2008年12月6日土曜日

中流の戦略 extra

駅弁大好き、コンキチです。



↑先日、イトーヨーカドーでやっていた駅弁フェアで買った「かきめし」。かなりの秀作。また買いたいね



さて、城繁幸氏の著作「若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来」を読了しました。以前コンキチが読んだ「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代」へと繋がる著作ですね(see http://researcher-station.blogspot.jp/2008/08/3.html

で、本書で著者が述べていることは↓


年功序列の構造的問題と、年功序列維持のための世代間格差•その弊害


だと思います。


年功序列批判を耳にして久しいような気がしますが、年配層のその制度維持のために費やされるエナジーというか執念は凄まじいとコンキチは実体験を通して学習しました。腐敗した公務員システムを維持しようとやっきになっているどこかの国の役人にひけをとりません。まあ、全ての会社が皆一様に年配者の年功序列という既得権の維持に取り組んでいるわけではなでしょうが。

では、コンキチが体験した、若年層を生け贄にしてオールド•ジェレネレーションの地位を世代が築かれているという事例を以下にメモしてみます↓

a) なんちゃって成果主義の導入
人件費削減のためになんちゃって成果主義を導入する企業が多いと思う。具体的には昇級のスプレッドを細かく設定し直し、従来よりも昇級ペースを遅くするといったもの。しかも、年功序列システムしか経験したことのない考課者にまともな評価なんてできない。なので、年功主体の評価が下される。それから、既得権の打破は概して難しいもの。年配者は降格人事もなく、現在の高額給料と同等の給与水準から新制度がスタートする。若年であるほど、昇級ペースの遅さをモロに被る。つまり、企業の賃下げのメイン•ターゲットは若者ということ。

b) 適格退職年金の移行先
適年って近々廃止されるから、それを他の制度に移行もしくは清算しなければなりません。で、その移行先の候補として確定給付型のハイブリット(キャッシュ•バランスプラン)と確定拠出年金の併用が会社から提案されました。でも、労組の頑強な抵抗にあい、確定給付型のハイブリット(キャッシュ•バランスプラン)+退職一時金に落ち着きました。ちなみに、キャッシュ•バランスプランの金利は10年国債に気持ち下駄をはかせた程度の低利率で、上下にキャップしたもの。はっきりいって、若年層の年金支給額が大きく減るのは必死。勿論、年配者が(計算上)これまで積み上げてきた年金額は維持されて、そこから新利率が適用される。はっきり言って、圧倒的に年配者が有利なプランが導入されました。
確定拠出年金は、元本が確保されないという世間の間違った認識(超低利だけど、元本確保型の金融用品の組み入れが義務づけられている)や、年金支給額が目減りする可能性があるという理由から、保守的な従業員の間っでは導入に抵抗が強いかもしれません。でも、若者に圧倒的に有利な金融商品と思います。
年配者は運用機関が短かく若者に比べて資金需要も喫緊であるため、アグレッシブな運用をして年金試算を大きく目減りさせることが最大のリスクでしょう。なので、設定商品の中では高利回りが期待できる株式ファンドの組み入れ比率は大きくすることは賢明ではなく、従って、運用利回りは低下する可能性が高いと思われます。一方、若者は長期投資というハイリスク•ハイリターンの投資戦略をとることが可能。積み上がっている年金資産もたいしたことはなく、アグレッシブな運用をしたって年金試算の目減りする額は微弱。っていうか、当面はMSCI KOKUSAIに連動したインデックス•ファンド買っとけばいいでしょ。で、年とってきたら債券比率を徐々に増やしていけばいい。難しいことは何にも無い。
ついでに言わせてもらえば、確定給付型企業年金の運用リスクは、直接個人(従業員)ではなく会社が負うことになります。なので、運用が極めて芳しくなく、会社が特別損失なんか計上した場合は、従業員の給料(ボーナス)に跳ね返ってくると思うんだけどな。
つまり、年配者は若者に対して、
1) 年金原資の配分が有利
2) 運用商品も有利
3) 運用リスクもあまり負担しなくてよい(会社を経由して若年層にリスクを転嫁している)
という圧倒的有利な雇用条件を獲得している。

個人的に、企業の退職給付制度は、確定拠出年金か前払い退職金の選択制にするのがいいと思ってるんだけど、確定拠出年金には掛け金の上限が設定されていて、確定拠出一本に移行するのは現実的でない企業も多いと思います。なので、適年からの移行は確定拠出型企業年金と確定給付型企業年金を併用するのがベターかと思います。そうすれば、世代間格差が多少なりとも緩和されると思うから。

c) 増殖するポスト
会社は年功序列制度を維持するために、お年頃となった人材に役職をあてがうので、部下1人上司1人といった職場が増えたりします。例えば、コンキチにいたグループでは、管理職(経営補佐職)の割合が43%でした(しかも全てラインに乗ってる)。
あと、部署の長となる人間の異動があって、その人の社内の格によって部署が昇格したり降格したりということも繰り返されていました。管理部→管理室→管理部のように。仕事の役割の重要度ではなく、「既に手に入れた社内でしか通用しないグレードという既得権」に応じて部署の重み(?)が安易に変更されます。
結果、マネジメント能力が欠如している人間がマネジャーになって、部下を辟易させる。まともな神経もってたら、若手はやる気なくなるよね。まあ、こういう現象が起こるのは、城氏がその著作で述べている「たった一つのキャリアパスしかない」ことに起因するのでしょう。

d) 労組だって年功序列
労働組合は、「使用者vs.労働者」とい視点しか持ち合わせっていない場合があります。コンキチはそういうのを体験しました(全ての労組が前衛的ではないと思いますが)。で、我が国の儒教チックな思想と相まってか、世代間格差が議論の話題になることは皆無で、年配者の既得権を犯すことは絶対しない。その危険度はすごいよ。会社の賃下げ意欲が旺盛で、その矛先が若年層に向けられているのが明らかで、「今(若いうち)は(経済的に)大変だけど、そのうち(年功とともに経済的に)楽になってくるから」なんていう今後も継続するか分からない、っていうか既に崩れ去った成功スキームを人生の先達面で語ってくるたちの悪い輩が大勢いつるからね。で、飲み会では懐古趣味の繰り返し。
あと、しらふで公の場で、「だって給料減るのやだもん(だから、査定はいや)」とか「年金の話はそっとしといてよ(下手に見直されて給付額が減るのは嫌)」ということを恥ずかし気もなく吐く定年間近の輩もいるからね。でもコンキチは、いい歳こいて出世できなかった使えない人間の愚痴と思い、憐憫の情けをもって接してあげましたが、人としての品位を疑いましたね。


まあ他にも枚挙に暇が無いのですが、既得権維持パワーというのは凄いなと思いましたね。現状維持バイアスというか、保有効果というか、アンカリング効果というか。

フェアっていう発想がないんだよね。既得権益を享受している人達は、その世界だけで通用するユニフォーメーションっていう名の差別が大好き。


そういえば、マスゴミも世代間格差ってあまりアピールしてないような気がする。そもそも、頭空っぽの報道しかしないくせに平均年収1千万を優に超えてるゆるゆる業界だからね。


とりとめもなく長文になってしまったけど、中流に戦略としては、世代間格差の少ない業界をターゲッティングすることも視野に入れることも必要かもしれないということを提案したいです。そういった情報の非対称性を克服することは容易ではないかもしれないけど、様々なバランスを勘案して満足いく(許容範囲の)企業を見いだすことは不可能ではないと思う二流大出のなんちゃって研究員なのでした。

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