さて、前回のブログでこれまでの報告例を概観しました。ターゲットは単純な構造なのにMerckのプロセス以外は大スケール向きじゃない気持ちでいっぱいです(LDA, -78℃とか、オソンとかキツそうだし、Jones酸化はどうかと思う)。これじゃあ、キロスケールでの調製はけっこうきついかなと思います。
また、Merckのプロセスは、猛毒のHCNが発生するからちょっと抵抗を感じますね。
で、著者等が考案した合成法はこれ↓
ケトンのStrecker反応の後、Fmoc化して光学分割して調製です。コンキチの学生時代の研究室の後輩がStreckerでアミノ酸合成してたので、MerckとかHoffmann-La Rocheのプロセスが自然なような気がします。加水分解前のベンゾイル化するのは、Bz基の隣接基関与によりニトリルの加水分解が容易になることが期待されるからです。あと、アミノニトリルが比較的沸点が低い(a relatively volatile oil)というのも一要因のようです(ニトリルの加水分解ってハードな条件だからね。Merckの報告でだと、MeOHを飛ばすときけっこうなロスが出ると書いてあった)。それから、HPLCでの反応のモニタリングが容易になるからというのもあります(Ph基が入るからね)。
ちなみに加水分解のstepは、まずニトリルが加水分解され、次いでアミドが加水分解されます(HPLC分析から示唆された)。
さて、次に不純物に関する考察です。この反応(ラセミ体のFmoc-α-methylvaline合成)のメジャーな副生成物は、Fmoc-β-alanineです。で、Fmoc-β-alanineとその誘導体は、市販のFmoc-アミノ酸中に共通して見出される不純物なのだそうです↓
このことから、過剰のFmoc-OSuの使用は避けるべき。例えば、Fmoc-OSuのDMF溶液を0.95eq.の使用でFmoc-β-alanineの副性を2 area %未満に抑制可能。再結晶して~0.2 area %まで落とせます。もし固体で投入すると、Fmoc-β-alanineが9%まで副生。
最後に光学分割です。試した分割剤はα-methylbenzylamine (最も良く使われる、一番安い合成分割剤ね)、1-(4-bromophenyl)ethylamine、cinchonine、1-cyclohexylamine(?自然分晶狙ったの)、1-(2-naphthyl)ethylamine、N-benzylmethylbenzylamine(多分、N-benzyl-α-methylbenzylamine)、1,2,3,4-tetrahydro-1-naphthylamine (1-aminotetralinね)、(-)-sparteine、quinidine、brucien。で、(S)-1-aminotetralinが良かったようです(検討結果はTable↓)。
分割効率(> 80)かなり高いです。
で、最終的にはこんな感じに↓
最初に造塩して濾過すると、難容性塩が収率49%、dr 91.8:8.2で得られ、さらにDMF-H2Oから再結晶することで、dr 99.78:0.22の塩が82%(dr 91.8:8.2の塩からね)回収されます。
ラセミ体の半分はムダになるけど堅実なプロセスかなとは思います。
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