2008年12月28日日曜日

研究は楽しい

29日は有休で、昨日から冬休みモードの突入中のコンキチです。

で昨日、上野のatreの中に入ってる寿し常っていうほぼ2貫で300円均一の寿司屋に行ってきました。初めて行ったのですが、なかなか満足しました。


閑話休題


科学者たちの奇妙な日常」という本を読了しました。a 女性科学者のスペース2を執筆している松下祥子先生の著作です。はっきり言って、超面白いです!



学生時代から研究室を運営する現在に至までのリアルな研究&政治ライフがコミカルに描かれていて楽しいです。


で、著者はこの本でライフスタイル別に科学者を分類していいます↓



a) 実験系
b) 理論系
c) 調査系


ってな具合に。

コンキチは、自分が科学者であるかどうかは別にして、実験系(=ガテン系)研究員です。まあ、有機合成を生業としてる人だったら、>99%で実験系でしょう(多分)。


しかも、企業の一平研究員なので、著者が本書の冒頭で述べているような

科学者は好きな時間に本を読み、好きな時間に執筆をし、好きな時間に研究をする。そう、とにかく基本、自由なスタイルなんですよ。しかも、日本全国いろーんなところへ出張できて。年に一度くらいは海外にも行けちゃったりして。世界中に友達もできて。そして、自分の研究が書かれた論文が、世界中の図書館に残っていく。

というほどの自由ははっきり言ってないです。

まあでも、

a) 実験計画(=仕事のスケジューリング)は、ほぼ完璧に自分の裁量だし
b) マニアックな論文(勿論化学系の)も自由に読める
c) 学会を選べは、ある程度遠くに出張できる(以前、京都でやった国際会議に1週間くらい行ったときは楽しかったな)
d) あと、仕事(=有機合成)自体がパズルみたいなもんで、なかなか飽きないし、楽しい

という感じで、それなりにけっこう仕事ライフを満喫することができます。

でも、研究員になって一番良かったなあと思うのは、通勤時にスーツ(背広)っていう、着ているだけでHP(ヒットポイント)を奪うダサいワークローブを着て通勤しなくて良いということです。ちなみに、コンキチはジーンズとかスニーカーとかブーツとかを身につけて、30過ぎだというのに学生みたいな汚い恰好で通勤してます。


ただ、科学者に対する評価っていうのは、本書にも書かれている通り、我が国ではあまり高くないのかもしれません。
学生時代、研究室の助手(当時)の先生が、「日本では科学者が報われない。ドイツでは凄く評価が高いよ」的な話をしていて、その時は、そんなもんなのかねえ?と全然ピンときませんでしたが、社会に出てからその言葉の意味をヒシヒシと感じましたね。

要は、科学技術立国なんて(医者不足でもそいうなんだけど、)インセンティブが適切に設定されてないから実現できないんだと思います。科学者(nearly理系人材)になりたいという魅力的なインセンティブの設定なくして夢のまた夢(かもしれない)。かけ声だけなら誰でも掛けれる。


以上、二流大出のなんちゃって研究員のつぶやきでした。

あと、松下祥子先生の著作は絶対買いです。

2008年12月23日火曜日

アルドール (2)

今回はこんな文献を読んでみました↓

Lithium Acetate-Catalyzed Aldol Reaction between Aldehyde and Trimethylsilyl Enolate in Anhydrous or Water-Containing N,N-Dimethylformamide
Bull. Chem. Soc. Jpn., 2004, 77, 1555-1567.
向山先生のグループです。

AcOLiが触媒する向山アルドールです。

著者らの以前の報告で、
a) アルデヒドとカルボン酸エステルのTMSエノラートとのアルドール縮合において、Ph2NLiとlithium pyrrolidoneがLewis塩基触媒として有効だった。
ref. Chem. Lett. 2002, 182.; Chem. Lett., 2002, 858.; Helv. Chim. Acta, 2002, 85, 4518.

b) TMSエノラートとa,b-不飽和カルボニル化合物とのMichael反応において、lithium benzamideとlithium succimideが有効なLewis塩基触媒となった。
ref. Chem. Lett. 2003, 32, 56.

そうです。で、今回はAcOLiではどうかということです。

カルボン酸のリチウム塩でいけそうかどうかの見当をつけるのに、pKa(DMSO中)を比較しています↓
1) diphenylamine/ 25.0
2) pyrrolidone/ 24.1
3) benzamide/ 23.3
4) succimide/ 14.7
5) acetic acid/ 12.6
6) benzoic acid/ 11.1
7) p-nitrobenzoic acid/ 9.1

著者らは、共役酸としてpKaの小さいlithium succimideの触媒作用に興味を持つとともに、カルボン酸のpKaがsuccimideのそれにけっこう近いことに着目して検討を開始しました。

まずはじめに、benzaldehydeとmethyl isobutyrateから誘導したTMSエノレートとの反応について検討します↓

DMF中低温でそこそこの収率で反応が進行し、basic conditionでクエンチするとシリルアセタールが生成します。このシリルアセタールを塩酸で処理するとアルドール付加体とPhCHOが生成する(Tetrahedron Lett. 2000, 41, 103.)。

ピリジン中でも反応は進行するが、0℃では反応は起こらず、反応温度70℃でかなり反応が促進される。

Lewis baseとして他の金属カルボン酸塩についても検討していて、AcONa (75% yield), AcOK (77% yield)はAcOLi (83% yield)に比べて僅かに収率が劣る程度。また、収率は、触媒の求核性に依存し、4-Me2NC6H4COOLi (83% yield)、4-MeOC6H4COOLi (81% yield)に対して、4-NO2C6H4COOLi (37% yield)。ベスト•プラクティスは、t-PrCOOLi (94% yield)。

次に、TMSエノレートを固定して、種々のカルボニル化合物との反応を検討しています。で、その傾向↓

a) 電子供与性置換基を有する芳香族アルデヒド→DMF(-45℃)でもピリジン(70℃)ともにスムースに反応が進行し、高収率
b) 電子吸引性換基を有する芳香族アルデヒド→DMF中では中程度の収率(シリルアセタールが形成)、ピリジン(70℃)中では良好収率。
c) 塩基性の官能基を有するアルデヒドにも有効(84-99%, 4例)

こんどはアルデヒドをPhCHOに固定して、TMSエノラートを種々試しています↓

a) TMSエノラートなら多少嵩高くても反応温度を上げてやれば収率良好(チオエステルから誘導したものでもO.K.)
b) methyl isobutylateから誘導したTESエノラートは低収率(DMF, -45℃で4%)→AcOLiとケイ素原子との超原子価シリケートを形成し、エノラートが活性化されて反応が進行することが示唆(Helv. Chim. Acta. 2002, 85, 4518.)。
c) 中程度のsyn選択性(シリルエノラートがEでもZでも関係ない→鎖状遷移状態を経て反応が進行すると考えられる)


あと、カルボン酸のリチウム塩は、DMF中、室温でカルボン酸に等量のLi2CO3を作用させることで簡単に調製できて便利です。

ここまでは無水のDMF(or ピリジン)を溶媒に使ったときの話で、著者等は溶媒に含水DMFを使った検討を行っています↓

methyl isobutylateから誘導したTMSエノラートとPhCHOとの反応では、DMF:H2O=10:1から50:1のレンジで、シリルアセタールを生成することなしに、そこそこの収率で目的のアルドール付加体が得られます。ベスト•プラクティスは、DMF:H2O=50:1、-45℃で2 eq.のTMSエノラートを作用させ6 hr反応で、96% yieldです(このときバックグラウンド•リアクション17%)。

また、含水DMF中での反応は、
a) 無水DMF中での反応と同様に、他の金属カルボキシラートも触媒活性を示し、
b) 電子吸引性置換基をもつ芳香族アルデヒドや、脂肪族アルデヒド(3-Phenylpropionaldehyde)、2-Pyridinecarboxaldehydeを用いても高収率
c) さらに、分子内に水酸基、アミド、カルボキシル基があっても反応が進行する。
d) PhCHOとの反応で、α-位が二置換されていなかったり、嵩が小さいと収率が劇的に減(シリルエノラートが水でプロトン化されるため)


最後に反応機構に関する考察↓

In Anhydrous DMF
a) AcOLiと溶媒分子がシリルエノラートに配位して6配位超原子価シリケートを形成(Cyclle A)
b) アルデヒドと反応して、リチウムアルドラートとAcOTMSが生成(Cyclle A)
c) リチウムアルドラートがAcOTMSでO-シリル化され、AcOLiが再生(Cyclle A)
d) リチウムアルドラートがもう1分子のアルデヒドと反応して、エノラートとアルデヒドの1:2付加体が生成(可逆的)(Cycle B)
e) エノラートとアルデヒドの1:2付加体がAcOTMSでシリル化されシリルアセタールを与え、AcOLiが再生(Cycle B)

In Water-Containing DMF
a) AcOLiと溶媒分子がシリルエノラートに配位して6配位超原子価シリケートを形成
b) アルデヒドと反応して、リチウムアルドラートとAcOTMSが生成
c) リチウムアルドラートとAcOTMSが加水分解され、アルドール付加体、TMSOH、LiOH、酢酸が生成
d) LiOHと酢酸の中和反応によりAcOLiが再生


今回は以上です。

2008年12月21日日曜日

クルーグマン

2008年ノーベル経済学賞を受賞したポール R. クルーグマン教授の「クルーグマンの視座―『ハーバード・ビジネス・レビュー』論考集」という本を読了しました。



この本は、クルーグマン教授がハーバード•ビジネス•レビューに書いた経済論文(3本)と、DIAMONDハーバード•ビジネス•レビュー編集部によるインタビューをまとめたものです。

コンテンツはこんな感じ↓

1) How Fast Can the U.S. Economy Grow? (1997) アメリカ経済に奇跡は起こらない
2) A Country is Not a Company (1996) 国の経済は企業とどう違うか
3) Does Third World Growth Hurt First World Prosperity? (1994) 第三世界の成長は第一世界の脅威となるか
4) DHBR Interview: The Misunderstanding of Chinese Economy (2004) 中国脅威論の幻想

で、コンキチが一番感銘を受けたのは



A Country is Not a Company (1996) 国の経済は企業とどう違うか


です。


具体的には、経営戦略と経済政策には根本的な相違があるということ。

つまり企業経営はオープン•システムだが、経済政策(国家運営)クローズド•システムであるということ。
また、システムの違いにより、企業はポジティブ•フィードバックが強く働き、国民経済はネガティブ•フィードバックが強く働く傾向があるということ。

コンキチなりに咀嚼したところを述べれば、企業経営は他社を出し抜く競争戦略に基づいて運営すればよいのだろうが、国家運営において一部の産業をプッシュすると、他産業のパイを奪う事に繋がる。企業は弱肉強食の強者の論理が通用するが、国家運営では敗者を最小化することが重要ということだろうか?国家運営の見地に立つと、企業(産業)の競争戦略はあ部分最適でしかないように感じました。

ということは、我が国の総理大臣が企業経営の経験があるということは、なんのウリにもならず、むしろ国家の経済運営においては害悪になる可能性が高いのかもしれないということ軽く暗澹たる気持ちになってしまいました。

フリーランチ

先日、産経新聞の朝刊全紙をそのままのレイアウトで無料で読めるiPhoneアプリの話をブログに書きました↓
http://researcher-station.blogspot.jp/2008/12/blog-post_16.html

でその後、こんな記事を発見しました↓
産経新聞、なぜ無料でiPhoneに 「失敗続き」の電子新聞チャレンジに手応え
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0812/19/news042.html

で、記事の中で、
アプリの無料配信は「新聞の無料試読制度のようなもの」と位置付けており、いつまで無料で提供するかは未定だ。「なんとか軌道に乗せるため、ビジネスモデルを検討中」で、有料化や新たな広告モデルを探っていく。アプリを使って「来年春までいろんな実験をしたい」という

だそうです。

なんか、この記事を読んでると、エンドユーザーからの課金しか考えてないような印象を受けます。

ちなみにこのアプリ、公開翌日には、App Storeの無料アプリの人気ランキングでトップになったほど反響が高かったそうです(ちなみに、このブログを書いている現在もランキングトップで、1,033件のレビューが掲載されている)。最近、日本でのアップルのiPhoneのCMを見ると、App Storeからの魅力的なアプリがダウンロードできることをiPhoneの魅力としてクローズアップしているように思います。

産經新聞のアプリは、iPhoneの魅力を向上させる力があると思うんだけど、それは無料という部分も大きいと思う。例えアプリを有料にしたとしても、そこから上がる収益はたいした事ないと思う。

なので、産經新聞はエンドユーザーからではなく、アップルやソフトバンクといったプロバイダーから継続的に課金できるビジネスモデルを構築すべきなんじゃないかと思うんだけど、どうでしょうか?今のままだと(プロバイダーに課金してないと仮定して)、産經新聞は、アップルやソフトバンクにフリーランチをプレゼントしているだけのように思うのだけれど。


以上、二流大出のなんちゃって研究員の素人の戯言でした。

統計マジック

最近、めっきり寒くなってきました。コンキチは先日リリースされた大塚愛のニューアルバム「LOVE LETTER」を聴いて心を暖めています。












さて、今回のブログでは、先日読んだ「若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来」の中でコンキチが気になったところのメモです。

具体的には、何年か前に話題になった日米の労働時間逆転のウソ?を解説した部分です。当時、その報道を耳にしたとき、はっきり言って感覚として全然信用できませんでした。

で、本書ではそのカラクリを解説しています。同書では、日本のデータは厚生労働省の2003年毎月勤労統計調査(製造業対象)をベースに作成したグラフが示されています(他国にデータの出所は記載なし)。

ちなみにOECD Factbook 2008からひっぱってきたデータはこちら↓
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3100.html(製造業に限らない産業一般の数字)

ところで、こういった国際比較を行う場合、各国のデータの収集方法とか、(この場合)雇用慣行などを考慮して比較しないと意味がないと思います。ちなみに、上述のOECD Factbook 2008を基にしたWeb Siteのグラフには「データは、各国の時系列は開くのために作成されており、厳密には資料の違いから特定時点の国際比較には適さない」と注意書きがあります。

さて、城氏の著作に戻りますが、厚生労働省のデータでは、2003年度の日本の年間総実労働時間は1,975時間。
1,975時間÷12ヶ月=164.6時間
ひと月20営業日とすると、所定労働時間は8時間×20日=160時間/月
月当たりの残業時間はざっくり4.6時間
でまあ、この統計にはパートタイマーも含まれているため、そいいった結果この数字は我が国に普通のサラリーマンの姿を表している数字とは思えないと述べています。
また、この統計では、年俸制や裁量労働といった勤務形態の場合、実労働時間ではなく、所定労働時間分しかカウントされないそうです(っていうことは、所謂管理職も所定労働時間分しかカウントされないのかな)。それから、当然サービス残業もカウントされません(給与支払実績をもとに作成されている)。

城氏は、厚生労働省のデータより実態に近い資料として、総務省の「労働力調査」(戸口調査)という資料を挙げており、その2005度版における男性一般常用雇用者の週平均労働時間は約48時間だそうです。
1年=52週として、年間約2,500時間。

1,975時間と2,500時間では全然違う。まあ、コンキチもまじめに統計資料を精査したわけではなく、このブログでは城氏の著作の内容を単に列挙しただけです。ただ、こういった統計資料を読むときは、その細部に着目することが非常に重要ということを久しぶりに再認識しました。

センセーショナルな数字に踊らされないようにしたいなと思う、二流大出のなんちゃって研究員なのでした。

2008年12月16日火曜日

新聞が無料になった日

先日(12/8)、iPhone用の産經新聞ビューワーがリリースされました。無料で産經新聞と同じ紙面を閲覧できます。iPhoneにストックできるのは1日分で、毎日午前5時に更新できます。

see http://www.sankei.co.jp/iphone/

自分、一昨日ダウンロードして使ってみましたが、軽快に動いてよいです。文字サイズも紙面を拡大すれば無問題。新聞をコンパクトに閲覧できてエクセレントです。

ユビキタス最右翼のiPhoneに新聞を搭載するというアイデアは悪くないと思う。

ところで、このビューアーはエンドユーザーには無料なんだけど、産經新聞はソフトバンクからフィーを貰ってるのかなあ?
(通信料稼げそうだしね)

ちょっとしたイノベーションだと思う二流大出のなんちゃって研究員なのでした。

2008年12月14日日曜日

厚顔無恥な搾取ビジネス

最近、満員電車で通勤中に竹内まりやの唄を聴いて癒されているコンキチです。例えば、ImpressionsとかBon Appetit!とか聴いてます。




竹内まりやは、その甘い歌声でさりげなく高飛車な歌詞をやんわり入れているところがよいです。癒されます。


閑話休題


今回は、表題の厚顔無恥な職業について書きます。コンキチが厚顔無恥な職業と思うのは、ニュース•キャスター、政治屋、(多くの)評論家、経済アナリストとかいろいろありますが、ダイレクトに実害を被って厚顔無恥な職業は、生保のセールス•レディー(生保のおばちゃん)です。

奴等は、会社の昼休みに食事を終えたのを見計らって接近してきては、自分勝手に話を進めていきます。具体的には↓

a) 氏名、年齢、家族構成等の個人情報の開示を要求する。しかも、それがあたかも当然という感じに。

b) 電話番号やメールアドレスといった連絡先を教えるように迫って来る。

c) 自社商品をプレゼンする時間をつくるように迫って来る。

d) より具体的には、「5分でいいんで説明させて下さい」といいつつ30分も延々とくだらない説明をされた。

しかも、自分達(生保のセールスレディー)は上記情報を当然の如く知る権利があると言わんばかりにズケズケと聞いてきます。

はっきり言って、上記事項に対してコンキチの貴重な時間(昼休み)を浪費させられるのははなはだ遺憾なのですが、コンキチは人当たりのよさを重視しているので(外地蔵なんでね)一応しぶしぶ対応してあげます。

で最近、業界最大手の日◯生命のセールスレディーに商品説明を受けたんですが、真剣辟易しましたね。そもそも、保険っていうのは「損することに意味のある宝くじ」なわけで、必要最低限のリスクヘッジが出来ればいんだよね_(例えば、超金持ちに保険は必要ない)。確かに不幸にして、若くして災難にあう可能性もゼロではないけれど、そんなこととを言い出したらきりがない。なので、保険は確率論で考えなければならないと思うんだけど、生保の営業はやたらと不安を煽って保障の厚い商品を恥ずかしげもなく提案してくる。しかも、他社と比較し難くするため複雑な商品を仕立てて来る。営業戦略的にはしたたかというかそんな気もしますが、正直辟易です。

っていうか、保険って各人の家計の詳細を把握してないとちゃんと設計できないでしょ。ファイナンシャル•プランニングの一環なんだよね。で、そういった諸々のデータを鑑みる事なしに勝手に設定した自社商品の営業をする生保のセールスレディ-って厚顔無恥か確信犯だなと思う訳なのです。

あと、奴等の提案にコンキチが否定的な(そういう保障はいらないという)発言をすると、「そうですよね」と意味不明な相づちを打つんだけど、そういうの白々しいんでやめて欲しい。っていうか、だったら最初っからそういう余分な提案すんなよって感じです。まあ、一応、コンキチも大人なので苦笑いするだけで対してつっこみませんが。

そういえば、以前、日本人(だけじゃないと思うけど)の持ち家信仰(土地真理教)について書いたことがあると思いますが、
see
http://researcher-station.blogspot.jp/2007/12/blog-post_25.html

生保もなんか宗教チックだなと思いました。

自分でちゃんとサーチしたわけじゃないけど、住宅ローンに継ぐ大きな支出は保険という話も風の噂で聞きます。過分な保険を掛けて、家族をしっかり守ってるぜみたいな「弱者に対する救い」をプロモートしている生保は新興宗教のように思うのはコンキチだけでしょうか?


以上、二流大出のなんちゃって研究員の生保感でした。

2008年12月13日土曜日

非正規雇用は悪か?

最近、トムヤムクンがマイブームのコンキチです。で、こんなの買って食べてみました↓


自分フォーって嫌いと思っていたんですが、この商品はなかなかいける!(多分、いままでまともなフォーを他食べたことがなかったんだね)。辛さもマイルド過ぎず、気負わずに食べれる辛さでなかなか良いです。

さて、最近巷では非正規雇用ネタが熱いようです。自動車メーカーなどが実施した非正規雇用の従業員の解雇を発端に、非正規雇用(正社員以外)という雇用形態がいかにも「悪」であるかのようなヒステリックな報道が連日、馬鹿の一つ覚えのように繰り返されています。

それにつけても、マスゴミっていつも無責任に単純な二元論的報道ばかりしていて、つっこみどころ満載で面白いです。

そもそも、自動車とかは、はっきり言って贅沢財でしょう。しかもマス•マーケットをターゲットにした贅沢財。ついでに単価も他の商品に比べてかなり高い。景気が悪くなれば一般市民は贅沢財を買い控えるのは必死。そういった事業素養なんだよね。比較的景況感に業績が影響されやすいんじゃないのかな?
(で、景気と自動車産業の業績(単体売上高)を調べようと思ったら、長期のデータが簡単には発見できませんでした(シクシク)。誰か知ってる人いたら教えて下さい。1980年代くらいからの)。

だから、生産調整目的に非正規の労働力を使ってるんだから、減産局面では契約解除されるのは火を見るより明らか。正直なにをいまさらという感じだし、好景気下では新たな雇用の創出につながる(正社員はコスト高だし、簡単にやめさせられないので、ルーティーン業務とかも全て正社員で対応するというのは効率が悪いし、景気減速時のリスク要員になると思う)。


まあいつものことですが、マズゴミって正義面してヒステリックで扇動的な報道しかしないから嫌になります。しかも、定量的なデータとかで検証することはほぼ皆無。そんなに非正規雇用者を解雇するのは悪で、なんらかの対策が必要だっていうんだったら、お前の高額な年収を減らして雇用を創出してやれよとつっこみたくなります。


ということで、正規雇用と非正規雇用の数ってどうなってるのかと思って、ちょっとサーチしてみました。


ちなみに正規雇用者と非正規雇用者の推移はこれ(統計局のデータを参考に作成)↓
(縦軸は×10,000人)

ウィキィペディアによると、バブル景気は1980年代後半から1990年代初頭(1986年12月から1991年2月までの4年3か月間を指すのが通説らしい)ということ。また、企業の新規採用はバブル景気崩壊の1991年(約84万人)をピークに1997年(約39万人)まで減少。その後増加し1999年(約68万人)にピークとなった後再び低下し、2001年(約41万人)を底にその後は増加しているそうです(リクルートワークス調査だって)。

グラフから正社員数は、1988年から1999年までゆるやかに増加し、その後減少に転じ、2006年から再び増加に転じようかといった感じ。ちなみに、2007年時点(3,441万人)では、1988年(3,377万人)の正社員数を僅かに上回っている。一方、非正規社員数は1988年から(もっと前から?)一貫して右肩上がりの増加し続けている(755万人→1,737万人)。結果、雇用者数は1988年(4,132万人)らか2007年(5,174万人)にかけて約1,000万人増加しているのが分かる。

次に、雇用者数(正規雇用+非正規雇用)と15歳-64歳の人口をグラフにしたもの(中小企業庁のデータを拝借して作成)↓
(縦軸は×10,000人)

15歳-64歳人口は減少傾向。

で、最後に15歳-64歳人口に占める、正規雇用者数、非正規雇用者数、雇用者数(正規雇用+非正規雇用)をグラフにしてみました↓

まあ、一番最初のグラフとあんまり変わらないんだけど、ざっくり言って、この20年間で増加した非正規雇用という就業機会によって、新たな雇用が創出(約1,000万人, ざっくりと就業可能予備軍(?)の10%)された思うんんだけどな。

ところで、非正規雇用反対論者は、就労人口の全てを正社員で賄うべきだというのだろうか?コンビニやマックの店員(パート、アルバイト)といった誰にでもできる仕事に正社員並みの高額給料は必要だろうか?また、自動車の組み立てラインの従事者に、長期にわたる高等教育(高度な専門的知識)や職人的超人的スキルは必要だろうか?企業が生産ラインに正社員と期間工を併用する根拠は↓

a) 正社員→工場の安定稼働を実現するための基本人員。ある程度の稼働率を恒常的に実現するためには、一定数の人員を安定確保する必要があるので、それなりに高い給料で囲い込む必要がある。

b) 期間工→生産調整のバッファー。景気加熱局面では、需要が喚起され、モノ(車)が売れる。大きな需要があるのに供給が追いつかないといのは重大な機会損失。但し、稼働率(生産力)アップの為に、不足人員を正社員で賄うのは危険。正社員には囲い込みのためのプレミアムが給料に付与されているのに加えて、解雇が極めて難しく、景気後退局面で需要が落ち込み生産調整が必要となったときに余剰なコスト高な正社員は極めて生産性の低い存在となる。

個人的にはこんなところじゃないかと思っています。

もし、全ての非正規雇用者を正規雇用化するというのなら(同一労働同一賃金)、正規雇用者(正社員)は自らの給料が減額されることを甘んじて受け入れなければならないと思うし、そうすべきでしょう。限られたパイを皆で分かち合うのです。そして、労働スキルの希少性に応じて給与水準が決定されることになる。でも、既得権の維持•拡張ばかりを志向する労働組合は不利益変更だと声だかに大反対でしょう。特に、企業別労働組合が幅をきかせている日本では。だから、非正規雇用者の正社員化は簡単に進むものではないと思うし、だから切られる。

それに、仮に非正規雇用が規制とかで全くなくなったとしたら、就労人口はけっこう減少すると思うな。企業には全ての非正規雇用者を正社員化するといった企業収益を大きく圧迫することはしないでしょう(慈善事業じゃないんだから)。

ただ、ある程度の人員は確保する必要ができてくると思う。で、非正規雇用者の正社員登用において峻別が起こる。正社員は増えるかもしれないが、正社員に登用されなかった人は労働市場からの収入を完璧に奪うことになる。これこそ真の残酷物語だとコンキチは思うな。
 

なんだかんだ言って、非正規雇用という雇用形態は労働市場からの分け前を得る権利を、正社員以外にも増やす機能があるということは確実。それを闇雲に糾弾するのはいささか白痴的と思う二流代出のなんちゃって研究員でした。


2008年12月7日日曜日

これって老害?

先日、平野 啓一郎の「決壊」を読了しました。


かなりダークな気分になる作品ですが、中の上的な作品と個人的に思いました(ちなみの自分、純文学は比較的苦手でエンターテイメントが好きです)。どうでもいい話なんですが、同書の主人公がPerrier好きなんですが、コンキチもPerrier
飲んでみたくなってアマゾンで注文しちゃいました↓



けっこう旨いです。


閑話休題


最近、巷では雇用対策(新雇用対策)の話題がホットのようです。20以上のメニューがあるらしいです。で、メディアで流れている対策を聴いていて一番笑えた話題に一言↓

派遣労働者を正社員として雇い入れた中小企業に1人あたり100万円(大企業の場合は50万円)を助成
→この案考えた人って、確信犯か相当頭悪いとみた。正社員の費やされる金がどれくらいか分かってるのかね?しかも、正社員って簡単に辞めさせることはできない巨大な固定費でしょ。我が国における正社員の雇用って設備投資と同義で、稼働率を挙げる事が重要(そういう意味では、全ての産業は装置産業的な要素があるね)。で、派遣社員は変動費で、生産調整のためのバッファーでしょ(ちなみに、残業もバッファー)、結局。
それから、派遣社員(非正規雇用)としての雇用を批判しすぎて、仮に非正規雇用という雇用形態がなくなったとしたら、職に溢れるひとは増加する可能性が極めて高いと思うけどな。上述した理由から、これまで非正規社員として雇用されてきた人がそっくりそのまま正社員として雇用されることはあり得ない。そもそも、そんなことが可能だったら派遣社員の契約打ち切りなんてあり得ない。こんなの小学生だってすぐ分かることなのに、恥ずかし気もなく政策として打ち出そうとする政治家は、100万っていう分かり易い身近な大金をちらつかせることで大衆迎合を狙ったポピュリストか相当頭悪い老害政治家だね。
あと、仮に派遣労働者と正社員が全く同じ仕事をしていて(量•質ともに)、賃金格差があるとして、派遣社員を正社員と同じ待遇にしろ(正社員雇用しろ)というなら、既存正社員は現状の給料の下落を甘んじて受け入れなければならないはず(人件費は固定費だからね)。自分たちの賃上げしか頭にない労組には無理な話だね。

2008年12月6日土曜日

中流の戦略 extra

駅弁大好き、コンキチです。



↑先日、イトーヨーカドーでやっていた駅弁フェアで買った「かきめし」。かなりの秀作。また買いたいね



さて、城繁幸氏の著作「若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来」を読了しました。以前コンキチが読んだ「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代」へと繋がる著作ですね(see http://researcher-station.blogspot.jp/2008/08/3.html

で、本書で著者が述べていることは↓


年功序列の構造的問題と、年功序列維持のための世代間格差•その弊害


だと思います。


年功序列批判を耳にして久しいような気がしますが、年配層のその制度維持のために費やされるエナジーというか執念は凄まじいとコンキチは実体験を通して学習しました。腐敗した公務員システムを維持しようとやっきになっているどこかの国の役人にひけをとりません。まあ、全ての会社が皆一様に年配者の年功序列という既得権の維持に取り組んでいるわけではなでしょうが。

では、コンキチが体験した、若年層を生け贄にしてオールド•ジェレネレーションの地位を世代が築かれているという事例を以下にメモしてみます↓

a) なんちゃって成果主義の導入
人件費削減のためになんちゃって成果主義を導入する企業が多いと思う。具体的には昇級のスプレッドを細かく設定し直し、従来よりも昇級ペースを遅くするといったもの。しかも、年功序列システムしか経験したことのない考課者にまともな評価なんてできない。なので、年功主体の評価が下される。それから、既得権の打破は概して難しいもの。年配者は降格人事もなく、現在の高額給料と同等の給与水準から新制度がスタートする。若年であるほど、昇級ペースの遅さをモロに被る。つまり、企業の賃下げのメイン•ターゲットは若者ということ。

b) 適格退職年金の移行先
適年って近々廃止されるから、それを他の制度に移行もしくは清算しなければなりません。で、その移行先の候補として確定給付型のハイブリット(キャッシュ•バランスプラン)と確定拠出年金の併用が会社から提案されました。でも、労組の頑強な抵抗にあい、確定給付型のハイブリット(キャッシュ•バランスプラン)+退職一時金に落ち着きました。ちなみに、キャッシュ•バランスプランの金利は10年国債に気持ち下駄をはかせた程度の低利率で、上下にキャップしたもの。はっきりいって、若年層の年金支給額が大きく減るのは必死。勿論、年配者が(計算上)これまで積み上げてきた年金額は維持されて、そこから新利率が適用される。はっきり言って、圧倒的に年配者が有利なプランが導入されました。
確定拠出年金は、元本が確保されないという世間の間違った認識(超低利だけど、元本確保型の金融用品の組み入れが義務づけられている)や、年金支給額が目減りする可能性があるという理由から、保守的な従業員の間っでは導入に抵抗が強いかもしれません。でも、若者に圧倒的に有利な金融商品と思います。
年配者は運用機関が短かく若者に比べて資金需要も喫緊であるため、アグレッシブな運用をして年金試算を大きく目減りさせることが最大のリスクでしょう。なので、設定商品の中では高利回りが期待できる株式ファンドの組み入れ比率は大きくすることは賢明ではなく、従って、運用利回りは低下する可能性が高いと思われます。一方、若者は長期投資というハイリスク•ハイリターンの投資戦略をとることが可能。積み上がっている年金資産もたいしたことはなく、アグレッシブな運用をしたって年金試算の目減りする額は微弱。っていうか、当面はMSCI KOKUSAIに連動したインデックス•ファンド買っとけばいいでしょ。で、年とってきたら債券比率を徐々に増やしていけばいい。難しいことは何にも無い。
ついでに言わせてもらえば、確定給付型企業年金の運用リスクは、直接個人(従業員)ではなく会社が負うことになります。なので、運用が極めて芳しくなく、会社が特別損失なんか計上した場合は、従業員の給料(ボーナス)に跳ね返ってくると思うんだけどな。
つまり、年配者は若者に対して、
1) 年金原資の配分が有利
2) 運用商品も有利
3) 運用リスクもあまり負担しなくてよい(会社を経由して若年層にリスクを転嫁している)
という圧倒的有利な雇用条件を獲得している。

個人的に、企業の退職給付制度は、確定拠出年金か前払い退職金の選択制にするのがいいと思ってるんだけど、確定拠出年金には掛け金の上限が設定されていて、確定拠出一本に移行するのは現実的でない企業も多いと思います。なので、適年からの移行は確定拠出型企業年金と確定給付型企業年金を併用するのがベターかと思います。そうすれば、世代間格差が多少なりとも緩和されると思うから。

c) 増殖するポスト
会社は年功序列制度を維持するために、お年頃となった人材に役職をあてがうので、部下1人上司1人といった職場が増えたりします。例えば、コンキチにいたグループでは、管理職(経営補佐職)の割合が43%でした(しかも全てラインに乗ってる)。
あと、部署の長となる人間の異動があって、その人の社内の格によって部署が昇格したり降格したりということも繰り返されていました。管理部→管理室→管理部のように。仕事の役割の重要度ではなく、「既に手に入れた社内でしか通用しないグレードという既得権」に応じて部署の重み(?)が安易に変更されます。
結果、マネジメント能力が欠如している人間がマネジャーになって、部下を辟易させる。まともな神経もってたら、若手はやる気なくなるよね。まあ、こういう現象が起こるのは、城氏がその著作で述べている「たった一つのキャリアパスしかない」ことに起因するのでしょう。

d) 労組だって年功序列
労働組合は、「使用者vs.労働者」とい視点しか持ち合わせっていない場合があります。コンキチはそういうのを体験しました(全ての労組が前衛的ではないと思いますが)。で、我が国の儒教チックな思想と相まってか、世代間格差が議論の話題になることは皆無で、年配者の既得権を犯すことは絶対しない。その危険度はすごいよ。会社の賃下げ意欲が旺盛で、その矛先が若年層に向けられているのが明らかで、「今(若いうち)は(経済的に)大変だけど、そのうち(年功とともに経済的に)楽になってくるから」なんていう今後も継続するか分からない、っていうか既に崩れ去った成功スキームを人生の先達面で語ってくるたちの悪い輩が大勢いつるからね。で、飲み会では懐古趣味の繰り返し。
あと、しらふで公の場で、「だって給料減るのやだもん(だから、査定はいや)」とか「年金の話はそっとしといてよ(下手に見直されて給付額が減るのは嫌)」ということを恥ずかし気もなく吐く定年間近の輩もいるからね。でもコンキチは、いい歳こいて出世できなかった使えない人間の愚痴と思い、憐憫の情けをもって接してあげましたが、人としての品位を疑いましたね。


まあ他にも枚挙に暇が無いのですが、既得権維持パワーというのは凄いなと思いましたね。現状維持バイアスというか、保有効果というか、アンカリング効果というか。

フェアっていう発想がないんだよね。既得権益を享受している人達は、その世界だけで通用するユニフォーメーションっていう名の差別が大好き。


そういえば、マスゴミも世代間格差ってあまりアピールしてないような気がする。そもそも、頭空っぽの報道しかしないくせに平均年収1千万を優に超えてるゆるゆる業界だからね。


とりとめもなく長文になってしまったけど、中流に戦略としては、世代間格差の少ない業界をターゲッティングすることも視野に入れることも必要かもしれないということを提案したいです。そういった情報の非対称性を克服することは容易ではないかもしれないけど、様々なバランスを勘案して満足いく(許容範囲の)企業を見いだすことは不可能ではないと思う二流大出のなんちゃって研究員なのでした。