2007年4月25日水曜日

深化

「お仕事: プロセス化学」のコンキチです。

直近2回のブログでちょと毒を吐いたので、今回は少し真面目な話を

さて、プロセス化学とは平たく言えば、「企業化の化学」です(少なくともコンキチはそう思う)。つまり、商業ベース(儲かることが前提)で、実機で製造可能な製造プロセスを構築する作業です。コンキチはそんなプロセス化学に一翼を担っているなんちゃって研究員なのであります。

例えば、スペシャルな合成パスを経てターゲットを合成するというアカデミックな世界では極めて評価の高い論文があったとします。でも、

それって「中間体が(潜在的に)爆発性じゃない?」(不安全)
っていうか「ハロゲン系の溶媒は避けたいよね?」(環境問題)
「(ジエチル)エーテル」は危険だよ!!!」(不安全)
「溶媒エンメチですか?」(環境問題)
「(大スケールだと)その反応危なくない?」(制御不能)
「その試薬は変異原性あるんじゃないの?暴露したらどうよ?」(催奇性)

なんていうのがあったらそのままでは社会に許容され難いでしょう。リスクに対する便益の度合いを考慮して、なんらかのモディファイが必要になることが必死であると思われます。

で、少なくとも「ベネフィット>リスク」となり、かつ儲かる条件で実現可能な合成反応をデザインするのがプロセス化学なのです(少なくともコンキチはそう思います)。

そんなプロセス化学において、「深化」というのが一つのキーワードになるとコンキチは思っています。

「一つ一つの合成ステップに関してより深い理解を蓄積していく作業」がプロセス化学において非常に重要性を帯びてくると思われます。

選択性を左右する因子は?
溶媒効果は?
additiveの効果は?
濃度依存性は?
禁忌条件は?
使用試薬のバリエーション(同族体)による影響は?
使用試薬、溶媒、中間体、Targetの安全性は?
既存装置で対応可能か?
発熱量は?
etc.

といった具合にプロセスを構築するにあたって、色々な疑問というかクリアしなければならない事柄が湯水のように溢れ出てきます。

で、可能性としては無数に存在する条件を、如何に効率よく如何に少ない試行で設定・確定するかということがプロセス化学の要諦であると思います。

そして、(文献とかレポート等で)既に明らかになっている情報を集積すると共に、新たに発見した知見を蓄積し共有してゆくシステム(ナレッジ・マネジメント)こそが、プロセス設計を強力に支援するツールになるんだろうと思います。

で、この蓄積のスパイラルが深化をさらにたらしめ、プロセス設計R&Dの速度を加速させるのです(多分)。

残念ながら、コンキチの勤務している会社では、セクショナリズムが台頭し、情報や知識の囲い込みが横行し、ナレッジ・マネジメント(深化のシステム)とは逆行しているように感じられます。はっきり言ってコンキチは哀しい。腐ってます。

でも、それじゃあ人生あまりにもつまらないと思うので、「深化の自分最適」という自分で言っていてよく分からないそんなフレーズをスローガンに人生を謳歌する方策を模索していきたいと思う二流大出のなんちゃって研究院のちょっとセンチな日記でした。

2007年4月21日土曜日

選挙戦に戦略はあるのか?

コンキチの居住する自治体では、今度の日曜に市長選挙と市議会議員選があります。というわけで、各候補者が選挙活動を展開していて、選挙カーから鳴り響く拡声器の音が五月蝿い今日この頃です。

でこの選挙カーなんですが、これって有効な活動なんですかねえ?だって、候補者の名前を声高に叫んで、「お願いします」を連呼するだけでしょ。はっきり言ってバカっぽくないですか?

(1) 特に、選挙カーで集合住宅の敷地(私有地)に乗り入れてきて、そこの管理人さんに怒られている立候補者とか、

(2) 選挙公報に抽象的な自分の心情を、小学生が原稿用紙に作文を書くかの如く、ひたすた綴りまくるだけの市長候補者とか、

(3) 暗くなってからも(8時前ではあるけれど)、選挙カーで聞きたくもない拡声器を通したでかい音を周囲にまき散らす候補者とか、

(4) 主張するのは、福祉と周辺住環境のインフラ整備だけという共産党候補者(結局は狭い地域への利益誘導でしょ、これじゃ自民党を批判できませんよ)とか、

っていった候補者なんてその最たるものでしょう。自分で自分のセルフ・ネガティブ・キャンペーンをやってるだけですから。

選挙って一種のマーケティングだと思うんですよね。もっとROIの高い選挙活動をやるべきなんじゃないのかなと思いますね。

2007年4月16日月曜日

Friday The 13th

気が付けは、先週は久しぶりの13日の金曜日がありました。

(実家が)仏教徒(庶民の宗派曹洞宗)で、かつ宗教を信じていない(但し例外的のバッカスと松尾様だけは信じています)コンキチにはどうってことのない一日でした(但し、迷信はけっこう信じます)。

ところで宗教と言えば、コンキチが日々の通勤に使っている路線には、「霊○の光」の最寄り駅(東京理科大学野田キャンパスの最寄り駅でもある)があり、毎朝信者と思われるオバちゃん達が件の駅で続々と下車していきます。

よく、ビジネスの書籍でロイヤルティーに関する話が出てきますが、宗教に対する帰依の精神というか、忠誠心には目をみはるものがありますね。

冷静に考えれば、宗教なんて弱者(貧しい者)のすがりでしかないとすぐ気付くと思うのですがね.....

だって、神や仏がいたとして、彼等彼女等が現世を肯定しているとすると、彼等彼女等は人間がこの世で行う醜い行為(侵略とか)もまた許容しているということになるでしょう..... それって悪魔の行為じゃない?っていう訳ですよ。つまり、人智を越えた超存在があったとした場合、それは宗教が規定する神や仏ではなく悪魔であって、この論理展開によって宗教の持つ決定的な脆弱性が露になると思うんですがね.....はっきり言って、霊感商法やってる新興宗教の欺術ってちょっと興味あります。

我が国で流行っている土地真理教のように、多くをつぎ込む程にその行為を否定しずらくなるという心理は理解できるのですが、そこに至らせる迄のプロセス(甘い囁き)は具体的にどういったステップを踏むのか?ということです。

一目みてうさんくさい教祖を戴くオウム真理教なんてその典型ですよね。教祖誕生でも借りてみようかなと思うコンキチでした。

2007年4月10日火曜日

儲かる顧客のつくり方

儲かる顧客のつくり方を読了しました。


顧客ロイヤルティに関する論文が8報掲載されている本です。で、印象に残った点をメモしてみたいと思います。


1) 顧客ロイヤルティの高い企業は顧客を選別している。
例えば、バンガード (Vanguard, インデックスファンドの雄)にとって理想的な顧客は、価格感度が高く、長期投資志向の強い裕福な顧客だといい、たとえ残高が多くても、長期的に投資しそうにない顧客は敬遠されるそうです。ある機関投資家は4,000万ドルを投資しようとして断られたという事例があります。その理由は、この投資家が2-3週間でファンドを転売し、その対応に伴うコスト上昇を、ロイヤルティの高い既存顧客がかぶることになると考えたからだそうです。コンキチは、この逸話が同社のブランド価値を高めるのに資する話だと感じました。

インデックスファンドは最もローコストオペレーションが可能な金融商品であり、長期投資家は売買コストも低く、税金面でもメリットがある。正に、インデックスファンドに特化したバンガードと長期投資家のカップリングはWin-Winの組み合わせでしょう。バンガードは投資信託業界で最も高いロイヤルティを誇る企業なのです。

効率的市場仮説を盲信しているわけではないですが、コンキチも同社に対して高いロイヤルティを抱いています。


2) 顧客ロイヤルティの高い企業のトップはネガティブフィードバックを引き出すのに腐心している
バンガードのCEOであるジャック・ブレナンは

a
) 定期的に自社のコール・センターを訪れ、顧客からの質問や苦情に対応したり、

b
) 社内のカフェテリアで従業員たちを集めて昼食(各自1つずつ真剣な質問や不満を持ち込むことがッ参加条件)を共にする(CEO自ら手書きの書簡でフィードバックする)

といいます。

また、インテュイット(会計ソフト)のスコット・クック(創立者)も同様なアプローチ(昼食会)を実施していて、部下が意見しやすいように無記名の情報検索カードに質問を書いてくるように頼んでいると言います。


3) 顧客満足度の調査結果の誤解
顧客満足度の調査結果が

5 (完全に満足している) 48%
4 (満足している) 34%
3 (不満でも満足でもない) 10%
2 (不満である) 5%
1 (完全に不満である) 3%

であったとき、

「82%の顧客がおおむね満足しており、企業と顧客の関係は強固である」と判断するのは誤りであるといいます。

「5 (完全に満足している)」と「4 (満足している) 」の間には大きな隔たりがあり、「5 (完全に満足している)」と回答した顧客のみが高い顧客ロイヤルティを示し、「4 (満足している)」「3 (不満でも満足でもない) 」と回答した顧客は簡単に他社に切り替える可能性の高い顧客であるという調査結果が報告されています(業種にもよる)。

つまり、完全な満足のみが顧客ロイヤルティの構築につながるわけで、上記調査結果を手にした経営者は危機感を募らせなければならないわけです。超絶、目から鱗の事実を目の当たりにした気分でした。顧客満足度と顧客ロイヤルティの相関は線形ではなく、指数関数的であるということですね。


4) eロイヤルティ
eコマースにおいてこそロイヤルティが重要になってくるといいます。もっぱらサイトにアップされている画像や文章のみを頼りにしなければならないWeb上での商取引では、実際に取引を行うか否かの判断はそのサイトのが信用力にかかっている訳です。得体の知れないサイトには、個人情報やクレジット・カード番号を入力するわけがないという理屈です。Webの買い物客に、「eコマース小売業者にとってビジネスを展開するうえで最も重要と思われる要素は何か」と聞いたところ、「よく知って信頼できるWeb Site」という回答が、「安さ」や「品揃え」等のその他の要素を大きく引き離してトップだったそうです。無機質なWeb上では「信頼性=ロイヤルティ」という方程式が成り立つのでしょうか。

このロイヤルティに関する書籍を読んでみて、コンキチの頭にフッと浮かび上がってきた日本企業があります。日本食研です。以前、バラエティークイズ番組で同社を取り上げていたのですが、日本食研では、ステークホルダーの一角を担う従業員のロイヤルティを高めることで、労働効率を高め、失われた10年と言われた時代にあってさえ、増収増益を達成し続けたと報じられていました。社内恋愛目安箱のようなものまであり、同社の職場結婚率と従業員の定着率は群を抜いているらしいです。

まあ単純に、従業員に「この会社にいれば安心だ」と思える安心感を与え、ロイヤルティを高めれば、従業員は会社のために(それが自分のためにもなる)身を粉にして働くだろうし、離職率も少なくなり教育研修費というものが無駄にならないでしょう。

あと、結婚しても女性社員が会社に残っていられる環境というのも社内に蓄積された知の流出を抑制できていいような気がします。

本書にも書かれていますが、1993-2000年4月までUSAA(会員制金融サービス)のCEOだったロバート・ヘルスは「井戸にコインを放り込んで、いつまでたっても水音が聞こえない-そんな印象を従業員が持ってしまったら、いずれコインを投げ込むのをやめてしまう。従業員に努力してもらいたい、きちんとコミュニケーションを計っていきたいと思うならば、我々はしっかり君たちの声を聞いていて、それに沿って行動を起こす、ということを示さなければならない」と述べているそうです。

国は違っても、

人は城 人は石垣 人は堀(なさけは味方 あだは敵なり)


の精神は一緒なんだなと感じた二流大出のなんちゃって研究員でした。