2023年3月22日水曜日

Raumen_Colle (ラーメンコレ) (13)

ラヲタになりたいお年頃。ラーメン大好きコンキチです。
ラヲタの方って、自身の健康も顧みず肝臓がぶっ壊れるまでラーメン一色の生活を送るらしいじゃないですか。真剣、リスペクトです。
まさに、一意専心、ラーメン道に精進していると思います。


そして、肝臓が壊れない程度に抑えているボクが新たに食べたラーメンのメモです↓


entry 61   魚べい (visited Apr. 2022)

-HIBARI監修!鶏そば (390 JPY)- 
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
(ボクは未訪だけど)宇都宮の有名店"鶏そばヒバリ"監修のラーメン(https://utsunomiya.goguynet.jp/2022/03/08/uobei_hibari/)ということで期待してたんだけど、かなり美味しくない。 
スープは奥行きに乏しい薄っぺらな味。 
麺はヌメリがあって、ちょいエグ味も感じる。さらに、一部くっついていていただけない。
具は、焦がし玉葱、粗くおろした玉葱、チャーシュー、葱。メンマ、青菜、etc。
焦がし玉葱と粗くとおろした玉葱のコンボ味と食感のコントラストがいい感じ。特に焦がしフレーバーがとてもいい。チャーシューはペラペラだけど味は悪くない。メンマはソフトめな食感。 
具はけっこう頑張っていると思うけど、肝心要の麺とスープが全然ダメで期待外れのがっかりな一杯でした。


entry 62   麺ぽーかろぅ(南柏, visited Jun. 2022)
住所:柏市南柏1-1-6 

-とまとらーめん (980 JPY)- 
-RATING- 
-REVIEW- 
カルピスバター入り。 
まず、バジルの香りが一閃。 次いでバターのファッティー(fatty)フレーバー。 
厳選した国産丸鶏と鹿児島県枕崎産の天日干しの鰹節・国産干し椎茸 北海道羅臼昆布・国産野菜かた取ったという優しい綺麗な薄味お出汁の塩スープが旨い。 
そして、バターで味わいの奥行きアップ↑し、 いい感じの和洋折衷テイストを醸し出している。
 軽くウェーヴシタ細麺は、シコシコでチュルンとした食感でスープを良く纏う。 
具材は、葱、水菜に 産地直送の完熟トマトがタップリ!
トマトはトロトロで旨味をスープにプラスする。 
凄く上品に仕上がっているんだけど、そこが少し物足りない。


entry 63   ケンラボ (南流山, visited Jul. 2022)
住所:流山市南流山4-4-2 近代コーポ 1F 

-魚介豚骨ラーメン (850 JPY)-
-RATING- 
-REVIEW-
まず薫ってくるのは濃厚な魚粉っぽい匂い。 
スープは色が濃い割にはマイルドで、僅かに甘み。
 麺は中太で軽くウェーブ。エッジ(角)が効いていて、キック強く芯部までほぼほぼ均質な食感。キックの強さを無駄に主張する嫌らしさがなく、スープと良く馴染む。
具材は、カイワレ、葱、海苔、メンマ、チャーシュー。 
メンマはややワイルドな造型も軟らかく繊細な味(ちょい味濃い)。チャーシューは冷えてるのに嫌味なところなく、脂部分はスナック・ライクなニュアンス。


entry 64   丸源ラーメン (visited Aug. 2022)

https://www.syodai-marugen.jp

-熟成醤油ラーメ 肉そば (715 JPY)-
-RATING- 
-REVIEW-
。 4回 1. そのまま 本来の美味しさを楽しむ 2. どろだれラー油 クセになる辛みが生まれる 3. 揚げにんにく 香ばしい香りが広がる 4. 酢 すっきりとした味に変化する 

良く出来た豚汁ラーメンといった印象で、良くできてると思う。 豚肉の香りが良いです。豚汁ライクなあっさりスープで、塩分はそれなりに感じる。
軽くウェーブした細麺は喉ごし・食感・歯切れ良く、コシもちゃんと残っていてかなりいい感じで、スープを効率良く運んでくる。 
具材は、豚肉、葱、背脂、海苔、玉葱、もみじおろし。
もみじおろしが豚肉に良く合います。 
ラー油、揚げにんにく、酢で味変を楽しみながら食べるのがオススメだけど、何も加えずそのまま食べるのが一番美味しいと思いました(味が濁る)。 
あと、酢を加ええうと甘味が際立ちます。 


entry 65   餃子の王将 (visited Aug. 2022)


-餃子の王将ラーメン (572 JPY)- 
-RATING- 
-REVIEW- 
(よく分かんないけど)ポークエキスっぽいライトウェイトなあっさりマイルドなスープ。ポーク(豚骨)の香味はちゃんとある。
軽くウェーブしたほぼストレートの細麺は、ぷるっとしてシコシコ。 
チャーシューは気が抜けた味だけど、食感(弾力)はいい感じ。脂は殆どなくって悪くない。 
メンマも普通にう美味しいし、良くできてると思いました。


そういう言えば最近全然味噌ラーメン食べてないことに気づきました。
庶民の味方の外食ラーメンもインフレで値上がりしているので、節約も兼ねて久しぶりにサッポロ一番みそラーメンの袋麺を食べるのもいいかなと思う今日この頃です。

2023年3月21日火曜日

選挙はもう死んでいる

ドモ。居酒屋大好きコンキチです(ボクはボッチなので、基本一人呑みです)。
日本でもコロナ死は仕方がないねという空気が醸成され、社会的には完全にコロナ禍を乗り越えましたね。今後、再流行して過去最大の死者数が積み上がったとしても、もう後戻りすることはないと思っています。
医療が逼迫して医師や看護師のフィジカルやメンタルがきつくなっても、彼ら彼女らは社会の勝ち組なので、僻み根性大好きな国民性からして大衆にとってはそんなの関係ねぇんだと想像します(残念だけど仕方ない)。
発表される感染者数も大分減ってきて、社会全体が弛緩した雰囲気に包まれています。感染には気をつけつつ、ボクもそろそろ本格的に居酒屋活動を再開しようかと思い、プレコロナの優しい時代に行った居酒屋に想いを馳せています。


-かどや (visited Nov. 2020) memo-
 
住所:墨田区向島5-30-6 

total 2,300 JPY 

-お通し (ca. 350 JPY)- 
-RATING- ★★★★★
-REVIEW- 
鶏の煮込み。
具は鶏肉、お豆腐、葱、玉子。 
マイルドで旨味が濃厚。 






-東一 純米生酒 (300 JPY)-
-RATING- ★☆
山田錦。精米歩合は64%だと思う。 
老香りとまではいかないけど、それに似た香味でボディ強い。 
甘めの芳醇旨口系。
提供温度は雪冷え。 




-マグロ脳天刺身 (300 JPY)-
-RATING- ★☆
-REVIEW-
キリッとした中に甘味を感じるお醤油。 
脳天刺は型のある軟らかさの食感が絶妙。
赤身ライクな部分と上品な脂のバランスが良い。 
若干メリハリにかける味か。 




-白子ポン酢 (300 JPY)-
-RATING- ★☆
-REVIEW-
外側は硬めで締まったシックな味わい。 
中身はほぼほぼスープ状。 
もみじおろしとの相性は抜群。
 僅かに魚くささ。





-うまソーダ (450 JPY)-
ホワイトホーズハイボール(ダブル) 











-えびす寿 (300 JPY)-
-RATING★☆
-REVIEW-
燗をつけてもらう。 辛口。
アルコールの匂いが鼻につき、 味がしっくりしていない。 
ひやにしておけば良かったと後悔。 





-あん肝ポン酢 (300 JPY)-
-RAING- ★★★★★
-REVIEW-
マイルドな味とチーズケーキのような食感。 
クリーミーでフレッシュ。
全くフィッシー(fishy)さを感じない。 
素晴らしい味。




このお店、安いのに旨い。コスパ高い。
もっとプライシング高くしてもいいんじゃないかと思うクオリティと思いました。


閑話休題


ボクは人非人なのでどこが問題なのか分かんないんだけど、"集団自決"発言で話題の成田悠輔氏の著書「22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」を読んでみました。

この本では現行の民主主義(民主制)が如何にダメであるかを謳っています。

例えば、我が国で若者の投票率が上がれば政治が変わるなんていう話をよく耳にしますが、そんなことは全然ないそうです。なぜなら若者は超マイノリティーだから。

今の日本人の平均年齢:48歳くらい
30歳未満の人口:26%。
全有権者に占める30歳未満の有権者の割合:13.1%
21年の衆議院選挙における全投票者に占める30歳未満の投票者の割合:8.6%

著者は、仮に若者の投票率が上がって60~70代と同じくらい選挙に行くようになっても、超超マイノリティの若者が超マイノリティになるだけと喝破しています。

しかも、日本の若者の投票先は高齢者の投票先とほとんど変わらず、20~30代の自民党支持率は、60~70代とほとんど同じかむしろ高いんですってね。

即ち、若者たちが選挙に行ったところで選挙結果は変わらないのです。

それから、一般意思の汲み取り機であるはずの選挙の網目が粗すぎるという問題点を指摘しています。選挙では、与党vs.野党、保守vs.進歩といった的外れな謎の二択を迫ることしかできず、世界各地で選挙ハックされ放題だと。

著者は次のように述べています。
『今の選挙民主主義の欠点は、「あらゆる論点にみんなが意見を持つ」という無理ゲーな建前が適用されていることだった。 現在の複雑すぎる社会では、政治家が経済や医療や軍事などあらゆる課題を理解して適切な判断を下すという建前には無理がある。それを言っちゃおしまいなので、人間たちが大問題についてそれっぽいことをまくしたてるテレビの政治討論を倦怠感とともに眺めている。』

つまり、選挙とは無理ゲーであって、最早死んでいると言っても過言ではないでしょう。バカ過ぎます。バカ丸出しです。

著者が自民党の片山さつき・参議院議員と話したとき彼女がボソッ「小選挙区は仕事をすると票減りますよ」と漏らしたそうです。
政治家も現行の選挙システムや有権者をバカだと考えている証左じゃないかと思います。

選挙システムがバカ丸出しなためだからか、今世紀に入ってからの20年強の経済をみると、民主主義的な国ほど、経済成長が低迷しつづけていると言います。 平時だけではなく、コロナ禍の(2020-2021)にも民主国家ほどコロナで人が亡くなり経済の失墜も大きく、リーマンショック(2008-2009)でも危機に陥った国はことごとく民主国家だったと。

ところで、著者は控えめに言ってもグダグダな現行の民主主義(民主制)への処方箋を三つ提示しています。

(1) 民主主義のインプルーブメント (制度設計の改善)
(2) デモクラシー・ヘイブンの創設
(3) 数十年から百年単位のスパンでみた無意識データ民主主義によるビックなインプルーブメント 

の三つです。

"民主主義のインプルーブメント (制度設計の改善)"は、成果指標に紐づけた政治家への成果保証の導入やガバメント・ガバナンス(政府統治)、定年制の導入、UI/UXの改良(電子投票など)が提案されていますが、既存の選挙で勝って地位を築いた現職政治家がこうした選挙制度改革を行うのが無理そうなのは明らかとも述べており、まず無理筋でしょう。

"デモクラシー・ヘイブンの創設"は民主主義を見捨てて外部へ逃走する新国家独立運動で、具体例は、公海を漂う新国家群(シーランド公国 (1961-)、ローズ島 (1968-1969年))や、独立運動、集団移住による既存自治体の乗取り(Wild Wild Country, 1980s)、デジタル国家等挙げられますが、正直パッとしません。既存の民主主義国家より優れているという気もしないし、そこに内包できる人員の制限もありそうです(ローズ島はイタリア海軍に爆破され、Wild Wild Countryはバッドエンド)。まぁ、無理でしょう。

"無意識データ民主主義"は著者の本命で、インターネットや監視カメラが捉える会議や街中・家の中での言葉、表情やリアクション、心拍数や安眠度合いといった民意データに加えてGDP・失業率・学力達成度・健康寿命・ウェルビーイングといった成果指標データを意思決定アルゴリズム(問題を解決するための手順をコンピューターのプログラムとして実行可能な計算手続きにしたもの)にかけて、オートマティックに総体の民意を政策に反映させるテクノロジーなんだと思います。バカな政治家や愚民に阿る政治家とか利権大好きな政治家が要らなくなるなるので良さそうな気がします。
アルゴリズムによって勝手に政策を決められることに強い違和感を抱くかもしれませんが、歴史を千年遡って武士や農民たちにアンケートをすれば、今のような全国選挙ですら荒唐無稽で採算度外視の暴挙だと答えるにちがいないわけで、百年単位のスパンで考えれば実現可能性は相当あるというのが著者の考えです。ただ、今を生きる我々はその恩恵に与ることはことは皆無ですね。

ということで今のところ選挙制度は死に体で、多くを期待できるものではないですね。
朝の駅頭で顔を売るためだけに「おはようございます。いってらっしゃい。」を鸚鵡のように繰り返す候補者には辟易を通り越して虚しさを感じますし、中身が空っぽだけど見てくれのいい国会議員や知事がチヤホヤされるのにも飽きました。
なのでボクは(市長選以外は)投票所に行くことはもうありません。時間の無駄なので。腐れた為政者選出システムにおける一個人の希薄な一票の価値なんてほぼほぼありませんから。コスパとタイパが悪過ぎます。
ボクも若い頃はかかさず選挙に行ってましたが、それで何が変わったかというと、日本が凋落して自分が歳食っただけでした。
選挙に行くくらいなら、美味いもの食べたり運動したり本を読んだ方がましだという言葉を諺にして欲しいくらいです。日本では投票は権利なので、その権利を放棄しても全然問題ないです(実際、罰せられないし)。

どうですか、みなさんも選挙に行くのやめてもませんか?
っていうか、政治にフルコミットするほど暇ですか?
あと、オーストラリアは義務投票制で罰金(ボクは一票の価値だと思ってます)が二千円くらいで投票率90%以上って知ってますか?
でもまぁ、みんなが選挙に行くのをやめてボクの一票の相対的な価値が十分上がったら、投票所に足を運ぶかもしれません。

クソ長い国会中継をコンプして、さらに県政や市政をチェックしてる人ってどんだけ〜って思う二流大出のテクニシャン(研究補助員)の無責任選挙メモでした。

2023年3月15日水曜日

スーパー初心者のためのN-アルキルリッチ環状ペプチド合成講座 (中外製薬)

ども、ラム肉大好きコンキチです。
新型コロナの感染者数も減ってきて(余談は許しませんがね)、コロナ強者にはワッショイな空気感が漂う今日この頃。天候も陽気で街に繰り出してラム肉でも食べたいところです。
ということで、コロナ禍前にラム肉を食べたときの復習メモです↓

-ジンギスカン らむすけ (visited Feb. 2020)-
住所:足立区千住1-39-12 

-ジンギスカン最初のセット(肉+野菜) (880 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
生ラムセット(厚切り肩ロース肉+野菜)。 
ぶ厚くカットされたラム肉は、生めに焼き上げるのがおすすめ。
生ラムは軟らかく歯の入りが良いけど、弾力リッチで噛み切るのはやや難儀する。生めに焼いても、良く焼いても焦げにくくて美味しい。臭みは全く感じず、ピュアな旨みがふんだん。 
何もつけずに食べたり、塩、タレを試したけど、塩一択で(お塩は甘みがある)、 肉の旨味が爆発する。兎に角、絶品で淡白かつフルボディな旨さ。 
タレはシャビシャビした焼肉のタレ系で、(ボク的には)野菜炒め用かなといった印象。 
テーブル置いてあるにはニンニクと唐辛子を試してみたけど、ラムの味が濁るのでお勧めしないです。 

 
-ウーロンハイ (400 JPY)- 


-中生 (500 JPY)- 
The MALT'Sのジョッキ。 










-梅水晶 (380 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
美品。
梅水晶にハズレなし。
口の中がさっぱりするので良いです。






-ラムソーセージ (440 JPY)- 
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
鍋の縁でパリパリになるまで焼くように言われる。 
皮(腸?)のバリバリして乾いた食感と味が堪らない。 
で、中はジューシーで軟らかくアツアツを食べるのが最高。 
ビールのお供に良いです。


店内にはハンガーがあって匂い移り防止のビニールが掛かっていたり、紙エプロンが用意されているけど、半端なく油が跳ねるて匂いもガッツリ服につくので、心して入店すべし。




閑話休題


遅れ馳せながら、こんな文献を読んでみました↓

Broadly Applicable and Comprehensive Synthetic Method for N-Alkyl-Rich Drug-like Cyclic Peptides
J. Med. Chem., 2022, 65, 13401-13412.

中外製薬のN-アルキルリッチな環状ペプチドのパラレル合成のお話です。
ターゲットとなる環状ペプチドは、


(1) 11残基のアミノ酸から構成
(2) 5-8個のN-アルキルアミノ酸をランダムに含む
(3) アミノ酸側鎖は水酸基、フェノール性水酸基、イミダゾール、チアゾールに限定
(4) C-末端のアスパラギン酸とN-末端のアミノ基で環化を行う

といったもので、この化合物群を沢山合成する単一メソッドの構築がお題です。

実は、N-アツキルリッチなペプチドのパラレル合成って結構難しいんですよね。
具体的には、

a) Fmoc基の脱保護時の副反応=DKP (2,5-diketopiperazine)形成
N-アルキルアミノ酸はcisが優勢なので問題となります。

今回の場合だと、Thr(tBu)-MeAlaとかLeu-MeAlaが欠落してしまいがちで、DKP形成由来のバイプロとのHPLC分離が困難です。

b) N-アルキルアミノ酸の立体障害→アミド化(カップリング)の進行が不十分

c) N-アルキルリッチなペプチドは酸性条件下で不安定(global deprotectionは酸性条件)
TFA/H2O/TIPS (90:3:7)といった標準的な条件下での加水分解が深刻

といった課題があります。

DKP形成対策としてはFmocの代わりにallocを使うとか、カップリング効率を上げるためにトリホスゲンを使うとか、酸性条件下での加水分解対策として脱樹脂・脱保護時の温度と酸の濃度を厳密に制御するとかいった対策はあるんですが、全くもってパラレル合成向きじゃないんですよね。

パラレル合成っていうのは基本ルーチンなオペレーションになるので、ランダムなN-アルキルアミノ酸の導入への対応は難しいし、ペプチドの酸に対する安定/不安定さは配列に依存するし予測するのも難しいしカスタム対応するのも困難です。

実際、標準的なメソッドで合成すると、収率は低めだし、純度も上がらないし、単離も難しかったそうです。

そこで著者らは鋭意検討して、素晴らしいインプルーブメントを開発したんですね。

まず、DKP形成対策としては、標準的な20%ピペラジンのDMF溶液に代えて2% DBU in DMFを用いてFmocを切断することで、副反応を大幅に低減させることに成功しました。


これは、DBUが(ジベンゾフルベンが外れた後の)カルバミン酸と塩を形成して、一時的に保護基として働くからなんですね。DBUとカルバミン酸との塩はNMRで確認されていて、濃度が薄くなると分解するんだそうです。なので、脱保護中は保護基としてワークし、樹脂をウォッシュするプロセスで分解しフリーのアミノ基となります(ピペラジンではこの様な塩の形成は確認されなかったそうです)。

次はカップリング(アミド化)効率対策です。
著者らは縮合剤にDIC/HOAtを採用しているんですが、HOAtって酸性なんですよね(pKa 3.28)。なので、調子に乗って使ってしまうとアミノ基と塩を組んでしまうことでアミノ基の求核性を奪ってしまうんですね。ということで、HOAtの量を加減して系内を中性に保つことが効果的です(J. Pept. Sci., 2006, 12, 147-153.)。
それから、保護基の選択も重要です。
Fmoc-Thr(tBu)-OHとMeValのカプリング効率は許容範囲なんですが(モデル実験で90% conv.以上)、tBu基の脱保護には強酸性条件(90% TFA/DCM)が必要で、酸に弱いN-アルキルリッチペプチドには厳しい条件です。それではということで、よりマイルドな条件(1% TFA/DCM)で除去できるTrt基が候補に挙がるんですが、こちらはその嵩高さが災いしてカップリング効率が低下してしまいます(モデル実験で6割に満たない転化率)。
ハイ、このジレンマを解決したのがTHP保護で、マイルドな条件での脱保護と満足いくカップリング効率を両立します(モデル実験で90% conv.以上)。

最後は、側鎖の保護基を残して脱樹脂→環化→側鎖の脱保護をマイルドな条件で敢行するミッションです。
切断する樹脂(固相担体)は2-クロロトリチルレジンで、残さなければいけない保護基はThrとSerの水酸基のTHP、Tyrのフェノキシ基のClt、HisのイミダゾールのTrt基の三つ。側鎖の保護基は主鎖の加水分解を抑えつつ行う必要があります。
で、著者らが採用した手法は、

A) 脱樹脂カクテルには"TFE (2,2,2-trifluoroethanol)/DCM (1:1)+DIPEA (1.8 eq.)"を使用
DIPEAの役割は、樹脂からの切り出しで生成するカルボン酸による溶液の酸性度の上昇の抑制と、TFEの反応性の維持。
TFAベースノカクテル(0.6% TFA in DCM/TFE/TIPS (10:5:1)とかTFA/DCM/TIPS (2:93:5))だと側鎖の保護基や加水分解が進行してpoor yield。

B) 環化はHATU/DIPEA (ca. 6 mM in DMF)/DCM [1:1]の高希釈条件
メインの副生成物は環状ダイマーで、HPLC分離容易。

C) フィニッシュの側鎖の脱保護は0.05 M tetramethylammonium hydrogen sulfate (HSO4NMe4)/HFIPでキメッ。
このマイルドな条件で主鎖の加水分解をコンプリートに抑制。
因みに、5% TFA/DCMだと主鎖の加水分解が起こりる。

です。

ここで鍵となるのはTEAとHFIPの使用ですね。
これらのフルオロアルコールは高いイオン化能を持っていて、カチオンの解離を促進する溶媒効果があるので、弱い酸でもTHPやTrt、Cltを脱保護できるのです(HSO4NMe4 [pKa 1.99] vs. TFA [pKa 0.23])。

こうして構築した最強メソッドはこちら↓
100 cyclic peptides, 31% yield, 97% purity on a average

この手法でLUNA 18(中外製薬が中分子技術を使った最初の臨床入りプロジェクト)も収率18%、98% purityで合成できます。
LUNA 18

素晴らしい成果ですね(なんも言えねぇ)。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の環状ペプチド合成メモでした。

 

2023年3月10日金曜日

アミノ酸(ペプチド)の化学 (10):DKP ブンブン

 みなさーん。ふるさと納税やってますかぁ?

ボクはやってます。
ふるさと納税は寄付金控除のスキームを使った地方税(と国税)の移転スキームで、マクロではクソな制度なんですが、ミクロ(個人)ではお得です。
一個人では抗いようがないので、無駄な努力や痩せ我慢は止めてこの制度にコミットするのが最適解でしょう(仕方ない)。

というわけで、直近でふるさと納税した成果がこれです↓

赤貝ですね。肉厚で味も濃くて美味しかったです。生きてるのでフレッシュだったし。山口県周防大島産です。

ふるさと納税は美味しい。これは絶対的正義です。


閑話休題


今回はペプチド合成(SPPS)において最も厄介な副反応の一つと言われるDKP (2,5-Diketopiperazine)形成についてのメモします。
DKPはFmoc基を脱保護してフリーになったアミノ基が隣接するアミノ酸ユニットのカルボニル基を求核攻撃することで生成(副生)します。


で、DKP形成が起こりやすのはどういうときかっていうと、こんな場合です↓

a) デプシペプチドで起こりやすい。
アミドよりエステルの方が脱離基として優れているので。

b) cis-アミド構造で促進。空間的に反応点が近づくので。
具体的には、Xaa1-N-Me-Xaa2-ユニットで起き易いです。何故なら、N-Me-Xaaはcisが優勢なので。

c) 同様なロジックでN-alkyl-Xaaや、Pro (プロリン)、Hyp (ヒドロキシプロリン)、Thz (チオプロリン)といったセカンダリーアミノ酸を含む配列で起き易い。
例えば、Z-Giy-Pro-ONpはpH 8でDKP形成が進行してNα-Z-protedted DKPを与える。



d) L-アミノ酸とD-アミノ酸が交互に配列している場合。
側鎖が環平面の反対側に配置し空間的に有利。

e) C-末端ジペプチドで起こりやすい。


うーん。いろいろとDKPが副生する条件があるわけですが、これを抑制する方策は何かないのでしょうか?
ハイ、あります。こういったタクティクスが↓

A) 溶媒の選択 (溶媒効果)
双性イオンの環状中間体を安定化/不安定化させる効果が重要で、電荷や双極子、水素ドナー/アクセプターを安定化させる溶媒中では、イオン性の中間体と遷移状態とのエネルギー差が大きくなりDKP形成を遅らせる効果があるそうです。要は、極性溶媒がいいってことですかね。

B) Fmoc基の脱保護をTBAF、MeOHで行う。

C) Fmocの代わりに保護基にpNzやallocを使う。
ここで注意ポイントなんだけど、CTCレジンはpNzの脱保護条件でペプチド鎖が脱落するので使わないのが無難。
因みに、pNzの脱保護の反応機構はこちら↓

D) 嵩高い固相担体を使う。
これはC-末端ジペプチドでDKP形成が起こりやすいことに対する対策ですね。
サポートとの結合部位の近傍でDKP形成し易いので、その辺りを嵩高くすることによって立体障害により抑制する戦術です。
具体的には、立体障害の小さいHMPT (4-(Hydroxymethyl)phenylacetylamidomethyl)をスペーサに持ったレジンたや4-Hydroxymethylphenoxyスペーサーを持つWangレジンより、2-chlorotritylスペーサーを持つCTCレジンを使うのが吉。

E) DKP形成しやすいところをジペプチドをビルディングブロックとして使うことで回避。
同様にセグメントカップリングも有効。


他にもDKP形成抑制策はあると思いますが、SPPSして質量分析結果を見てDKP形成してそうだったら、上記チェック項目を検討してみましょう。
あと、DKPはペプチドの調製中だけじゃなく、保管中にも起こるので夜露死苦。


以上、二流大でのテクニシャン(研究補助員)のDKPブンブンメモでした。