2012年9月19日水曜日

Alternative to the Friedel-Crafts

先日、炭火やきとり富吉っていう店で飲み会があったんで、覚えてる範囲でメモしてみます。

-炭火やきとり富吉 memo-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
まあ、飲み会で自分の食べたいモノばっか注文して好きなだけ食ってたわけではないので参考までに。
総じて料理(主にやきとり)は美味しくて、参加者にはなかなか好評でした。個人的に秀逸だと思ったのはレバーで、これがまたとっても柔らかくてjuicy。あと、ホタルイカの沖付けは小ぶりでいい味出しててよかった(けど量が少ないのが玉にきず)。温玉大根サラダは人参ソースがかかって出てきたんだけど、これがなかんかニューウェーブ系で良かったです。
お酒はそこそこ種類があったと思ったんですが、出席者がご年配の方ばかりで、かなり遠慮してしまい存分には楽しめませんでした。
あとこの店、注文してから料理が提供されるまでがやたらと長かったな(混雑する前でも)。素人考えで速攻提供できそうな料理も遅かったです。ここが欠点。
総じて再チャレンジしてみたい店ですね。


閑話休題


Synthesis of α-Hydroxyacetophenones
J. Org. Chem., 2012, 77, 5144-5148.

メルクのプロセス・リサーチチームの報告です。



ハロゲン化アリールをTurbo Grignardでハロゲン-金属交換した後、arylzinc (ate complex ?)にして、acetoxyacetyl chlorideとの反応を銅で触媒させてα-アセトキシアセトフェノンを作る。選択的フリクラオルタナティブ的な匂いがオイラは好きです。


2012年9月17日月曜日

Eco-Friendly (?) Benzylic Oxidation

鰹節の卸売問屋(中弥商店)直営の立ち蕎麦屋として有名らしい"そばよし"に行って立ち蕎麦を食べてきました。

-そばよし 本店 かきあげそば (390 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ツユが凄い!カツオブシの強烈かつ濃厚な香味に加えて、力強い酸味が続いた後、甘みが現れる。濃厚bodyで噂に違わぬとっても美味しいツユ。蕎麦は極細でかなりコシの強い5割蕎麦。温蕎麦でこれほどのコシを保持した蕎麦に出会ったのははじめて。この食感は秀逸としか言いようが無いです。かきあげは揚げ置きしたものだけど、充分美味しい(そもそも、かけそばに揚げるたての天ぷらはいらないっしょ)。また、蕎麦はよく咀嚼しても粉っぽさや嫌な感じはせず、良くできていると思う。かけそばの究極の形の一つかもしれないと思いました。
店員は東南アジア系っぽい人達で、接客は丁寧とは言い難いが悪くはない(おしゃべりはちょっとうるさい)。こうやって人件費削ってコストダウンしてるのかな?クリンリネスは及第。


-そばよし 京橋店 もりそば (270 JPY) memo-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
せっかくなので、京橋の支店にも足を伸ばしてみました。
ツユはなかなかの濃厚bodyで旨い。提供された状態(低温)ではカツオカツオしているわけではないが、そば湯を注ぐとも猛烈にカツオブシの香りが立つ。蕎麦は極細の超硬めで、力強いbodyのツユとの相性は良いが、個人的のちょっと硬すぎる(ここがマイナスポイント)。ツユは蕎麦猪口に全量入れられて提供されるも、浜町藪そば室町砂場と同様に食べ進んでも味が薄くならない。ちなみに、2枚もり(470 JPY)だと徳利がつくようです。


閑話休題


上半期にこんな論文を読んでみました↓

Direct and Selective Benzylic Oxidation of Alkylarenes via C–H Abstraction Using Alkali Metal Bromides
Org. Lett., 2012, 14, 2414-2417.


千葉大の東郷先生のグループの報告で、重金属フリーがウリの環境調和型のベンジル位の酸化のお話です。金属臭化物からブロモラジカルを発生させるっていうコンセプトです。

環境調和志向の反応には、有機分子触媒や(化学両論量の)超原子価ヨウ素を使った反応が報告されていますが、電子吸引性置換基を有するアルキルアレーンのベンジル位のC-H結合は不活性で、これらの手法では直接的酸化は困難らしいです。

著者らが報告しているKBrとOxoneを使った反応は、熱的反応と光化学反応の2通りの条件があります。

Thermal Condition


Photochemical Condition


photochemical conditionの反応ではnatural sunlightでも反応は進行します。まあ、なかなかマイルドで低環境負荷な反応とは思うんですが、チョイスしてる溶媒がイマイチと思います。溶媒についていろいろ試したって書いてあるんだけど、本報にもSupporting Informationにも溶媒効果に関する記述は何にも書いてないんだよね。ホントにニトロメタンとかジクロロメタンじゃないとダメっていうんだったら、工業的にかなりポイント低いと思います(でも、サンプルワーク程度ならいいかな)。

あと、副生成物としてアルキル鎖の末端が臭素化されたものが生成する場合有りです。あと、著者らによる推定反応機構も提案されています。

機会があったら、溶媒効果について検討してみたい反応と思いました。


DDQつかってみました

ダース・ヴェイダーとルーク(4才)」を読んだんだけど、凄くいいね!
子煩悩なシスの暗黒卿ダース・ヴェイダー卿が子育てに悪戦苦闘するという、なんともシュールで微笑ましいパラレル・ワールドが描かれています。
スターウォーズ好きには、思わずクスクスと笑いがこぼれるほどの秀逸な仕上がりになっていると思うけど、純粋な子供向けの絵本としてはちょっと使えないよね(ちっちゃい子供はSWを理解していない)。近年まれに見る大人向け絵本って位置付けで評価してあげたい作品と思いました。


閑話休題


ところで最近、初めてDDQを使ってみました(100 gくらい)。で、初めて使うっていうことで、愛読しているe-EROS(電子版のEncyclopedia of Reagents for Organic Synthesis)読んでみたんですけど、DDQって水と接触させるとHCNが発生するんですね

"indefinitely stable in a dry
atmosphere, but decomposes in the presence of water with the evolution of HCN. Store under nitrogen in a sealed container"

"Since DDQ decomposes with the formation of hydrogen cyanide in the presence of water, most reactions with this reagent should be carried out under anhydrous conditions."

って書いてあります。

でも、Greene's Protective Groups in Organic Synthesisに書いてある。PMBエーテルのDDQ使った脱保護ってCH2Cl2-H2O系で反応やってやりするんですがどんな感じなんですかね?(rt., 40 minで84-93% yield)。


http://www.chem-station.com/odos/2009/06/pmb-mpm-protectiondeprotection.html
Tetrahedron, 1986, 42, 3021.
Tetrahedron Lett., 1986, 27, 3651.
Tetrahedron Lett., 1984, 25, 5397.
Tetrahedron Lett., 1982, 23, 885.

まあ、じゃばじゃば青酸が発生するわけじゃないと思うけど注意したいものです。


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追記

東京化成の取り扱い注意試薬ラボガイドにも書いてありますね↓
・(DDQは)水中でシアン化水素が発生して分解する
・【廃棄】可燃性の用材の溶かして焼却。望ましくは、DDQ専用の廃棄容器を準備し、他の廃液とは別にする。


2012年9月9日日曜日

六価クロムつかってみました: Cr(VI)の行方

去年食べた蕎麦のメモです↓

-蕎処理彦 生粉 (800 JPY) memo-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
田舎蕎麦ライクの太い蕎麦でぼぞぼぞしていて食感が悪い。茹で加減が均一でなく、技術に問題がある。ツユはカツオの良い香りが漂い、強めのツユに仕上げているつもりだろうが、太くぼぞぼぞした蕎麦に対して圧倒的に弱い。
店主は蘊蓄が多くて押し付けがましい。何故が自分の蕎麦に自信満々なんだけど、ボク的には基礎から修行し直して欲しいと思いました。店は民家で素人の道楽が高じた感じ。クリンリネスも失格で蕎麦もビジネスとしても明らかに落第と思いました。


閑話休題


2012年だというのに、時代に逆行するかのごとくはじめてJones酸化やってみました(0.5 mol = 500 mmol scaleで)。まあ、6価クロムつかった反応なんですが、クロムって3価が1番安定らしいですね。っていうことはJones酸化を経て還元されたCr(VI)はどういう経路でC(III)に落ち着くのだろうかという疑問が湧いてきます。まあ、6価から3価には1段階では移行できないから、酸化状態(酸化数)の異なるクロム間でレドックスが起こってるのかななんて思ってちょっと教科書を読んでみました↓


R1R2CHOH + Cr(VI) → R1R2C=O + Cr(IV) + 2H+
R1R2CHOH + Cr(IV) → R1R2C=O + Cr(II) + 2H+
Cr(II) + Cr(VI) → Cr(III) + Cr(V)
R1R2CHOH + Cr(V) → R1R2C=O + Cr(III) + 2H+

あと、バルク溶媒としてのアセトンが過剰の酸化剤と反応して生成物のoveroxidationを抑えるって書いてありますね。どういう反応条件でアセトンが反応するのか分かんないけど、酢酸と蟻酸に酸化されるのかな?こんな論文あるし↓


< 25℃, 1 hr;  2: 50%, 1: 41%
without cooling, 4 hr; 3 was obtained

J. Am. Chem. Soc., 1948, 70, 3352.

GCあればアセトンの挙動がdetectできたんだろうけどな(今の研究所にはGCないので)。もう二度とやりたくない反応だけど、アセトンの行方には興味津々な二流大出のなんちゃって研究員でした。

2012年9月1日土曜日

才能を超えて: レヴィット vs. 橘玲 再び (Super Freakonomics)

先日食べた蕎麦のメモです↓

-室町砂場 大もり (800 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
細く整った蕎麦はピシッとした食感で噛むとキュキュッと鳴るほどの弾力で、噛むほどに甘みが染み出してくる。ツユは濃厚なカツオの香りのする辛めのツユで、フィニッシュに甘さが感じられる旨いツユ。蕎麦とツユの相性はバッチリ。
ツユは蕎麦猪口に全量入れられて提供されるも、食べ進んでも味が薄くならない。
店内は趣ある造りで綺麗。店員は直立不動で待機し、無駄口を一切たたかずにキビキビ動く。またすぐにでも行きたい店。


閑話休題


Super Freakonomics」の感想メモの続きです。

人の能力(成功)は「才能(生まれつき)」か「努力(育ち)」か?というエントリー(http://researcher-station.blogspot.jp/2012/08/vs-super-freakonomics.html)を書きましたが、その追記です。

K. アンダース・エリクソン教授(フロリダ州立大, 心理学)は、能力のうち何割が「生まれつき」で何割が「育ち」かを実証研究しているそうです。で、教授の結論は↓

・優れた実績を出す人はほとんどいつも作られる(努力)のであり、生まれる(才能)のではない
「長時間練習することなしに並外れた成績を挙げる人がいる」という証拠はびっくりするぐらい見つかっていない

・漫然と努力してもダメ。名人の域に達したければ「意識的な練習」を積まなければならない。具体的な目標を立てること、すぐに評価を受けること、結果と同じくらい技術にも集中することが重要

・人生の進路を決めるなら自分の好きなことを選ぶのがよい。自分のやっていることが好きでないと必死に練習できない

だそうです。


スポーツの相対年齢効果は、生まれ月が早い肉体的に優位な児童が好評価を受けてそのスポーツを好きになり、その後ポジティブ・フィードバックが回ることで説明できそうというのが容易に想像できますね。

自分の子育てにも応用してみたいものです(成功確率の低いスポーツとかじゃなくて、成功確率の高い分野で)。

(了)

筒井康隆がライトノベルを書いたら

こうなりました↓

全5章からなるグロテスクなSFタイム・リープもので、各章のタイトルには全てにスペルマが入るという問題作。

序盤は、女子高生の採精シーンがしつこく描写され、おいおいただのエロ小説かよと思わせるんだけど、その後、カエルと人間のキメラを造ったり、シュールな未来が描かれたりと一筋縄ではいかない展開が待ち受けています。

帯には2010年代の『時をかける少女』と記載されてるけど、お行儀の良いジュブナイルでは断じてない作品に仕上がっていますね。

それにつけても、77歳でこの作品とはいろんな意味で凄いね。筒井康隆。

人はかわらない (Super Freakonomics)

先日、SUPER DRYの<鮮度実感パック>を試してみました。

-SUPER DRYの<鮮度実感パック> memo-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
「原則製造後3日以内で向上から出荷」を謳ったひと味違うビールというふれこみと思いますが、薄くて、素っ気ない味のビールでした。


閑話休題


Super Freakonomics」の感想メモの続きです。


今回は、人の振る舞いを変えるのは難しい (自分の振る舞いを変えるのはどんなに理屈が通っていたとしても簡単ではない)というお話。

人の習慣は変えがたいもので、百害あって一利なしといわれるような習慣でもおいそれとは止めることがでません(ex. タバコ、ギャンブル、ノーヘルバイク、デブチンのカロリー摂り過ぎ、etc.)。

シートベルトの着用もそういった事例の一つで、安くて簡単に安全性を向上できるのにアメリカではその着用率がなかなか上がらなかったそうです。
(ちなみにシートベルトのコストは2.5 ドル/個で、事故で死亡する可能性は70%減少するらしいです)

1960年代中頃、議会が国レベルで安全性の基準を決め始めた後のシートベルト着用率推移↓
キップ切ったり、キャンペーンやったりして、50年かけてやっと着用率が80%超えという体たらく。10年、20年程度の啓蒙活動では、人々の行動を変えることはできなかったという証左がここにあります。

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また、病院の医師に手洗いの習慣を定着させるのも困難だったと言います。アメリカ医学研究所の調査(1999年)によると、病院が犯すミスで一番多いのは傷口からの感染だそうで、感染を防ぐ最も有効な対策は、手洗いだそうです。

手洗いなんてはっきり言って簡単なこと(技術的な困難が見当たらない)だと思うんだけど、手を洗うか消毒しなければおけないとくに、手洗い・消毒をしていない職員(特に医師)が半分もいないという調査結果が報告されてるそうです。例えば↓

a) ロサンゼルスのシーダーズ・シナイ医療センター(世界でも一流らしい)の事例
清潔な手の割合: 65%
(昼食時に手から採取したバクテリアを培養したネバネバで超気持悪いコロニーの画像をスクリーンセーバーにして病院中のPCに入れることで、手洗いルールの履行率が100%近くになった。秩序ではなく、心理面に訴えかけて改善が促されたってこと)

b) オーストラリアのある小児病院集中治療科の事例
手洗い率: 73% (自己申告)
見張りの看護師の記録: 9%

こうした事例から、ルールを守るのにかかるコスト(手を洗うだけ)が安くて、ルールを破るとかかるかもしれないコスト(人命)が非常に高い場合でも、人の振る舞いを改めるのは難しいことが分かります。で、著者の結論↓

振る舞いを改めても、それで得をするのが大部分は他の人なら、みんななかなか振る舞いを改めない

負の外部性は拡散し易いということでしょうか。

続く.....