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2020年1月6日月曜日

もっと、交換反応 (8) : 核酸医薬のためのトランスグリコシル化反応

増税前の暑い時季に日比谷公園でお昼を食べたときのメモです。

-日比谷松本楼 memo-

住所:千代田区日比谷公園1-2
http://www.matsumotoro.co.jp

-Afterdark (アフターダーク) (増税前で700 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
SPRING VALLEY BREWERY
TYPE: BLACK LAGER
ALC. 6.0%
深くローストされたことに伴うであろう香ばしく甘い香りと、麹様の香り、コーヒー様の香りがする。
味わいは、深いロースト感、強い甘み、アーシー(earthy)とスーパーフルボディー。凄く濃厚だけど、爽やかさを覚える不思議な味。
ヤヴァイくらい美味しいです。

-オムレツライス 2色のソース (増税前で1,500 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
4種類のソースから2種類のソースを選んで食べるオムライス。
ソースの種類は、
 ハヤシソース
 海老と帆立のトマトソース
 きのこのクリームソース
 カレーソース
の四種。
そしてボクがセレクトしたのは「ハヤシソース」と「海老と帆立のトマトソース」の二種。
オムライスの玉子は、フワフワ、トロトロで透明感のある綺麗な香味で純度の高さを感じさせる。
内部のチキンライスは優しい味付けで、穏やかな旨さ。口の中でハラハラと解けていく食感が心地いい。
トマトソースは魚介エキスふんだんで、滋味深くマイルドに濃厚。僅かに粒子感のある激旨ソースに仕上がっている。プリッとした海老と、柔らかく仕上がった帆立も美味しい。
ハヤシソースも、トマトソースに負けず劣らず極上の出来栄え。ディープなコクで濃厚だけど、重さを全く感じることなく、そのままグビグビ飲んでも良いレベル。具材のお肉は適度な弾力とがあって、歯を入れると繊維が心地よく解れていく。そして、やんわり香るビーフの獣フレーバーが食欲をそそる。マッシュルームもハヤシソースと合い過ぎるくらい鉄板の相性。
どちらのソースもオムライスにベストマッチで、それぞれのソースと玉子、チキンライスの相乗効果で旨さ爆発です。一皿で二味楽しめるのも嬉しいです。


閑話休題


これまでにメモした交換反応系の話です↓

(1) ZnTAC24 : Environmentally Friendly and Unique Transesterification
(2) もっと、交換反応 : NaOMe最強伝説
(3) もっと、交換反応 (2) : アセタールをつけたり、とったり
(4) またまた交換反応:今度はオニウム塩が主役

今回読んだ文献はこちら↓

Synthetic Method for 2′-Amino-LNA Bearing Any of the Four Nucleobases via a Transglycosylation Reaction
Org. Lett., 2018, 20, 1928-1931.

最近くどいくらいにメモしてきたエステルとかアミドの交換反応とは毛色が違い、今回のお題はトランスグリコシル化反応です。

エーザイの報告で、大阪大学の小比賀先生との共同研究の一環で行った核酸医薬(人工核酸)関連の合成研究だと思います(ちなみにボクは、核酸医薬はさっぱり分かりません)。

小比賀先生のグループではアンチセンス核酸をターゲットとした人工核酸の研究を行っていて、核酸の糖部の2'位の酸素原子と4'位の窒素原子をメチレン鎖で架橋することで、コンホーメーションを完全にN型に固定した2',4'-bridged nucleic acid (2',4'-BNA)もしくはlocked nucleic acid (LNA)と呼ばれる架橋型人工核酸(2',4'-BNA/LNA)の設計・開発を行っています。

核酸の糖部フラノース環は、一般に二重鎖RNAではN型と呼ばれるコンホーメーションに偏っているそうで、最初からN型に固定された架橋型人工核酸を使えば、二重鎖形成時のエントロピー損失を抑制(コンホーメーションのゆらぎを固定)することで、二重鎖の安定化が期待できるそうです。実際、小比賀先生らの開発した2',4'-BNA/LNAは、対応する天然のオリゴヌクレオチドに比べて10万倍安定な二重鎖を形成するようです。

ところで、核酸ってどうやって合成すんの?ってことなんですが、ボクは核酸スーパー素人級なので、はっきり言ってよく分かりませんが、ホスホロアミダイト法でつくっているようです↓

Tetrahedron Lett., 1997, 38, 8735-8738.; Tetrahedron Lett., 1998, 39, 5401-5404.
see
(1) DNA Oligonucleotide Synthesis
(2) 核酸医薬合成基礎講座 「第3回 オリゴヌクレオチド合成におけるカップリング反応」

まぁ、こんな感じで人工核酸が合成できるとして、小比賀先生らは核酸の糖部のモディファイを行っているわけですが、そのバリエーションはこんな感じです↓


そして、今回の交換反応の主役はGuNA(グーナー)です。

GuNAは架橋部分にグアニジノ基を有しています。何故グアニジノ基?というと、その静電的相互作用によりより安定な二重鎖形成を狙っているのだそうです。
そして当初、GuNAは次に示すSchemeで合成されました↓

Synthesis of GuNA monomer and phosohoramidite
Chem. Commun., 2014, 50, 575-577.

一般的にアデニンやグアニンなどのプリン塩基を有する人工核酸の合成は難易度が高いそうで、A, G, C, Tそれぞれの誘導体合成は個別の合成経路で行われることが多いみたいですが、エーザイの研究員の人たちの叡智の結晶の結果、GuNAに関しては2'-Amino-LNA-Tを共通中間体として、そのトランスグリコシル化反応により4塩基誘導体(A, G, C, T)を効率的に合成できましたよというのが本報の内容です。次、その結果です↓

まずは、トランスグリコシル化反応の起点となる2'-Amino-LNA-Tの合成です。

Synthesis of 2'-Amino LNA-T

そして、2'-Amino-LNA-TからGuNA誘導体(この場合は、GuNA[NMe])への合成はこんな感じに合成されます↓

Org. Biomol. Chem.201816, 6531-6536.

そして、本題のトランスグリコシル化反応です。保護基を変えた二種類のグリコシルドナーを用いて検討しています↓

Transglycosylation Reaction from 2'-Amino LNA-T to A, G and mC

なかなかエクセレントと思います。

ただ、ここで残念なお知らせがあります。このトランスグリコシル化反応ですが、架橋部位の窒素原子がアシル化されると反応が全く進行しなくなります。


この論文には書いてないけど、架橋部位のヘテロ原子が酸素の2',4'-BNA/LNAでもトランスグリコシル化反応は起こらないそうです。つまるところこの反応は、制約と誓約によって手に入れた(ハンタ読みすぎ)、GuNA前駆体限定の反応のようです。

ちょっとガッカリ感がデカイですが、それでも、よくこの交換反応探したよね、収率もいい感じだし(拍手です)。

もし、もっとオールマイティなトランスグリコシル化反応を開発した人がいたら教えて下さいと思う、国内二流大出のテクニシャン(研究補助員)の交換反応メモでした。


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