ちょっと苦手な渋谷に行ったときに購入したMOONSWATCHです↓
スウォッチを買うのは二十数年振りです。
やっぱスウォッチの魅力は(プラスチックバイオセラミック製の)チープな質感ですよね。堪らないです。そして、軽い。それでいてスピマスのフェイスは最高の玩具ですね。
閑話休題
新型コロナウィルスのワクチン打ってますかぁー?
ボクは打ってます。
モデルナ製を3回打っていて、今度はBioNTechの二価ワクチンで交差接種です。
(上市されれば第一三共の国産mRNAワクチンを人柱になる覚悟で打ちたいのですが.....)
とまあ世間でメッチャ流行ってるmRNAに関する文献を読んでみました(けっこう前に出たヤツだけど)↓
Complete Chemical Synthesis of Minimal Messenger RNA by Efficient Chemical Capping Reaction
ACS Chem. Biol., 2022, 17, 1308-1314.
107残基のmRNAを完全化学合成したというお話です。
核酸創薬全般で言われていることだと思うけど、安定性や翻訳性能向上の観点から化学修飾が重要な役割を果たします。生物学的なアプローチでは修飾核酸の調製は難しいので、完全化学合成という手法は価値が高いと思います。
さて、今回のお題のmRNAなんですが、真核生物(細胞核を持っている生物)のmRNAは5'末端にキャップ(Cap)と呼ばれる構造と、3'末端にpoly-A (polyadenosine)を有しています。
キャップはmRNAの成熟と翻訳を促進し安定性を高める役割があって、7-メチルグアノシンの 5'位が第一ヌクレオシドの 5'位に三リン酸基を介して結合した修飾構造(m7GpppN)をもちます。
RNA鎖の5'-末端へのキャップ構造の導入は重要なプロセスで、化学的キャップ化法は修飾mRNAの調製に決定的に重要なんですが実用的な合成法は報告されておらず、その開発は停滞しているようです。
で今回、著者らは迅速かつ定量的に進行するRNAの化学的キャップ化反応を開発したということです↓
ちなみに、5'末端側から1〜2残基のヌクレオシドの2'位の水酸基をメチル化すると(この辺が修飾部位)翻訳活性が増すそうで、実際、著者らの合成した修飾mRNAは天然型をはるかに上回る翻訳能が確認されました。
ウン、素晴らしい成果ですねと言いたいところだけど、気になるところがあります。
Supporting Informationを見てみると、mRNAの5'-リン酸基へのキャップ (m7GDP)の導入反応の試薬のモル比は(ボクの計算が間違っていなければ)、
5'-phosphorylated RNA : Im-m7GDP : 1-methylimidazole
= 1 : 1000 : 1000〜100000
なんですけど、試薬の当量数どんだけ〜。
19残基の5′-p-Gm-Am-ACGUGCGAAAGUCCACA-3′(100 pmolスケール)を使ってキャッピングの最適化してるんですが、ボクの読解力が低いせいか最適条件の明確な記述は見当たらなかったです(本文でもoptimalな収率が89%なのか94%なのかがボクの貧弱な理解力だと分かりませんでした)。
あと、107残基のRNAの合成は自動合成機で合成してるんだけど、カップリング工程のアミダイト試薬の濃度と化学量論量が分かんないし、5'末端のリン酸化に使った試薬は書いてなくって、収率も分からないです。
それから著者らが合成した107残基のRNAはキャッピング反応中に分解していくそうで、キャピング効率と残存するRNAを示したグラフが下図になります。
ここで、キャピング効率(Capping efficiency)が何を示しているのか分かりませんが、転化率だとすると反応収率や単離収率は60%に満たない気がするんですが、どうなんですかね?
門外漢なのでよくわかんないんだけど、オリゴ核酸合成の世界では合成のディティールってこんなチープ簡素でいいのでしょうか?個人的には、ちょっとあり得ない残念なレベルに感じました。
素人考えだけど、塩基長107のオリゴ核酸なんて実製造(上市)を考えた場合コスト的に見合うとは思えないけど、アカデミア・ユースでは十分実用的な合成法なんだろうと思いました。
以上、mRNA合成は道険しと思った二流大出のテクニシャン(研究補助員) のmRNA完全化学合成メモでした。
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