2016年11月27日日曜日

My Dear Grignard Reagent (3): そのGrignard試薬、長期熟成品?

どもSaratogaをGETしたオッタキーのコンキチです。


後れ馳せだけど、浅草の水口食堂で今シーズンの初秋刀魚食べてきました。

-生さんま塩焼 2016 (480 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
身がほっくほくのふわっふわ。freshでかなり旨かった。それから、塩味が良い塩梅で良かったです。

秋刀魚を食べた店は、ボクの大好きな浅草にある水口食堂。チバラキ在住のボク的には、TXの駅近なので重宝しています。

因に、去年食べた秋刀魚↓

-生さんま塩焼 2015 (480 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
少しさかなくささ感じたけど、まあ普通に旨い。(秋口には)すだちが付いてくるのが良い。この時は時季が合ったのですだち付き(嬉しい)。

このお店、秋刀魚の塩焼きは、半分に切断させれて出されるんだよね。

それから、水口食堂のその他の食べ物達↓

-千代菊 にごり酒 しろうま (一合) (580 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
甘さはベタついたものではなく、けっこうスッキリした味。それでいて、にごり酒のbodyの太さは健在。適度な辛さがキレを加える。これは旨い。

-肉豆腐 (580 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
冬季限定の超スピードメニュー。
大きなお豆腐(焼き豆腐)と良く味の染み込んだ長葱と糸コンニャクにお肉。
ツユは甘口のあっさり系で癖のない味。万人受けしそうな味。
あと、スプーンが付いてくるのが嬉しい(忘れられるとくアリ)。
ツユをすくって豆腐と供に食べるのが良い。
お肉も良く煮込まれていて良い味出してる。脂身の軟らかい食感と、赤身の締まったホロホロと割ける食感のコントラストも楽しい。
胃に優しい、穏やかな味わいの肉豆腐に仕上がっていると思います。
これは、お豆腐メインのすき焼きだね。


-まぐろぶつ切 (700 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
赤身からけっこう脂ののってるところまで入っている。赤身はしっとり、ねっとりした重厚な味でけっこう好きな味。一口に赤身と言っても、それぞれのぶつのブロックで味や食感が異なっていて面白い。けっこうお得かも。薬味は粉ワサビと大根おろし。鮪と大根おろしが良く合う。


-昔ながらのナポリタン (700 JPY)-
see http://researcher-station.blogspot.jp/2015/08/2.html


-いり豚 (580 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
水口オリジナルの名物メニュー。玉葱と豚の料理。味付けは優しいカレー味と、ウースターソース様のボタニカルとフルーツが凝縮されたような味。豚肉は程よくこなれた味で、柔らかい食感と相まって旨い。味と食感のバランスが良い。玉葱はとってもjuicyでfresh。シンプルメニューだけど、はっきり言って、とても旨い。"名物"と言われるだけのことはあると思いました。


-ホタルイカ (480 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
やや小振りかものホタルイカは張りが有る食感で身がプリップリ。何もつけず、素のまま口に運ぶと、僅かに魚くささを感じる程度で、醤油を付ければもう分からない。なので、薬味無しでも美味しくいただけるんだけど、薬味と一緒に食べるともっと旨い。
醤油の上に葱を敷き、その上にホタルイカを載せ、その頂きに生姜を盛って食べるとfresh感がup↑。生姜と葱のそれぞれに強い味(エグさ)が互いに中和しあってfresh感のみを付与している気がします。とってもfreshだよ!


-冷奴 (250 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
250円は平日サービス価格(休日は350円)。
少し硬めの奴。嫌な味が全くなくて良い。やや硬めなところも適度に食感が楽しめて良い。ふんだんに載せられた薬味が嬉しい。


-カキフライ (750 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
5P。衣からは油の良い匂いがし、さっくり揚がっている(衣ははちょっと厚く、その為か硬い)。一口齧ると、切断面から顔を覗かせた牡蠣から滋味豊かな良い香りが漂ってくる。衣がやや厚いので牡蠣のjuicy感の伝わり加減がひまひとつ。そのかわり、全て食べきるまでアツアツ感が持続する。
何も付けずそのまま食べて十分旨い。タルタルソースはツブツブ感が無くて、ちょっとoilyな感じ。その流動的な形態のためか衣へのノリが悪い。
カラシはソリッドな感触と味であまり好みでない。
塩(食卓塩)を振り掛けて食べると、味が引き締まって良い。但し、バランス良く薄く衣に纏わせるのが重要で、掛け過ぎに注意が必要。
因に、定食にすると1,100円。


-マダイ塩焼 (630 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
小振りの鯛の塩焼。表面の皮はサクサク。身は適度にしっとり。淡白な身に少しキツメに塩味が効いていて旨い。




-琥珀ヱビス (樽生) (580 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
安定の旨さ。


-黒ビール ヱビスザブラック(小瓶) (450 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
これも文句無しに旨い。


-新潟 新発田 金升 小徳利 (燗) (450 JPY)-

-ビンビール 大瓶 (キリン ラガー) (580 JPY)-

-生すだちサワー (530 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
すだち1個分を搾っていただく。すだちの搾り汁でサワー全体にけっこう色が付き、香味も十分。すだちの鮮烈で清々しい酸味が存分に味わえてとても旨い。

水口食堂は、浅草の有閑マダム達が真っ昼間からフライをあてに大徳利を煽っている大衆的な店で、気取らない雰囲気ながら、料理の味は意外と気取っていて旨いです(少なくともボクは大好き)。


閑話休題


前回のブログでメモした文献


"Comparative Performance Evaluation and Synthetic Screening of Solvents in a Range of Grignard Reactions 
Green Chem., 2013, 15, 1880-1888."

の中で、市販のベンベンジルマグネシウムクロリドの純度に関してけっこう由々しきことが言及されていたのでメモしてみます。

で、"由々しきこと"っていうのは、

ラベル表示の純度と実測値(滴定値)が全然違いますから

ということ。

中にはラベル表示値の6割未満の純度しかない試薬もあって、マジ驚愕です(ドン引きするレベル)。で、詳細はこちら↓


市販Grignard試薬は買ってから1ヶ月以内に分析しています。また、HPLC純度はGrignard試薬を無水メタノールで処理してから分析しています。

不純物としてはWrutsカップリングによって生成する1,2-ジフェニルエタンの他に、ベンジルアルコールと5-フェニルペンタン-1-オールが検出されています。
ベンジルアルコールはGrignad試薬と酸素との反応の後、加水分解されて生成するといいます(なので、Grignard試薬(溶液)中ではBnOMgClとして存在するのでしょうか)。
そして、5-フェニルペンタン-1-オールはTHFとGrignard試薬とのラジカル反応由来と言います(従って、Et2Oと2-MeTHF溶液では検出されません)。

ところで、著者らは自分達でベンジルマグネシウムクロリドの1M THF溶液を調製して、3ヶ月経過した後に分析しています。その結果、5-フェニルペンタン-1-オールはトレース量(<0.1%)しか検出されなかったと言います。この実験結果を根拠に著者等は、市販のベンベンジルマグネシウムクロリドは調製してからかなりの時間が経過している(長期熟成品)か、保存状態が劣悪だったのであろうと結論付けています(ボク的には初期濃度が違うのがけっこう気になるけど)。

ベンジルマグネシウムクロリドって言ったら大昔からある試薬なので、メーカーの品質保証体制も十分に確立されてると思っていたのに、この体たらくとは残念です。国内だとTCIや和光純薬で売っているので、使う機会があったら問い合わせてみたいと思います。
)因みに、この論文の著者等の所属機関は、マサチューセッツ大学、イーライリリー、ファイザー、ノバルティス(アメリカとスイス)です。)

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のしつこく続くGrignardメモでした。


2016年11月13日日曜日

My Dear Grignard Reagent (2): 2-MeTHF、推して参ります

一気に秋が深まりましたね。


人形町で所謂立ちソバを食べたときのメモです↓



-きうち もりそば (290 JPY) MEMO- 
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW- 
蕎麦は中くらいの太さ(普通)。NUT様の香りがする。かなり硬めで角の立った触感で、喉越しは良いが、歯への当たりが強すぎる。ほんの僅かだけど、粉っぽい感じがする。茹であがった蕎麦は、かごであげている。瑞々しい見た目で、水っぽさはない。NUT様の香りがする割には、咀嚼した際に口腔内に広がるflavorは貧弱に感じる。
ツユは少し赤みを帯びている。かつお節様の香りが一閃。少し甘めで穏やかな味だが、bodyが弱いわけではない。それでも、強すぎるコシで決して細くない蕎麦に対して 当たり負けするのではないかと思ったが、そんなことはなく、意外にもバランスがとれている。ツユは全量蕎麦猪口に入れられて提供され、最後まで水っぽくならないのには感心する。
蕎麦にツユがよく絡んでいると思う。 薬味はワサビと葱。ワサビは粒々感があって鮮烈な辛みと甘みに加えて、さらにoilyな味と舌触り、違和感のあるエグ味を感じる。明らかに、ひなびた感のある蕎麦と良く合う山葵とは違う。あと、ちょっと度の過ぎた鮮烈な香味が蕎麦の味を全てかき消してしまう。 立ち蕎麦としては群を抜いており、コストパフォーマンスも高いと思う。


閑話休題


しつこく、Grignard反応のはなしです。
先日のブログではCPME中でのGrignard反応の挙動についてメモしましたが(http://researcher-station.blogspot.jp/)、今回はGrignard反応の溶媒効果についてのメモです。

読んだ文献はこちら↓

Comparative Performance Evaluation and Synthetic Screening of Solvents in a Range of Grignard Reactions
Green Chem., 2013, 15, 1880-1888.

幾つかのGrignard反応について溶媒効果を明らかにし、2-MeTHFが一番という結論を導きだしています。特に、Grignard試薬調製時のWrutzカップリングの抑制に有効みたいです。

本報で検討してる溶媒は、Et2O, THF, 2-MeTHF, CPME, DEM, Toluene, Diglymeの6種類。各々の溶媒の物性まとめです↓


この中で著者らがSafetyでGreenerだと注目しているのが(当然)2-MeTHFとCPMEです。なので、ここでちょっとGrignard反応における2-MeTHFとCPMEの特性をおさらいしてみましょう↓

2-MeTHF:
a) 5M程度までの高濃度Grignard溶液を調製できる(Green Chem., 2010, 12, 381.)。
b) THFよりも酸と塩基に対して安定。
c) 過酸化物を形成ににくい。
d) 水と混ざらない。
e) 乾燥しやすい。
f) 遺伝毒性と変異原性は陰性 (Merck, OPRD, 2011, 15, 939.)。

CPME:
a) 過酸化物を形成しにくい。
b) 水との共沸混合物を形成するので乾燥しやすい。
c) 遺伝毒性と変異原性は陰性 (Merck, OPRD201115, 939.)。

こんな感じです。

で、溶媒効果はどうなのよ?ってことですが、
まず、ベンジルグリニアとMEKの反応における溶媒効果の結果です↓


因に、臭化ベンジルはWurtsカップリングが起こりやすい基質です。で、X=Br, Clの両方で2-MeTHFが素晴らしい選択性を示しています(Et2Oは同等以上だけど、溶媒としての好ましさが圧倒的に違う)。
ついでにこの結果から、Girignard反応の正否は極性パラメーター(単体)では説明できないことが示唆されます。
あと、個人的にちょっと驚いたんだけど、トルエン単一溶媒でGrignard Preparationが出来るんですね。

それから、3-Bromoanisoleを用いたとき(Aryl Grignard reaction)の溶媒効果の結果↓
(因に、3-Chloroanisoleでは反応が進行しません)


ここでも、2-MeTHFの優位性が光っています(Et2Oは除く)。

参考までに、THF中、Turbo Grignardを使ってハロゲン-金属交換を行って反応を行うとこんな感じで、まあ、普通にTHF中でGrignard反応やるのと同様の結果になります。

(著者等は、Turbo Griganrdを用いる手法は、Griganrd試薬調製時のMgの活性化が不要で、反応も室温で進行し(もっと低温でも進行するよね、確か)、(それ故)Wrutz反応による副生成物の生成がトレース量に抑えられるという利点を挙げています。ついでに、2-MeTHF溶液も市販されています(Alfa Aesarで売ってるのは確認した))。

あと、3-Bromoanisole (Aryl Grignard reaction)の医薬品(Tramadol)合成への応用です↓


2-MeTHF、かなりいい感じですね

さらに、3-メチルチオフェン (Heteroaromatic Gregnard reaction)を用いた場合↓


2-MeTHFがチャンピオンデータです。

以上、試した基質は少ないけれど2-MeTHFって『いいね!』っていう気持ちで一杯になります。

今後、Grignard反応における溶媒としての2-MeTHFの動向に注目していこうと思った二流大学出のテクニシャン(研究補助員)でした。


2016年10月2日日曜日

My Dear Grignard Reagent: Grignard Reaction in CPME

やっと秋めいてきましたね(天気悪いけど)。


小川町にある笹巻けぬきすしで買ったお寿司のメモです。


-笹巻けぬきすし総本店 7ケ折詰 (1,695 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
小肌、海老、おぼろ、たまご焼、かんぴょう巻×2、白魚の7ケ入り。
全体的にお酢がかなり効いている。特にネタに酢が効いている。そして、この酢が清々しい香味で旨い。
小肌は特に酢が効いている。江戸前の握りのような繊細さと柔らかさは無くて、少し張りを感じさせる身だけど普通に旨い。
海老も酢が大分効いている。で、それがとても良い。一本芯の通った味になっていて、海老の旨さとってもup↑している。海老はあまり好きなネタじゃないんだけど、この海老は絶品。初めて心の底から旨いと思った海老でした。
おぼろはわざとらしい感のある甘さはほどほど。
たまご焼は砂糖の甘さを感じさせない硬派な味。焦げた香ばしい香味と玉子本来の香味とシナジーがとても良い。薄い皮の張った感じの食感が噛み切った際にとても心地良い酢飯との相性もとても良い。
かんびょう巻はかんぴょうの味がとても良い。濃厚で滋味深い複雑な味。海苔は張りが残っていて、海苔を噛み切った際の『プツィッ』という食感と、かんぴょうのもの凄い柔らかい食感とのコントラストがとても良い。信じられないくらい旨いかんぴょう巻で、こんなに旨いのは初めて食べた。
白魚は茹でた白魚なんだけど、茹でたのは初めて食べました。で、シラスと較べて大振りな身は醍醐味があり、味の濃さが伝わってきて良い。
総じてお酢がけっこう効いているんだけど、刺々しい感じは一切無く、むしろ清々しさに溢れている。
また買いに行きたいな。

ところで、『笹巻けぬきすし』の読み方に戸惑う人も結構いるっていう噂を小耳にはさみましたが、読みは『ささまきけぬきすし』です。参考までに。


閑話休題


けっこう前にだけど、こんなtweet↓

があったので、遅ればせながら、ボクも読んでみました↓

Grignard Reactions in Cyclopentyl Methyl Ether
Asian J. Org. Chem., 2016, 5, 636-645.

Industry-Friendlyな溶媒として注目されているCPME中でGrignard試薬の調製からGrignard反応までやったらどうなの?っていう論文です。

ところで、周知の通りGrignard試薬の調製と続くGrignard反応はエーテル系の溶媒でオペレートされます。実験室でかつて最も汎用されるたのはEt2Oだと思いますが、特殊引火物だけあって極度に高い引火性と麻酔性が問題点として指摘されます。

なので工業的にはTHFを用いるのが一般的です。しかしながら、THFにも問題が無い訳ではなくて、放っておくと徐々に爆発性の過酸化物を形成する(オレはトロントロンになったTHFを二度ほど見たことがあります)ことに加えて、水からの回収が難しいのが問題点として挙げられています(まあ、過酸化物対策としてはBHTを添加するのが定法で、普通にBHT入りTHFは普及してるし、オレは反応中にBHTの悪影響を感じたことはまだ無いです)。

で、THFの代替溶媒として近年注目されているのが2-MeTHF。バイオマス由来の溶媒で、過酸化物も形成されにくく、水とも混和しません。そして、多くの企業が医薬品原料の製造に2-MeTHFを使うようになってきているといいます(Org. Process Res. Dev., 2007, 11, 156-159.; ChemSusChem., 2012, 65, 301-302.)。
そしてもう一つグリーンな溶媒として注目されているのが日本ゼオンが開発したCPMEで、有機合成の現場での使用が増えてきているといいます。

著者等はCPME中での反応開発を行っています↓

Tetrahedron, 2013, 69, 2251-2259.
(他にも、hydrosilylation, hydrothiolation, radical reductionなど実施している)

で、著者等のCPMEを使った反応研究の次のターゲットがGrignard PreparationとGrignard Reactionという次第です。

Grignard反応は最も古典的な反応の一つで、有機合成化学者で一度もやったことのない人を探すのは難しいというくらいポピュラーな反応で、多くの研究がなされています。CPME中での反応も報告されていますが、それらの殆どは特定の基質をターゲットにしたもので、CPMEがGrignard反応一般の溶媒として適しているかどうかは明らかになっていません。そこで、CPME中でのGrignard試薬の調製からGrignard反応までを包括的に研究してみようというのが本報です。

さてThis Workですが、まずは3-bromoanisoleを用いて、CPMEと他のエーテル溶媒中での反応の比較と反応条件の最適化を行った結果がこちら↓


3種類の溶媒(CPME, THF, 2-MeTHF)の中では一番イマイチだけど、CPME単一溶媒でGrignard試薬の調製から続くGrignard反応を行うことができます。それから、CPMEに対するGrignard試薬の溶解度はTHFや2-MeTHFと較べて低いです。


ところで、Mgの活性化にDIBAL-Hを使っていますが、著者等は活性化剤のスクリーニングもしていて、DIBAL-Hがベストという判断を下しています。因に、著者等が試した活性化剤は7種類で、その序列は次の通りです↓

DIBAL-H  Red-Al > I2 > BrCH2CH2Br > LiAlH4 = BH3•SMe2 > NaBH4 (no acceleration)

(個人的には、dry stirringとI2の組合わせがボクのお気に入りです。色が消えて分かりやすいから)


さて、CPME中でのGrignard PreparationとGrignard Reactionの基質一般性についてです(アルデヒドはPhCHOで固定)↓

まずは、ブロミド

iso-PrBr, AllylBr, BnBrは他の基質よりも速やかに反応が進行するものの、60˚CではWurtsカップリングによる二量化も進行します。で、室温もしくは氷冷下でブロミドを注意深く滴下することで二量化を最小限に抑えることができます。
あと、iso-PrBrを基質に用いた場合、活性化にDIBAL-Hを用いた方がヨウ素を用いる場合よりも10%収率が向上します。
あと、1-bromo-2-chlorobenzene, 1-bromo-2-fluorobenzeneのGrignard反応が不発なことが意外です。何か出来ているっていうんだけど、complex mixturesになって同定できなかったと言います。因に、対応するGrignard試薬は市販されておらず、著者らは極めて不安定で即座に分解してしまうのではないか考えています。
それから、(E)-C6H5CH=CHBrはWurtsカップリングが起こりやすく、40˚C未満では反応が進行せず、Wurtsを抑えることができないです。propargyl bromideは室温で加えると発熱を伴って反応が発進してGrignard試薬を調製できなかったと言います(温度制御をちゃんとやったのかっていうツッコミを入れたい)。

次にクロリドです↓

クロロベンゼンだとCPME単一溶媒では収率が低く、THFとの混合溶媒を用いることで収率アップです。ベンジルクロリドはWurts対策のために水冷下でのGrignard formationが必要。AllylClはGrignard試薬を形成せず、Barbier反応によってGrignard付加体を取得しています。

因に、n-buthylmagnesium bromideとn-butylmagnesium chlorideのCPME溶液は0℃で少なくとも三ヶ月は安定です(その間沈殿も着色も観察されない)。
また、反応後のCPMEを抽出-蒸留して回収したものにCPMEの分解物は検出されず(GC >98%)、繰り返しリサイクルしても収率に影響を及ぼすことはないです(1-bromo-3-chloribenzeneの場合)。

そして、医薬品合成への応用もアピールしています↓

tamoxifenの合成の最終工程ですが、窒素原子を含むGrignard試薬の調製は難しく、CPME単一溶媒ではGrignard試薬を調製することができず、THFとの混合溶媒を用いています。それでも未反応の臭化物がけっこう残存して、これがtamoxifenと分離するのが大変という冴えない結果です。最終的には、少過剰にn-BuLiでチリオ化することでこの問題を解決するんですが、リチオ化もCPME単一溶媒では不完全で、THFの添加が必要となります。

最後にボクの個人的な感想を述べさせてもらうと、CPMEでそこそこGrignard試薬が調製できるのは合成化学上の新たな武器になるかなと思いますが、その用途はTHF(や2-MeTHF)で結果がイマイチでCPMEで改善される場合に限定されるのかなと感じます。でも、(バルクの値段は分からないけど)試薬グレードでは、THFとCPMEが同じ値段っていうのには、安くなったなぁと驚きました(TCI, 500 ml, 3,600 JPY)。

基質一般性の検討のところで著者等は、
"It appears that CPME has a negative effect on Grignard formation from aromatic chlorides"
と述べていますが、tamoxifen合成からも、CPME中でのハロゲン化物のメタル化は遅いのはほぼ確実と思います。そして、この問題のためにTHFとの混合溶媒を使うと、CPMEのリサイクル性の高さも魅力半減です。

あと、実際の実験に関してですが、Grignard Preparationの件で、『室温』とか『氷冷下』とか説明してるけど、そういうところに大学研究のアマチュアっぽさを感じますね。このスケールで温度計つっこまないのはオレの感覚では絶対あり得ない。ついでに言わせてもらうと、Griganard PreparationのInitiation段階は1℃前後の温度上昇をモニターするのが肝。温度を0.1-0.2℃刻みでモニターしないなんてあり得ないですよ(もし、ちゃんとやってたらごめんなさい)。さらに、反応が速いに越したことはないけど、『60˚C, 3 hr』っていう反応条件へのこだわりが今ひとつ理解できないです(ボクが浅学なだけかもだけど)。ボクの理解ではGrignard試薬形成は自己触媒反応で、熱を掛けるとWurtsカップリングが起こりやすくなるには周知の事実なので、もっとマイルドな条件でovernightくらいしとけばいいんじゃないの?って思うんですが、どうなんでしょう?

それでも、CPME中でのGrignard反応の特性を明らかにした仕事は良い仕事と思いました。以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の生意気なメモでした。


2016年9月4日日曜日

ベンゾトリアゾール:その傾向と対策 Extra Operation

軽く秋のにおいを感じる時季ですね。


去年のことだけど、10月から11月にかけて、東京電機大の旧校舎跡地で開催された大江戸ビール祭り 2015のメモです。


大江戸ビール祭り 2015 シーズン1

-富士桜高原麦酒 Rauch WeizenBock (ラオホ ヴァイツェンボック) (500 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
アピールポイントは、スモークの香りのするハイアルコールビール。Alc. 7.3%。日本では初めて小麦のスモークモルトを使用したモルト風味豊かな限定ビールだと言う。
色は深めのブラウン。香りはあまち立たないが、バナナ様の香りがうっすら。味もバナナ様のfruityさで、爽やか。bodyの強さ感じる。なんとなく淡色ラガーっぽい雰囲気も感じる。後味は爽やかですっきり。

-Outsider Brewing Fantastic Grape Cider (ファンタスティック•グレープ•サイダー) (500 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
Alc. 4%。山梨県産のアジロンダックという品種の葡萄を使った一品。麦芽ではなく葡萄を原料にビール酵母を使用して醸したといいます。
少しシャンパン様の香りが漂う。淡色ラガーっぽいところのある味。果実味のあるワインチックな渋みを、軽微ではあるが、感じる。
fruity、爽やかさ、甘くはないけどsweet感がある(何とも形容し難い)。スレンダーな味で、葡萄由来と思われる良い香質。色は綺麗なWine Red。

-松島ビール Bock (ボック) (500 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
Alc. 7%。モルトの甘味•風味が強めの濃厚で味わい深い贅沢なビールという触れ込み。麦芽を通常(他の松島ビール比較)の1.5倍使用し、熟成にも2倍の時間をかけて仕上げたという。
この日は少し肌寒く、気温に合わせてビールの温度を調整して提供しているという。なので、少しぬるめ。缶のアサヒスーパードライ的な匂いがする。口当たりはとてもmildでちょとcreamyで楽しい。ちょっと淡色ラガーっぽい雰囲気感じる。finishのbitterも楽しい味。色はブラウンだけど、コクのある感じではない。

-宇田川カフェ ソーセージとチョリソー (500 JPY)-
-REVIEW-
チョリソーらしいんだけど、全然辛くなかったね。







大江戸ビール祭り 2015 シーズン2

-田沢湖ビール ダークラガー (TAZAWAKO BEER Dark Lager) (500 JPY/370 ml)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
Alc. 5.0%。国際苦味単 (IBU) 0 34。深いコクと苦味が調和した本格的黒ビールで、黒ビールが苦手な方にもオススメらしいです。ヨーロピアン•ビアスター (EBS) 2012 銅賞。ワールド•ビアアワード 2015 Asia's Best Dark Lager。
かなりいい感じの味噌様の香りとhigh roast note。この濃蜜な香りから濃厚な味がするような気がしたんだけど、意外にもすっきり(あっさり)したtaste。軽薄な訳ではないんだけど淡色ラガーのすっきりしている。あと、high roastとbitterがしっかりある。温度が上がってくると、スーパードライチックな匂いがする。

-いぶりがっこ (300 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
smokeが緩く、普通の沢庵感が強い。残念。

-AQ BEVOLUTION Heretic EVIL COUSIN IIPA (ヘルティック/イーヴルカズン IIPA) (500 JPY/12 oz)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
アルコール度数 (ABV) 8.0%。国際苦味単位 (IBU) 100。
これは絶品。インドの青鬼に酷似している。で、インドの青鬼よりは少し爽やかですっきりしている。少しだけ軽い感じでそれも旨し。とっても美味しい。fruity, citrus, spicy, 豊潤な味。そして、強烈なbitterが凄くいい感じ。

-一関ミート 厚切りハムステーキ (400 JPY)-
-REVIEW-
かなり脂ぎってるね


ところで、大江戸ビール祭りは今春(4/29-5/8; http://2016s.oedo-beer-festival.jp/)もあったけど、今秋(10/26-10/30; http://oedo-beer-festival.jp/)にも開催が予定されています。アクセスが容易で、気が向いたら、また行ってみようかな。



閑話休題


ベンゾトリアゾール関連の脱水縮合のメモです。
読んだ文献はこちら↓

Comparison of the Effects of 5- and 6-HOAt on Model Peptide Coupling Reactions Relative to the Cases for the 4- and 7-Isomers
Org. Lett., 2000, 2, 2253-2256.

HOAt (7-aza-1-hydroxybenzotriazole)の"aza"の位置によって活性がどう変わるかっていうことを研究した論文です。


この論文がでるまでに7-HOAt (所謂HOAt)と4-HOAtは報告されていましたが、5-HOAtと6-HOAtに関しては何も検討がなされていなかったので、本報で5-及び6-HOAtを合成して、一連のHOAt isomersの活性を比較検討しています。

で、結果はこちら↓

やっぱ、7-HOAtがその隣接基関与で反応がブーストされるという結果が改めて追認されました。あと、この論文にはpKaも書いてあったんだけど、7-HOAtは酸性度が低いからラセミ化も起こりにくいんだね(4-isomerと比べて大分低いね)。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。


2016年8月27日土曜日

ボリド、その還元力を問う

まだ、夏ですね。


神田にあるトプカ (topca)っていうカレー屋(夜は居酒屋にもなる)さんのメモです。


-トプカ (topca) memo-

-GUINNESS extra stout (480 JPY)-
鉄板の旨さ

-マトンカリー (1,100 JPY)- 
-RATING- ★★★★☆ 
-REVIEW- 
半ペースト状で、いかにもカレーっぽいspicy taste。ニュアンス的に味噌likeで複雑玄妙、bodyの強さを想起させる香り。 tasteは、けっこう辛い(お店のメニューに書いてある唐辛子マークは3つ)。ボク的にはこの辺の辛さがカレーを美味しく食べれてる辛さのマックス•レベル。トップに載っているネギは箸休めのアクセントとして良し。ジャガイモはホクホクで美味しい。 で、マトンなんだけど、味的には辛さがけっこうキツかったので、その独特な香味を明確に把握することはできなかったけど、複数あるマトンの肉片のうちの一片はかなり旨くて絶品の域。しっとりとした食感、力強いbodyの肉の味。勿論、くさみは全く感じない。 他のマトンのピースは、食感が少しパサついた感じが明確にする。 あと。頂きに冠たるトマトは普通(青臭いね)。 総じて旨いカレーと思います。そして、このカレーにギネスがけっこう合う。

-松竹梅 豪快 一合燗 (380 JPY)- 

-まぐろ中おち (490 JPY)- 
-RATING- ★★★★☆ 
-REVIEW- 
freshで柔らかい酸味と甘み。口の中でハラハラと解けていく。 山葵は多分本山葵だと思う。


-ホヤ (450 JPY)- 
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW- 
Wild Tasteなホヤ。子供の頃、田舎で食べていたホヤの味を思い出した。磯の匂いが印象的なワイルド系のホヤ。 




-黒伊佐錦 on the rocks (450 JPY)- 


-すだちサワー (400 JPY)- 
-RATING- ★★★☆☆ 
-REVIEW- 
すだちがいい味出してる。

-銀杏 (350 JPY)- 
-RATING- ★★★☆☆ 
-REVIEW-
盛り沢山の銀杏が殻付きで提供される。殻はペンチを使って自分で割って食べるワイルドなスタイル。



-穴子の白焼 (600 JPY)- 
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
猛烈に穴子の魚くささが立ち昇る(好ましい穴子くささ)。味は及第。そのまま or ワサビで食べるのが良い。淡白さの中に穴子独特の滋味あって良い。 甘ダレも付いてくるんだけど、穴子の旨味が台無しになってしまう。



閑話休題


以前、このブログで1,2-還元と1,4-還元について書きました。
see
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (1) 
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (2)
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (3)
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (4)
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (5)
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (6)
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (完)

で、それらのブログの中で、α,β-不飽和ケトンのCoCl2•H2O-NaBH4によるC-C二重結合に選択的還元について取り上げました↓

WO2008/010235

この反応は、安価な試薬(CoCl2•H2O, NaBH4)とマイルドなコンディション(15-20˚C)で反応を行えるので、汎用性(基質一般性)が高ければ優れたツール足り得るという印象を受けました。

で、ちょっとだけ調べてみたら、こんな論文(総説)がヒットしました↓

Methods of enhancement of reactivity and selectivity of sodium for application in organic synthesis
Journal of Organometallic Chemistry, 2000, 609, 137-151.

ボロハイにadditiveを加えることで、還元力を上げたり、選択性を出したりすることはよく知られていますが、この文献はその総説です。

この総説を読むまで、CoCl2-NaBHsystemはα,β-不飽和カルボニル化合物のC-C二重結合のみを還元(1,4-還元)する試薬と勝手に勘違いしていたんですが、孤立したC-C二重結合を水素化できる試薬だということが分かりました。しかも、反応条件を適切のチョイスすることによってオレフィンをhydrogenationとしたりhydroborationすることができると書かれています。

ref. J. Org. Chem., 1979, 44, 1014.; Tetrahedron Lett., 1984, 25, 2501-2504.

ただ、この総説では、JOC (J. Org. Chem.197944, 1014.)とTL (Tetrahedron Lett.198425, 2501-2504.)の論文の主張に基づいて、hydrogenationはhydrocobaltationを介して進行すると解説されていますが、他の文献にも目を通してみると、この説は完全に排除はできないものの劣勢のようです。今回は、そこら辺のメモを以下にまとめてみようと思います。


まず、CoCl2/NaBH4を使った還元の初出は1979年のJOCだと思います↓
Selective Reduction of Mono- and Disubstituted Olefins by Sodium Borohydride and Cobalt (II)
J. Org. Chem., 1979, 44, 1014.


この論文では種々の一置換、二置換、三置換オレフィンの還元が検討されていて、CoCl2の使用は触媒量でもよく、一置換および二置換オレフィンの還元は進行するものの、三置換オレフィンではno reactionという結果が示されています(冒頭のアリセプト合成では、三置換オレフィンを還元してるけど)。この論文で著者等は、NaBH4とCoCl2からCo metal、Co(BH4)2、さらに複雑なコバルトヒドリド(CoH2, etc.)が生成するのではないかと考えています。


その後、1984年のTLでこんな報告がなされています↓
Hydroboration or Hydrogenation of Alkenes with CoCl2-NaBH4
Tetrahedron Lett., 1984, 25, 2501-2504.




Hydroboration of Alkens with CoCl2/NaBH4




Hydrogenation of Alkens with NaBH4/CH3OH-CoCl2 in THF


アルコール溶媒(MeOHとかEtOH)中で反応を行うことでhydrogenationが進行し、THF中で反応を行うとhydroborationが進行します。
この論文で著者等は、THF-CH3OH中では"CoH2"が、THF中では"BH3"が生成し活性種として働くと考えています。


ところが、さらに2年後の1986年のJACSではこんな報告がなされています↓
Studies on the Mechanism of Transition-Metal-Assisted Sodium Borohydride and Lithium Aluminum Hydride Reductions
J. Am. Chem. Soc., 1986, 108, 67-72.

この論文では、
(1) CoCl2-NaBH4 systemを使ったニトリルの還元
(2) CoCl2-NaBH4 systemを使ったオレフィンの還元
((3) LiAlH4-CoCl2 systemを使ったハロゲン化アルキルの還元)
のメカニズムが検討されています。

で、オレフィンの還元にフィーチャーしてみると、

a) MeOH中、CoCl2にNaBH4を作用させると、激しい水素ガスの発生を伴って、> 95%でコバルトボリド(Co2B)が生成する
b) Co2B単独ではリモネンを還元できない
c) Co2BとH2ガスでリモネンを還元できる
d) THFまたはTHF/MeOH (12:1)溶媒中、Co2BとNaBH4 (or LiBH4)の組み合わせではリモネンは還元されない(この条件下、水素ガスの発生は抑えられている)

といった現象が観察されています。これらのことから、オレフィンの還元にはCo2Bの形成とNaBH4の分解に伴う水素ガスの発生が必要のようです。

さらにニトリルの還元ですが、


a) Co2B単独もしくはCo2Bと水素ガスではニトリルは還元されない
b) Co2BとベンゾニトリルをMeOH中で混合すると、ベンゾニトリルはCo2B表面に強く吸着する。Co2Bがニトリルを活性化する。
c) 反応液のpHが重要
TBA (t-butylamine-borane)のメタノール溶液はCo2B存在下でも安定であるが(液性は中性のまま)、NaOMeを加えてpH 8-9にするとベンゾニトリルは還元されベンジルアミンを与える(水素は発生しない)。NaBH4, Co2B, MeOHの混合物はNaBH4の分解を伴いpH 8.5-9.0になる。
d) これもpH依存性の証左か?↓

といったことが報告されています。オレフィンの還元とは様式が明らかに異なっています。著者らはボリド表面で活性化されたニトリルに、溶解して非配位性のNaBH4からのヒドリドの付加によって還元が進行するというのが最も可能性が高そうだと述べています。


ちなみに、CoCl2-NaBH4はアジドの還元にも使えます。

14 examples, 91-98% Yield
Synthesis, 2000, 646-650.

この条件下では、CO2H, CO2Me, OH, OCH2O, NO2, Me2C=CHR, CNといった官能基があっても許容です。また、この反応の際、コバルトボリド (Co2B)の析出が観察され、これがNaBH4の分解を触媒し水素を発生させ、接触還元(様の反応)を起こすと著者等は考えています(但し、還元反応の活性種がCoH2であることを排除できないと述べている)。

CoCl2-NaBH4による還元は、なかなか一筋縄では説明でいないメカニズムで進行するようです。基質によって(特に、ニトリルとその他)水素源となる活性種が異なるようですが、Co2Bが触媒として関与が有力のようです。

以上、CoCl2-NaBH4についてチョッピリ造詣を深めることができた二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。