とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Saturday, August 27, 2016

ボリド、その還元力を問う

まだ、夏ですね。


神田にあるトプカ (topca)っていうカレー屋(夜は居酒屋にもなる)さんのメモです。


-トプカ (topca) memo-

-GUINNESS extra stout (480 JPY)-
鉄板の旨さ

-マトンカリー (1,100 JPY)- 
-RATING- ★★★★☆ 
-REVIEW- 
半ペースト状で、いかにもカレーっぽいspicy taste。ニュアンス的に味噌likeで複雑玄妙、bodyの強さを想起させる香り。 tasteは、けっこう辛い(お店のメニューに書いてある唐辛子マークは3つ)。ボク的にはこの辺の辛さがカレーを美味しく食べれてる辛さのマックス•レベル。トップに載っているネギは箸休めのアクセントとして良し。ジャガイモはホクホクで美味しい。 で、マトンなんだけど、味的には辛さがけっこうキツかったので、その独特な香味を明確に把握することはできなかったけど、複数あるマトンの肉片のうちの一片はかなり旨くて絶品の域。しっとりとした食感、力強いbodyの肉の味。勿論、くさみは全く感じない。 他のマトンのピースは、食感が少しパサついた感じが明確にする。 あと。頂きに冠たるトマトは普通(青臭いね)。 総じて旨いカレーと思います。そして、このカレーにギネスがけっこう合う。

-松竹梅 豪快 一合燗 (380 JPY)- 

-まぐろ中おち (490 JPY)- 
-RATING- ★★★★☆ 
-REVIEW- 
freshで柔らかい酸味と甘み。口の中でハラハラと解けていく。 山葵は多分本山葵だと思う。


-ホヤ (450 JPY)- 
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW- 
Wild Tasteなホヤ。子供の頃、田舎で食べていたホヤの味を思い出した。磯の匂いが印象的なワイルド系のホヤ。 




-黒伊佐錦 on the rocks (450 JPY)- 


-すだちサワー (400 JPY)- 
-RATING- ★★★☆☆ 
-REVIEW- 
すだちがいい味出してる。

-銀杏 (350 JPY)- 
-RATING- ★★★☆☆ 
-REVIEW-
盛り沢山の銀杏が殻付きで提供される。殻はペンチを使って自分で割って食べるワイルドなスタイル。



-穴子の白焼 (600 JPY)- 
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
猛烈に穴子の魚くささが立ち昇る(好ましい穴子くささ)。味は及第。そのまま or ワサビで食べるのが良い。淡白さの中に穴子独特の滋味あって良い。 甘ダレも付いてくるんだけど、穴子の旨味が台無しになってしまう。



閑話休題


以前、このブログで1,2-還元と1,4-還元について書きました。
see
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (1) 
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (2)
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (3)
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (4)
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (5)
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (6)
"1,2-" or "1,4-", That is the Question (完)

で、それらのブログの中で、α,β-不飽和ケトンのCoCl2•H2O-NaBH4によるC-C二重結合に選択的還元について取り上げました↓

WO2008/010235

この反応は、安価な試薬(CoCl2•H2O, NaBH4)とマイルドなコンディション(15-20˚C)で反応を行えるので、汎用性(基質一般性)が高ければ優れたツール足り得るという印象を受けました。

で、ちょっとだけ調べてみたら、こんな論文(総説)がヒットしました↓

Methods of enhancement of reactivity and selectivity of sodium for application in organic synthesis
Journal of Organometallic Chemistry, 2000, 609, 137-151.

ボロハイにadditiveを加えることで、還元力を上げたり、選択性を出したりすることはよく知られていますが、この文献はその総説です。

この総説を読むまで、CoCl2-NaBHsystemはα,β-不飽和カルボニル化合物のC-C二重結合のみを還元(1,4-還元)する試薬と勝手に勘違いしていたんですが、孤立したC-C二重結合を水素化できる試薬だということが分かりました。しかも、反応条件を適切のチョイスすることによってオレフィンをhydrogenationとしたりhydroborationすることができると書かれています。

ref. J. Org. Chem., 1979, 44, 1014.; Tetrahedron Lett., 1984, 25, 2501-2504.

ただ、この総説では、JOC (J. Org. Chem.197944, 1014.)とTL (Tetrahedron Lett.198425, 2501-2504.)の論文の主張に基づいて、hydrogenationはhydrocobaltationを介して進行すると解説されていますが、他の文献にも目を通してみると、この説は完全に排除はできないものの劣勢のようです。今回は、そこら辺のメモを以下にまとめてみようと思います。


まず、CoCl2/NaBH4を使った還元の初出は1979年のJOCだと思います↓
Selective Reduction of Mono- and Disubstituted Olefins by Sodium Borohydride and Cobalt (II)
J. Org. Chem., 1979, 44, 1014.


この論文では種々の一置換、二置換、三置換オレフィンの還元が検討されていて、CoCl2の使用は触媒量でもよく、一置換および二置換オレフィンの還元は進行するものの、三置換オレフィンではno reactionという結果が示されています(冒頭のアリセプト合成では、三置換オレフィンを還元してるけど)。この論文で著者等は、NaBH4とCoCl2からCo metal、Co(BH4)2、さらに複雑なコバルトヒドリド(CoH2, etc.)が生成するのではないかと考えています。


その後、1984年のTLでこんな報告がなされています↓
Hydroboration or Hydrogenation of Alkenes with CoCl2-NaBH4
Tetrahedron Lett., 1984, 25, 2501-2504.




Hydroboration of Alkens with CoCl2/NaBH4




Hydrogenation of Alkens with NaBH4/CH3OH-CoCl2 in THF


アルコール溶媒(MeOHとかEtOH)中で反応を行うことでhydrogenationが進行し、THF中で反応を行うとhydroborationが進行します。
この論文で著者等は、THF-CH3OH中では"CoH2"が、THF中では"BH3"が生成し活性種として働くと考えています。


ところが、さらに2年後の1986年のJACSではこんな報告がなされています↓
Studies on the Mechanism of Transition-Metal-Assisted Sodium Borohydride and Lithium Aluminum Hydride Reductions
J. Am. Chem. Soc., 1986, 108, 67-72.

この論文では、
(1) CoCl2-NaBH4 systemを使ったニトリルの還元
(2) CoCl2-NaBH4 systemを使ったオレフィンの還元
((3) LiAlH4-CoCl2 systemを使ったハロゲン化アルキルの還元)
のメカニズムが検討されています。

で、オレフィンの還元にフィーチャーしてみると、

a) MeOH中、CoCl2にNaBH4を作用させると、激しい水素ガスの発生を伴って、> 95%でコバルトボリド(Co2B)が生成する
b) Co2B単独ではリモネンを還元できない
c) Co2BとH2ガスでリモネンを還元できる
d) THFまたはTHF/MeOH (12:1)溶媒中、Co2BとNaBH4 (or LiBH4)の組み合わせではリモネンは還元されない(この条件下、水素ガスの発生は抑えられている)

といった現象が観察されています。これらのことから、オレフィンの還元にはCo2Bの形成とNaBH4の分解に伴う水素ガスの発生が必要のようです。

さらにニトリルの還元ですが、


a) Co2B単独もしくはCo2Bと水素ガスではニトリルは還元されない
b) Co2BとベンゾニトリルをMeOH中で混合すると、ベンゾニトリルはCo2B表面に強く吸着する。Co2Bがニトリルを活性化する。
c) 反応液のpHが重要
TBA (t-butylamine-borane)のメタノール溶液はCo2B存在下でも安定であるが(液性は中性のまま)、NaOMeを加えてpH 8-9にするとベンゾニトリルは還元されベンジルアミンを与える(水素は発生しない)。NaBH4, Co2B, MeOHの混合物はNaBH4の分解を伴いpH 8.5-9.0になる。
d) これもpH依存性の証左か?↓

といったことが報告されています。オレフィンの還元とは様式が明らかに異なっています。著者らはボリド表面で活性化されたニトリルに、溶解して非配位性のNaBH4からのヒドリドの付加によって還元が進行するというのが最も可能性が高そうだと述べています。


ちなみに、CoCl2-NaBH4はアジドの還元にも使えます。

14 examples, 91-98% Yield
Synthesis, 2000, 646-650.

この条件下では、CO2H, CO2Me, OH, OCH2O, NO2, Me2C=CHR, CNといった官能基があっても許容です。また、この反応の際、コバルトボリド (Co2B)の析出が観察され、これがNaBH4の分解を触媒し水素を発生させ、接触還元(様の反応)を起こすと著者等は考えています(但し、還元反応の活性種がCoH2であることを排除できないと述べている)。

CoCl2-NaBH4による還元は、なかなか一筋縄では説明でいないメカニズムで進行するようです。基質によって(特に、ニトリルとその他)水素源となる活性種が異なるようですが、Co2Bが触媒として関与が有力のようです。

以上、CoCl2-NaBH4についてチョッピリ造詣を深めることができた二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。



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