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2014年3月30日日曜日

C(sp3)-Hを活性化せよ!

去年行った居酒屋のメモです↓(けっこう吞んだくれてたので覚えている分だけ)

-上喜源 memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
酒の品揃えも料理の品揃えも大分充実した普通に旨い居酒屋。くじらのタレは、初めての出会いだったけど、とても興味使い味で印象的だった。

-ヱビス&ヱビス (550 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-RAVIEW-
ハーフ&ハーフ。ボクはけっこうハーフ&ハーフ好き。ヱビスはbodyも香味もそこそこあって、気軽にハーフ&ハーフできる銘柄と思うので、使い勝手良しと思います。

-菊正宗 燗 (大) (680 JPY)-

-吾空 (450 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
文句無く旨い。ボクの大好きな麦焼酎。文句無しに旨い!

-八海山-

-エシャレット (380 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
しやっきりしてて、爽やかで鮮烈な辛味がとても良い。

-鯖の押し寿司 (780JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
なかなか旨い。鯖の締め加減が良いです。ご飯部分も美味しい。

-ほたるいかの沖漬け-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
塩辛すぎず、瑞々しくtastyな味。

-刺身5点盛り-
-RATING- ★★★★☆

-くじらタレ-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
目刺しライクな味でとても興味深い。日本酒のアテに最高かも。

-馬刺-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
まあまあかな


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

A Highly Tunable Stereoselective Dimerization of Methyl Ketone : Efficient Synthesis of E- and Z-1,4-Enediones
Org. Lett., 2013, 15, 2148-2151.


芳香族メチルケトンのsp3炭素-水素結合を活性化して、1,4-ジエノンを合成するという話です。しかも、ホモカップル体、ヘテロカップル体を作り分けることが出来ます。

1,4-ジエノン合成というと

(i) フランやチオフェン誘導体の開環 (J. Org. Chem., 1993, 58, 497.; J. Org. Chem., 1985, 50, 779.; Green Chem., 2011, 13, 3066.; Eur. J. Org. Chem., 2012, 3647.)
(ii) エノンサブユニットの酸化 (Corey et al., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 3232.)
(iii) α-ジアゾカルボニル化合物の分解 (Chem. Commun., 1997, 2163.)
(iv) 2-アルキニルアルコールの酸化的転位 (Kirsch et al., 33-65% yield; Chem. Commun., 2006, 764.)

といった合成法があるようですが、利用可能な基質によって生成物の置換パターンが制限されたり、低収率であったり、対称および非対称の1,4-二置換-1,4-エンジオンの合成の普遍的な合成法がないといった問題があるようです。

で、This work↓
I2 (2 eq.), CuBr2 (0.2 eq.)
homodimerization : 16 examples, 29-90% Yield
heterodimerization : 12 examples, 58-83% Yield
photoisomerization : 9 examples, 81-99% Yield 

有用性アピールポントは

i) メチルケトンから直接、対称および非対称1,4-エンジオンを完全なE-選択性で合成できる初めての報告

ii) (E)-1,4-エンジオンに室温下、white light (23W)を照射することで、Z-体に変換できる

iii) heterodimerizationがけっこう選択的に進む。これは安定ラジカル効果(Persistent Radical Effect)によって説明される(Chem.-Eur. J., 2001, 7, 1159.)。

などです。

反応の特徴ですが、酸素雰囲気は反応の進行にほとんど影響を与えませんが、窒素雰囲気では収率の低下が観察されます。また、電子供与性置換基は収率にポジティブな効果がある。heterodimerizationの場合、一方のケトンをもう一方のケトンに対して二倍使用するとよい。

などです。

そして、推定反応機構はこちら↓

ヨウ素が、ヨウ素化とフェナシルラジカル形成という二つの役割を果たします。

けっこう凄いね。たったこれだけのことでメチルケトンのcross-couplingがけっこう選択的にできるっていうのに驚きな、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

2014年3月23日日曜日

"1,2-" or "1,4-", That is the Question (完)

3月も最終週。4月からの消費増税に向けて、amazonで軽く買いだめしてるコンキチです。ちなみに、買いだめしたのはこちら↓


-エチゴビール プレミアムレッドエール memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
爽やかで甘く、mellowな香り。とても香ばしい。fruityでイチゴの香味。複雑玄妙なtaste。sweet, bitter,で独特のスパーク感が良い。凄くrichな味。grassy感もあり、ちょっとchemical。あと、シャンパン様の香りがボク好み。率直に言って、とっても旨い。
-DATA-
raw material/ 麦芽、ホップ
alcohol/ 5.5%
-COMPANY-
エチゴビール(株)

とりあえず、二箱注文してやったゼ。

それからこれも↓


-マルキン 上野藪そばつゆ memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ボクが大好きな上野藪そば総本店のつゆを再現しようとしたであろうつゆ(お店でも売ってる)。
微弱なカツオ節の香りを伴うシックな醤油の良い香り。納得のfull bodyのつゆで、優しさ漂う硬派な辛口に仕上がっている。ほんのり漂う甘味がとても美味しい。"藪"の名に恥じぬ仕上がりと思いました。
-RAW MATERIALS-
しょうゆ(本醸造)、みりん、砂糖、そうだかつお削りぶし、食塩
「火入れしない伝統の生返かえし」がウリ

このつゆ、けっこうレアものなので、みんなあんまり注文しないように。


閑話休題


ここまで6回に渡って、α,β-不飽和カルボニル化合物の還元(主に1,4-還元)についてメモしてきました。で、結局どれ(どの方法)をチョイスすればいいわけ?ってことなんですが、ボク的にそいつを決定しちゃいたいと思います。

カルボニル基の選択的還元[1,2-reduction]は、Chem-Stationさんも勧めているLuche還元DIBAL-Hがファースト・チョイスなんだろうと思います(http://www.chem-station.com/yukitopics/1-2-1-4.htm)。


で、[1,2-reduction]より大分ハードルが高そうな[1,4-reduction]のおススメは、

Chem-Station→DIBAL-Co(acac)2, Stryker's reagent
「たゆたえども沈まず」さん→DIBAL+α系、L-Selectride、Stryker's reagent (http://orgchemical.seesaa.net/article/215333763.html)
「ほろ酔い化学者のブログ」さん→L-Selectride、Stryker's reagent (http://blogs.yahoo.co.jp/deebsky2009/16468364.html)

のようです。

で、ボク的におすすめはなにかと言われたら、DIBAL-Co(acac)2をファースト・チョイスに挙げようと思います。

上記ブログでも言及されていますが、L-Selectrideは基質を選ぶし、Stryker's reagentは溶液状態で酸素に対して極めてセンシティブ(変法も含めて、溶媒の脱気に相当気を使っている感じ)なところにスケールアップ時の難点を感じます(あと、市販のStryker試薬の信頼性にも疑問が残る Tetrahedron, 2000, 56, 2779-2788.)。そういったことに加えて、試薬の入手容易性や簡便さを鑑みると、DIBAL-Co(acac)2に軍配があがるような気がします。

ちなみにDIBAL-Co(acac)2の実施例↓
Synlett, 1999, 96-98.


あと、佐治木先生の開発したPd/C[Ph2S]Pd/Fibも捨て難いです。やっぱり水添って基本的にクリーンだし、その官能基許容性には光るものを感じます(Org. Lett., 2006, 8, 3279-3281.;  Tetrahedron, 2006, 62, 11925-11932.; 有機合成化学協会誌, 2005, 63, 1218-1231.)。


それからもう一つだけ、CoCl2•6H2O-NaBH4も気になります。
WO2008/010235

インドの製薬会社のパテントで、基質も一個だけしか例がないけど、試薬の安価さとマイルドな反応条件は魅力的です。ボク的には大穴狙いで、積極的に試してみたいです。

で以上まとめると、

[1,2-reduction]Luche還元DIBAL-Hのツートップ
[1,4-reduction]DIBAL-Co(acac)2 (本命)、Pd/C[Ph2S], Pd/Fib (対抗)、CoCl2•6H2O-NaBH4 (大穴)

こんな感じでしょうか。


以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の還元メモでした。

"1,2-" or "1,4-", That is the Question (6)

三ツ矢堂製麺所のメモです。

-らーめん (780 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
麺は(中)太麺でほぼストレート。モチモチを超えた噛みごたえで、あと一歩で超コシの強い饂飩を想起させる領域。スープはカツオ節様の魚介と豚骨っぽい獣系か?creamyで、獣臭は微弱で上品に仕上がっている。粘度が高くねっとりとした食感だが、味自体はあっさりtaste。太めの硬い麺に良く絡むように設計されているんだろうと思いました。
ただ、スープの塩辛さにグラデーションがあり、下部にいくほど塩辛さがup↑していく(スープの粘度が対流を阻害し、塩ダレが滞留してしまうのだろうか?)。ちょっと食べ疲れるね。

-ふかひれ入り酸辣湯つけめん 冷もり (930 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
(中)太のストレート麺は、ツルツルで強い弾力が心地よい。噛み進めることによって生じる香味の広がりは無いが、悪くない。スープは少しとろみがあり、甘味が少し強めの甘辛。しょっぱさも強めだが、太い麺に合う濃度でバランス良いと思う。ただ、温度低下著しく残念。

-ふかひれ入り酸辣湯つけめん あつもり (930 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
「冷もり」は冷たい麺をつけ汁につけて食べるため、スープの温度低下が著しく残念な気持になったので、「あつもり」の麺でリベンジ。
麺の熱さは「あたたかい」程度。つけ汁につけることで進む温度低下は殆ど気にならず、美味しくいただけた。ただ、普通にラーメン形式で提供したらいんじゃないの?っていう素朴な疑問が生じた。

-つけめん ゆず風味 あつもり (780 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
麺は相変わらずで、噛み応えのある弾力の強い麺の食感は凄い!つけ汁につけて食べると少しもっさりした味。つけ汁は甘味と酸味がかなり効いた豚骨醤油(?)も、動物的臭みは全く感じず、柚子の香りが立って爽やかで良し。しかし、温度がちょっとぬるい。濃度勾配があり、下にいくほど味が濃くなる。スープ割りで割ると酸味が際立つ。割りスープは玉ねぎ入りのコンソメtaste。具はメンマ、ネギ、激マズなナルト。



閑話休題


α,β-不飽和カルボニル化合物の共役二重結合の還元はヒドリドによる1,4-還元の他にも、[Hydrogenation]っていう手も使えます。接触還元の触媒としてはRaney-NiやRh/Al2O3とかを使った例が報告されていると思いますが、今回はパラジウム炭素に絞ってメモしようと思います。


簡単に調べられるところでは精密有機合成にこんな例があります↓

精密有機合成

それから、LarockのComprehensive Organic Transformation (2nd Ed.)に書いてあるパラジウム炭素を使った接触還元例をいくつか↓

J. Org. Chem., 1958, 23, 1853.
EtOH/ HCl aq.中で反応を行うとcis-選択的。


J. Org. Chem., 1987, 52, 2875.


J. Org. Chem., 1987, 52, 5594-5601.


J. Am. Chem. Soc., 1985, 107, 7967-7974.

あと、これはたまたま見つけたんだけどこんなのもあります↓

Chemical & Pharmaceutical Bulletin, 1996, 44, 1318-1325.

α,β-不飽和ケトンを飽和アルコールまで還元してからJones酸化するというなんとも面倒な方法でα,β-飽和ケトンを得ています。こういった事例があることから、パラジウム炭素はハマれば良いんだろうけど、基質一般性はそれほど高くないかもしれないという匂いがします。また、金属ヒドリドを用いた1,4-還元の研究がけっこう続けられていることからも、接触還元の汎用性が必ずしも高くなさそうな気持でいっぱいになります。

で、ここで着目したいのが岐阜薬科大の佐治木先生の研究成果です↓

まずはPd/C-Ph2S system。コンセプトはシンプルで被毒させて触媒活性を落として選択性を出すという、まあ、分かり易いアプローチです。基本条件は、

10% Pd/C (10 wt%), Ph2S (0.01 eq.), MeOH, H2 (1 atm), rt., 24 h

Org. Lett.20068, 3279-3281.
Tetrahedron200662, 11925-11932.

Pd/Cで還元されやすい芳香族ケトンも還元されません。あと、芳香族ハロゲン、エステル、アミド、ニトリル、カルボン酸、N-Cbzも還元されません(アジド、ニトロ基は還元される)。

この条件だと芳香族アルデヒドは還元されちゃうけど、溶媒をAcOEt or THF or MeCN or 1,4-dioxaneに変えること選択的のC-C二重結合のみを還元できます(但し、α,β-不飽和アルデヒドの例はない)。

ちなみに、Pd/C[Ph2S](パラジウム-活性炭素ジフェニルスルフィド複合体)は市販されていて、発火性が少ないとされています(佐治木先生のHPでは、エヌ・イー・ケムキャットから市販されていると紹介されています。以前は和光純薬が紹介されていて5,000 JPY/g, 15,500 JPY/5gで売ってたはずです)。

あと、Pd/Fib(パラジウム-フィブロイン複合体)。

基本の反応条件は、

2.5% Pd/Fib, MeOH or THF, H2 (balloon), rt.

有機合成化学協会誌, 2005, 63, 1218-1231.

Pd 2.5%がムラなくロスなくフィブロインにパラジウムが吸着されるようです。そして、触媒は発火性を全く示さず、目の粗い濾紙で濾過するだけで触媒を分離できるそうで、かなり好感触
芳香族アルデヒド、芳香族ケトン、芳香族ハロゲ ン、ベ ンジルエステル、N-Cbzには不活性で、そういった官能基ん存在下、C-C二重結合を選択的に還元できます(アジド、ニトロ基は還元される)。しかしながら、立体障害に弱いようで、トランス二置換、三置換オレフィンは水素化が困難なものが多く、常圧では全く反応が進行しないものもあります(残念。あんまり詳しくみてないけど、Pd/C[Ph2S]も立体障害に弱いかもしれないです) 。trans-α,β-不飽和ケトンで高収率でオレフィンの還元が進行する基質もけっこうありかすが、Pd/Fib触 媒存在下、トランスオレフィンが シスオレ フィンに異性化し、わずかに生成したシスオレフィンが還元を受けて反応が進行するものと考 えれば合理的に説明できるとしています。あと、この触媒も市販されています(和光純薬から4,500 JPY/g, 14,000 JPY/5g)。

立体障害に弱そうだという制限がある(ありそうだ)けど、高い官能基選択性は魅力的です。マジ使ってみたいです、Pd/C[Ph2S]Pd/Fib


次回、まとめです。

2014年3月16日日曜日

"1,2-" or "1,4-", That is the Question (5)

昨年行ったラーメン屋のメモです。

-柏大勝軒総本店 つけめん (680 JPY) memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
濃厚Creamyなスープは粘度を強く感じる豚骨魚介と甘い味噌系?の味でアツアツ。獣臭は殆どしない。麺は饂飩を彷彿させるストレートの太麺(切断面が正方形)で、しっかりした噛み応えとモチモチ感が凄い。ボクは細麺派で太麺は苦手なんだけど、これは美味しいと思った。あと、麺は熱くもなく冷たくもなくといった温度域で提供される。つけ汁の温度低下はそれほど気にならないレベル。麺にスープの味が良く絡む。具は、焼豚、メンマ、ナルト、ネギ、海苔。「途中で酢を入れてください」との記述があったので試してみる。酢の酸味の付与は悪くない。「味の飽き」対策に有効と思った。スープ割りは昆布の香りのする出汁。

参考までに、ラーメン (680 JPY)は濃厚Creamyな豚骨魚介醤油(?)スープで、つけ麺のつけ汁に較べて「汁感」が大分あります。それからネギがけっこう入っている。麺はつけ麺の麺と同様。お子さまラーメンは390 JPYとリーズナブル・プライス。「ラーメン(680 JPY)」とはスープあ明らかに異なり、粘度が高くよりCreamyになっている。お子さま仕様のためかネギは殆ど入っていない。

商品の味にはまずまず満足したけど、ホスピタリティとクリンリネスに関して問題ある店と思いました。具体的には、
a) テーブルに置いてある水には氷が入っていて冷たいが、最初に店員から提供される水は常温だった。
b) つけめんについてきたレンゲが汚れていた
などです。既に改善されていることを願います。


閑話休題


[1,4-reduction]の続きです

これまでに、DIBAL-H, L-Selectride, Stryker's reagentをつかった1,4-還元についてメモしてきましたが、今回はその他諸々の試薬をまとめてみようと思います。


Wilkinson錯体-Ph2SiH2の組合わせでは1,2-還元が進行しますが、Wilkinson錯体-C2H5(CH3)2SiHの組合わせだと1,4-還元が支配的です(Chem-Stationさんの記事で基質は限定されるとの記述あり)。

大学院講義有機化学 II

大学院講義有機化学には引用文献が書いてなかった気がしただけど、同様の報告が相模中研から出ています↓
Tetrahedron Lett., 1972, 49, 5035-5038.

他にα-ionone、citral、pulegoneの例があります(pulegoneの例は収率や生成比の記述はなく、LAHやSBHよりは選択的というレベルのよう)。 



あとFe(CO)5/NaOH
19 substratesの実施例
大学院講義有機化学 II
J. Org. Chem.197237, 1542-1545. (Chem-Stationで紹介)

ケトン、アルデヒド、エステル、ラクトン、ニトリルの共役二重結合の還元に適用可能。Fe(CO)5にNaOHを作用さえることで、[HFe2(CO)8-]や[HFe3(CO)11-]といった鉄ヒドリド錯体が生成すると考えられる。立体障害に弱い感じ。


Sodium Dithionite (Na2S2O4)なんていう例もあります↓

13 examples
Tetrahedron Lett.1995, 36, 1107-1108. (Chem-Stationで紹介)

何故か全ての実施例においてα,β-不飽和カルボニル化合物と飽和のカルボニル化合物を一緒に混ぜて反応させています。1,4-還元された生成物が82-94%。飽和のカルボニル化合物の回収率82-94%。


Sm2+による還元。
J. Am. Chem. Soc., 1980, 102, 2693-2698.

改良バージョン↓
10 substrates, 82-99%
Synlett, 1995, 443. (Chem-Stationで紹介)

系内でSm2+を発生さでます。二量体が副生することも。2-PrOHが最も選択性が高いが、MeOH, EtOHよりも長時間を要する。ちなみにethyl cinnamateの還元だと

MeOH: 1 min, 92% yield
EtOH: 5 min, 94% yield
2-PrOH: 10 min, 96% yield

α,β-不飽和アルデヒド、ケトンには適用できない(complex mixtureになる)。


Bu3SnH//Pd(PPh3)4の系。
Tetrahedron Lett., 1982, 23, 477-480.

Bu3SnHはslow additon(1eq./hrの滴下速度)が必要。ジメチルアニリンユニットを持つ基質は原料回収。立体障害に弱い感じ。反応が進行しない2例を除いて、7 substrates, 70-99% yield。


Photoreductionなんて例もあります↓
J. Am. Chem. Soc.1986108, 4561-4567.


あと、「たゆたえども沈まず」さんで軽く紹介されていたtert-アミン-Lewis酸を使った1,4-還元が興味深いです↓
8 examples, up to 98% yield

Org. Lett., 2011, 13, 3968-3871.

固定されたs-trans構造の基質だと収率が悪いです。また、用いる三級アミンは嵩高いのが良く、副反応も抑えられます。


それから、前のエントリーでメモしたCoCl2•6H2O-NaBH4 (http://researcher-station.blogspot.jp/2014/02/hydrogenation.html)。

WO2008/010235


まあ、こんなところでしょうか。

次は、[hydrogenation]による共役二重結合の還元についてメモしてみようとおもいます。


2014年3月9日日曜日

IKEA EFFECT

先日、新小岩に行く機会があり、その際、界隈の居酒屋に行ったのでメモします。

-源八丸 memo-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
八丈島料理がウリで、小岩の源八船頭の支店らしいです。瓶ビールは一番搾り(600 JPY)。生ビールは600 JPY。ハイボール 450 JPY。お通しは枝豆(250 JPY)でした。店員はアジア系。接客はいたって普通で、特に可もなく不可もなく。

-ホタルイカ沖漬 (500 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
塩辛さが強め。繊細さに欠く味。

-ホヤ塩辛 (500 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ホヤを出すなんてちょっと珍しい。鮮度が良さげで風味が生きてる。なかなか良し。

-あんきも (800 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
美味しいんだけど、少し臭みが出ているのが残念。

-鳥ポン酢-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
想像していたより普通の味。ポン酢のパンチが弱い。

-豆腐ととまとサラダ-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
豆腐は(あまり好きじゃない)絹ごし。トマトは青くささを殆ど感じずGood!

-お刺身一人前 (800 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
好きな刺身を二品選ぶ。チョイスしたのはめかじきと目鯛(金目鯛は品切れだった)。めかじきは脂が少しくどい。目鯛は舌触り、淡白な味、しっとりした食感がなかなか良かったが切り身が厚すぎると思った。ワサビは粉ワサビ。

-島の華-
-REVIEW-
八丈島の焼酎。他にも島の焼酎が何種類かラインナップされている。

総じて悪くない店と思いました。機会があったら再訪してみたいと思います。


閑話休題


1年くらい前に「MAKERS」っていう本を読んだんですが、その軽いメモです。著者は、「ロングテール」や「FREE」を書いたクリス・アンダーソンです。

で、本書はズバリ3Dプリンタの話。3Dプリンタの普及(=テクノロジーの民主化)によって、経済はアトムからビットへと移り、デジタル・マニュファクチャリング台頭する。そして、このデジタル・マニュファクチャリングがパーソナル・マニュファクチャリングを可能にし、この隆盛をもって第三次産業革命が起こると主張していたと思います。

パーソナル・マニュファクチャリングが狙う市場は「一万個単位の市場」。これは、オンラインで販売する製品やサービスが成功できるニッチな市場規模(十分に商売が成り立つ)であるといいます。それと同時に、規模が大き過ぎず、専門性を維持しながら激しい競争を回避できる=大量生産の手が届かないモノのロングテールであるといいます(あと、クラウド・ファンディングで資金調達も容易になる)。

ところで、ボクはこの本を読んで最も興味深く感じた件は、3Dプリンター起源の産業革命の話ではなく、"イケア効果"の話です。

イケア効果とは、消費者には、自分が創造に手を貸したと感じる製品をより高く評価する傾向にあることです(デューク大学 ダン・アリエリー)。

例えば、参加者が自分で作ったイケア家具を買う場合と、自分以外の誰かが作った全く同じ家具を買う場合、自作家具の方が他者製造家具よりも6-7%高い金額を支払うそうです。
これは、メーカーズ・プレミアム(自分が骨を折ったものにはより高い金額を支払う)と呼ばれ、コモディティ化に対する究極の対抗策であると著者は主張しています。

イケア効果の例をもう一つ↓

事象: 1950年代に発売されたインスタントケーキミックスは、当初、拒否反応が起きた。
理由: お手軽すぎて、主婦の労働や技術が過小評価されると感じた人がいたから
対策: レシピ変更。ミックスに卵を加えるようにした→大ヒット=手作業を加えることが成功の鍵


以上、世界最小のモノ造り(有機合成化学)を仕事にしている二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

2014年3月2日日曜日

"1,2-" or "1,4-", That is the Question (4)

また、銀杏で蕎麦食べてきました。
(cf. http://researcher-station.blogspot.jp/2013/09/diaziridinone-old-and-new-reagent.html)

-お通し (315 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
胡麻豆腐。あまり胡麻胡麻しておらず、あっさりした味で好感が持てる味。山葵の香味がとても良いアクセントになっている。

-新政 No. 6-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
微弱なmilky note。口に含むと甘みが広がる、そして、この甘みはクセになる甘みで、綺麗にfinishしてゆく。微弱な酸味も伴う。
-DATA-
分類(Grade)/
原料米(Rice variety used)/ 吟の精、酒こまち、美山錦
精米歩合(Rice polishing ratio)/ 50%
アルコール分(Percentage of Alcohol)/ -%
日本酒度(Sake meter value)/
酸度(Acidity)/
アミノ酸度(Amino acid degree)/
酵母(Yeast)/ 六号酵母
杜氏(Toji)/
仕込み水(Water)/
-COMPANY-
新政酒造(株)
http://www.aramasa.jp/top.html


-淡雪 (1,200 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ぶっかけのとろろ蕎麦です。まず、いきなる柚子の良い香りがプーンと漂ってくる(とろろの上に柚子の小さい粒が浮いている)。ツユはpale yellow。白しょうゆチックな色で、まろやかに塩味が効いていて良い。少し細めの蕎麦はエッジが立っていて、ピシッと締まっていてとても旨い。とろろはフワフワで弾力に富んでいてとても良い感じ。とろろの中には卵黄が仕込んであって、これがまた心憎い。総じて、とても旨い。料理として洗練されていて完成されている。

-ソレイユ甲州-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
マリアージュ的に淡雪とはシナジーがないが、喧嘩もしない。軽くふくよかで、基本、スッキリ系で普通に旨い。個人的にはグレイスの方が好き。
-COMPANY-
旭洋酒(有)
http://www5e.biglobe.ne.jp/~soleilwn/


閑話休題


[1,4-reduction]のメモの続きです。

1,4-還元に有効な試薬としてStryker's reagent ([(Ph3P)CuH]6)がChem-Stationや「たゆたえども沈まず」さん、「ほろ酔い化学者のブログ」さんなどで紹介されています。


9 examples, 82-96% Yield
J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, 291-293.

使用可能な溶媒はベンゼン、トルエン、THF。α,β-不飽和ケトン、エステルの基質一般性は良好そうです。塩基が触媒するアルドール縮合にセンシティブな基質を用いると不安定な中間体が分解し、副生成物がたくさんできるらしいですが、水存在下で反応を行うことでこの副反応を完全に抑制できます(量論量の水で飽和させたベンゼンで実施。2-20 eq.の範囲で収率、選択性に変化なし)。また、生成する銅エノレートをTMSClで処理すれば、シリルエノールエーテルへと誘導できます(2 examples, 95% Yield)。

α,β-不飽和アルデヒドの還元は少し難しいようですが、反応条件を適切に選択すれば1,4-還元体と、カルボニルも還元されたものとをつくり分けることができます。

A: 0.32 eq. [(Ph3P)CuH]6, 2.5 eq. TBDMSCl, PhH, rt.
B: 0.40 eq. [(Ph3P)CuH]6, 20 eq. H2O, PhH, rt.
C: same as B, except THF solvent
D: 0.40 eq. [(Ph3P)CuH]6, 3.0 eq. TMSCl. PhH, rt.
E: 0.5 eq. [(Ph3P)CuH]6, 3.5 eq. TMSCl. PhH, rt.
F: TBAF, excess pH 7 phosphate buffer, THF, rt.
G: 10% HCl aq., THF, rt.
H: 5% AcOH in 7:1 THF/H2O

Tetrahedron, 1989, 30, 5677-5680.


さらに、Stryker's reagentは触媒反応にも対応可能で、複数の報告例があります。

まず、水素を使ったHeterolytic hydrogen activation-Catalytic hydride reduction



J.Am. Chem. Soc., 1989, 111, 8818-8823.

反応条件の条件の一般化は難しく、水素圧、トリフェニルホスフィンの量、反応時間の調整が基質毎に必要となります。


それからヒドリド源にシランを使った触媒反応
Tetrahedron, 2000, 56, 2779-2788.

シリルエノールエーテルが生成します。これをTBAFで処理すれば対応する1,4-還元体である飽和カルボニル化合物が得られ、Lewis酸存在下で求電子剤を作用させることでconjugate reduction / α-alkylationのタンデム反応(11 examples, 68-89%)が可能となります。

シランはPhMe2SiH, Me2HSiOSiHMe2, PhSiH3, PMHS (polymethylhydrosiloxane)が使用可能その活性は

PhMe2SiH < Me2HSiOSiHMe2 < PMHS


PhMe2SiHPhSiH3 <より安くて安定。で、Me2HSiOSiHMe2, PMHSはPhSiH3より安くて高活性(Et3SiHは活性を示さない)


Stryker類似試薬の報告↓


Tetrahedron, 1999, 55, 4573-4582.

CuF(PPh3)3•2EtOH (市販されてる)はstoichiometric version (6 substrates, 52-98%)で、CuCl/PPh3/TBAFはcatalytic version (8 substrates, 54-94%)です。立体的に混んでいる基質だと原料回収に終わります。ケトン、エステルの1,4-還元に有効で、アルデヒドだとcomplex mixtureを与えます。


比較的最近報告された改良法

14 examples, 42-96%
J. Org. Chem., 2009, 74, 7598-7601.

P(OiPr)3は安価で工業的に利用可能であり、(i
PrO)3PCuH, [(iPrO)3P]2CuH, [(iPrO)3P]2(CuH)3といった結晶性の安定な銅ヒドリド種を形成することが知られているらしです(Zh. Obshch. Khim., 1971, 41, 2103-2104.; Zh. Obshch. Khim., 1967, 37, 2364-2365.)。

ちなみに。R1=Me, R2=H, R3=Phのとき、ホスフィンが

P(OiPr)3→ 1,4-reduction: 76%, 1,2-reduction: 19%
PPh3→ 1,4-reduction: 61%, 1,2-reduction: 38%

なにります。

もともとこの改良法はAmaninol Aの合成中間体の1,4-還元のために開発された手法です↓

Org. Lett., 2007, 9, 5043-5045.

上記基質は極めてエピマー化しやすく、Stryker試薬も含めて既存の方法では上手く目的物を得ることができなかったそうです。で、ホスフィンをスクリーニングした結果、P(OiPr)3がベスト・プラクティスでした。


あと、e-EROSとかに書いてあったStryker's reagentの性質ですが↓

水に安定
不活性雰囲気下であれば、室温で長期間保存可能
秤量時、空気中での取り扱いオッケー
溶液状態で酸素に極めてセンシティブ(厳格な脱気が必要)
CH2Cl2, CHCl3とは反応する

こんな感じです。

ところで、Stryker's reagentは市販されているのですが、市販品はその品質に大きな差異があるようです。Lipshutzらは市販二サンプルとStryker protpcolに従って調製したサンプルの活性と1H NMRのスペクトル・データを比較しています(Tetrahedron2000, 56, 2779-2788.)。市販サンプルのうちの一つは全く活性を示さず(活性なヒドリドがない)、もう一つのサンプルはちょっとだけしか活性を示さなかった(一応、Stryker試薬のシグナルはある)そうです。それに対して、調製したサンプル(ほぼpure)はちゃんと活性を示したそうです。


試薬が市販されていて、触媒化できて、経済的なトルエン溶媒中で反応ができるというところに魅力を感じますが、"市販品の品質"と"溶液状態で酸素に極めてセンシティブ(厳格な脱気が必要)"っていう性質が非常に気になります、どんだけ脱気すればいいのかとかが。


まあ、ちょっと気難しそうな試薬なのかなと思いました。

まだ[1,4-reduction]のメモは続く.....