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2008年7月16日水曜日

N-Bnezyl-1-phenylethylamine

有機合成化学協会誌, Vol. 58 No. 2 (2000)のケミカル覚え書き「光学活性N-ベンジル-1-フェニルエチルアミン (Optically Active N-Benzyl-1-phenylethylamine)」をメモしてみ山川薬品工業の方が執筆されたものです。

N-ベンジル-1-フェニルエチルアミン(BPA)は、最も広く使われていている1-phenylethylamine (PEA)のN-ベンジル体。合成法はこんな感じ。

a) 還元アミノ化(還元アルキル化でもある)による合成法


文章からはこの方法が山川の合成法っぽいです。ラセミ化は認められないそうです。教科書的ですね。


b) メンシュトキン反応による合成法

ref. Synthesis 1993, 1243-1246.
1stepで合成できるのは便利だが、DMPUってけっこう高い溶媒だよね。収率もGOOD。それなりに嵩高いからなのか、溶媒が効いてるのか3級化、4級化しないんだね。


それから、また還元アミノ化だけど↓

ref. Tetrahedron 1990, 46, 523-544.
ラセミ化を避けるためにpHのコントロールが必要とか。ラセミ化を避けることは不可能で、塩酸塩に誘導して再結晶が必要とSynthesis 1993, 1243-1246.のauthorが述べています。ちなみに、上のschemeの収率77%は、塩酸塩の再結晶前。塩酸塩に誘導して再結晶して、複分解すると64% yield。あと、この文献って比旋光度で光学純度を判断しているっぽいです。

余談ですが、コンキチが在籍していた研究室の隣の研究室の先生は、この反応のことを「若気の至り反応」って言ってたなあ(求核性が上がってとまらなくなっちゃうから)。

c) 不斉水素化による方法

ref. J. Mol. Catal. 1984, 22, 283.
この方法だと、経済性と光学純度がイマイチのようです(文献読んでないので詳細は不明)

ここまでが、光学活性N-ベンジル-1-フェニルエチルアミンの合成法。光学分割への応用例としては↓


こんなカルボン酸達に有効とか。

また、不斉合成へに応用としては、こういう例が報告されているそうです。

Tetrahedron: Asymmetry 1995, 6, 165.

あとBPAのデータメモ↓
沸点: 171℃/2 kPa
引火点: 158℃(クリーブランド開放式)
溶解度: アルコールやエーテルなどの多くの有機溶媒に易溶。水に対する溶解度は0.014%(20℃)。
LD50 (R)-体 578 mg/kg(rat), (S)-体 1301 mg/kg(rat)
Ames試験: 陰性


あと感想: やっぱり光学分割って未だに試行錯誤だよね。はっきり言って、泥くさい。そういう意味で、西郷先生の研究(冒頭の2番目と3番目のリンクに代表されるような一連の研究ね)は価値があったと思う(アリールカルボン酸とアリールアミンの組み合わせだけだけどね)。

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