とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Tuesday, December 23, 2008

アルドール (2)

今回はこんな文献を読んでみました↓

Lithium Acetate-Catalyzed Aldol Reaction between Aldehyde and Trimethylsilyl Enolate in Anhydrous or Water-Containing N,N-Dimethylformamide
Bull. Chem. Soc. Jpn., 2004, 77, 1555-1567.
向山先生のグループです。

AcOLiが触媒する向山アルドールです。

著者らの以前の報告で、
a) アルデヒドとカルボン酸エステルのTMSエノラートとのアルドール縮合において、Ph2NLiとlithium pyrrolidoneがLewis塩基触媒として有効だった。
ref. Chem. Lett. 2002, 182.; Chem. Lett., 2002, 858.; Helv. Chim. Acta, 2002, 85, 4518.

b) TMSエノラートとa,b-不飽和カルボニル化合物とのMichael反応において、lithium benzamideとlithium succimideが有効なLewis塩基触媒となった。
ref. Chem. Lett. 2003, 32, 56.

そうです。で、今回はAcOLiではどうかということです。

カルボン酸のリチウム塩でいけそうかどうかの見当をつけるのに、pKa(DMSO中)を比較しています↓
1) diphenylamine/ 25.0
2) pyrrolidone/ 24.1
3) benzamide/ 23.3
4) succimide/ 14.7
5) acetic acid/ 12.6
6) benzoic acid/ 11.1
7) p-nitrobenzoic acid/ 9.1

著者らは、共役酸としてpKaの小さいlithium succimideの触媒作用に興味を持つとともに、カルボン酸のpKaがsuccimideのそれにけっこう近いことに着目して検討を開始しました。

まずはじめに、benzaldehydeとmethyl isobutyrateから誘導したTMSエノレートとの反応について検討します↓

DMF中低温でそこそこの収率で反応が進行し、basic conditionでクエンチするとシリルアセタールが生成します。このシリルアセタールを塩酸で処理するとアルドール付加体とPhCHOが生成する(Tetrahedron Lett. 2000, 41, 103.)。

ピリジン中でも反応は進行するが、0℃では反応は起こらず、反応温度70℃でかなり反応が促進される。

Lewis baseとして他の金属カルボン酸塩についても検討していて、AcONa (75% yield), AcOK (77% yield)はAcOLi (83% yield)に比べて僅かに収率が劣る程度。また、収率は、触媒の求核性に依存し、4-Me2NC6H4COOLi (83% yield)、4-MeOC6H4COOLi (81% yield)に対して、4-NO2C6H4COOLi (37% yield)。ベスト•プラクティスは、t-PrCOOLi (94% yield)。

次に、TMSエノレートを固定して、種々のカルボニル化合物との反応を検討しています。で、その傾向↓

a) 電子供与性置換基を有する芳香族アルデヒド→DMF(-45℃)でもピリジン(70℃)ともにスムースに反応が進行し、高収率
b) 電子吸引性換基を有する芳香族アルデヒド→DMF中では中程度の収率(シリルアセタールが形成)、ピリジン(70℃)中では良好収率。
c) 塩基性の官能基を有するアルデヒドにも有効(84-99%, 4例)

こんどはアルデヒドをPhCHOに固定して、TMSエノラートを種々試しています↓

a) TMSエノラートなら多少嵩高くても反応温度を上げてやれば収率良好(チオエステルから誘導したものでもO.K.)
b) methyl isobutylateから誘導したTESエノラートは低収率(DMF, -45℃で4%)→AcOLiとケイ素原子との超原子価シリケートを形成し、エノラートが活性化されて反応が進行することが示唆(Helv. Chim. Acta. 2002, 85, 4518.)。
c) 中程度のsyn選択性(シリルエノラートがEでもZでも関係ない→鎖状遷移状態を経て反応が進行すると考えられる)


あと、カルボン酸のリチウム塩は、DMF中、室温でカルボン酸に等量のLi2CO3を作用させることで簡単に調製できて便利です。

ここまでは無水のDMF(or ピリジン)を溶媒に使ったときの話で、著者等は溶媒に含水DMFを使った検討を行っています↓

methyl isobutylateから誘導したTMSエノラートとPhCHOとの反応では、DMF:H2O=10:1から50:1のレンジで、シリルアセタールを生成することなしに、そこそこの収率で目的のアルドール付加体が得られます。ベスト•プラクティスは、DMF:H2O=50:1、-45℃で2 eq.のTMSエノラートを作用させ6 hr反応で、96% yieldです(このときバックグラウンド•リアクション17%)。

また、含水DMF中での反応は、
a) 無水DMF中での反応と同様に、他の金属カルボキシラートも触媒活性を示し、
b) 電子吸引性置換基をもつ芳香族アルデヒドや、脂肪族アルデヒド(3-Phenylpropionaldehyde)、2-Pyridinecarboxaldehydeを用いても高収率
c) さらに、分子内に水酸基、アミド、カルボキシル基があっても反応が進行する。
d) PhCHOとの反応で、α-位が二置換されていなかったり、嵩が小さいと収率が劇的に減(シリルエノラートが水でプロトン化されるため)


最後に反応機構に関する考察↓

In Anhydrous DMF
a) AcOLiと溶媒分子がシリルエノラートに配位して6配位超原子価シリケートを形成(Cyclle A)
b) アルデヒドと反応して、リチウムアルドラートとAcOTMSが生成(Cyclle A)
c) リチウムアルドラートがAcOTMSでO-シリル化され、AcOLiが再生(Cyclle A)
d) リチウムアルドラートがもう1分子のアルデヒドと反応して、エノラートとアルデヒドの1:2付加体が生成(可逆的)(Cycle B)
e) エノラートとアルデヒドの1:2付加体がAcOTMSでシリル化されシリルアセタールを与え、AcOLiが再生(Cycle B)

In Water-Containing DMF
a) AcOLiと溶媒分子がシリルエノラートに配位して6配位超原子価シリケートを形成
b) アルデヒドと反応して、リチウムアルドラートとAcOTMSが生成
c) リチウムアルドラートとAcOTMSが加水分解され、アルドール付加体、TMSOH、LiOH、酢酸が生成
d) LiOHと酢酸の中和反応によりAcOLiが再生


今回は以上です。

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