2012年3月18日日曜日

Room Temperature Cross Coupling: 脱離基はアミノ基

そういえば、有機化学とラブコメの融合にして、第9回『『このミステリーがすごい!』大賞』の優秀賞を受賞したラブ・ケミストリーから約1年。喜多喜久氏の新作「猫色ケミストリー」(東大を舞台に「人格入れ替わり」をテーマにした有機化学コメディ)がもうじき発売されますね
(絶対、ケミストリー三部作にしようとしてると思う)

ところで、喜多喜久氏の作品はこの2本だけではなくて、「クリスマス・テロ」という短編があります(「このミステリーがすごい! 2012年版」に収録されています)。東大を舞台にしたちょっぴりサイエンティフィックなラブコメで(あいかわらずの少女漫画調)、幼少の頃、少女漫画を読み耽ったコンキチにはなかなか良かったです(ときめきトゥナイト、ハンサムな彼女、パタリロ、こいつら100%伝説などを愛読していました)。


閑話休題


ちょっと古いんですが、こんな文献を読んできました↓

Room Temperature Palladium-Catalyzed Cross Coupling of Aryltrimethylammonium Triflates with Aryl Grignard Reagents
Org. Lett., 2010, 12, 4388-4391.

aryltrimethylammonium triflate (or tetrafluoroborate)とaryl Grignard reagentとの(Kumada-Tamao-Corriu)クロスカップリングのお話です。しかも、室温で!

15 examples, 79-94% yieldです。

エレクトロファイルの官能基許容性は高く、F, Cl, CO2Et, OPiv, CN, SMe, OCF3, NMe2でオッケーです。

ちなみにこの仕事は、Werkert等の1988年の仕事にインスパイアされたものだとか↓
著者等の仕事では、アンモニウム塩はトリフレートの他にテトラフルオロボレートでも有効。また、それらの誘導方法はこちら↓

ちなみに、ジメチルアニリンからone-potでカップリングさせることもできて便利↓(ただ、反応時間はdirect reactionよりも長くなってしまう。ちなみに、下のschemeの反応は、ダイレクト反応だったら1 hで終結)
あと、競合実験でエレクトロファイルの反応性の高さは、

PhI > PhNMeOTf > PhOTf >> PhBr > PhCl

なかなか楽しそうな反応と思いました。

Hartwig Trifluoromethylation: late-stage trifluoromethylationのためのTrifluoromethylator

先日、新しいiPadが発売されましたが、初代iPadにMOLESKINの純正カバーよりもMOLESKINチックなカバーを装着してそのベストマッチング具合に満足してひとりニヤニヤしているコンキチです。



閑話休題


こんな論文を読んでみました↓

A Broadly Applicable Copper Reagent for Trifluoromethylations and Perfluoroalkylations of Aryl Iodides and Bromides
Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 50, 3793-3798.


Hartwigの研究グループの報告です。

近年、網井らの研究グループがヨウ化アリールのトリフルオロメチル化の触媒システムを開発しました(Chem. Cummun., 2009, 1909-1911. )。触媒活性種は、[(phen)CuCF3]と提案されているんだけど、その単離はされておらず分光学的データもありませんでした。ちなみに、その触媒システムでは、電子不足ヨウ化アリールでは反応が進行するものの、電子リッチな基質では目的物が生成しないという課題があります(ちなみに、今、Chem. Commun.みれないので詳細は分からない)。ちなみに、網井らの触媒システムはこんな感じらしいです(この研究成果は、Cu触媒を用いたトリフルオロメチル化の数少ない成功例みたいです)↓


著者らは網井らの研究成果にインスパイアされて、提案されている件の触媒活性種[(phen)CuCF3]を合成・単離し、その活性を詳細に検討したというのが本報の内容です。

触媒の合成・単離は上記schemeの通りに行われ、その性質は↓

・orange-red solid
・DMF, DMSOに溶解。THF, CH2Cl2には部分溶解。ベンゼン、Et2Oに不溶。
・DMF中では、[(phen)CuCF3]と[(phen)2Cu][Cu(CF3)2]の平衡混合物として存在(19F NMR、導電率測定から示唆)
・室温、窒素雰囲気下で、1ヶ月以上安定

という感じです。ちなみに、-CF3が-CF2CF2CF3も同様に調製可能です(97% yield)。

←次に擬似触媒条件での反応を検討したところ、
電子リッチな基質に対しても高い活性を示し、官能基の許容性も高く、立体障害にも強いという結果が得られています。このことから、網井らの反応条件下では、[(phen)CuCF3]以外の化学種と反応しているか、[(phen)CuCF3]が十分に生成していないことが示唆されました。

ちなみに、p-RArBrとも加熱(110℃)すれば、反応が進行します(R=CO2Et: 61%; R=CHO: 66%; R=CN: 60%)。

さて、[(phen)CuCF3]の活性が明らかになったところで、著者らは、より実用的なトリフルオロメチル化反応の開発へと検討を進めていきます。

ArIに対して1.2-1.5 eq.の[(phen)CuCF3]を作用させると、種々にArIに対して、マイルドな条件下、優れた収率でトリフルオロメチル化が進行します。はっきり言って、この芳香環の電子状態に関わらない活性と官能基許容性は凄いと思います。しかも、[(phen)CuCF3]を空気中で秤量しても活性は殆どかわりません(反応は不活性ガス雰囲気下で行われる)。

さらに著者等は、[(phen)CuCF3]をin situで発生させてそのまま反応に用いるさらに実用的なプロトコールに開発に取り組みます。その結果、DMF中でCuCl、KOtBu、1,10-フェナントロリンから[(phen)CuOtBu]を発生させた後、TMSCF3 (Ruppert's reagent)を作用させることで[(phen)CuCF3]のin situ preparationを達成しています(これはとっても凄い!)。

あと、[(phen)CuCF2CF2CF3]を用いいたパーフルオロアルキレーションも効率よく反応が進みます(5 examples, 88-99% yield)。

ちなみに[(phen)CuCF3]は、TrifluoromethylatorTMという名前でAldrichから市販されていますが(18,400 JPY/350 mg)、高いです。でも、in situ preparationでいけるので、その手法で(機会があれば)是非試してみたい試薬と思いました。

あと、参考Web Site↓
http://www.catylix.com/hartwig-trifluoromethylation-new-broadly-useful-trifluoromethylation-reagent.html
http://www.bio-catalyst.com/new-trifluoromethylation-technology-from-catylix/

2012年3月4日日曜日

新生銀行の真実

先日、神田鍛冶町の尾張家っていうおでん屋さんに行ってきたんですが、とっても良かったです。ちなみにこのお店、お品書きにはお刺身(築地から仕入れているらしい)を中心としたおでん以外のメニューが値段未表示で記載されていてちょっとドキドキします。で、おでんはメニューに全く載ってなくてどうやって注文するのかといえば、適当にたのんどけばオッケーです。お酒の品揃えはちょっとpoorですが、「底ぬけ」っていうおサケがなかなか美味かったです。おでんとお刺身がとっても美味しい!凄く美味しい!接客も最高!是非再訪したい店と思いました。


閑話休題


最近の金利って低いなあって思ってたら、住宅ローンの金利が凄いことになってますね

若いとき、土地心理教の呪縛から解き放たれる前のコンキチは、とある集合住宅を住宅ローンを組んで購入してしまいました(人生最大の失敗かもしれない)。当初は、住宅金融公庫(当時)とディベロッパーが提携していた第二地銀からお金を借りていて、数年前にSMBC(30年固定2.95%)に借り換えしたんですが、この3月にまた借り換える予定です(20年固定1.849%)。

さて、最近ネットで「住宅ローン(借換)」というクエリーで検索すると、新生銀行が上位でヒットします。実際、フラット35を除けば、手数料(イニシャルコスト)が安く、住信SBIネット銀行に次いで低い金利を提示している新生銀行は魅力的な選択肢の一つです。しかしながら、新生銀行には明確な融資基準があります。それは、



融資金額のMAXは担保評価額まで



これは同行のweb siteにも送られてくる資料にも記載されていなかったと思うけど、事実です。っていうか、昨年末にボクも新生銀行に住宅ローン借換のアプローチをしたんだけど、融資額の引き下げを提案されました。で、融資期間を長くすることで希望額を融資してくれないかと聞いたら、Maxは当該物件の評価額までだって言われたのでばっちりです。

それにつけても、そういう内規があるんなら最初から言えよなって感じですね(そしたら、エントリーする人が減っちゃうかな)。準備する書類も結構あって大変だったんだよな。ボクの場合、免許証のコピー、団信の申込書兼告知書、返済予定表コピー(1年分)、通帳3ヶ月分のコピー、住民税決定通知書コピー、所得税納税証明書(その1、その2)コピー、不動産登記簿謄本コピーを提出したんだけど、税務署行ったり(これはe-Taxでもできた)、法務局行ったりして大変でしたよ。とりあえず、ボクの新生銀行に対するCSは大幅ダウン↓です。同行には、顧客接点に関して再考を促したいと思う二流大出のなんちゃって研究員でした。

Aromatic Cation Activation (5): Catalytic Cyclopropenium Cation Activation

先日、けっこう旨い蕎麦屋に行ってきました↓

戸隠にあるうずら家っていうお店です。とりあえず、飲み食いしたモノをメモしていきます。

-どぶろく (450 JPY)-
-RATING- ★★★★★
fresh, sweet, fruity, milky note. 微発泡性で、full body。どぶろくならではの醍醐味を堪能できます。アルコール度数は16%程度。

-豊香 (550 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
長野県は(株) 豊島屋が醸す日本酒。ぬる燗でいただいたんだけど、熟れた果実味溢れるきれいな芳香の芳醇旨口系。優しい甘みが五臓六腑に染み渡りました。

-山の幸の盛合わせ (800 JPY)-
-RATING- ★★★★★
山の幸の7種(位?)盛り。とても美味しい。特にカブの漬け物が秀逸。

-きのこいろいろ天ぷら盛り合わせ (900 JPY)-
-RATING- ★★★★★
excellentに美味しい。涙が出るほどに旨い。筆舌に尽くし難い旨さ。自分のボキャブラリーの無さを改めて痛感させられるほどの旨さでした。




-山菜とお野菜の天ぷら盛り合わせ (900 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
サクサクでとっても美味しい

-旨辛あらばしり (400 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
大根とかつおぶしのセット。ボクの感触では、大根は辛味大根ではないです。

-ざるそば (840 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
ソバは適度に細く、食感、香味ともにgood。滑らかで噛みごたえも良く美味しい。
ツユはカツオの上品な香味あるも、body
は控え目と言わざるを得ない。ソバに負けているとまでは言わないが、若干の物足りなさを感じる。




-かけそば (800 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
ツユは良し。上品で、ほどよい甘みの飲んで美味しいツユ。ソバもそこそこコシを保っている。かけそばでこのクオリティは及第。

コンキチ的には、このお店、蕎麦よりも天ぷらがおすすめな店と判断しました。っていうか、戸隠蕎麦は蕎麦は旨いんだけど、東京の蕎麦が大好きなコンキチの好み的には、ツユの鮮烈(濃さ)さに欠けるのが一般的な特徴なのかなと思いました(好みの問題なのでしょう)。
それから、この店のホスピタリティは注目に値しますね。接客技術が実に素晴らしい。ちなみにコンキチは石臼でそばがき用に蕎麦の実を引かせてもらちゃいました(この店では、蕎麦よそばがき用でそば粉の挽き方が違うそうです)。再訪の価値、大いにありです。


閑話休題


さて、今年に入ってからこんな文献を読んでみました↓

Development of a Catalytic Platform for Nucleophilic Substitution: Cyclopropenone-Catalyzed Chlorodehydration of Alcohols
Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 12222-12226.

以前、著者等はCyclopropenium Cation Activationを利用したアルコールのクロロ化の量論反応について報告しましたが(J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 13930-13921.)、今回の報告はその触媒反応バージョンです。

で、反応(触媒サイクル)はこんな感じ↓
(ブルーの化学種は1H NMRでdetectされている)

R=PMBで最も活性が高いです。19 examples, 62-99 % yield。標準的な反応条件は、cat. 10 mol%, (COCl)2 1 eq., CH2Cl2, rt.。(COCl)2は1 hr かけてスローアディションします。

反応は圧倒的な立体特異性(SN2)で反応が進行します。基質に光学活性α-メチルベンジルアルコールを用いると、eeを損なうことなく立体反転した塩化物が得られます(99% yield)。また、cholestanolの塩素化では、目的物が>98:2のdrで得られます(62% yield)。

さらに、methyl 3-hydroxy-3-phenyl-2-methyolpropionateを基質に用いた反応例は興味深いです↓

個人的に反応はなかなか興味深いです。precatalystをいかに効率的かつ経済的に調製できるかが問題ですかね?


アツく染め上げろ!

カミさんに貰ったチョコレートをチビチビやっているコンキチです↓


これサケ呑みで甘党の人間(コンキチ)にはなかなか良いです


閑話休題


さて、有機合成に携わっている人が1番お世話になっているものの一つに、TLCがあると思います。TLCの発色剤にはいろいろあって、そのレシピは、研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ東大金井研などが詳しく、他にもいろいろなレシピ群が多くのサイトで公開されています。

ボクが個人的に愛用している(使ったことのある)発色剤は、アニス、ハネシアン (CAM)、PMA、ニンヒドリン、ヨウ素-シリカで、そのうち加熱が必要なのが、アニス、ハネシアン (CAM)、PMA、ニンヒドリンの四つ。加熱系発色剤の場合、ディップ or スプレーした後加熱する訳ですが、この時、ヒートガンを使っていると気付きにくいんだけど、ホットプレートでヒーティングしていて明確に気がついたことがありました。

そんなの常識だよとみなさん周知していることかもしれませんが↓

ハネシアン (CAM)は、アニス、PMA、ニンヒドリンよりも控えめな温度で加熱しないと、焼けすぎて、(特に)低濃度のスポットを見落としてしまう。
逆にハネシアンに適した温度では、アニス、PMA、ニンヒドリンの焼けが悪い。

ということに気がつきました。要は、発色剤には最適発色温度があるっていうことで、何でも馬鹿に一つ覚えで加熱しとけばいいというものではないということです。まあ、当たり前って言えば当たり前なんでしょうが、恥ずかしながらコンキチは2年くらい前に初めて気がつきました。せっかなのでメモしておきます。