小川町にある笹巻けぬきすしで買ったお寿司のメモです。
-笹巻けぬきすし総本店 7ケ折詰 (1,695 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
小肌、海老、おぼろ、たまご焼、かんぴょう巻×2、白魚の7ケ入り。
全体的にお酢がかなり効いている。特にネタに酢が効いている。そして、この酢が清々しい香味で旨い。
小肌は特に酢が効いている。江戸前の握りのような繊細さと柔らかさは無くて、少し張りを感じさせる身だけど普通に旨い。
海老も酢が大分効いている。で、それがとても良い。一本芯の通った味になっていて、海老の旨さとってもup↑している。海老はあまり好きなネタじゃないんだけど、この海老は絶品。初めて心の底から旨いと思った海老でした。
おぼろはわざとらしい感のある甘さはほどほど。
たまご焼は砂糖の甘さを感じさせない硬派な味。焦げた香ばしい香味と玉子本来の香味とシナジーがとても良い。薄い皮の張った感じの食感が噛み切った際にとても心地良い酢飯との相性もとても良い。
かんびょう巻はかんぴょうの味がとても良い。濃厚で滋味深い複雑な味。海苔は張りが残っていて、海苔を噛み切った際の『プツィッ』という食感と、かんぴょうのもの凄い柔らかい食感とのコントラストがとても良い。信じられないくらい旨いかんぴょう巻で、こんなに旨いのは初めて食べた。
白魚は茹でた白魚なんだけど、茹でたのは初めて食べました。で、シラスと較べて大振りな身は醍醐味があり、味の濃さが伝わってきて良い。
総じてお酢がけっこう効いているんだけど、刺々しい感じは一切無く、むしろ清々しさに溢れている。
また買いに行きたいな。
ところで、『笹巻けぬきすし』の読み方に戸惑う人も結構いるっていう噂を小耳にはさみましたが、読みは『ささまきけぬきすし』です。参考までに。
閑話休題
けっこう前にだけど、こんなtweet↓
があったので、遅ればせながら、ボクも読んでみました↓
Grignard Reactions in Cyclopentyl Methyl Ether
Asian J. Org. Chem., 2016, 5, 636-645.
Industry-Friendlyな溶媒として注目されているCPME中でGrignard試薬の調製からGrignard反応までやったらどうなの?っていう論文です。
ところで、周知の通りGrignard試薬の調製と続くGrignard反応はエーテル系の溶媒でオペレートされます。実験室でかつて最も汎用されるたのはEt2Oだと思いますが、特殊引火物だけあって極度に高い引火性と麻酔性が問題点として指摘されます。
なので工業的にはTHFを用いるのが一般的です。しかしながら、THFにも問題が無い訳ではなくて、放っておくと徐々に爆発性の過酸化物を形成する(オレはトロントロンになったTHFを二度ほど見たことがあります)ことに加えて、水からの回収が難しいのが問題点として挙げられています(まあ、過酸化物対策としてはBHTを添加するのが定法で、普通にBHT入りTHFは普及してるし、オレは反応中にBHTの悪影響を感じたことはまだ無いです)。
で、THFの代替溶媒として近年注目されているのが2-MeTHF。バイオマス由来の溶媒で、過酸化物も形成されにくく、水とも混和しません。そして、多くの企業が医薬品原料の製造に2-MeTHFを使うようになってきているといいます(Org. Process Res. Dev., 2007, 11, 156-159.; ChemSusChem., 2012, 65, 301-302.)。
そしてもう一つグリーンな溶媒として注目されているのが日本ゼオンが開発したCPMEで、有機合成の現場での使用が増えてきているといいます。
著者等はCPME中での反応開発を行っています↓
Tetrahedron, 2013, 69, 2251-2259.
(他にも、hydrosilylation, hydrothiolation, radical reductionなど実施している)
で、著者等のCPMEを使った反応研究の次のターゲットがGrignard PreparationとGrignard Reactionという次第です。
Grignard反応は最も古典的な反応の一つで、有機合成化学者で一度もやったことのない人を探すのは難しいというくらいポピュラーな反応で、多くの研究がなされています。CPME中での反応も報告されていますが、それらの殆どは特定の基質をターゲットにしたもので、CPMEがGrignard反応一般の溶媒として適しているかどうかは明らかになっていません。そこで、CPME中でのGrignard試薬の調製からGrignard反応までを包括的に研究してみようというのが本報です。
さてThis Workですが、まずは3-bromoanisoleを用いて、CPMEと他のエーテル溶媒中での反応の比較と反応条件の最適化を行った結果がこちら↓
3種類の溶媒(CPME, THF, 2-MeTHF)の中では一番イマイチだけど、CPME単一溶媒でGrignard試薬の調製から続くGrignard反応を行うことができます。それから、CPMEに対するGrignard試薬の溶解度はTHFや2-MeTHFと較べて低いです。
ところで、Mgの活性化にDIBAL-Hを使っていますが、著者等は活性化剤のスクリーニングもしていて、DIBAL-Hがベストという判断を下しています。因に、著者等が試した活性化剤は7種類で、その序列は次の通りです↓
DIBAL-H ≒ Red-Al > I2 > BrCH2CH2Br > LiAlH4 = BH3•SMe2 > NaBH4 (no acceleration)
(個人的には、dry stirringとI2の組合わせがボクのお気に入りです。色が消えて分かりやすいから)
さて、CPME中でのGrignard PreparationとGrignard Reactionの基質一般性についてです(アルデヒドはPhCHOで固定)↓
まずは、ブロミド↓
iso-PrBr, AllylBr, BnBrは他の基質よりも速やかに反応が進行するものの、60˚CではWurtsカップリングによる二量化も進行します。で、室温もしくは氷冷下でブロミドを注意深く滴下することで二量化を最小限に抑えることができます。
あと、iso-PrBrを基質に用いた場合、活性化にDIBAL-Hを用いた方がヨウ素を用いる場合よりも10%収率が向上します。
あと、1-bromo-2-chlorobenzene, 1-bromo-2-fluorobenzeneのGrignard反応が不発なことが意外です。何か出来ているっていうんだけど、complex mixturesになって同定できなかったと言います。因に、対応するGrignard試薬は市販されておらず、著者らは極めて不安定で即座に分解してしまうのではないか考えています。
それから、(E)-C6H5CH=CHBrはWurtsカップリングが起こりやすく、40˚C未満では反応が進行せず、Wurtsを抑えることができないです。propargyl bromideは室温で加えると発熱を伴って反応が発進してGrignard試薬を調製できなかったと言います(温度制御をちゃんとやったのかっていうツッコミを入れたい)。
次にクロリドです↓
クロロベンゼンだとCPME単一溶媒では収率が低く、THFとの混合溶媒を用いることで収率アップです。ベンジルクロリドはWurts対策のために水冷下でのGrignard formationが必要。AllylClはGrignard試薬を形成せず、Barbier反応によってGrignard付加体を取得しています。
因に、n-buthylmagnesium bromideとn-butylmagnesium chlorideのCPME溶液は0℃で少なくとも三ヶ月は安定です(その間沈殿も着色も観察されない)。
また、反応後のCPMEを抽出-蒸留して回収したものにCPMEの分解物は検出されず(GC >98%)、繰り返しリサイクルしても収率に影響を及ぼすことはないです(1-bromo-3-chloribenzeneの場合)。
そして、医薬品合成への応用もアピールしています↓
tamoxifenの合成の最終工程ですが、窒素原子を含むGrignard試薬の調製は難しく、CPME単一溶媒ではGrignard試薬を調製することができず、THFとの混合溶媒を用いています。それでも未反応の臭化物がけっこう残存して、これがtamoxifenと分離するのが大変という冴えない結果です。最終的には、少過剰にn-BuLiでチリオ化することでこの問題を解決するんですが、リチオ化もCPME単一溶媒では不完全で、THFの添加が必要となります。
最後にボクの個人的な感想を述べさせてもらうと、CPMEでそこそこGrignard試薬が調製できるのは合成化学上の新たな武器になるかなと思いますが、その用途はTHF(や2-MeTHF)で結果がイマイチでCPMEで改善される場合に限定されるのかなと感じます。でも、(バルクの値段は分からないけど)試薬グレードでは、THFとCPMEが同じ値段っていうのには、安くなったなぁと驚きました(TCI, 500 ml, 3,600 JPY)。
基質一般性の検討のところで著者等は、
"It appears that CPME has a negative effect on Grignard formation from aromatic chlorides"
と述べていますが、tamoxifen合成からも、CPME中でのハロゲン化物のメタル化は遅いのはほぼ確実と思います。そして、この問題のためにTHFとの混合溶媒を使うと、CPMEのリサイクル性の高さも魅力半減です。
あと、実際の実験に関してですが、Grignard Preparationの件で、『室温』とか『氷冷下』とか説明してるけど、そういうところに大学研究のアマチュアっぽさを感じますね。このスケールで温度計つっこまないのはオレの感覚では絶対あり得ない。ついでに言わせてもらうと、Griganard PreparationのInitiation段階は1℃前後の温度上昇をモニターするのが肝。温度を0.1-0.2℃刻みでモニターしないなんてあり得ないですよ(もし、ちゃんとやってたらごめんなさい)。さらに、反応が速いに越したことはないけど、『60˚C, 3 hr』っていう反応条件へのこだわりが今ひとつ理解できないです(ボクが浅学なだけかもだけど)。ボクの理解ではGrignard試薬形成は自己触媒反応で、熱を掛けるとWurtsカップリングが起こりやすくなるには周知の事実なので、もっとマイルドな条件でovernightくらいしとけばいいんじゃないの?って思うんですが、どうなんでしょう?
それでも、CPME中でのGrignard反応の特性を明らかにした仕事は良い仕事と思いました。以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の生意気なメモでした。
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