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2010年5月22日土曜日

何を疑うのか

最近、仕事の方はボチボチの忙しさだったのですが、東野圭吾の加賀恭一郎シリーズを読むのに忙しかったコンキチです(残すは新参者のみです)。























さて、たまには仕事の話を書きますか。

コンキチのお仕事は有機合成化学で、まあ、色んな薬品をまぜまぜしてターゲット分子を造る(合成する)作業を毎日繰り返しています。

で、他の誰かが過去に造った分子(化合物)と全く同じものを造る場合もあったりします。そういった既知化合物は、その作り方が既に雑誌(専門誌)や特許に報告されているので、その方法に従い、全く同じ方法で合成する場合も多々あったりします(ウソ書いてなければ、一応、確実につくれるハズだからね)。

でも、中には文献通りの作業を行っても、全然上手くいかない場合もけっこうあったりします。特許でウソが多いというのは同業者の方なら周知のことと思いますが、比較的権威のある雑誌に掲載されている論文でさえもそういったことがあります(コンキチも1年間苦しんだことがある)。

ただ、上手くいかないのがウソばかりだとは限りません。例えば、

a) 薬品中に含まれる微量の不純物が悪さをする(メーカーとかロットの差異)
b) 無機試薬の結晶形が違うとか
c) クリティカルなノウハウが十分に開示されていない
d) 反応条件の制御は純粋にとっても難しい
e) トレースしたオペレーター(研究員)の腕が悪い
etc.

などがあると思います。で、人によって合成実験が上手くいかない理由を考えるわけなんですが、コンキチは「e) トレースしたオペレーター(研究員=自分)の腕が悪い」を一番に疑いますね。

薬品(試薬)の種類は無数にあって、反応の種類も無数にあって、その組み合わせは天文学的数字にのぼります。それらの全てを適性に取り扱える人っていうのは、まず皆無でしょう。まあ、だから自分が初体験の試薬や反応は下調べをするわけなんですが、だからといって必要な情報の全てが、教科書や文献や辞典、MSDS(化学物質安全性データシート)に記述されているわけではありません。また、化学工学的な知識が必要となる場合もあります。

これらのことを勘案すると、凡才のコンキチはまず、自分の腕を疑わざるを得ませんね。特に、「d) 反応条件の制御は純粋にとっても難しい」(=堅牢性の乏しい反応)の場合、腕(=オペレーションの適性さや、反応や使用する試薬に対する造詣の深さ)はより重要になると思います。

あと、コンキチの私見ですが、化学に対する知識は抜群の優れていて、合成能力の極めて高い人でも、意外に(凡才のコンキチの目から見て)「?」っていうオペレーションがをする人もいます。あと、(多分)自分の経験に基づいた間違った思い込みをしている場合も散見します。まあ、非プロセス研究では、最終的に目的物がそれなり(許容可能な収率)に取れればいいんですがね

まあ、上手く行かないときに何を疑うかっていうのは人ぞれぞれと思いますが、コンキチはまず自分を疑うっていう話でした。

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