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2020年8月27日木曜日

カルバメートを還元せよ

お鍋大好きコンキチです。リアルに夏でも鍋をよく食べます。ということで、平井にある豊田屋で飲食したときのメモです。

-豊田屋 memo-
住所:江戸川区平井6-15-23

通称「痛風鍋」で有名な同店は冬場の予約は困難を極めると言いますが、予約は三名から(https://travel-noted.jp/posts/22888)のようなので、カウンター席なら予約なしでいけます(多分)。


人気の鍋メニューは(間違ってなければ)全12種。
アンキモ、ネギマ、カモ、牛、とん鍋(と、とんちり鍋)は一年中、
穴子鍋、ニラ玉鍋、どじょう鍋も(多分)一年中、
白子鍋、アンコウ鍋、カキ鍋は季節限定です。

黄色の短冊メニューの書かれた鍋は、目の前の卓上のコンロで作ってもらえるタイプ(とんちり、とん鍋、牛鍋、ねぎま鍋、カモ鍋、アンキモ鍋、白子鍋、アンコウ鍋、カキ鍋)、
黒の短冊メニューに書かれた鍋は、出来上がったものを持ってきてもらうタイプの鍋です(穴子鍋、ニラ玉鍋、どじょう鍋)。

あと、卓上で作ってもらうタイプの鍋はお、触り厳禁なので気をつけましょう。


-にごり酒- (340 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
普通に美味しいです。甘めで強いボディー。にごり酒ってハズレがまずないので安心して注文できます。コスパ高し。


-にこごり (400 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
透明度の高いゼラチン質で、とても上品な味付けで、食感が素晴らしく繊細で口溶けが綺麗です。具材は多分穴子なんじゃないかなと思うんだけど、弾力に富み、ゼラチン部の舌触りとのコントラストが面白い。

-カモ鍋 (1,800 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
具材はメインの鴨肉に加えて、葱、お豆腐、しらたき、エノキ、白菜。
ブクブクと激しく煮立たせたところに、オヤジさんが箸を入れて具材をひっくり返し、さらに煮込んで出来上がりです。
けっこう激しく煮た割に、割り下は軽やかに澄んだ甘めのすっきりした綺麗な味に仕上がっています。鴨の脂が鍋に染み出していて、旨味もリッチ。
煮え上がった鴨肉は厚みがあってゴロッとしていて、弾力に富んで硬めの歯応え。その野趣的で少しクセのある味はまさにジビエ(Gibier)ライクで、荒々しくワイルドめの味わいです。


-焼酎ハイボール (270 JPY)-
-REVIEW-
謎のエキスの入った何とも形容しがたい味の焼酎とレモンがグラスに入って提供され、これを炭酸(アズマ炭酸)で割って飲む、所謂、下町ハイボール。最早これはファッションですね。






-酒 浅草無双 (260 JPY)-
-REVIEW-
-RATING- ★☆☆☆☆
燗をつけてもらう。正直、あんまり美味くなかったです。
燗に物凄く向かない酒質だったのかもしれません。


-こはだ (500 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
酢がけっこう効いているけど、そんなにキツい味ではなくって、フレッシュ感リッチ。身はあまり軟らかくないけど、硬いわけではなくって、歯応えを楽しむのにはいい感じ。お酢に負けない小肌感を保持しつつ余分な臭み(fishy note)はなく悪くない。
薬味には粉ワサビ。


-ホワイトホース ウイスキーハイボール (320 JPY)-
-REVIEW-
-RATING- ★★★☆☆
ホワイトホースのハイボールは普通においしいよね。炭酸はアズマ炭酸です。


-新子 (900 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
初夏の風物詩です(初夏にいただきました)。
シャープな味のお酢がけっこう効いているんだけど、刺々しさは全くなくって、新子の繊細で可愛らしい味がしっかりと感じられて、いい感じです。
足立区の某有名居酒屋では、"新子"と称してけっこう大っきくなった小肌を出すという不誠実なことをやってますが、これは正真正銘本物の"新子"でした。

-アンキモ鍋 (2,600 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
アンキモたっぷりのお鍋。アンキモ以外の具材は、お豆腐(絹)、葱、白菜、エノキ、しらたき(かな)。
割下はマイルドテイストで、アンキモエキスが染み出しているのかコク深い甘みがある。
メインのアンキモはプリュプリュで、まるで綺麗な滋味たっぷりのプリンのよう。はっきり言って、こんな旨いもの食べたことないっていうくらいのウマさ。
野菜のクオリティも抜群。特に葱が激ウマ。自然な甘みふんだんで、食感もいい感じにシャキッとしている(グツグツ煮ているのに食感が崩れていない)。
至高かつ至福の一鍋に仕上がっていると思いま


-本マグロさしみ (700 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
筋なく、吸い付くような感じのあるしっとりした食感の身質。
少し血の匂いがあるけど、ワサビを付けると生臭さは消えて、いい感じの甘みが現れます。




-穴子鍋 (950 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
まず、お鍋のツユが旨いです。綺麗な甘さで滋味深い醤油ベースのスープで、いつまでも飲んでいたくなるほどの出来映え。
具材はメインの穴子に加えて、葱、牛蒡、玉子。
穴子は信じられないほど美味しい!適度の脂、張りのある身から繰り出されるダイナミズムに富んだ弾力、淡白系の滋味深い濃厚な味は申し分なく、旨さが迸る。
脇を固める具材にも手を抜いたところはないです。葱はフレッシュ。玉子のフワッとした食感も素晴らしい。また、厚く切り出された牛蒡は歯応えが良く、風味豊か。
一鍋入魂の至高の鍋と思いました。


-レバニライタメ (380 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
レバが激しくソリッド。ボクが思い描く理想のレバとは対極の食感なんだけど、美味しい。気持ち良いほどカラッとした硬さが、ちょっぴりスナックライクで、口腔内にそこはかとなく広がるレバに野趣的な香味も悪くないです。
それから野菜が美味しい。もやしはシャキシャキでとってもフレッシュ。ニラも新鮮。両者とも輝いています。
味付けも絶妙の塩梅。クセになるニラレバに仕上がっていると思います。


最後にインフォーメーションです。
豊田屋さんは店舗建替のため

(令和三年)三月十八日まで営業 
(令和三年)三月十九日より(令和三年)十月三十一日まで休業
(令和三年)十一月一日開店

の予定です。なので、ご予約は計画的にね。

さらに今年は、

白子鍋:九月四日より
アンコウ鍋:九月十五日より

っていうお知らせが店内に貼ってありました。

それから、ボクの愛読しているDr.コトー診療所の作者であらせられます山田貴敏先生の色紙(コトー先生と星野彩佳看護師の画が描いてある)が飾ってあったので、余裕があったら鑑賞してみましょう。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

N-Methylation and Trideuteromethylation of Amines via Magnesium-Catalyzed Reduction of Cyclic and Linear Carbamates
Org. Lett., 2020, 22, 3209-3214.

カルバメートを還元してメチルアミン誘導体を合成するお話です。

30 examples, up to 98% yield
(HBpin : 24 examples, 50-98% yield
DBPin : 6 examples, 81-88% yield)
Low-cost and commercially available catalyst
Excellent functional group tolerance

CH3基(やCD3基)の導入は未だにチャレンジングなテーマであり、N-メチル化(トリデューテリウム化)はあまり反応開発されていないと言います。

C1-アルキ化剤として真っ先に思いつくのはヨウ化メチルや硫酸ジメチルですが、一般論として一級アミンのN-メチル化はオーバーアルキレーションの問題がつきまとって困難です。メタノールを用いた方法も開発されていますが、もっぱらカルボニル化合物のα-メチル化やアレーンに限定されていて、N-メチル化への応用は殆どないようです。

他の代替法としてCO2-surrogatesの還元が挙げられるようですが、遷移金属触媒が必要なことに加えて、過酷な条件が必要です(Chem. Commun., 2014, 50, 14229.; Chem. -Eur. J., 2015, 21, 16759.; Catal. Sci. Technol., 2016, 6, 7956.; Angew. Chem. Int. Ed., 2019, 58, 12820.)。

そこで著者らが着目したのは、直接的メチル化ではなく、カルバメートの還元です。しかしながら、窒素原子の保護基として使用されているだけあって、カルバメートはカルボニル誘導体の中で圧倒的な還元耐性を示します(Chem. Soc. Rev,, 2015, 44, 3808.; J. Am. Chem. Soc., 2019, 141, 159.)。

で、著者らが過去の研究成果を踏まえて鋭意検討した結果辿り着いたのが、hydroboration-hydrodeoxygenationによるカルバメートの還元法です。

最適条件は
・MgBu2:10 mol%
・HBpin:3.5 eq.
・solvent:neat (solvent-free)
・temp.:65˚C
です。

solvent-freeが最適ということですが、溶媒効果が気になるので、著者らの最適化への道程をおさらいしてみましょう↓

Optimization of MgBu2-Catalyzed Hydroboration of Carbamate

反応の効率が基質濃度に強く依存してますね。ただ、それなりの濃度であれば溶媒が反応を強く阻害するわけでもないようです。
ボクって"solvent-free"って好きじゃないので、個人的には朗報です。プロセス全体を俯瞰すると必ずしもエコ・フレンドリーでもないし。仕込みにくいし。仕込みにくいし。仕込みにくいし。

さてこの反応、"Excellent functional group tolerance"を謳っていますが、苦手な基質もあります。立体障害に弱いらしく、オルト置換アニリンでは収率が低めです。

また、カルバメートのエステルのアルキル鎖ですが、嵩高いtert-ブチル基(Boc group)でも高収率です。

ところで、著者らはN-Bocの還元をもって、

"To the best our knowledge this is the first time that one of the most applied N-protecting groups, the N-Boc group, could be used as a N-methyl precursor."

とかアピールしてるんだけど、ちょと検索するとLAHでN-Bocの還元が普通に沢山ヒットするんですけど、LAHは実用的じゃないからですか?Red-Alでもいけそうな気がするんですけど、どうなんですかね?

それでは最後に推定反応機構です↓

カルバメートを還元してN-メチルをつくるんだったら、メチルとかエチルカルバメートをRed-Alを使って還元する方が好きかなと思う二流大出のテクニシャンのメモでした。でも、選択肢が増えるのはいいよね。


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