こんな文献を読んでみました↓
Nucleophilic Acyl Substitution via Aromatic Cation Activation of Carboxylic Acids: Rapid Generation of Acid Chlorides under Mild Conditions
J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 5002-5003.
カルボン酸をaromatic cation (シクロプロペニウムカチオン)で活性化して、酸塩化物へと誘導するお話です。
著者らは、これまでにアルコールのaromatic cation activationを経たクロロ化に成功しており、今回の報告はその拡張版です。
それではます、アルコールのaromatic cation activationから紹介しましょう↓
(Aromatic Cation Activation of Alcohols: Conversion to Alkyl Chlorides Using Dichlorodiphenylcyclopropen J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 13930-13921.)
シクロプロペニウムカチオンは、2π-electron aromatic systemで、1975年にBreslowによって見出されました。高度に安定化されたカルボカチオンであり、置換基を変えることにより、電子的、立体的な特性を調整することができます。
さらに、シクロプロペニウムカチオンには以下のような特徴があります。
a) 芳香属性と電荷を有し、上図のように荷電状態と中性状態にある
b) 3,3-ジクロロシクロプロペンは容易に加水分解してシクロプロペノンになる
c) シクロプロペニルエーテルの容易に加水分解される
で、著者等はシクロプロペニウムカチオンに係るこれらの特性を踏まえて、こんな反応をデザインしました↓
最適溶媒はCH2Cl2で、12 examples, 45-95% yield。1H NMR studyから、シクロプロペニウムイオン(中間体)の生成も確認されています。
で、基質一般性はこんな感じ↓
•1級のベンジル及びアリルアルコールは室温下、短時間(~10 min)で高収率(91-95%)で塩素化されます。
•また、cis-アリルアルコールも異性化することなく、円滑に反応が進行(23℃, 5 min, 84%)。
•プロパルギルアルコールもアレンが生成することなく、目的の塩化物を与えます(23℃, 5 min, 92%)。
•活性化された2級アルコールもマイルドな条件下、高収率(88-93%)。
•活性化されていない1級アルコールもマイルドな条件下、高収率(89%)。
•活性化されていない2級アルコールは高温が必要(CH3CN, 80℃, 93-95%)。
•3級アルコールでは脱離反応が進行してしまいます。
•さらに、(S)-1-phenylethanolを基質に用いると、90% yield, 93%eeで対応する塩素化物が得られるます(SN2が支配的)。ちなみに、MsCl, Pyridineで塩素化すると78%ee (Org. Lett. 2005, 7, 1537.)。
ここまでが、アルコールの塩素化のお話です。
あと、3,3-ジクロロ-1,2-ジフェニルシクロプロペンは、こんな風にして調製できます↓
(出発物質はTCIで売ってて、シクロプロペノンはアルドで売ってます)
カルボン酸のaromatic cation activationは次回。
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