2008年2月27日水曜日

香りのスーパースター (3)

前々回、前回と甲州ワインと3-Mercaptohexan-1-ol (3MH)について述べてきました。

で、実際に甲州ワインってどうなのよ?ということで、コンキチが過去に飲んだ2本の甲州ワインのなんちゃってREVIEWをメモしてみようかと思います。

まず1本目。中央葡萄酒(株)のワインで「グレイス甲州 2005」↓
-RATING-★★★★★
-REVIEW-
柑橘の良い香りの上に、膨らみのある蜜の甘い香りが重なる。それでいてスッキリしている。味もspicy感の有る柑橘、スッキリした酸味とともに、うっとりかつさっぱりしている甘味が伴い、味に奥行きをあたえている。スレンダーなんだけど、それだけじゃない旨さがあります。秀作です!アルコール分/ 11%。(2006年12月飲酒)





2本目はメルシャンの「甲州きいろ香 2005」↓

-RATING-★★★★★
-REVIEW-
引き締まった酸味にあっさり系のキリっとした味です。このワインの最大の長所は、物凄く良い香りだとコンキチは思いました。グレープフルーツ系の柑橘の香り、ふくらみのあるpeach & milkyな香りに奥行きを感じます。ボルドー大学デュブルデュー教授の研究室とのプロジェクトにより誕生した甲州ワインです。アルコール分/ 12%。
(2006年4月飲酒)


2本ともとっても良い香りの秀作ワインです(少なくともコンキチはそう思う)。特にグレイス甲州はきいろ香よりもかなり安くてコストパフォーマンス大ですね。酒屋でみかけたら是非買ってみた方が良いでしょう。

さて、ここまでワインと3MHのつながりをざんざん述べてきましたが、3MHが香り成分として寄与しているアルコール飲料はワインだけではないのです。ちょっと前に読んだアサヒビールの論文によると、ホップ由来のCitrus様香気の発現に寄与している成分として3MHが効いているそうです。
ref. J. Agric. Food Chem., 2006, 54, 8855-8861.


勿論、3MHだけではなく、その他のチオール類(とか他の成分)もキーコンポネントとして効いているわけですが、興味深いですねS(硫黄)化合物!

(いい匂いの)チオールWatchingをライフワークにしたいぐらいです。コンキチの本業は、(一応)有機合成化学なので、超積極的に農芸化学の文献をWatchingできませんが、暇をみて読んでみますかね。

2008年2月26日火曜日

香りのスーパースター (2)

趣味「晩酌」のコンキチです。おしなべて、好き嫌いなくよく呑みます。

さて、前回のブログの続きです(NHKの甲州ワイン特番のまとめ)。

グレープフルーツ様のシトラス・ノートを醸し出す、甲州ワインのキー成分である3-Mercaprohexan-1-ol (3MH)ですが、この成分が甲州ワインの鍵となることが分かったのは最近になってからだそうです。

3MHは甲州ワイン特有の成分というわけではなく、パッションフルーツ中にも見出されており、ワイン用ブドウ品種としては、Sauvignon Blancワイン中に見出されています(甲州ワインよりも前にSauvignon Blancワイン中に見出された)。ちなみに、3MHは果醪中にはトレース量しか存在しておらず(つまり、前駆体として存在している)、発酵過程において酵母の作用により生成するようです。
ref. Flavour Fragr. J., 13, 159-162 (1998)


ところで、当初甲州ワインはシャルドネなどの有名品種のワインに比べて特徴的な香りがなく、香味が貧弱であるという評価だったそうです。それは何故かというと↓(TVの解説です)

1) 3MHのような硫黄化合物は金属と結合し香りを失いやすい(錯形成して不揮発化するってことかな?)
2) 日本は高温多湿のため、カビなどを防ぐためにボルドー液という殺虫剤を使用していた。
3) ボルドー液の主成分は硫酸銅
4) どうやら銅(Cu)が3MHをキャプチャーしていた模様(チオール類は閾値がおしなべて小さいので、残留した銅イオンで十分捕獲されちゃうのかな?)

ということのようです。

ちなみに番組では、田崎真也が、グラスに注いだ甲州ワインに十円玉を入れると、グレープフルーツ様の香りがしなくなるという実験をやっていました。

2005年8月31日の日経産業新聞によると、
メルシャンが甲州ワインの香りを引き出すためにどうしたらよいかと文献を漁っていたところ、ボルドー第二大の研究グループが、Sauvignon Blancワイン中のグレープフルーツ様香気を発する成分が硫黄化合物(チオール類)であることを特定したという文献にめぐりあったそうです。で、(手元にどういうデータがあったか分かりませんが、甲州ワインにチオール類の柑橘香を期待したんでしょうが)試験的に硫酸銅を含んだ農薬の使用を止めてワインを試作したところ、従来にない香りが引き立ったのだそうです。

で、このような成果をもとにしてメルシャンからリリースされたのが「甲州きいろ香」というワインで、3MHの前駆体がMaxになる頃合いを見計らってブドウを収穫し、3MHの特徴がでたワインに仕上がってけっこう好評のようです。
(Sauvignon Blancの場合、優秀なワインは一リットル当たり三千ngの硫黄化合物を含むとか)。

このメルシャンのはなし、ちょっとしたイノベーションを感じますね

あと、番組で有名ブドウ品種の特徴的な香りについて言及していたにで、参考迄に表にまとめてみました↓

こういう特徴を意識してワインを飲むと、その味を認し易いのではないでしょうか?

PS
最近、近所のスーパーでまたBeaujolais nouveauがフェイスの一角を占めています、しかも強気なプライシングで!今シーズンもまた調子こいて在庫もちすぎたんでしょうかね?正直、不味いBeaujolais nouveauが普通のBeaujolaisよりも高い値付けをしているのに驚きです。Beaujolais nouveauが高額なのは飛行機代を入れている=できるだけ早く飲むことに価値が有るというのに。初物好き(見栄っ張り)も良いですが(越年nouveauは初物ではないが)、軽薄なワインブームは卒業して、日本の「地」の秀逸な甲州ワインにも目を向けて、成熟したワイン文化を育みたいものです。


2008年2月25日月曜日

香りのスーパースター (1)

趣味「晩酌」のコンキチです。おしなべて、好き嫌いなくよく呑みます。

以前(何年か前)、NHKで(コンキチの大好きな)甲州ワインの特集をやっていたのをビデオに取っておいたのですが、それを観返してみました。折角なので、そのビデオの内容をメモしてみようと思います。

まず、「甲州」って何?と思う人もいると思うので、その簡単な解説から↓

「甲州」は日本古来のブドウ品種で 、1300年前の奈良時代から日本で栽培されています(由緒正しい品種なのです)。甲州種のワインは明治になってから造られたそうで、食用・ワイン用兼用だったそうです。ちなみに甲州は搾りすぎると苦味がでるとか。


最近(といっても何年か前だけど)、パーカーポイントで有名な著名なワイン評論家であるロバート・M・パーカー・Jr.が、甲州種から醸造された辛口白ワインに87+(Extremely good)というアジアではじめてとなる高ポイントを付与しました。

←これがロバート・M・パーカー・Jr.のテイスティングだ!!!!!
超真剣な顔つきです。

高評価をGETしたワインは中央葡萄酒(株)の「KOSHU Cuvée Denis Dubourdieu 2004」(多分)。パーカー氏はこのワインの味を、



香りに幅がありとても良い
切れが良くてとても自然な味


と評して絶賛していました。



ところで、評価の高い優れたワインには、香りのスーパースターと評されるような卓越した香りがあるそうです。で、この甲州ワインの場合には、香りのスーパースターは、グレープフルーツ様の「柑橘系の香り」なのだそうです。


ちょっとワインに興味のある人は「甲州きいろ香」なんていう銘柄をきいたことがあるかもしれませんが、 甲州ワインにはメルシャンも着目していて、件の柑橘の香りについてボルドー大二大学との共同研究によりキー成分(化合物)を特定しています。

それは↓


3-Mercaptohexan-1-ol (3MH)


という硫黄化合物です。構造を見ればすぐ気付きますが、キラル化合物で、両エナンチオマーの香気特性と閾値が調査されていて、

●(R)-体
閾値: 0.05ppb。
distinctly weaker, showing only sulfury and herbaceous odor impressions (Werkhoff, et. al.)
fruitier, with a zesty aroma reminiscent of grapefruit (Tominaga et. al.)

●(S)-体
閾値: 0.06ppb。
interesting exotic and tropical fruit notes, fruity, juicy, tropical fruits, grapefruit, black currant, buccu, mango, guava (Werkhoff, et. al.)
more of passion fruit (Tominaga et. al.)


という感じだそうです。
cf. http://www.leffingwell.com/chirality/mercaptohexanol.htm

なんか3-Mercaptohexan-1-ol (3MH)にとても興味が湧いてきました。

もうちょっと3MHについてサーチしてみますかね、次回以降のブログで。


2008年2月24日日曜日

Democracy

最近、米国の大統領予備選の報道が熱いです(しかも、民主党の)。他国のことだというのに、我が国の政治に係る話題以上に盛り上がっている感じがします(この盛り上がりで、中国様のネガティブなネタをちょっとでも目立たなくしたい作戦の一環なのかななんて穿った見方をしてしまいそうです)。

さて、個人的に米国の大統領には日本との関係重視を表明しているマケイン氏になってもらいたいところですが、まず無理でしょうがね。共和党政権が8年も続いていますから、次は民主党でしょう。

ところで、豪州では11年超続いてきたハワード政権が倒れました。財政黒字を達成し、失業率も史上最低という見事な経済運営手腕を発揮したにも関わらずです。ついでにハワード前首相は落選しちゃいましたからね。「独裁を造らない」「全体主義に陥らない」ということを具現化する政治システムが民主主義ということを考えれば、11年超という長期政権に対するアンチテーゼは当然の帰着なのかもしれません。

翻って、我が国の政治を鑑みると、ズーッと自民党が政治を支配しています。この現実は、現在の日本という国が真に民主主義という政治システムを構築できていない証左であるように思います。現在日本の政治の腐敗っぷりは、かりそめの民主主義による結果と言えるのかもしれません(コンキチは他国の政治システムを知らないので、日本の政治的腐敗度がどの程度なのかは分かりませんが)。

でも、だからといって(日本の)民主党に政権を委ねるにはいささか不安です。

a) 烏合の衆のような気がするし
b) 国防政策(日米安保)に不安
c) ユニフォーメーションが好きそう
d) 実現可能な具体的提案がみえない

って感じで、イマイチ信用できないです。

自民党に対応するもう一つの巨大政党である民主党が充分成熟していないところに我が国で二大政党制が充分に機能しない要因かと思いますね(自民党が成熟した政党であるとは思ってませんが、民主党よりはマシかなという感じ)。

まあ、自民党の長期政権が続く現実は、全体主義好き?な日本人らしいと言えば日本人らしいのかもしれません。

古くさい面が雁首揃えた両党幹部に飽きてきたのはコンキチだけでしょうか?政界再編とかあるのかなあと思いつつも、(政治家の中で)若手と称される議員に国家のリーダーたる資質を持っている人物がいるのか不安になります(安倍さんは結局のところ胆力がなかったし)。

麻生さん(67歳)なんかは「自由と繁栄の弧」なんていうかなり良いセンスを持ってると思うのですが、けっこう歳ですよね。政治の世界も、良く言えば「亀の甲より年の功」ですが結局は「年功序列」ですか?

麻生さんの「自由と繁栄の弧」が分かる本↓


毒づいてちょっとスッキリした、二流大出のなんちゃって研究員でした。

2008年2月22日金曜日

推理小説からの示唆

久しぶりにクリスティーを読んでみました。読んだのはエルキュール・ポアロシリーズの「晩餐会の13人」(創元推理文庫)です(原題は、LOAD EDGWARE DIES (Thirteen at Dinner)で他の出版社からは「エッジウェア卿の死」というタイトルで出版されている)。

密かにコンキチはミステリ好きで(マニアの域には達してません)、けっこう読みます。昔は海外の古典をよく読んでいましたが、最近は有栖川有栖とか綾辻行人の作品を好んで読んでいます。






最近コンキチが読んだオススメミステリ↓

山伏が探偵&語り部となる異色の短編集。









学生アリスシリーズ第4弾(最新作)。設定はバブル期付近。宗教団体の支配する街を舞台にしたクロズドサークル内での犯人当て。主要メンバーが学生なためか、甘酸っぱい気分になります。







綾辻行人の館シリーズ。殺人の舞台はパラノイア的主人がかつて住んでいた屋敷。物語は、ある老人の手記に沿って進んで行く。伏線に次ぐ伏線、錯綜する容疑者の思惑、スケールの大きなトリック。いい仕事してますね。







閑話休題

ところで、コンキチは良質なミステリは最も優れたエンターテイメントだと思っています。その理由は↓

1) お高くとまっていない
2) 「犯罪」という「毒」が絶妙のスパイスになっている
3) 物語の展開が分かり易い (最終目的は犯人当てに収斂している)
4) 欺かれる快感がある

といったところでしょうか。


それから、良質なミステリは優れたエンターテイメントであるだけではなく、社会生活において示唆に富んだ教書でもあるのです(多分)。

例えば、「晩餐会の13人」には次のような記述があります。

自分の主張や意見や、それらの根本的な正しさを確信しているために、こまかな点を問題にしないというのは<中略>とりわけ正直な人間の特徴なのだ。<中略>理性や覚えている事実にもとづいて質問に答えるのではなく、自分の観念にたよって答えるのだ。確証のある証人は常に疑いをもって扱う必要があるのだよ、きみ。
(ポアロのヘイスティングズに対する言葉)

それから、

きみは確信を持っている-いつだって確信だ!きみはわが身を省みて自問することがない-はたしてそうだろうか、とね。疑うことをしない-あやしむことをしない。
(ポアロのジャップ警部に対する言葉)


これって日常的によく目にすることありませんか?コンキチはよく目にします。根拠もないのに、自信いっぱいに話をする人達を。


例えば、ある反応中に生成するこのピークは「コレ」だから…なんていうふうに自信満々に言われて、その後よくよく分析してみると、全然違う化合物なんですけど…なんてことがあったりします。

あと、絶対この化合物は(微量不純物として)できませんから…なんて大して検討してないくせに言う輩がいます。

反応のメカニズムとかから推察することは非常に大事だとは思いますが、Scientific Factなしに、ある種の思いこみに近いことを根拠に力強く断定するのはいかがなものかと思いますね。理論的枠組みからの考察は有用と思いますが、「100%」とか「絶対」ということを科学的事実という裏をとることなしに断言することはあまり価値の無いことであり、そういう輩は科学者としての資質を欠いていると思うのです(まあ、三流研究員の私見なので軽く流して下さい)。

自分、科学者の役目っていうのは実験事実を疑うこととの戦いだと考えています。

なにか見落としはないか?
分析方法は本当に適切か?
その手法の限界はないのか?

みたいに、疑って疑って疑いつくして、それでもなお生き残っている事実を現時点の科学の力の範囲内で確度の高いデータ(科学的事実)として提供するのが科学に携わるものの役割のように思います(トヨタの何故を5回繰り返すってヤツに似ていると思っています)。

そういう意味で、クリスティーの本作品は示唆に富んだものなのではないかと思った次第です。

まあ、三流窓際研究員のたわごとと思って、軽く聞き流してもらえれば幸いです。

2008年2月20日水曜日

確定申告の季節

今週の月曜から確定申告の受付が始まりました。今年のイメージキャラクターはコンキチの大好きな池脇千鶴です。

池脇千鶴好きなあなたに、こんなの如何でしょうか↓



閑話休題、

さて、コンキチの人生6回目の確定申告は、本日申告書を無事郵送し終え、ホッと一息といったところです(念のため断っておきますが、コンキチは年収1千万以上の給与所得者ではありません。ちなみに年収は570万円くらい)。

それにつけても、この時期になると、

サラリーマンの源泉徴収システムってホントに良く出来たシステムだなあと思います。

何故って↓

Step 1) 納税手続きの簡素化という餌をまき

Step 2) オートマティカリーに納税を済まさせることにより、納税意識の希薄化を促 す。

Step 3) 安定した税収を労せずGET!(給与天引きでラクラクGET)

Step 4) チョットぐらい税金の無駄遣いしたって、納税意識が希薄だから暴動はおろか、デモさえも起きない。

素敵です。さずが、我が国の俊才東大卒のお役人さんが構築したシステムだけのことはありますよ!

多分、自分がどれだけの税金を払っているか知らない人とかいそうな気がするし。

源泉徴収なんかやめて、公教育の場で税の仕組みをしっかり教育して、全国民が税の申告をするシステムになれば、監視が強化されて、もうちょっと政治もよくなるんじゃないかと思う二流大出の窓際研究員なのでした。

2008年2月16日土曜日

トレードオフ : ジャパン・アズ・ナンバーワンの誤謬

M. E. ポーター教授の「日本の競争戦略(CAN JAPAN COMPETE?)」(2000年に邦訳が出版れました)を読了しました。

かつて、我が国が高度経済成長の真っただ中にあった折、Japan as No. 1などともてはやされた時期がありました。

当時の我が世の春は、日本的経営と政府の政策が原動力になったと一般的には理解されているのかどうかコンキチにはよく分かりませんが、決してそうではないとポーター教授は説きます。

当時の多くの日本企業は、オペレーション効率とシェアの追求にやっきになっていて戦略がなかったと結論づけています。つまり、選択と集中であったりSTP(セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング)といった戦略がなく、全ての顧客に全てのモノを提供するという非効率的な模倣合戦に終止し、結果過度の価格競争に陥り、利益を失っていったということです(勿論、戦略のあった成功産業のことは誉めている)。

で、ポーター教授はこう宣います。

戦略とはトレードオフである。戦略は何をしないかという選択であると。

そして、

日本企業のもつ卓越したオペレーション効率と戦略のシナジーが日本企業の国際競争力を強化すると。

また、政府の、国内市場での競争を抑制する保護政策や市場をコントロールしようとする政策(合法カルテルとか)が、国内企業の健全な競争を阻害し、イノベーションを阻害し、国内の要素要件を高コスト化した失政であると評しています(大前研一氏も自身の著作「日本の真実」で政府が介入するとろくなことがないといっていた)。そして、我が国の失敗産業(農業、金融、化学、チョコレートとか)に政府に政策を色濃く受けたものが多く、成功産業においては、政府の政策が意味をなさなかったと分析しています。そして、競争を阻害するような政策下において、よく成功したとも(勿論、全てが悪い政策だったとは言ってませんが…)。

で、ポーター教授はこう宣います。

健全な競争を強い産業クラスターを形成し、イノベーションを加速し、国際競争力を高めると。企業の健全な競争を促す政策を取るべきだと。


「Japan as No.1」とは、一握りの戦略を持った成功産業の大いなる成功の影に、数多くの失敗産業があることを見逃していたための言葉なのかもしれません(自分、当時は生まれていないorチビッコだったので全部想像ですが)。

それにつけても、ポーター教授の論は凄いですね。理路整然で読み易いし(訳がよかったのか?でも原文がよくないとよい訳は生まれないと思う)。世界一のストラテジストですよ。

本書は、ファイブ・フォース・モデル、ダイヤモンド・フレームワーク、クラスター理論が一通り解説されていて、しかも、ポーター教授による日本企業のケース・スタディーが聴講できる希有な本かと思います。

2008年2月13日水曜日

アップルとソニー

携帯音楽プレーヤーの国内市場で寡占化が進んでいるそうです(産経新聞2008/2/13)。

国内市場シェアは↓

iPod (Apple) 5割突破(ちなみに欧米各国で7割前後らしいです)
ウォークマン (SONY) 約3割

だとか。勿論コンキチはiPodユーザーです(5.5Gだけど)。

自分、AppleSONYも好きですが、どちらかって言われたら、即断で


Apple


を選択します。

だって、Appleの方がエキサイティングだから!!!しかも、宗教だし!!!!!
(自分、無宗教ですが、Appleの信者です。Apple教の救いは、クリエイティビィティーによる精神の解放ですよ)

今読んでいるM. E. ポーター教授の本で、SONYをオリジナリティーと評していましたが、Appleはクリエイティビィティー&イノベーティブだと思います。

正直、SONYは相手が悪かったと思います(もし、Appleが存在しなければ、SONYが一番好きですよ)。

この調子でMacのシェアも伸びて、企業でもMacが主流になればいいな、なんて思いますが、無理でしょうね。あと、Winユーザーに対する優越感を感じれなくなるし(Winユーザーの方ごめんなさい。ちなみに、コンキチはメインマシンはiBook G4ですが、サブマシンはVAIO C1を使ってます。)

SONYには、FeliCaで頑張って欲しいな。
(以前、がっちりマンデーでやってたんですが、FeliCaってコンキチの田舎の隣町の向上で一手に生産しているそうです。昔はカセットテープだかビデオテープ造ってたのにな。どうでもいい話ですが)

2008年2月12日火曜日

香料業界考 (8)

国内香料会社の国際競争力ってどうなのかな?っていうことについてちょっと考えてみました。

先のブログ(香料業界考 (1))で述べた通り、国内香料会社2社が世界トップ10にランクインしています。

随分昔の話で恐縮ですが、1995年に出版された「香料の物質工学」の序文によると、

わが国の化学工業会社、製薬会社の中で売上高が世界の10位以内にランクされる会社が1社しかないのに対し、香料産業においてのみ、この10年に2社が世界の10位以内に入って検討している

という記述があります。

ちなみに、我が国でエクセレント・カンパニーの呼び声高い製薬会社の雄、武田薬品工業でさえも、世界的に見れば↓

16位 (利益率はトップクラスらしい)←日本経済新聞2008/2/5朝刊 06年医薬品メーカー売上高より


なので、一見すると世界トップ10に2社も国内香料会社が入っているというのは、けっこう国際競争力があるんじゃないの?という感じがします。

でも、本当にそうなのでしょうか?

とりあえず、フレグランスに関しては全然競争力がありませんね。10年近く前のデータ(1999年)を引き合いにだすのもどうかと自分でも思いますが、世界市場ではフレーバー、フレグランス半々くらいなのに、高砂は22%、長谷川は15%。圧倒的に競争力が無いと思われます。

では、フレーバーはどうかというと、高砂も長谷川も主戦場は国内という感じがして(特に長谷川はそう)、グローバルな競争という意味ではメチャクチャ競争力があるような気がしません(まあ、あくまでそんな気がするだけです)。

で、勝手な結論ですが、

a) 国内にはけっこう潤沢な市場がある。
b) そして、地域独特の食(=フレーバー)に対する強力な嗜好性が、海外勢が製品開発するに当たって強力な障壁になっている(例えば、納豆は我が国の国民食だけど、欧米人と関西人は納豆嫌い。欧米人はブルーチーズ好きだが、日本人は苦手な人がけっこういる的なこと)。(食に対する)感性って、ドメスティック以外では代替が難しいと思う。
c) なので、日本の食(フレーバー市場)をがっちりキープしていれば、そこそこのシェアがGETできる。

というような気がします。

あと余談ですが、香料業界もご多分に漏れずM&Aが活発化しているようで、世界的にはここ数年で業界地図が変わっています。
(ちなみにドラゴコという格好いい(多分)龍のロゴをあしらった香料会社があったのですが、合併してそのロゴがなくなってしまい哀しいです)

でも、国内ではどこ吹く風って感じでしょうね。
高砂は買収防衛策を策定したし、
長谷川は41.9%位の株式をがっちりキープしてるし、
小川は非公開同族企業、
曽田は東レの子会社、
その他も非公開で同族色が強そう

ですから。

外資に買収されて、我が国特有のワークスタイルが激変する可能性は極めて低いと言えるのではないでしょうか?

とまあ、ここまで偉そうなことを適当な想像で述べてきましたが、素人の戯言なのであまり真に受けないで下さい。

2008年2月11日月曜日

香料業界考 (7)

国内大手4社の幾つかの数字を表にしてみました↓

company高砂長谷川小川曽田
連結売上高113,876 M50,066 M38,786 M18,180 M
単体売上高61,549 M45,955 M19,073 M17,996 M
粗利益率(連結)30.1%34.6%-30.6%
粗利益率(単体)28.1%33.4%34.8%29.5%
営業利益率(連結)5.3%13%-10.2%
営業利益率(単体)4.5%12.8%6.2%9.9%
研究開発費8,261 M3,430 M-988 M
売上高研究開発費率(連結)7.3%6.9%-5.4%
製品の割合68%94%-69%
従業員数(連結)2,4381,068-344
研究員数(連結)529267-69
研究員比率(連結)21.7%25%-20%
単体平均年間給与(万円)764.3761.1-752.8
平均年齢(単体)4040.835.841
平均勤続年数15.417.5-17.1

小川は高い粗利の割に、営業利益率が振るいませんが、最近設備投資に熱心だったので、CFで考えなければならないかもしれませんね(非公開企業の為、データをGETできませんでした)。それから、事業ポートフォリオと粗利益率を鑑みると、小川は長谷川と同程度の製品/商品比率であると想像できるのではないかと思います。

曽田は、粗利益率が低い割に、営業利益率が高いです。各社の有報を詳細にみたわけじゃないので(B/S, P/L, CF計算書もツマミ食い程度にしかみていません)、あまり多くを語れませんが、ローコストオペレーションが徹底しているのか(VAとか経費削減とかいってるし)、設備投資を控えていて減価償却費が嵩んでいまいのか、あるいは、他者に比較して少し控え目な研究活動への投資が、競争が比較的緩やかな業界の構造にマッチしているのか?分かる人がいたら教えて下さい。

ちなみに、研究員1人当たり連結製品売上高を計算してみると↓
高砂/ 148.5 M
長谷川/ 176.3 M
曽田/ 179.2 M

製品売上高/研究開発費は↓
高砂/ 9,5倍
長谷川/ 13.7倍
曽田/ 12.5倍

高砂に比べて、長谷川や曽田の研究開発効率が高いような気がします。高砂は上場3社中最も研究開発費に資源(金)を投入している(対売上高に対する比率も一番高い)にも関わらず、その成果がイマイチクンのように感じられます。暇があったらその辺、特に高砂と曽田の比較を詳細にやってみたらやってみようかと思います(ただ、コンキチは会計素人なので、そのへんの勉強もしないといけないですね)。

個人的な即断と偏見に基づく感触としては、長谷川香料が、財務(有利子負債少ない)・収益(利益率良好)・戦略(国内フレーバーシェアNo.1)の面でバランスに優れてるかなと思います(力強い根拠はありませんが)。

最後に香料会社の給料についてちょとサーチしてみました。上場3社(高砂、長谷川、曽田)の平均年収は、2007年に「化学」セクターに上場の218社中、

高砂香料工業 23位 (764.3万)
長谷川香料 26位 (761.1万)
曽田香料 29位 (752.8万)

です(かなりの高水準ですね)。
ref. http://www.nenshu.jp/list/t0007a.htm

寡占市場で、競争もメチャクチャ激しくはなさそうで、それなりにシェアを維持できそうで、けっこう美味しい業界なのかもしれません(大手香料会社は)。

2008年2月10日日曜日

香料業界考 (6)

さて、業界4番手の曽田香料についてみてみましょうか?

ところで、四季報には「香料で国内3位」なんて書いてありますが、所謂香料会社で上場している3社中第3位という意味で、実際の3位は小川香料で、曽田香料4位です。注意しましょう。

カテゴリ別売上高構成比は↓
高砂、長谷川、小川が売上高構成の半分以上をフレーバーが占めているのに対して、曽田は47%と50%を下回っています。その代わりに「合成香料とケミカル」が34%と高い数値となっています。

そして、製品/商品の割合は製品が69%、商品が31%で、高砂香料工業と同程度の比率です。

地域別売上高構成比は↓
75%が国内売上高です。


粗利益率は30.6%(単体29.5%)、営業利益率は10.2%(単体9.9%)です。研究開発費は連結で988百万円(対売上高5.4%)。

売上高の構成比からタイプとしては、「高砂-曽田」、「長谷川- 小川」というよううグルーピングできそうです。ただ、合成のウェイトがかなり高いですね。製品だけに限ると、売上高構成のトップは合成(合成香料&ケミカル)になります。この辺りが曽田の特色なんでしょうか?四季報では「都市ガスの着臭剤やラクトン系合成香料に強み」と述べられており、有報でもラクトンと大環状ムスクに関する記述があり、そういった独特のポジショニングが強みなのかもしれません。

あと、フレーバーの製品/商品の割合は56/44で、かなり商品でボアアップされている気がします。国内フレーバー市場で高い競争力があるようには感じられませんね。


ちなみに、過去数年の有報から窺える取引先は....とりあえずマイナー(だと自分は思った)な企業も全部書きます↓
三井物産日本ミルクコミュニティ、ソダアクト、森永乳業FIRMENICH SWISSE、大日本インキ化学工業POLAROME INTERNATIONAL INC.雪印乳業明治乳業、全国農協直販、POLAROME USA、カネボウ化粧品誠寿堂、ロベルテ、合同酒精日本表面化学旧旭電化工業、ファミネット、オルトコーポレーション、ナガオカ、(昔の)カネボウ、アズウェル、サンテイスト、ロベルテ日能商店、富山小林製薬


国内の主な拠点は、野田(工場、研究各部)、郡山(工場)。それから、海外には台湾と中国の関係会社があります。

従業員は連結で344人(内研究員69人, 20%)。単体で281人。平均年間給与は753万円(平均年齢41歳)で、平均勤続年数17.1年。

筆頭株主は東レ(50.01%)で東レの子会社という位置付けですね。

次回は大手4社の数値比較をしてみましょう。

2008年2月9日土曜日

老年よ、大志を抱け?

香料業界を(素人のコンキチ)が考えるブログはまだ続きますが、この辺でちょっと箸休めを.....

唐突ですが、今日、近所のショッピングセンター(SC)に日本酒を買いに行きました。ついでに、SC内に入っている紀伊国屋に(コンキチの愛読誌である)ハーバードビジネスレビューを立ち読みしに行きました。

で、ハーバードビジネスレビューの置いてある棚の周囲って、(低俗な)マネー雑誌とか四季報とかがおいてあるのですが(自分もマネー雑誌読んでると周囲の人に思われるのが心外)、そこで1人の(憶測年齢)70歳くらいのおばあちゃん(っぽい人、多分女性だと思う)がいて、しゃがみ込んで熱心に四季報を読みふけっていました。

思ったこと↓

1) 70過ぎてボラティリティーの高い株式(個別銘柄)に、資産を集中的の投資するのはやめた方がいいと思う(超資産家にはよけいなお世話ですが)。でも、激下がりしている株式市場(昨日新聞読んでたら、上場企業の保有有価証券18兆円目減りなんて見出しが踊ってたな)に今参入するのは悪い判断ではないかもしれませんね。

2) 最も社会の模範となるべき長老格が、しゃがみこんで雑誌を熟読するのはやめてほしいな。チビッコの教育によくないと思う。っていうか、買って家で落ちついて読んだ方がいいと思うな(っていうか、四季報買う金も惜しいくらい程度に資産しかないなら、もっと堅実な運用をした方がいいと思う)

3) 当然、四季報は1次スクリーニングで、有報読んでから投資の意思決定するんだよね(余計なお世話ですかね)。

正直、高齢者が株式に手を出すことがコンキチには理解できません。バフェット的に「株式投資=趣味」ならば、まあ分かりまずが、利殖目的だったら、意味がわかりませんね。はっきり言って、メリットは皆無だとコンキチは思います。まあ、確かに短期間で爆騰する(空売りするなら爆下げ)銘柄もありますが、そんなのは誰にも予測できないし、極々少数の銘柄でしょう。一月や二月で投資資金が2倍(年利換算で409500%)、3倍(年利換算で53144000%)になるなんていう幻想は捨てた方が良いと思いますね。個人的には年率5%で御の字と思います。

当然マイナス運用という可能性もあるわけで、幻想を抱いていたのに、マイナスになっちゃって、ますますハイリスクな銘柄につっこんで、さらに損失が膨らみ底値で投げ売りして大損かますというパターンにならないと良いのですが.....

まあ、なんとかの冷や水にならないことを祈りますか。


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2008年2月7日木曜日

香料業界考 (5)

今回は小川香料についてサーチしてみます。小川香料は非公開企業なので、容易に入手可能なデータが少ないです。なので、 新聞記事等も活用してブログを構築していこうと想います。
あと、連結の情報は同社のWeb Siteに記載してあった売上高のデータしかGETできなかったので、単体主体でまとめていきます。

それでは単体売上高構成比です↓
長谷川香料同様フレーバー(80%)に特化した内容です。ちなみに、上記グラフのOTHERは、日経会社プロファイルによると「関連商品」で、四季報では「輸出」となっています。

粗利益率(単体)は34.8%。製品/商品の比率は分かりませんが、この高い粗利益率から察するに、長谷川型の高付加価値製品重視政策をとっていることが想像されますね(数年前は40%超だった)。

単体売上高は19,073百万ですが、連結だと38,786百万(HPに記載、単体の約2倍)あります(何やってるんだろう?)。大手4社の売上高を連結ベースで考えた場合、

高砂 / 長谷川 / 小川 / 曽田 = 5 / 2.5 / 2 / 1

といった感じでしょうか?単体との比較とは全然違った景色がみえてきます。

それから、創業家が仕切っている会社なので意思決定が速そうです。そして、ここ10年の設備投資が凄いです。

1999年 舞浜研究所スタート
2001年 (確か業界では他社にさきがけて)ERPを導入(5億)
2004年 つくば事業所スタート
2004年 中国上海に有限公司設立

それから、同社の2005年に設立した健康素材研究所や、食品会社をターゲットにした機能性素材DBの提供は、フレーバー関連事業の強化ですね。個人的に、機能性素材DBの提供による会員の囲い込みは、B to Bの関係強化を促す仕組みと考えています。

あと、他者に比べてウェブマーケティングがウマいなと思いました。研究成果をHPでアピールしたり、HPの更新というか、リデザインもけっこうやっていてアクティブな印象をうけますね。「食品(フレーバー)に特化してます」っていうのがとても伝わってきます。一つの力点(フレーバー)に収斂している印象を見る者に与えますね。就活している学生さんにもアピールになっていると思います。

従業員数は単体で457人で、平均年齢は35.8歳と他社に比べて圧倒的に若いです。
(高砂 40歳、長谷川 40.8歳、曽田 41歳)

事業拠点は、舞浜(研究所)、岡山工場、つくば事業所。

a) 旺盛な設備投資
b) (成熟産業にしては)圧倒的な若さ
c) 『食」への集中
d) 濃い顔の社長

なんかアグレッシブな匂いがしますね。(完璧にイメージですが)活力を感じますね。


2007年度大学生就職人気ランキング理系女子ランキング 73位と未上場企業ながら、なかなかの好感縮さが窺えます。


ただ、

2007年 従業員数 457人 (平均年齢 35.8歳)
2006年9月 従業員数 562人 (平均年齢 35.8歳) 連結 898人
2006年7月 従業員数 533人 (平均年齢 35.8歳)
2005年 従業員数 502人 (平均年齢 37.2歳)

と、2006→2007の従業員の出入りの激しさが気になります。単に団塊世代の自然減とかならよいのですが、仔細は分かりません。

それから、ブログ情報なんですが、小川社長と
サントリー
の佐治社長は 「東京ピアー会ジュニア」なる会に参加しているとか(佐治社長が中心らしい)。今後、取引とか増えるのかな?↓
http://office-lets-do-it.ameblo.jp/office-lets-do-it/entry-10040600364.html


次は曽田香料です。

2008年2月5日火曜日

香料業界考 (4)

香料業界を考えるブログシリーズ4回目は、国内香料業界No.2の長谷川香料について、誰でも入手できる資料(IR資料)に基づいて、コンキチの独断と偏見により、勝手に考えてみたいと思います。

で、セグメント別売上高構成比(連結)は↓
IR資料より、合成香料はキャプティブ・ユース主体。フレーバーの国内シェアは推定No.1で、ほとんどの大手食品メーカーとほぼ主力取引を維持しているとか。高砂香料に比べて、フレーバーに特化していると言えるでしょう。

ちなみに、過去数年の有報から窺える取引先は、森永乳業(直近16.1%)、サントリー花王キリンビバレッジキューピーアサヒ飲料日清食品など。

商品の構成比が6.7%(グラフは四捨五入してるので6%になっている)と低く(高砂単体で商品30%くらい)、同社の四季報とかに書いてある「研究開発で実績」という記述を裏打ちしているような数字と思います。
四季報情報によると、【連結事業】フレグランス10、食品84、商品7【海外】17 <07・9>だそうです。

連結の粗利益率は34.6%(単体33.4%)と高砂(30.1%)よりも高く、高付加価値製品が多いような気がする。研究開発費はグループで3,430百万円(対売上高6.9%)です。

コンキチが勝手に思っていることですが、調合ってある種の錬金術だと思うんですよね。というのも、安い原料を調達して、ブレンド技術というブラックボックスを通して、高値で売る(かなり大雑把な例えですが)。で、ブレンド技術は、調香師の確保(育成)とノウハウの蓄積が決定的で、簡単にはまねしがたく、その辺が競争優位につながっていると思う(勝手な想像です)。

一方、合成香料事業の場合、所謂ケミカルカンパニーが競合となる可能性があり競争が激しくなる可能性がある。しかも、けっこうやり尽くされた感があって、新規素材の開発も難しそうな気がする。規制が強化されていく中で、ファイナル製品がトイレタリー商品とか、食品なので、医薬品みたいな付加価値を乗せるわけにもいかないと思うし。なので、高砂は利ざやが稼げそうな医薬中間体の製造(合成)に多様化しているんだと思います(合成香料だけでウハウハできるのなら、そっちをもっと伸ばせばいい)。

そういう意味で、調香というブラックボックスに注力している長谷川香料の戦略は王道かなと勝手に思っています。

アメリカ、シンガポール、中国、タイに海外拠点。

地域別売上高構成比は↓
8割超が国内です。

営業利益率は連結で13%(単体12.8%)。なかなか利鞘のよい商売のようです。

国内の主な拠点は、川崎(技術研究所)、深谷(食品香料、香粧品香料、合成香料)、板倉(食品関連、天然香料、機能性物質)。

従業員は連結で1,068人(内研究員267人, 25%)。単体で856人。平均年間給与は761万円(平均年齢40.8歳)で、高砂より3万円ほど少ないくらい。平均勤続年数17.5年。

筆頭株主は長谷川藤太郎商店で41.9%。同族色が強そうですね。まあ、正しい意志決定が可能ならば、経営の舵を切るスピードが速くて良いのかもしれません。


あと、長谷川香料のIR資料は上場3社中で一番良くできていると思います(国内市場をざっくりと俯瞰する意味で)。

ちなみに長谷川香料

2007年度大学生就職人気ランキング理系総合ランキング 93位
2007年度大学生就職人気ランキング理系女子ランキング 61位

と学生さんに人気の香料会社なのです。

次回は業界3番手の小川香料いきたいと思います。

2008年2月3日日曜日

香料業界考 (3)

さて、国内大手香料会社4社についてみてみますか。ちなみにデータソースは、上場3社については、各社の有報をはじめとするIR資料を、小川香料に関しては日経会社プロファイルを主に参考にしました。

ますは業界最大手の高砂香料工業から

同社のセグメント別売上高構成比(連結)は↓

不斉合成技術を活用したファインケミカルズの比率が高いという(コンキチの勝手な)イメージがあったのですが、8%程度にとどまっています。

29の子会社と3つの関連会社からなり、世界23カ国に拠点を有しており、同社はアジア唯一のグローバル香料会社を標榜しています。香料市場は地域性が強い(ローカライゼーションが重要)と思うので、個人的にはグローバルというより、多国籍企業という気がしますが。

単体売上高61,549百万円に対して連結売上高は113,876百万円(単体の1.85倍)。国内香料会社の比較では未だに単体売上高で比較されているようですが、連結で比較すべきなんじゃないかと思いますね(連結決算が基本ですしね)。高砂小川のように連結と単体の乖離が大きい会社と長谷川曽田のように連結と単体が二アリー・イコールのような会社を較べるときは注意が必要でしょう。

また、国内/海外の売上高構成比(連結)は↓
39%が海外売上高です。


それから、単体の製品/商品売上高構成比↓
相対的に利益率の低いと言われる商品が29%を占めています。ちなみに連結の営業利益率は5.3%(単体4.5%)。そんなに利鞘が厚くない感じです。この辺も後で他社と比較してみたいです。

コカ・コーラ ナショナルビバレッジ株式会社への販売が14,411百万円(12.7%)あり、最大の取引相手。ここ数年の有報から、日本コカ・コーラ大塚製薬森永乳業Merck武田薬品工業サントリー、(かつての)住友製薬との取引がとりあえず確認されます(製薬会社関係からの医薬中間体の受託製造が想像されます)。

研究所は平塚に集約されていて、工場は平塚(フレーバー、フレグランス)、磐田(アロマケミカル、ファインケミカル)、鹿島(フレーバー、フレグランス)にあります。

従業員は連結で2,438人(内研究員は529人, 21.7%)。単体で949人(平均年齢40歳, 内研究員232人, 24.4%)。平均勤続年数15.4年。

連結の粗利益率は30.1%(単体28.1%)、研究開発費はグループで8,261百万円(対売上高7.3%)です。

平均年間給与は764万円と(上場3社ともに言えることですが)化学セクターの中ではかなりの高水準と思います。

ちなみに、最大株主は日本生命(9.1%)で、2007年に買収貿易策を導入しました。

とりあえず、大手4社の各論が出そろったところで、各社の相違を改めて総括することとして、高砂香料工業については、ひとまずこの辺にしておきたいと思います。

で、次回は業界第二位の長谷川香料についてサーチしてみましょう。

それから、このブログは窓際三流研究員が適当に作成しているので、どこか間違いがあったらご愛嬌ということで許して下さい。

まだ続く…

2008年2月2日土曜日

香料業界考 (2)

先のブログでは、世界と国内の香料産業のザックリとした市場規模をジャブ程度にサーチしてみました。そして、国内市場は、世界市場(といっても各ドメスティック市場の集合ですがね)に比して圧倒的にフェレーバーの販売金額が大きいということを学習しました。

で、今回は国内市場をもうちょっと詳しくみてみますかね。

まずは、長谷川香料のIR資料によると、国内大手5社の国内市場におけるマーケットシェアは↓(国内の大小様々な香料会社は3桁に達するようですが、総合香料メーカー的な香料会社はそう多くありません)



a) 上位10社の単体売上高の合計を100としている。
ということが注意ポイントです(純粋に香料だけじゃないということ。それから高砂香料工業小川香料は連結と単体の乖離がけっこう大きいです)。

大手4社の合計で70%超の市場占有率ですから、国内市場は寡占市場といって良いでしょうね。しかも、上位5社のシェアも少なくともここ数年たいした変動はないです。

上場3社の有報には競争が激化みたいなことが書いてありますが、新規参入の危険は皆無に近いと思うし、産業的にも安定していて(トイレタリー商品や加工食品は安定した需要があるし)、もっと競争の激しい産業に比べたら、ぬるま湯につかったようなぬくぬくした匂いがします。

長谷川香料のIR資料では、香料市場への参入障壁として
1) あまり大きくない市場規模
2) 大きな設備投資と研究開発費
3) 品質保証体制の確立

というのをあげています。

長谷川香料IR資料とオーバーラップしますが、コンキチ(素人)の個人的勝手な見解としては、

1) 顧客ごとにカスタム製造していると思うのでスケールメリット(規模の経済)が生かしにくい(香料業界は多品種少量製造と言われています)。市場自体もたいして大きくもなく飽和しているのでなおさら。
2) パヒューマーとフレーバリストの確保が困難。多品種少量のカスタム生産においてシェア(生産量)をのばそうと思ったら、優秀な調香師の確保が決定的になると思います。パヒューマーやフレーバリストの養成学校もあるようですが(日本FF学院とか)、マイナーですよね。パヒューマーやフレーバリストになるための明確なキャリアパスって答えられますか?そういった意味で調香師の人件費と育成費用がかかるという意味では研究開発費は大きなウェイトを占めるのかと思います。
3) ブレンド技術のノウハウ(調合技術)の蓄積。全くの一からつみあげたら超時間かかりそうで大変そうです。

といったことの方が障壁になっていると思うのですが、どうでしょう?

割と高い参入障壁があり、香料を含有するファイナル製品は、安定した需要があって、かつすぐに消費されて行きます(ジュースとかシャンプーとか完璧消費材です)。「化学」セクターの中では、産業としての魅力度は高いと思います。

とまあ、香料市場を大雑把に概観したところで、次回のブログでは、国内大手4社の各論についてコンキチ(素人)の戯れ言を綴りたいと思います。

余談ですが、コンキチが就活していたころ(10年くらい前)は、有報をはじめとするIR資料を簡単に入手することはできなくて、四季報とかを見てせっせと葉書を出していましたが、便利な世の中になったものですねえ。

2008年2月1日金曜日

香料業界考 (1)

香料会社に入社しながらも、香料とは全然関係のない仕事をやってる窓際(席もホントに窓際で寒い)研究員のコンキチです。

とことで、香料会社って世間的にかなりマニアック系な感じがすると思うのです。一応、国内では3社が上場しているのですが、コンキチが就職するまで、親戚一同「香料会社?なにそれ?」っていう感じでした(多分今もそう)。

香料会社の研究員のブログと銘打っておきながら、香料ネタが皆無に等しいので、たまには香料ネタをと思い、なんとなく香料業界についてサーチしてみました(はじめて調べた)。軽くマニアックな業界に対する皆さんの理解が進めば幸いですね。

まずはじめに、グローバル市場を概観。世界の香料業界のマーケットシェアですが、こんな感じになるようです(1$=ca.119.2JPY)↓

日本の香料メーカーとしては、高砂香料工業長谷川香料が世界のトップ10に食い込んでいます。

データの出所はLeffingwell & Associates で、ここのサイトのF&F Top Tenという所にあったデータです。だた、上のデータは

a) 2006年のもので、2007年には、GivaudanがQuestを買収、FirmenichDanisco(12位)のフレーバー部門を買収しているので、業界地図は変わっています。

b) 多分、各社(所謂香料メーカー)の連結売上高をドル換算しているデータで、純粋に「香料」のみを取り扱った数字ではない。

というところに注意ですね。

さらにまたもやLeffingwell & Associates から拝借したデータですが、グローバル市場におけるカテゴリーの比率です。ちょっと古いですがこちら↓

フレグランス(香粧品香料)とフレーバー(食品香料)の比率がだいたい半々くらいだということを覚えておいて下さい。我が国のドメスティック市場との対比が面白いです。

で、国内市場はどうなっているのよとちょっと見てみましょう。データは国内上場3社(高砂香料工業長谷川香料曽田香料)のIR資料を参考にしてみました。

まず、長谷川香料のIR資料によると、国内香料市場の生産金額(フレーバー&フレグランス)は↓
(出所は日本香料工業会会報だそうです)

グローバル市場と全然違って、圧倒的にフレーバーの販売金額が大きい。このことから、香料産業のローカル性の強さというのが匂ってくるようです。それから、もし香料業界を目指す学生さんがいたとしたら、

1) 国内で調香やりたかったら、フレーバリストを目指した方がなれる確率が高い
2) パヒューマーになりたい人は、グローバルに就活することも視野にいれているといいかも

ということが言えると思います(分かってると思いますが、あくまでコンキチの勝手な憶測なので、あまり真に受けないで下さい)。

市場規模は1,700億に満たないくらい(後述する曽田香料のIR資料に載ってるデータと比較すると、合成香料市場のデータは加味されていないっぽいです。まあ、長谷川香料は合成香料を外販していない(と思う)ためですかね)。フレグランスの市場規模は180億に満たないくらいで、ここ数年横ばい。フレーバーは微増です。まあ、改まって言うほどのことではありませんが、国内香料市場はかなり成熟していますね(実際そう言われている)。長谷川香料のIR資料によると、フレーバーは加工食品の開発にともなう安定成長なのだそうです。

で、合成香料の外販もやっている曽田香料のIR資料によると、こんな感じ↓

2,000億の市場規模といったところですか。

まあ、グローバル市場と国内市場の対比ということで今回はこのへんにしておこうと思います。

次回は、国内香料会社の市場占有率や、コンキチが勝手に思う国内香料産業の特性について勝手な感想を適当に綴ってみたいと考えています。

続く