-4902.)にインスパイアされ、第一世代のフェニルエチルアミン骨格を2-アミノビフェニルに置き換えることでprecatalystのNH2の酸性度が高まり、より容易に活性化されるであろうという仮説を立て、第二世代precatalystの開発に至ります。

J. Am. Chem. Soc.2010132, 14073-14075.

実際、第二世代のprecatalyst (7L = Pd G2)は、室温下、リン酸塩や炭酸塩で活性かされ、Buchwald教授の仮説は例証されました。第二世代のprecatalystを用いた鈴木カップリングの例です↓

ちなみにこの反応で使用されているボロン酸は(高温下や、長時間反応で)プロトデボロネーションし易い基質ですが、Pd G2 precatalystを使用することで、マイルドかつ短時間で高収率です。

さらにPd G2 precatalystは次の基質や反応に対して高い一般性を示します( first general methodなんだそうです)↓
a) 無保護の5員環の複素環式化合物を用いた鈴木-宮浦カップリングに対して(J. Am. Chem. Soc., 2013, 34, 12877-12885.)
b) 種々のトリフルオロボレート塩 (Ar-BF3K, Alkyl-BF3K) (Org. Lett., 2012, 14, 4458-4461.; J. Org. Chem., 2013, 78, 4123-4131.; Org. Lett., 2013, 15, 3342-3345.)
c) フロー系でのアルキニル化 (Chem. Sci., 2011, 2, 2321-2325.)
d) C-Hアリール化 (J. Org. Chem., 2012, 77, 658-668.)

個人的にG1→G2のインプルーブメント感は感動的と思います。弱い塩基でマイルド・アクティベーションはとても魅力的に思えます。この第二世代あたりからBuchwaldのパラダサイクルprecatalystが大々的に耳目を集めるようになってきたように思います。

次回、さらなるインプルーブメンを施したPd G3メモに続きます.....

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のパラダサイクルメモ「Pd G2編」でした。


Labels:

Sunday, June 24, 2018

流行ってるぜ~、パラダサイクル (1):Buchwald's Palladacycle G1 Precatalyst

最近全然行ってないけど、mAAchに入ってる常陸野ブルーイング・ラボに行ったときのメモです。

-セゾン ドゥ ジャポン Saison du Japon (680 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
Alc. 5.0%。米麹と柚子を使用したジャパニーズセゾン。
fruity, citrus, spicy。とっても香り高く、ワインのように高貴な香り。White Ale様のtaste。全体的にスレンダーで、夏のうだるような暑い日に飲んだら最高だと思う一杯。

-酒粕クラッカー Original sake lees cracker (380 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
completeにパリパリではなく、ちょっとやんわり湿った感のあるクラッカー。香味豊かなビールのお供によく合うシンプルな味。普通に旨い。名脇役的な一品。

-【Lab限定】常陸野シードル Hitachino Cider (680 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
Alc. 8.0%。茨城県北部の奥久慈リンゴから醸造し、2年間発酵熟成させた一杯。
注がれた直後はかなり泡立っているけど、すぐに泡が引きます。泡の香りはシャンパンライクで鄙びた感じの良い匂い。仄かに甘い香りも。それから、アップルジュース様、僅かに蜂蜜様の香り。あと、良く分かんないけどとってもいい香りがする。
tasteはスレンダーな甘さで締まった辛口テイスト。finishはcitrus、それから微弱な炭酸が舌を押すように刺激して心地よい。

-エスプレッソスタウト Espresso Stout (680 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
Alc. 7.0%。エスプレッソ珈琲のような深い香りと、苦味、酸味を合わせもった芳醇な味わいの重厚黒ビール(Coffee Flavored Stout)。
coffee flavorが特徴的。chocolate-like、糖蜜様の香り。
tasteはchocolate様の洗練された甘さと、糖蜜様の少し野暮ったい甘さ、creamy感、それから、もの凄いroastとroast由来と思われる酸味を感じる。
漆黒の旨さ。

-HITACHINO SESSION IPA FRESH 20 (680 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
常陸野セッションIPA フレッシュ 20。日本一のホップ生産地である秋田県横手市、そして常陸野ネストビールの額田醸造所、この二つの場所で採れた20種類の新鮮なホップをブレンドして醸造したセッションIPA。
原材料/ 麦芽・ホップ
アルコール分/ 4.5%
もの凄くfantasticなfruity note。上品で心がときめく。
tasteはけっこうdryなcitrus & (少し)spicy。finishには、ややdeepなbitter。

-与謝野フレッシュCC YOSANO Fresh CC (680 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
Beer Style: Pale Ale
ABV: 4.5%
京都府与謝野で栽培された、カスケード種、センテニアル種を採りたて、フレッシュな
状態で使用した香り豊かなペールエール。
grapefruit-like, citrus note。蜜柑様のfruityさとsweet note。素晴らしく良い香り。
tasteはlight typeで、spicy, citrus。finishにはbitter。このbitterがlight typeのbodyやspicy, citrusな香味とBest Match!

-常陸さばサンド Hitachi Mackerel Sandwich (600 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
茨城県産の肉厚な鯖をオリジナルビネガーでマリネした、心地よい酸味と旨みが後引く絶品サンドとのコピー。
食べた感想は↓
こんがり焼き色がついた味の濃いHotなパンでサンドされているのは、冷たい鯖のマリネ(意表を突かれました)。鯖のマリネはかなりビネガーの効きが強いが、鯖が旨い。口の中で好ましいサバフレーバーが広がる。こんな感じで旨いことは旨いんだけど、パンの熱量と冷たい鯖との温度ギャップが好みでないので、可能ならサンドされてる鯖もHotな方が旨いんじゃないかと思いました。


閑話休題


有機合成界で流行ってるのか流行ってないのかよく分かんないけど、おそらく流行ってるであろうのパラダサイクルについてメモします。Buckwand教授のヤツはもう第四世代まで出てるんだから、全く流行ってないってことはないでしょう。ということで、クロスカップリングのビッグネームの一人であるStephan L. Buchwald教授の論文をメモしていきます。


まずは、
Buchwald教授がThe Strem Chemicalsに寄稿したNew Palladium Precatalysts For Cross-Coupling Reactions (The Strem Chemicals vol. XXVII No.1, January 2014.)からのメモです。

この寄稿論文はPalladacycle precatalystの歴史から始まります。

で、初出のパラダサイクルプリキャタリストはこちら↓

In 1995 Hermann and Beller
precatalyst 1は、P(o-tol)3とPd(OAc)2とのシクロメタル化(PhMe, rt., 16 hr)によって調製されます(Angew. Chem. Int. Ed., 1995, 34, 1844-1838.; J. Eur. Chem., 1997, 3, 1357-1362.)。TONsは200,000にも及ぶケースもあるという高活性っぷりで、単なるP(o-tol)3とPd(OAc)2のコンビネーション以上に効果的です。

その後、次のようなprecatalyst達が生み出されてきました↓


2: ヘック反応に有用 (Chem. Commun., 1998, 3, 1361-1362.)
3: 塩化アリールを用いたC-Nカップリングに有用 (Buchwald et al. Org. Lett., 2003, 5, 2413-2415.)
4: ヘック反応、鈴木カップリン、C-Nカップリング、ケトンのα-アリール化に有用。種々のフォスフィン配位子と結合可能(Angew. Chem. Int. Ed.200241, 3668-3671.)
5: 塩化アリールを用いた鈴木カップリングに有用。オープン・エアで反応しても活性が落ちない。(Chem. Commun., 2001, 17, 1540-1541.)

そして、いよいよBuchwaldの、所謂、第一世代 のpalladacycle precatalyst (Pd G1)が登場します↓

6•Lから誘導されたLP(0)は、C-Nカップリング(J. Am Chem. Soc., 2008, 130, 6686-6687.; Chem. Sci.20112, 57-68.; Org. Lett.201012, 4438-4441.; Org. Lett.201012, 4442-4445.)やC-H activationによるacetoxylation (Org. Lett.200911, 1173-1175.)、C-Nカップリングのフロー•ケミストリー(Angew. Chem. Int. Ed.201049, 9469-9474.)、根岸カップリング(Angew. Chem. Int. Ed.201352, 615-619.)に対して有効な触媒となります。

アニリンと4-chloroanisoleとの反応は定量的に進行します。


ちなみに、この反応を他の(普通の)触媒を使った場合は↓

Pd2(dba)2 : 25%
Pd(OAc)2 : < 10%
[(allyl)PdCl2]2 : < 10%

という結果で、Pd G1の高活性っぷりが分かります。

あと、求核性の電子吸引性置換基を有するアニリン誘導体と、難しいカップリング•パートナーと言われている活性化されていないアリールクロリドとの反応成績はこちら↓



Good Yieldで好感触です💌

"第一世代 (Pd G1)"の初出は、A New Class of Easily Activated Palladium Precatalysts for Facile C-N Cross-Coupling Reactions and the Low Temperature Oxidative Addition of Aryl Chlorides (J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 6686-6687.)だと思うんだけど、そこでは幾つかの基質に対して室温以下の反応温度で、いい収率を叩き出しています↓


Buchwaldの第一世代のパラダサイクルprecatalystはair-stable, moisture-stableで、C-Nカップリングなどに対する高活性な触媒前駆体です。そしてその活性化は、K2CO3などの弱い塩基で80˚C、金属アルコキシドで室温、金属HMDS塩基で-20˚Cで進行すると言います。イイネ、Pd G1。

次回、Pd G1をインプルーブメントしたPd G2のメモに続きます.....

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のパラダサイクルメモ「Pd G1編」でした。



Labels:

Monday, May 28, 2018

Raumen_Colle (ラーメンコレ) (4)

ども、最近「ラーメン大好き小泉さん」を愛読しているコンキチです。


小泉さんは可憐でスレンダーなJKで、ボクのみたところ、365日、三食全てラーメンを食べています。しかもスープも全て飲み切っています。はっきり言って、フィクションだからそういう食生活を送りつつスレンダー体型を維持して健やかなスクールライフを謳歌できるわけで、リアルな世界でそれやったら、肥満になるか、病気になるか、肥満になって病気になるかなので、ラーメンの摂取は二週間に一度程度に控えたいものです。

さて、懲りずに賞味したラーメンのメモを書いていきます。


過去のメモね↓
entries 1-5 → Raumen_Colle (ラーメンコレ) (1)
entries 5-10 → Raumen_Colle (ラーメンコレ) (2)
entries 10-15 → Raumen Collection (ラーメンコレ) (3)


entry 16 (柏) 
-珍来 柏東口店 お茶漬らーめん (650 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
夏季限定、しかもごはん入りの緑茶仕立てラーメン。
この商品のポスターのスープの色は鮮やかなGreenなんだけど、実物はpale brown。topに刻みネギと海苔とアラレが載っていてお茶漬け感大。
麺は太縮れ麺でキックが強く、少し粉っぽいような気もするが許容範囲。麺の味自体は大人しい。
スープは大分あっさりしていて(お茶漬けを謳ってるからね)、お茶のフレーバーに加えて魚介の香りもほんのり漂っている気がした(気のせいかも)。このあっさりお茶漬けスープが太麺に合うのだろうかと思ったんだけど、意外にも合いました。けっこうmatchしている。ただ、全体的に単調な味で、あっさりスープで太麺を啜り続けるだけでは飽きがくる。
で、ここで"別皿"で提供されたチャーシューの佃煮と高菜が活きてくる。両者ともかなり濃いめの味付けに仕上げられていて、あっさりラーメンのアクセントにbest match。当然、薬味のワサビも合います。三種の強烈な薬味で、あっさりでも味のバリエーションが広がって食べ飽きしません。
あと、底部に沈んでいるご飯が正にお茶漬けライクを演出。薬味のワサビはご飯用に少し残しておくのがいいと思います。
メチャクチャウマいわけじゃないけど、試みには眼を見張るものがあると思いました。



entry 17
-鼎泰豐 流山おおたかの森店 酸辣湯麺 (1,080 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
中央に胡椒が振り掛けてあって、「よくかき混ぜて召し上がってください」と言われつつ提供される。かなり上品なフェイスで、全ての具材が細かく均一に刻まれていて、掻き混ぜても見栄えはさほど悪くならない。
胡椒は粗挽きの上品なタイプの香味。スープは中華スープベースでと思うんだけど、上品で(ボクのなかでは)酸辣としては信じがたいくらい大人しい味。
麺は中華料理屋にありがちな類の麺で、少しだけ太めか。しなやかで喉越し良く柔らかい。スープを味わうのに最適化されているように思う。
具材は、鶏肉、豆腐、木耳、筍、葱、玉子。全てが上品な味と食感。
総じて、とっても美味しいんだけど、上品で洗練され過ぎている。要は、とってもマイルドで、酸味も辛味も殆どなくて、ジャンクさを求めるボクにとっては欲求不満。
「お好みで、テーブルに置かれている黒酢を掛けて食べるように」と言われてやってみました。で、黒酢自体は上品でマイルドtaste。酸辣湯麺に振り掛けると、せっかく整っていたバランスが崩れてしまう(個人の感想です)。
美味しいんだけど、ガツンというパンチを求めていると、ちょっと期待はずれかも。


entry 18 (北千住)
-千住の永見 支那そば (550 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
アド街や酒場放浪紀でも取り上げられた、あの「千住の永見」の20:00以降限定のあっさり醤油ラーメン。
あっさりと言っても、味の濃度はしっかりしていて、ちょっぴり甘めの澄んだ味。mild tasteで、食べていてノスタルジックな気分になる。
麺は細麺(中細)の縮れ麺。中心まで十分に火が通っていないような硬さで、僅かにpowdery感とエグ味を感じる。
具は、海苔、ナルト、チャーシュー、メンマ、葱、青菜(小松菜?)とオーソドックス。
チャーシューは脂身無く、噛んで肉の旨味を楽しむ系な仕上がりで、僅かな獣臭が食欲をそそる。そして、青菜の苦味が良いアクセントになっている。
で、エスビー食品のテーブルコショーが添えられて提供されるんだけど、このチープでジャンクなコショーが、このラーメンによく合う。
ボク的には"アリ"なラーメン。


entry 19 (岩本町)
-胡椒饅頭PAOPAO サンラーこしょう麺 (890 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
真っ赤なフェイスだけど、そこから想起されるspicyな香りではなく、mildな点心のような香りがする。スープ自体は透明の近く、表層に辣油が浮いている。
スープの味はしっかり酸味が効いているが、mildかつ上品で、トゲトゲしさが一切無い。辣油もmildな味わい。
麺は中華屋で良く出てくるタイプの麺質で、切断面が正方形で角が立っており、ツルツルで滑らかな感触ながら角の立った食感で、口腔がmildに刺激され心地いい。
点心tasteなスープにはspicy感は無く、代わりに麺の練り込まれた胡椒が安定したspicy感を出している。すなわち、麺を啜る度に均質のspicyさが演出されるのだ。
具は、海老、(多分)白菜、葱、胡椒の実。海老はプリップリでfreshで旨い。白菜もfresh。葱も旨い。真っ赤な胡椒の実は上品で香り高い。
あと、別皿に添えられてついてくる生胡椒を噛むと、しょっぱ滋味深い汁が吹き出して、なんか美味しい。
上品で洗練されたニューウェーブ系酸辣湯麺と思いました。


entry 20
-三ツ矢堂製麺 鶏中華そば (780 JPY)- 20171013
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
麺は中細ストレート。モチッとした食感と歯切れ良く、(多分)小麦の甘い味がする。もう少しツルシコ感や、しなやかさがあれば尚良かったが、十分に旨い麺。
スープはノスタルジックなあっさりした(多分)鶏ガラベースの中華スープを使った醤油味。甘く僅かに焦げ感じを感じるコクのあるスープに仕上がっている。スープの表層に浮いた油も旨い。
麺とスープの相性は良く、麺に十分量のスープが絡む。
具は、鶏肉、メンマ、三つ葉、葱。全部旨い。メンマは柔らかく味濃いめで好みの味。三つ葉の香りがけっこう強く、アクセントとして良い。

Labels:

Sunday, May 27, 2018

"N"か"O"か?:ピリドンとミツノブ

大好きな浅草で呑んだときのメモです↓

-酒の大桝 雷門店  memo-

-燻製の半熟卵 "スモッち" (200 JPY)- 
-RATING- ★★★★★
-REVIEW- 
中身まで香ばしいsmoky flavorが浸透していて、白身が旨い。 黄身はプルプルで柔らかく、とても濃厚な味で滋味深い。Great! サケに良く合う。 






-森泉 特別純米 90 ml (350 JPY)- 
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
常温で供される。やさしい口当たり。優しくふんわりした甘さの漂う芳醇濃旨口系。常温でも味(甘さ)がダレていないのは凄い。ひたすらに優しい味。 原料米/ ひとめぼれ 精米歩合/ 60% 日本酒度/ +1 アルコール分/ 15-16% 仕込水/ 自家井戸水 others/ 活性炭による濾過は行っていない。

-自分で炙って!干しホタルイカ (380 JPY)-
-RATING- ★★★★★ 
-REVIEW-
そのままたべても、まあ旨いんだけど、食べる直前にライターで炙ってパクリとやるのが最高に旨い。魚介類を炙ることで出る独特のfishy flavorが堪らない。干しホタルイカは薄いので、熱量がすぐに失われてしまうけど、この食べ方だと、アツアツの最も活性化された最高の状態をいただける。 ちょっとしたイノベーション商品かも?

-特選!熊本産馬刺し (680 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
赤身とタテガミ。両者とも鉄板の旨さ。 赤身はシックで吸い付くような感触。穏やかに濃厚なtasteで、咀嚼すると心地良い弾力。 タテガミは絶品。口に入れると、キュキュッという食感。で、少しづつ脂が溶けだしてくる。この脂が、仄かに甘い素晴らしく上品な脂で、とんでもなく旨い。

-出羽桜 咲 250 ml (760 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
価格760 JPYの内訳は、本体460 JPY + 持込料 300 JPY。 辛口の米・水・酵母をオール山形で醸す発砲清酒。キリッとしたシャープな辛口。 ほんと、けっこうな辛口で相当締まった味。それでも、日本酒なので、柔らかさもあって良い。このおサケを魚介類を肴にやるのが最高にオシャレと思う。

-浅草神社公認乃酒 三社権現社 本醸造 90 ml (290 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
(提供温度は)5-10℃位か?冷え過ぎていないのが良く、いい香りの吟醸香がする(けっこう強い)。味わいは淡麗辛口で、乾いたような辛さがあって面白い。 原料米は山田錦で、花酵母使用。

-豚ロースカツ (580 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
何もつけずにそのまま食べて普通に美味しい。柔らかくてジューシーなカツ。表面が少ししっとりしていて、幾分油の重さを感じる。ソースなしの方が旨いと思う。あと、カラシは良いアクセントになる。 

-HELIOS GOYA DRY 350 ml缶 (584 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
584 JPYの値段の内訳は、本体284 JPY+持込料300 JPY。 カクテルとか酎ハイライクで、爽快なお飲物。 アルコール分/ 5%。 麦芽使用比率/ 25%未満 原材料/ 麦芽・ホップ・糖類・ゴーヤ果汁


 雷門裏にある凄くお洒落な店。カウンター席多くて 綺麗な店内。ホスピタリティに優れるけれども分煙は無し。店舗の隣に公衆トイレがあるのが玉に瑕。


閑話休題


以前、"N"か"O"か?っていう、ピリドンみたいにN-アルキル化とO-アルキル化の両方が起こる可能性がある反応から得られる生成物のNMRによる構造決定の話をメモしました。で、今回はN-アルキル化とO-アルキル化の"選択性"に関する話のメモをしようと思います。

まずはこれ↓

N- vs. O-Alkylation in the Mitsunobu Reaction of 2-Pyridones
Tetrahedron Lett., 1994, 35, 2819-2822.

タイトルそのまんまで、無置換ピリドンを光延反応でアルキル化しようとした場合の選択性に関する論文です。


2-ピリドンのアルキル化はピリドンをメタル化してアルキルハライドと反応させるのが一般的で、その位置選択性はメタル、アルキルハライドの構造、ピリドン上の置換基、反応溶媒に依存するそうです(ケースバイケースってことね)。で、メタル化したピリドンの求核置換反応の特徴はこんな感じになります↓

a) 一般的には、N-アルキル化が優先する(多くの場合でmixtureとなるが)
b) ピリドンのナトリウム塩やカリウム塩を用いた反応ではN-アルキル化が優先する。
c) 嵩高いハロゲン化アルキルを用いるとO-アルキル化の割合が増加する。
d) 非極性溶媒中、銀塩を用いることでO-アルキル化体が選択的に得られる (J. Org, Chem., 1970, 35, 2517.)。

で、(無置換)ピリドン(pKa 11.62)を光延反応でアルキル化するとどうなるのかっていうのがこちら↓



溶媒効果がかなりデカイです。ベンジルアルコールを用いた反応では、クロロホルム中ではO-選択的に反応が進行するのに対して、ジクロロメタン中では選択性が殆ど無くなっているのに驚きです(しかもN-アルキル化の方が少し優勢)。

あと、THF中では"ArCH2OH"構造だとN-アルキル化が優勢(PhCH2CH2OHが圧倒的にO-選択的なのが不思議)。それ以外はO-選択的。嵩高いアルコールほどO-選択的なのかと思ったけど、PhCH2CH2OHの圧倒的なO-選択性がその考えを打ち砕きます。


そしてもう1報↓

A comparison fo N- versus O-alkylation of substituted 2-pyridones under Mitsunobu conditions
Tetrahedron Lett., 2013, 54, 3926-3928.

今度は、置換ピリドンと乳酸エチルとの光延反応の論文です。で、結果はこちら↓




置換ピリドンと乳酸エチルとの反応の場合、ピリドンの3-位の置換基の効果は極めて軽微です(選択性がほとんど出ない)。
一方、5-位の置換基は重要です。しかも、modified resonance constantと生成物のO-/N- rato (選択性)との間にそこそこの相関がみられます(modified field constantとは全然相関がないけど)。

すなわち、ピリドンの5-位の置換基の共鳴効果が大きいほどO-アルキル化が優勢となり、共鳴効果が小さいほどN-アルキル化が優勢となるということです。
で、3-位の置換基が選択性に殆ど影響を及ぼさないのに対して、5-位の置換基の共鳴効果が選択性に強く影響することは、有機電子論的に次のように説明できます↓




以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のピリドンとミツノブ(光延反応)の素敵(?)な関係メモでした。


Labels: