とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Monday, August 15, 2016

ベンゾトリアゾール:その傾向と対策

水無月をGETしたオタッキーのコンキチです。



昨年のまだ三月のことだけど、復活したかんだやぶそばに行ったときのメモです。


-せいろうそば (1,340 JPY+Tax) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
grassyな野趣的な香味。蕎麦は角が立ったところは無く、柔らかく、食感ゼロの中で心地く跳ねる。(なにもつけずに)そのまま食べて美味しい(浅草の大黒屋に似た香味)。
ツユはとっても良い鰹節の香りがフワッと立ち、上品な甘さの後、シックな辛さを感じる。バランス良いしっかりした味の辛口のツユでとっても旨い。grassyな野趣的な蕎麦との相性が良く、蕎麦を手繰るのが楽しくなる。
薬味は山葵と葱。どちらもひなびた感じの辛さで、この"ひなびた感"が蕎麦にベストマッチ。
ホント久しぶりに食べたけど、超旨いね。

-ねりみそ memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
酒類を注文すると付いてくる(今回はエビスの大瓶 (670 JPY+Tax)を注文)。
コク深い甘みの後に、締まった辛味。とても旨い。刻まれた牛蒡の柔らかい漬け物チックなものが入っていて、その食感と濃厚な味がアクセントとしてとても良い。究極の酒のツマミと思いました。因にこのねりみそは土産にもなっていて、自宅で楽しむこともできます(原材料:みそ、ごぼう、砂糖、鴨油、一味唐辛子、さば節、醤油、味醂)。

復活した神田の藪、蕎麦は相変わらず最高。建物は白を基調としたスッキリ•小綺麗に仕上がっていて好感触です(並木の藪も改装したけど、雰囲気がとても似てる)。これからも味と伝統をしっかちろ守って欲しいお店です。


閑話休題


以前、カルボジイミドを用いた脱水縮合のadditiveとしてのベンゾトリアゾールの用途をメモしましたが(see http://researcher-station.blogspot.jp/2013/11/2.html)、もう少しだけベンゾトリアゾールに関して造詣を深めてみました。

(ボクはあんまり使ったことないんだけど)ベンゾトリアゾール系の縮合剤といえば、ホスホニウム塩系(BOP, PyBOPとか)とアミニウム/ウロニウム塩系(HBTU, HATUとか)があるかと思いますが、それらのメモです(主に、Chem. Rev., 2011, 111, 6557.)。

PHOSPHONIUM SALTS
まずホスホニウム塩系縮合剤(BOPを例にした)のメモ。反応機構はこちらです(活性種が何なのかについては議論の余地があるようですが)↓

N-アシルアミノ酸を用いた場合は、5(4H)-oxazolone経由で反応が進行する可能性もある(ラセミ化の危険)。

で、代表的な試薬はこちら(ベンゾトリアゾールじゃないのも入ってるけど)↓

構造を見れば一目瞭然だけど(BOPの反応機構のschemeにも描いてあるけど)、BOPとAOPは副生成物としてHMPAが出来るので、それを改善しようと開発されたのがPyCloP、PyBroP、PyBOP、PyAOPで、ジメチルアミノユニットがピロリジンで置き換えられています(これで、HMPAは生成しない)。
あと、AOPとPyAOPはBOPやPyBOPよりも概して高活性で、AOPはAOPよりも僅かに活性が強いそうです。

AMINIUM/URONIUM SALTS
次はHATUやHBUTに代表される(とボクは思っている)AMINIUM/URONIUM塩系縮合剤のメモです。(HATUを例にした)機構はこちら↓


代表的な試薬はHBTUとHATUの二強だと思うけど、他にもいろいろ報告されています↓


ここに挙げたのはアミニウム/ウロニウムユニットが対称なものだけだけど、非対称なものも報告されています。
あと、カウンターイオン(PF6とBF4)だけ違い試薬がありますが、活性の違いは殆ど無いみたいです(WAKO Oraganic Square, 2013, Vol. 46, 2-6.)。
それから、ピロリジノ誘導体(HBPyU、HAPyU))はテトラメチル誘導体(HBTU、HATU)よりも活性が高く、ピペリジノ誘導体(HBPipU、HAPipU)は活性が(テトラメチル誘導体よりも)低いと言います。


ところで、ホスホニウム塩系試薬とアミニウム/ウロニウム系試薬ってもっと具体的にどんなところが違うの?っていう疑問が湧いてくると思いますが、反応の活性について以下にメモしてみようと思います。

まず、ホスホニウム塩系試薬とアミニウム/ウロニウム系試薬の最も大きな違いは、ホスホニウム塩系試薬はアミノ基と反応しないけど、アミニウム/ウロニウム系試薬はアミノ基とは反応するっていうことだと思います。こんなふうに↓


こうした副反応は、カルボン酸の活性化が(嵩高いなどの理由で)遅い場合や、過剰のアミニウム試薬を使用したときのしばしば起こるようです(ボクはまだグアニジンをディテクトしたことはないけど)。実際、カルボン無しで、Hünig's baseの存在下、フェニルアラニンのフルオレニルメチルエステルの塩酸塩にベンゾトリアゾールのアミニウム塩系縮合剤を作用させると対応するグアニジンが生成します(ホスホニウム塩系縮合剤ではではグアニジンは形成しない)。

J. Org.Chem., 1998, 63, 9673-9683.

しかもけっこうの生成速度が結構速い。通常は、カルボン酸の活性化(活性エステルの形成)が充分速く、カルボン酸に縮合剤を作用させた後にアミンを作用させるので問題になることは少ないかと思いますが、頭の隅に入れておきたいものです。ちなみに活性エステルの形成は速いです(Fmoc-diethylglycineの例)↓

J. Org. Chem., 1998, 63, 9673-9683.

Fmoc-Deg-OHとHCl•H-Phe-OFmとのペプチド結合形成反応の結果はこちら↓


ピロリジノ誘導体(HAPyU, PyAOP, PyBOP)はジメチルアミノ誘導体(HATU, AOP, BOP,)よりも僅かに優れた活性を示し、(この中で)最も活性が高いというHAMDUはその不安定性からイマイチな結果に。HDTUはカルボン酸(Fmoc-Deg-OH)の活性化には凄く有効だけど、対応する活性エステルの活性はOAtやOBtエステルよりも低いです。

総論としては、ホスホニウム塩は対応するアミニウム/ウロニウム塩よりも僅かに活性が低いというのが一般的な見解で、嵩高いカルボン酸を基質に用いる場合はホスホニウム塩の使用が推奨されるらしいです(アミニウム/ウロニウム塩を使うとグアニジンが生成して望みの反応が進行しない可能性がある)。

以上、主にベンゾトリアゾール系縮合剤に関する二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。


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