2026年2月11日水曜日

DKP ブンブン:Traceless DKP Formationを殲滅せよ

みなさーん。
ふるさと納税やってますかぁ? 
ボクはやってます。
ふるさと納税は寄付金控除のスキームを使った地方税(と国税)の移転スキームで、マクロではクソな制度なんですが、ミクロ(個人)ではお得です(美味しいです)。 
一個人では抗いようがないので、無駄な努力や痩せ我慢は止めてこの制度にコミットするのが最適解でしょう(仕方ない)。 
というわけで、今冬も大好きな赤貝をふるさと納税して美味しくいただきました。
山口県は周防大島町の赤貝です。どうですか、この見事な橙色は。

国産の赤貝はいいですね。その大振りの身から迸る豊潤な旨み、鮮烈な磯の香味、自然な力強い甘みは最高ですね。
近所のスーパーとか回転寿司屋の赤貝は韓国産とかだと思うんですが、その美味さには天と地ほどの差がありありますね。レベチ過ぎます。
みなさんも、ふるさと納税で赤貝ゲットして幸せになりましょう。


閑話休題


少し古いんですが、こんな論文を読んでみました↓

Optimized Fmoc-Removal Strategy to Suppress the Traceless and Conventional Diketopiperazine Formation in Solid-Phase Peptide Synthesis
ACS Omega, 2022, 7, 12015-12020.

Diketopiperazine (DKP)の副生を抑制する方法のお話です。
オープンアクセスです。

DKP形成はSPPS (Solid-Phase Peptide Synthesis)においてポピュラーな副反応で、その程度は
ペプチドの配列に大きく依存します。
具体的には、末端から二番目のアミノ酸が二級アミノ基を有する場合であったり、デプシペプチドで起こり易かったりします。この辺のことは以前メモしました。

そして、ほぼほぼFmoc基の脱保護の際に起こります。

ところで、ペプチド鎖の中ほどでDKP形成が生じると2残基分少ないペプチドが副生生物として検出されてDKPが出来ちゃったんだなって確認できるんですが、C-末端(固相担体に結合したジペプチド)で起こるとレジン(固相担体)は活性を失うのでDKPが形成した痕跡が残りません。このようなC-末端で起こるDKP形成は"traceless DKP formation"と呼ばれています。そして、traceless DKP formationがたくさん起こると、望みの配列のフルレングスのペプチドの純度はいいのに収率が凄く悪いといった事象が発生します。

なにはともあれDKP形成はペプチド合成の鬼門の一つなので、これまでに多くのDKP形成抑制法が開発されてきました。
例えば、アミノ基の保護基をpNZとかTrtとかallocにして塩基を用いた脱保護を回避したり、ジペプチドを用いたブロック縮合を採用するといった対策がありますが、よりプラクティカルな合成法といった観点からは実用的とは言えず、やっぱりFmoc基の脱保護条件を工夫するのが最も望ましいソリューションになります。
DKP形成を抑制するFmoc基の脱保護法としてはTBAFやDBUを使う方法があるんですが、TBAFでは反応が遅く、DBUでは反応性の副生成物であるジベンゾフルベンをクエンチすることができずNα-フルオレニルメチル化の懸念があります。

ということで著者らは、より効率的なFmoc基の脱保護法を探索します。
検討に使ったのは、Fmoc-Cys[(CH2)3COOtBu]-Pro-2-chlorotrityl resin。
コンベンショナルなFmocの除去条件はピペリジン/DMFなんですが、この化合物のFmoc基を普通に脱保護するとDKP (Cys(CH2)3COOtBu-Pro)が沢山出来ます。つまりDKPが生じ易い基質なわけで、検討素材として最適と言えるでしょう。

検討結果です↓
DKP-[Cys((CH2)3COOtBu)-Pro] Formation

Fmoc基の脱保護は室温で5分(1回目)および30分(2回目)実施していて、上の図の棒グラフは各条件において下段から5分(1回目)、10分(2回目)、15分(2回目)、30分(2回目)のDKPの定量結果です。

ピペリジンを用いた脱保護では溶媒を変えても濃度を変えても押し並べてDKPが沢山できるんですが、脱保護試薬を5%ピペラジンにするとDKP形成を効果的に抑制(4%未満)できることが分かりました。
ピペラジンがDKP形成の抑制に対して凄くいいヤツだっていうことが分かったんですが、大量の白色固体(1,4-bis(9 H-fluoren-9-ylmethyl)piperazine)が析出してしてしまいます。結晶性が非常に高い。

これはSPPSにおいてクリティカルにダメですね。
というわけで、さらなるインプルーブメントの探索を行った結果、溶媒をNMPに変えてDBUをちょい足ししてあげると(2% DBU, 5% ピペラジジン in NMP)、1,4-bis(9 H-fluoren-9-ylmethyl)piperazineの生成を、完全に抑制することはできませんでしたが、DKP形成を抑えつつSPPSに適用できる程度まで封じ込めることに成功しました(ヤッタ)。
コンベンショナルな脱保護条件(20% ピペリジン/DMF)だとDKPがトータル13.8%出来ていたところ、オルタナティブ・メソッド(2% DBU, 5% ピペラジジン in NMP)に処すことで3.6%に抑制できたわけです。

次に著者らは、オルタナティブ・メソッド(2% DBU, 5% ピペラジジン in NMP)の基質一般性の検討を行いました。
試したDKP形成し易いFmoc-Xaa1-Xaa2-2-Cl trityl Resinはこちら↓

Fmoc-N-4-F-Bn-Gly-Pro-2-Cl-trityl Resin
Fmoc-Gln(Trt)-Pro-2-Cl-trityl
Resin Fmoc-His(Trt)-Pro-2-Cl-trityl Resin
Fmoc-Trp-Pro-2-Cl-trityl Resin
Fmoc-Tyr(tBu)-Pro-2-Cl-trityl Resin 
Fmoc-Asn(Trt)-Pro-2-Cl-trityl Resin
Fmoc-Arg(Pbf)-Pro-2-Cl-trityl Resin  
Fmoc-Arg(Pbf)-Sar-2-Cl-trityl Resin
Fmoc-Asn(Trt)-Sar--2-Cl-trityl Resin
Fmoc-Gln(Trt)-Sar-2-Cl-tritylResin
Fmoc-His(Trt)-Sar-2-Cl-trityl
Resin Fmoc-Trp(Boc)-Sar-2-Cl-trityl Resin
Fmoc-N-4-Bn-Gly-Sar-2-Cl-trityl Resin

Xaa2にPro、Sar、N-4-F-Bn-GlyといったDKP形成し易いアミノ酸を配しています。
N-4-F-Bn-Glyの入った基質(Fmoc-N-4-F-Bn-Gly-Pro-2-Cl-trityl ResinとFmoc-N-4-Bn-Gly-Sar-2-Cl-trityl Resin)では結果が芳しくありませんでしたが(20%ピぺリジン/NMPに負けてる)、それ以外の基質ではオルタナティブメソッド(2% DBU, 5% ピペラジン/NMP)がlコンベンショナル(20%ピぺリジン/NMP)と比較して効果的にDKP形成を抑制 しています。

ハイ、ここまでの検討はtraceless DKP formation抑制に対する検討でしたが、最後に著者らはFmoc-Xaa1-Sar/Pro-Xaa3-Cl trityl Resinを基質に用いてペプチド鎖の中程で起こる普通(ordinary)のDKP形成抑制についても検討を行なっています。 
試したのはこちら↓

Fmoc-Arg(Pbf)-Sar-D-Phe(2-Me)-2-Cl-trityl Resin
Fmoc-His(Trt)-Sar-D-Phe(2-Me)-2-Cl-trityl Resin
Fmoc-Arg(Pbf)-Pro-D-Phe(2-Me)-2-Cl-trityl Resin
Fmoc-His(Trt)-Pro-D-Phe(2-MeI-2-Cl-trityl Resin

Fmoc-Arg(Pbf)-Pro-D-Phe(2-Me)-2-Cl-trityl ResinとFmoc-His(Trt)-Pro-D-Phe(2-MeI-2-Cl-trityl Resin でDKP形成抑制効果が抜群です。

ウン。明日からと言わす今日から使えそうなメソッドだと思う二流大出のテクニシャン(研究補助員)のDKPメモでした。ブンブン。