2008年8月30日土曜日

COMPETITIVE STRATEGY 1

戦略論の名著と名高い、あのポーター教授の「競争の戦略」を(とうとう)読み始めました。長いので、1章ごとにメモしていこうと思います。



第1章は「業界の構造分析法」(競争戦略論〈1〉の再掲タイトルは「競争要因が戦略を決める」)は、DHBR 2007年2月号に「5つの要因が競争を支配する」というタイトルで再掲されており、読了済みです。
see http://researcher-station.blogspot.jp/2007/09/blog-post_17.html


なので、第2章「競争の基本戦略」からメモします。


競争の基本戦略には以下の3つがあるそうです。

1) コストリーダーシップ
2) 差別化
3) 集中


コストリーダーシップは(業界全体をターゲットとした)低コスト戦略ですね。低コスト維持のための(ハイテク設備への)再投資が重要となる資本集約的な戦略です。大きな市場シェアを、規模の経済性を生かして(原材料を有利に入手できる利点とか)防御するときに有効。規模の経済性が参入障壁となります。オペレーション効率を高めるのも重要と思いますね。比較的最近の例としては、デルなんかが該当するのかな?
あと、コストリーダーシップ戦略は差別化戦略のような「コストを食うもの」と対立します。

次に、差別化戦略です。顧客ロイヤルティーを高め、価格敏感度を弱め、買い手の力を弱める戦略です。参入障壁は、ブランド・イメージ、テクノロジー、製品特性、顧客サービスによる差別化です。この戦略はシェア確保を不可能にすることもある。アップルとか一昔前のソニーとかラグジュアリーブランドが該当するのかと思います。

最後に、集中戦略です。「低コスト(コストリーダーシップ)」と「差別化」は、基本的に業界全体をターゲットとしていますが、集中戦略は特定セグメントをターゲットにしているのが特徴です。絞られたターゲットについて低コストと差別化の両方の達成に成功することもあります。また、効果的で効率的な戦いができます。但し、達成可能な市場シェアの大きさという点で欠点を持つ戦略です。


つづく...

2008年8月24日日曜日

チンパンジー上司

昨日のブログで取り上げた日経ビジネス2008.8.18号にこんなタイトルの記事がありました↓


"チンパンジー課長"からのメール


メールとチンパンジーには「2項関係 (相手と私という関係)」という共通点があるそうです。一方、人間は「3項関係 (相手の反応を確認しながら話す)」が成り立つそうです。


部下とのコミュニケーションにおいて3項関係が成立しない上司は、主張が一方的で、部下の異変にも気付かないということのようです。

ちなみにそんな上司に心当たりがあるコンキチは、人の振り見て我が振り直せと他山の石を決め込むのでした。

2008年8月23日土曜日

工学部の憂鬱

コンキチは、たまに城戸先生のブログをウォッチングしています。で、こんなエントリーがありました↓



必読、日経ビジネス!
http://junjikido.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_8e7b.html



2008.8.18号の日経ビジネスの「さらば工学部」という特集記事の中で、城戸教授がとりあげらているのですが、その補足エントリーです。


アグレッシブでインパクト大のタイトルに釣られて早速購入してしまいました。一応、工学部(応用化学科)卒なので。

記事では、工学部の志願者数が年々減少していて、その凋落ぶりがみるに耐えないということを嘆きつつも、工学系人材育成にかける大学、企業、自治体の取り組みが紹介されています。中でもコンキチが秀逸と感じた記事は、城戸教授の山形大学の話と、宮城県の企業誘致の話かなと思います。


a) 城戸教授の記事
有機ELで有名な城戸先生のトピックスです。5年くらい前に、大学の先生にしては珍しく「有機ELのすべて」という廉価な本を出した人がいるなと思ったのが城戸先生に対する興味の発端。この本ね↓


帯には城戸先生の顔写真が乗っていたのですが、とっても濃いお顔で、将来ますます活躍しそうな顔だなあと思ったことを記憶しています(失礼なこと言ってスミマセン)。

余談ですが、濃い顔って一流科学者の必須要件とコンキチは勝手に考えています(完璧にコンキチの思い込みですが)。濃い顔の著名科学者の例としては、E. J. Corey (くいだおれ人形にそっくり)、向山光昭、野依良治 (最近は脂が抜けきった顔していて、悲しくなります)、D. W. C. MacMillan (写真はそうでもないが、実物はそこそこ濃いと思う)とか。あと経済学者のケインズも顔濃いよね。

で、当時(5年前ね)山大出身の後輩が会同じ事業所にいたので、「城戸教授ってどんな先生?」って聞いてみたら、「くせがあって評判がよくない」と言っていたように記憶しています。ただ、件の山大出身の後輩(2浪)って、ホントにお前院卒なのかよと言いたくなるほどつかえない人材で、悪い評判というのも楽したい学生にとっての評判じゃないの?とコンキチは考えています。

城戸研ではBASF(The Chemical Companyね)の中央研究所(本国)にも人材を輩出しているという実績があるし、城戸研のWeb Siteに書いてある教育論って至極真っ当なことだと思うし、ブログも面白い。コンキチは城戸研って、地方大学にしては珍しくエクセレントな研究室だと思うな。残念ながらコンキチは有機ELにあまり興味がなくて、城戸先生がどういう研究してるのかよく分かりません(ちなみに上述の著作も読んでない)。軽く、ACSのWeb Siteでサーチしてみたら、こんな感じの業績があるようです↓
http://pubs.acs.org/wls/journals/query/subscriberResults.html?line1=junji+kido&op=searchJournals&yearrange4=true&field1=au%2Caul&Submit=Search

時間がとれたら、ちょっと目を通してみようかな。

ところで、日経ビジネスの記事読んで知ったのですが、やっぱり城戸先生って他大からのスカウトがあったのですね。


あと、山形大の副学長が、「地方の国立大学は『選択と集中』で明確な強みを出すことが重要だ。そのためには城戸教授のようなスターを育てる必要がある」と語っていますが、コンキチもまさにその通りと思います。トレードオフこそが戦略なのだから。城戸先生のブログを読むと、米沢の有機ELプロジェクトもいろいろと紆余曲折 があるようですが、今後の展開に注目していきたいです。



b) 宮城の村井知事の話
2005年に就任した村井知事は、2007年に東京エレクトロンの新工場誘致の契約を皮切りに、立て続けに大型工場誘致を決めてきたといいます。その決め手は人材育成。民間の専門家を講師に迎えた講座を県下8大学に院生向けに開講したといいます。

また、村井知事「県内の理工系大学の卒業生の7割が県外に就職するような状況を変えたい。地方で大切に育てた技術者が地元で働く。それなくして、宮城経済の長期的な成長はない」と主張しているようっです。コンキチも他人事ながら、全くその通りと感じますね。宮城には旧帝大の1角をなす東北随一の大学である東北大学があります。東北大学を中心に教育に重点をおいた政策をとる。そして、県下の大学から輩出された人材の吸収先を県内につくる。誘致する産業も堅固なクラスターを形成するような感じで選択する。こんな感じで宮城が経済的反映を謳歌するというスキームは、可能性が十分あると思います。

でも、宮城って東北大以外の大学って、大学の競争力があるのかはなはだ疑問です(少なくとも15年くらい前は、東北大しか魅力的な大学はなかったと思う)。ちなみにコンキチは東北大は受かる気しなかったので、首都圏の国立大を受験した。当時としては、理工系志望で東北大入るのが難しい人は、他県の大学を目指す事になるんだけど、理系国立大として魅力的な学校は東北地方にはなかったように記憶してます。

なにはともあれ、宮城は東北地方の盟主として、教育に重きを置き、産業の育成に努めて欲しいと思います。ちなみに、殆どのFeliCaカードつくってるのって宮城の豊里事業所なんだよね。
see http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0804/23/news093.html


あと、最近の工場誘致案件はこちら↓

社名/ 稼働時期 / 投資額 / 内容
パナソニックEVエナジー / 2009 / 300億円 / ハイブリット車向け電池
東京エレクトロン / 2010 / 300億円 / 半導体製造装置
セントラル自動車 / 2010 / 490億円 / 小型車
東北リコー / 2010 / 200億円 / トナー
トヨタ自動車東北 / 2010 / 500億円 / エンジン


もはやコンキチは宮城を捨てた人間ですが、トップ•マネジメント次第でこうもサクサク事が動くのかと感心するばかりです。



さて、日経ビジネスの工学部特集では、工学部の凋落がこれでもかというほどにピックアップされていますが、それは本当か?とちょっとだけ思います。

私大では定員割れで工学部が廃部に追い込まれるところもあるとか書いてありますが、これって工学部に限ったことではないのでは?と思います。そもそも、ブランドの低い私大はどこもダメじゃないの?そもそも、そういう大学は大学としての存在価値を失っていると思う。例えば、九州共立大の「数学の試験で0点の人に限り不合格としよう」という話はいかがなものかと思います。
see http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20080820/168389/


そえから、この特集に表紙ページに、「今やすっかり不人気学部」と題したグラフがあるけど、医学部以外は志願者は皆激減してるし、もともと工学部って人気がないようにも見える(ちなみに、コンキチは工学部卒だけど、理学部が第1志望だった)。あと、このグラフは1989年を100としてインデックス化しているようだけど、インデックスを作成する時って、基準年の選択が重要と思います。なので、1989年以前にデータもみたいよね。あと、絶対数も。

工学がとっても繁栄しているとは言わないけど、楽観的ニュースよりも悲観的なニュースの方が大衆に好まれるというバイアスも考慮してこの記事を読むべきいかなと思います。



以上、某二流国立大出で理系の文系と揶揄さっれる化学専攻ののなんちゃって研究員の独りよがりな独白でした。

2008年8月16日土曜日

政治と平和

この時期になると、毎年毎年、脱•戦争を謳った番組が活況を呈します。で、そういった番組では、中学生とかが「戦争を起こしてはならない」とか「平和は素晴らしい」みたいな作文を朗読している映像を流して悦に入っている気がします。

はっきり言って、「戦争=暴力行為による殺人=悪」という図式で戦争を批判しているとしか思えない中学生の作文に何の説得力も感じることはできないのですが、そういう人間はコンキチだけでしょうか?だって、戦争は政治プロセスの一形態なのだから。平和と脱•戦争という一見すると耳触りのよいワードにより、皆思考停止している、そんな気がします。

よく、「戦争を無くさなければならない」なんて言う人がいますが、彼らは戦争が政治プロセスの一形態であるという現実を理解してそのような発言をしているのか?と疑問を感じます。


普通の人なら戦争は最も回避すべきものであるということに異論はないと思いますが(コンキチもこの点に関して異論はありません)。しかしながら、国家間の政治的議論•経済政策において話し合いだけではどうしても折り合いをつけることができず、しかも虐げられている(不公正)と十分に感じられる場合において、彼の国はどういった対応をすればよいのか↓

a) 政治的話し合いで解決するべきだから泣き寝入りする→不公正さを感じながらもおとなしくしている。

b) 政治的話し合いでは埒があかないので、実力行使する→武力行使(戦争)により公正さを取り戻そうとする


思想や信条が異なる国家間における政治的議論は必ずしも一つの結論に収斂するとは限りません。それは、隣国と我が国との関係を鑑みれば明白でしょう。で、議論の決裂によるうっぷんが臨海点に達っするものでなければ、まあお茶を濁す程度で済むかもしれません。しかし、議題がその国において決定的に重要なものであったとしたら、話し合い以外の何らかの手段(経済政策とか武力行使とか)に出ることも選択肢の一つとなり得るでしょう。


国家間の戦争に至るプロセスは子供のケンカと近しいものと思います。大人や組織間のイザコザだって、暴力行為に至ることはなくても(皆無とは言いません)、パワープレイによって相手を追いつめることはあるのではないでしょうか?



戦争とは政治プロセスにおける一手段である
戦争は政治的文脈の中で語られなければいけない



と改めてそう思います。


なので、戦争について語るならば、当該国の政治、そして自国の政治についても言及すべきでしょう。それから、国家の政治プロセスの根幹をなす選挙には多いに関心を払うべきと思います。少なくとも、選挙に参加していない有権者は「平和」とか「戦争」について口を挟む権利はないと思います。
see http://www.promised-factory.com/100years_after/house/turnout-abs.html


単に「平和」と「脱•戦争」を馬鹿の一つ覚えのように連呼しているだけでは白痴的と思います。



以上、二流大出のなんちゃって研究員の戯言でした。
(なので、軽く聞き流してください)

2008年8月15日金曜日

Behavioral Economics

最近、行動経済学が流行っている気がします。

例えば、
a) 週刊東洋経済で特集やってた
b) 週刊ダイヤモンドで特集やってた
c) 日経ビジネスアソシエで特集やってた
d) 大和証券のCMもエビちゃんから行動経済学ネタにシフト

ということで、コンキチもこの世間の流れに乗り遅れないように最近、行動経済学の本を読んでいます(例えば、こんなのとか→http://researcher-station.blogspot.jp/2008/04/winners-curse.html)。で、今回読了したのは↓



←「行動経済学 経済は「感情」で動いている」という本です。

この本は、

i) 著者が日本人なので、文章が読み易い。
ii) 行動経済学のトピックスが概観できる。

こういう理由から、概説本として良書と思います。値段も安いし。


あと、この本の終章で神経経済学(MRI使って、脳の活性化された部位を調べる)が紹介されていてちょっと興味深かったです、まさにサイエンティフィックっていう感じがして。


入門書としてgood!と感じるとともに、標準的経済学にも興味が増しまた二流大出の窓際研究員なのでした。

2008年8月14日木曜日

3年で辞めた若者はどこへ行ったのか

という本を読了しました。「内側から見た富士通「成果主義」の崩壊」で作家デビューした、元富士通の人事マンの城繁幸氏の著作です。

この本では、労働市場を水と油のように異なる二つの価値観から眺め、対比させるこいで話が展開して行きます。で、二つの価値観は、それぞれ「昭和的価値観 (守旧的)」、「平成的価値観 (革新的)」と名付けられています。コンキチ的には、「バブル崩壊」、「バブル崩壊」の方がより適切かと思いましたが、昭和vs.平成の方が耳触りがよいからね。

以下、コンキチの心に止まったフレーズ(特に空恐ろしくなる昭和的価値観について)をメモしていきます。



1) 昭和的価値観 2 「実力主義の会社は厳しき、終身雇用は安定しているということ」 -新卒で、外資系投資銀行を選んだ理由より引用
「すごいんですよ、邦銀は。入行して最初の3ヶ月、ずっとATMにお金を入れる仕事だけをやらせたり(笑)。そういう愚痴をOBから聞かされて、行こうと思う学生なんていませんよ。今じゃあ、自分のいたゼミで、第一志望を邦銀にする人間なんてまずいない」
→ライブドアの堀江前社長の言葉を思い出しました(ライブドア事件以降、世間では彼が全否定されている印象を受けますが、いいこともやったし言ってきたと思う)。「丁稚が雑巾がけばかりしていても、経営者にはなれない」的なことを言っていたと思います。でも、職場の上長はそれを強要するんだね。その理由はコンキチの想像の域を出ませんが、単純にいつかきた道を部下にもやらせているだけなのかなという気がします。例えば、コンキチが身を置く業界で博士研究員の就職が日本では困難だ的なことを書いたことがありますが(see http://researcher-station.blogspot.jp/2006/05/blog-post.html)、博士研究員の(博士号を持っていない)上司が博士を使い切れるだけのマネジメント・スキルがないことに起因するんじゃないかな?博士号を持っていない上司は、博士の部下に対して学歴コンプレックスを持っている。で、自分よりも高度な専門性を持つ部下(博士)に対して自分の(つまらない)プライドを保ちたいと思う。専門性では太刀打ちできない可能性が高い。ついでに高いマネジメントスキルもなかったりした場合、どうやって(ちっぽけな)威厳を取り繕えばよいか?とりあえず会社(権威)に伝わる伝統的な(無意味な)研修チックなことを、一から業務を覚えるためとかなんとか称してやらせてしまう。こうしてミスマッチ一丁あがるのかななんて妄想してしまいます。


「邦銀やメーカ-に就職した同期なんかと話すと、ものすごく度胸があるなって感心します。だって、自分の市場価値のことなんて、まったく考えていない。将来会社が潰れたりしたら、絶対路頭に迷うはず。なんでそんなに他人に人生を任せられるのか。私に言わせれば、ああいう生き方のほうがはるかに高リスクな時代でしょう」
→会社に洗脳され、飼い馴らされていうちに、元来備えていたエッジは削られて均質なゼネラリストになってしまう。そして、労働市場における市場価値を棄損させながら、自分が労働市場の内側にいることを忘れてしまう。そんな気がします。そもそも、マネジャーというのは一つの専門職だと思うのだが、そういった認識を企業は持ち合わせているのか疑問ですね、コンキチは(少なくとも、コンキチの勤務する会社にはそういう認識はないし、マネジメントスキルを高めるためのプログラムはないな)。
余談ですが、市場価値を失った(アホな)上司の(アホな)指示に従うことほど、モチベーションの下がることはないとコンキチは思いますね。


2) 昭和的価値観 7 「言われたことは、何でもやること」 -東大卒エリートが直面した現実より引用
転職希望者をターゲットとしたキャリア採用市場は、いまや1兆円市場だ。ただ、すべての人間がそこで通用するわけではない。求められているのは、年相応のキャリアを積んできている人間だけだ。特に30代は、もっとも脂ののった即戦力として期待される半面、それまで積み上げてきた職歴が厳しき問われる年代でもある。営業管理からSE、経理まで、薄く浅く経験してしまったゼネラリストは、どうしても低い評価しか受けられないのだ。
→企業のゼネラリスト戦略は、従業員から市場価値を奪い、その会社にしがみついてくしかできなくするための方策なのだろうかと思ってっしまいました。外の世界で生きる術を知らない、いたいけな従業員は、無理な転勤、無理な労働時間、劣悪な労働環境下においても、会社に盲従することでしか生活の糧を得ることはできない。真剣、恐いです。


3) 昭和的価値観 11 「公私混同はしないこと」 -サラリーマンからベストセラー作家になった山田真哉氏より引用
「財形貯蓄を始めたんです。数字には強かったので、月いくらずつ積み立てて。35歳でいくら、50歳でいくらと計算する。年功序列だから、各年代でもらえる給与もだいたいわかる。しかも職場には、各年代の人間が並んでいるから、実際の生活風景まで想像できてしまう」
 重い住宅ローンを背負いつつ、食べたいものも食べず、残業代を稼ぐためにオフィスに遅くまで残る先輩たち・・・・・・それが10年後、20年後の自分の姿そのものだと気づくと、彼にはそれ以上、そのレールの上に留まることができなかった。
「別に給料が安いなんてことは無かったですよ。ただ、なんというか、彼らはまったく楽しそうに見えなかったんです。日々仕方なく、いやいや会社にきている。自分も今にそうなると思うと、耐えられなかった」

→チンタラ、チンタラぼんやり仕事をしている年配社員。時間外労働中にパソコンゲーム(ソリティアorフリーセル)をやっている先輩社員。研究員なのに英語の文献を全く読まない先輩社員。怠慢かましているくせに、(労働組合を通して)権利だけはしっかり主張する。そんな人間の中に身を置いていると、自分もその思想に洗脳されてしまうことに恐怖を感じます。そんな将来を想像すると自分が腐れてしまいそうです。


4) 昭和的価値観 16 「新卒以外は採らないこと」 -リクルートが始めた、新卒以外の人間を採用するシステムより引用
企業にとって多様性が重要
ところで、リクルートがここまでして多様性を重視するのは、何も兵隊の頭数を揃えることだけが問題ではない。そこには、もっと重要で本質的な意味がある。それは、多様な価値観を組織に受け入れることだ。
 同社は元々、年功色の薄い職務給ベースの人事制度を採っており、すべてのポストは勤続年数ではなく、個人の能力で割りふられる。その結果、社内の主要ポストで組織の舵を取るのは30代が中心だ。(中略)
 こういった組織では。まっさらで均質な新人よりも、自発的で強い個性が必要となる。自分で課題を見つけ出し、自分で解決していく素質といってもいい。そして若い個性は、古い価値観を駆逐していくのだ。

→リクルートがどんな会社だかはいまいち良く分かっていないけど、多様性(diversity)は重要だと思う。フロリダ教授の著作では、寛容性(tolerance)が重要だと述べられていた(see http://researcher-station.blogspot.jp/2007/12/blog-post.html, http://researcher-station.blogspot.jp/2008/07/rise-of-creative-class.html)けれど、両者とも優れた尖った才能の重要性を認識している点で同じと思います。クリエイティブな仕事では、紋切りの協調性だけでは競争できない。なので、エッジの立った個性を繋ぎ止めるためのインセンティブが必要となる。その結果が、リクルートの報酬システムなのだろうと思います(30代が社内を切り盛りするというのも当然、インセンティブ足りうる。こっちの方が経済的インセンティブよりウェイトが大きいかもしれない)。
あと、多様な人材を許容するという企業風土により、組織が硬直化して、組織が宗教化(悪い意味での会社第一主義。会社のためなら法を犯すこともいとわないぜ)することを抑止する効果も期待できるかもしれないと思います。


5) 昭和的価値観 19 「最近の若者は元気がないということ」 -日本企業を忌避しだした若者たちより引用
個人的には、確かに二極化は進んでいるものの、平均すれば今の20代はそれ以前の世代よりずっと努力しているし、結果的に優秀だと感じている。(中略)「最近の学生は本当に優秀ですね。20歳そこそこなのに、熱意もビジョンも、ロジックも素晴らしい。うかうか去年と同じ話はできないし、一部の鋭い質問と議論運びにはこちらも勉強させられる」(中略)「最近の若者は••••••という人たちは、その程度の学生にしか相手にされていない、という言い方もできるでしょう」
→メチャクチャシンパシーを感じます。優秀な人は超優秀と思うことがシバシバありますね。ただ、大学全入時代に入って、うだつのあがらない私大卒の学生は箸にも棒にもかからないとは思います。seehttp://researcher-station.blogspot.jp/2007/09/blog-post_05.html
高度に二極化が進んでいるということでしょう。実際、先端のテクノロジーは複数の領域がオーバーラップしている。ということは、先端のテクノロジーに携わっている人たちは、身につける知識が膨大なんだよね。コア領域だけでも進歩した部分を余計に知識として吸収しなければならないことに加えて、周辺領域についても勉強しなければならない。でここで質問。先端テクノロジーを牽引しているのは、いまの若者はダメだと嘆く、おじいちゃんおばあちゃんなのだろうか?自分が年取ったときに、愚かな懐古趣味に陥らないように気をつけたいと思うコンキチです。


6) 昭和的価値観 20 「ニートは怠け者だということ」 -「競争から共生へ」あるNPOの挑戦
就職とは、それまで民主的社会でつちかってきた個の価値観を一度否定し、組織の論理に染まる儀式のようなものだ。"立派な社会人"からすれば、「社会に出るとはそういうこと」であり、「それができない奴は甘えている」ということになる。
→結局、企業って広義の宗教だよね。会社を盲信することで、終身雇用という(虚妄の)救いを与えてあげるよという。


7) 昭和的価値観 22 「左翼は労働者の味方であるということ」 -21世紀の労働運動の目指すべき道とはより引用
対立軸は従来の左右ではなく、世代間にこそ存在するのだ。
→企業年金も同種の問題だと思います。例えば、確定給付年金と確定拠出年金について考えてみると↓
a) 確定給付年金→年配者が圧倒的に有利
b) 確定拠出年金→若者が圧倒的に有利
と言えると思います。
で、コンキチが勤務する会社では、適格退職年金があるんですが、ボチボチ廃止されるのでなんらかの処置をとらなければなりません。で、企業年金として存続させることになったのですが、確定拠出年金はおしなべて強く拒絶されましたね。
それから、疑似成果主義導入後の給料もそうでしょう。降格とか降給がない閉じたシステムの中にかって、もはや若年層は年配者と同等の給料UP↑(昇級)は望めない。


感想は以上です。

なかなか興味深い著作と思うとともに、自分の労働市場における価値を再考させられる内容と思いました。自分も人生の岐路に立っているような気がします。


それから、「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書 (708))」を所望の人は、左のリンクから買ってくれると嬉しいです。





2008年8月13日水曜日

キャスターのお仕事

昨夜、WBSを観ていたら、男性キャスターがこんなことをの宣っていました↓

景気が良くなって原油高が起きたのに、原油高のために景気が減速しているのはおかしな感じがする的なことを言っていたように記憶しています。


おいおい、それが君達がよく口にする景気循環てやつじゃないの?中学校の時に習った、需要と供給の関係で説明できるのではないのかい?


キャスターの仕事とは、

厚顔無恥な自分の感想を、公共の電波を使って、お茶の間にばらまくこと

と改めて感じるコンキチなのでした。

2008年8月10日日曜日

environmentally benign oxidation

Practical Process Research & Development」という本をチビリチビリと読んでいるコンキチです。

余談ですが、コンキチがアマゾンで買ったときは、15,498円(昨年7月)だったのですが、現在価格は15,745円。為替ってやっぱり動いてるんだなあと感じる今日この頃です。


さて、この本の中でちょっぴりコンキチの興味を誘った部分があったのでメモしてみます。これです↓


referenceはOrg. Process Res. Dev. 1997, 1, 420.で、同志社大の報告です。

2級アルコールの酸化において、PCCの代替酸化剤として次亜塩素酸カルシウム(さらし粉)が取り上げられています。

残念ながら元文献を入手することはできませんでしたが、どういう検討を経てCa(OCl)2に辿りついたか興味ありす。

2008年8月6日水曜日

ザ・チョイス

ザ・ゴール」シリーズを世に送り出したTOC (Theory Of Constraints)の生みの親であるエリヤフ・ゴールドラット博士の最新作がもうじきリリースされるようです(何号か前の週刊ダイヤモンドにインタビュー記事が載ってた)。

タイトルは「INHERENT SIMPLICITY」。邦題は「ザ・チョイス」。米国では9月に、日本では10月に刊行予定です。よくわからないけど、キーワードは調和(ハーモニー)のようです。発売が待ち遠しいです。

ところで、ダイヤモンドのインタビューで博士はこう宣っています。

私は科学者です。サイエンティストなので、常にアンビバレント(二律背反)なものを持っておりまして。


多面的に物事をみるということでしょうか?もしそうなら、シンパシーを覚えますね。


因みに、博士のこれまでの著作はこちら↓








ちなみにコンキチはコンプリートしています。

あと、スループット会計がよく分かる本ね↓