2020年1月3日金曜日

もっと、交換反応 (7):LiHMDSだって交換反応できるんだからっ!

増税前の寒い時季に(2017年だったりします)、鮟鱇とか牡蠣とかを食べに行ったときのメモです↓

-市場食堂 さかなや memo-
足立区千住4-11-6

-お通し (500 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
海老の素揚げ、(多分)つぶ貝、(多分)ふぐ皮の煮凝りの三品で、かなり豪華なお通し。
どれも上品な仕上がりでとっても美味しい。
海老の素上げは、塩加減がいい塩梅で。サクッと揚がっていて、海老自身の旨味が濃厚。
(多分)つぶ貝は、一個まるごとでしっとりとした味付け。食感も良し。
煮凝りは冷えているので、少し常温で放置してから食べると、口の中で秀逸かつ絶妙な感触で溶けてゆく。あと、薬味のからしは必要ないかな。
このお通しとお酒(日本酒)だけで、おなかいっぱい(大満足)になれるね。

-「ひれ酒」(とらふぐ) (900 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
普通に美味しい。








-揚げ銀杏 (600 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ツヤツヤに揚がった銀杏は、塩味控えめで、纏った油はうっすら。ボク的にはもう少し塩味が効いていてもいいと思うけど、銀杏のフレッシュさと滋味が存分に味わえます。





-余市産あんこう唐揚げ (800 JPY + tax)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
(いせ源やひもの屋のように)整えられた唐揚げではなくって、鮟鱇の色々な部位のざっくりした切り身を揚げたワイルド系唐揚げ。全体的に骨が多くて、はっきり言って、滅茶苦茶食べ難い。"整えられた"部位(弾力があって、身が繊維状にほぐれる部位)はとっても旨いけど(一番旨いと思う)、他の部位は、正直、ゲテモノちっくな感じ。例えば、茸の傘のような形状の部位は、タコのような弾力に富んでいてなかなか噛みきれず、淡白。あと、プリュンプリュンなエキゾチックな部位もある。鮟鱇のいろんな部位を知るという意味では、とっても勉強になる一品だけど、トータルな満足感は少なめ。

-富乃ハイボール  (700 JPY + tax)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
富乃宝山のハイボール(炭酸水割り)。
上品なマスカット様の香りがふんわりと香る(これは秀逸)。"芋"らしいコクとメローな甘みがあって、フィニッシュに苦味がアンニュイな気分にさせてくれる。
富乃宝山の炭酸水との相性はそこそこ。

-真カキ産地食べ比べ (800 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
左が有明産(佐賀)、右が厚岸産(北海道)。
有明産:だいぶ丸みを帯びた形状。口に含むと皮のような張りのある食感で、歯を立てると皮が破れる感触がある。味がもの凄く濃厚で、ミルキー&クリーミー感がシュゴイ!
厚岸産:とっても瑞々しくて、ニュルンとした柔らかい食感。有明産と較べてスレンダーな味わいで、フレッシュが半端ない。
有明、厚岸のどちらも大粒で、とっても美味しい!!!それで、両者の味が全然違うのが面白い、これは是非とも味わうべき一品。はっきり言って、ボクの中で牡蠣の概念が変わりました。

-たきたて!天然真鯛飯 (700 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
優しいお出汁の香味が最高にグッド!(重複表現)。鯛の濃密ないい匂いが猛烈に食欲をそそる。鯛の身の淡白な滋味深さと、しっとりしつつハフハフにほぐれる食感が最高に美味しくて、最高に心地いい。
「たきたて!」を謳ってるけど、注文から提供までの時間を考えると炊きたてじゃないと思う(一緒に注文した牡蠣よりだいぶ早く提供されたし)。
あと、ご飯は、悪くわないけど、立ってて固めの方が好みかな。

-いちご酎 (800 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
「鳳凰美田」と「とちおとめ」を使った焼酎カクテル。on the rocksで頂く。色合いは綺麗なピンクに乳濁している。芳醇な苺のフレーバーと、締まった上品な甘さが完全に焼酎に溶け込んで調和している。そして以外にも、ご飯(鯛飯)にも牡蠣にも合う。
最高にリッチな気分になれます。


閑話休題


これまで交換反応系の話を幾つかメモしてきました↓(最近の枕詞)

(1) ZnTAC24 : Environmentally Friendly and Unique Transesterification
(2) もっと、交換反応 : NaOMe最強伝説
(3) もっと、交換反応 (2) : アセタールをつけたり、とったり
(4) またまた交換反応:今度はオニウム塩が主役
そして今回もまた、しつこく、しつこく交換反応のメモを書きます。
読んだ文献はこちら↓

Highly selective transition-metal-free transamination of amides and amidation of esters at room temperature
Nat. Commun., 2018, 9, 4165.

(また)Szostak等の報告で、オープンアクセスです。

今回のお題は、

アミド→アミド (transamination)
エステル→アミド (amidation of esters)

です。

ということで、まずは先行研究例です↓


古典的な合成法は条件がキツかったり、二級アミドには適用が難しかったり、求核性の小さいアリールアミンとの交換反応は難しかったりするといいます。

また、近年進歩の著しい遷移金属を使った方法は、遷移金属を使ってる時点でいろいろと改善の余地があり(枕詞)、条件が厳しかったり、基質一般性に乏しいという問題があるようです。

遷移金属フリー(枕詞)で、もっとマイルドに、もっと一般性の高い反応をということで、著者らが見出した反応条件がこちら↓

This work

ここ最近メモしてきたアミドの活性化法と同様に、アミド周りを嵩高くしています。
マイルドかつ簡便な反応条件で、基質一般性も高そうです。さらに、ボクが工業ユース最強溶媒と認定しているトルエンを使用しているのにも好感が持てます(安くて安定)。

まず、アミド→アミド (transamination)からみていきましょう↓

Transamination of amides
24 examples, 62-98% yield

ench-top set-upでオッケーです。遷移金属を使ったクロスカップリングでは、Boc基のが切断されてしまうという副反応が問題となるそうですが、本報では観察されません。

著者らは塩基の検討をしていて、KOtBu, NaHMDS, n-BuLi, KHMDSを試していますが、LiHMDSがベストでした(ある種のケースではNaHMDSが良好な場合もある)。また、この反応は基質濃度にセンシティブなのだそうです。

求核剤の電子状態に関わらず円滑に反応が進行し、立体障害の大きいアニリンでも高収率です。

さらに、クロスカップリングでは合成が難しい基質(エステル、ハライド、ヘテロサイクル、強力に電子不足なアレーンなど)でもイケイケなところがウリです。


Transamination of N,N-Boc2 amides
18 examples, 74-98% yield

N,N-Boc2アミドもN-Boc,N-Phアミドと同様の広い基質一般性を示します。これで、一級アミドと二級アミドからのアミド交換達成です。それにつけても、Bocってしゅごいです。

Transamination of various amides

アミドの窒素周りの置換基を変えた検討結果ですが、けっこう色んな置換基でイケていて素敵です。

お次は、エステル→アミド (amidation of esters)の反応です。

Amidation of esters
24 examples, 72-98% yield

やはりこちらも基質一般性が広く、総じて高収率です。

そして、光学活性なプロリンから誘導された基質を使った例では、光学純度の低下は観察されません。

One-pot amide N-activation/amidation

ワンポットでもイケイケ。


以下、競争反応した場合の選択性です↓

Intermolecular competition : anilines



Intermolecular competition : amides and esters



Intermolecular competition : amides vs. esters


Intermolecular competition : amines


これらの競争反応の結果(選択性)から、アミンの脱プロトン化から反応がはじまることが示唆されます。


それにつけても、アミド交換なんてやり尽くされた感のあるトランスフォーメーションだけど、まだまだ探索の余地があったことに驚きです。しかも、古典的かつマイルドな反応条件で。
(ひょっとしたら、企業では当たり前の常識で、その情報を公開してないだけなのかもだけど)


ところで、金属アミドだと「リチウムヘキサメチルジシラジド」で、フリーのアミンだと「ヘキサメチルジシラザン」なわけだけど、どっちも「ジシラザン」って言う人が多いよねと思う、国内二流大出のテクニシャン(研究補助員)の交換反応メモでした。


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