2019年4月30日火曜日

再びのDMT-MM:その傾向と対策

浅草は六区のホッピー通りにある呑み屋に入ったときのメモです。

-居酒屋浩司 浅草店 memo-

-お通し-
何だったかさっぱり覚えてないけど、410 JPYくらいか?

-にごり酒 (550 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
ペットボトルから注がれたのにはドン引きしたけど、異味異臭はなく、普通のにごり酒でホッとしました。

-煮込み (絶品牛すじの煮込み) (450 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
主に、葱、豆腐、牛すじかっら構成される煮込みは、なかなかのhigh quality。牛すじはいささか獣臭がするけど、許容範囲。とても軟らかく繊維がハラハラと解けていく。軟らかく心地良い弾力があり、咀嚼するごとに肉の味わいが伝わってきて良い。豆腐は主に薄めの直方体に切り出されていて、味付け濃いめの汁が良く絡んで良い。 味付けは和風なんだけど、肉に洋風tasteを感じる。あと、お豆腐がとっても旨い。 それから、七味はこの煮込みには合わないと思った(但し、豆腐には合う)。 大鍋で豪快に煮込まれているけど、けっこう繊細な味。 山利喜と同程度にheavyな煮込み。

 -ハイボール (500 JPY)-


閑話休題


これまで二度にわたってDMT-MMのメモを書いてきました↓

DMT-MM: Dehydrative Condensation in Aqueous Phase (https://researcher-station.blogspot.com/2016/07/dmt-mm-dehydrative-condensation-in.html)

DMT-MMの屈辱 (https://researcher-station.blogspot.com/2018/05/dmt-mm.html)

そう、二度ほどメモを書いてきたんですが、(多分)最重要の基本論文をうっかり読み忘れていました。これです↓

4-(4,6-Dimethoxy-1,3,5-triazin-2yl)-4-methylmorpholinium Chloride : An Efficient Condensing Agent Leading to the Formation of Amides and Esters
Tetrahedron, 1999, 55, 13159-13170.

この論文では、DMT-MMの安定性、反応機構、特にあまり使われることのないであろうエステル化について詳述されています(勿論、本命であろうアミド化についても詳述されている)。以下、安定性、エステル化、反応機構の順でメモをしていきます。


1st Stability of DMT-MM in Solvent

それでは、まずDMT-MMの安定性についのメモからはじめましょう。
DMT-MMは固体状態で室温で1ヶ月、冷蔵庫に保管して少なくとも数ヶ月は安定と言われていますが、ジクロロメタンやクロロホルム中では溶けないのに容易に脱MeClしてDMTMとなってしまいます。で、どれくらい分解し易いのか、他の溶媒中ではどうなのかを調査したのがこれです↓


ハロゲン溶媒に加えて、DMSOやアセトニトリル中でも分解が顕著です。あと、実施例にはないけど、水やアルコールとの混合溶媒中での挙動が気になります。
脱水縮合の反応溶媒として多用されるのは、メタノールとTHFですかね?


2nd Esterification

DMT-MMを用いたカルボン酸とアルコールの脱水縮合では三級アミンとしてNMMを添加することが推奨されています(三級アミンであればNMMでなくてもいいと思うけど)。

そして、溶媒量のMeOHでメチルエステル化をする際は、dryの方が高収率です。3-フェニルプロピオン酸のメチルエステル化では、DMT-MM (2.0 eq.), NMM (1.2 eq.), rt., 1.5 hrの反応条件で、
dry MeOH → 93% Yield
MeOH without drying → 87%
という結果でした。



安息香酸誘導体のメチルエステル化では、電子吸引性置換基があった方がスムーズに反応が進行します。

そして、MeOH以外のアルコールを溶媒量使った場合の結果はこちら↓


さらに、THF溶媒中、アルコールの量を化学両論量程度に抑えて反応を行った結果↓


酸に不安定な基質でも高収率❤️↓



3rd Mechanistic Consideration

それでは最後に推定反応機構です↓


アミド化反応では、DMT-MMを加える前にカルボン酸とアミンとの塩(アンモニウムカルボキシレート)を形成させておくことが重要です。

THF中、3-フェニルプロピオン酸にDMT-MMえお作用させて17時間反応させた後、フェネチルアミンを加えるtwo-step procedureではアミド化の収率が73%に低下します(最後にDMT-MMを加えるスタンダードな方法では84% Yield, 活性エステル形成が遅く、DMT-MMがDMTMに分解しているのか?)。
それから、当然ですがtwo-step procedureで反応を行う際は、乾燥溶媒を使用しないと、活性エステルの加水分解による収率低下が懸念されます。

逆に、フェネチルアミンをDMT-MMで処理して1時間してから3-フェニルプロピオン酸を加えて反応を行うと、目的のアミドの収率は47%と大幅に低下してしまいます。この際、N-(4,6-dimethoxy-1,3,5)-triazin-2-yl)-2-phenylethanamine (18%)とDMTM (22%)の副生を伴います。


以下、反応のポイントです↓

Amide-Forming Reaction
a)アルボキシレートアニオンの方がカルボン酸よりもDMT-MMとの活性エステルの形成が速いようで、予めカルボン酸とアミンを混ぜておいて塩を形成さでておくことで、活性エステルの生成が促進する。
b) 塩の形成によってアミンのDMT-MMへの付加反応を抑制できる。

Esterification
c) NMM(三級アミン)の添加によってカルボキシレートアニオンが生成し、活性エステル形成が促進する。

DMT-MM、ポイントはカルボキシレートアニオン。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のDMT-MM最重要論文メモでした。