2019年12月22日日曜日

もっと、交換反応 (4):tert-Butyl Nicotinateでアミドを活性化するなり

暑いときに東京ミッドダウン日比谷の「立ち呑み屋」と「角打ち」に行ったときのメモです(増税前=消費税8%です)。

まずは3Fにある立ち呑み屋から。

-三ぶん memo-

-だしがゆ-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
小さい猪口で提供される、お通し的存在。
濃ゆい出汁の風味rich!雑穀を想起させる力強いbody!文句なしにうまい!
店員のおねえさんが「お酒を飲む前に胃に粘膜を張ってもらう」って言ってたけど、科学的根拠があるのか激しく疑問。

-美田 山廃純米にごり (六勺) (500 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
(多分)雪冷えで提供される。上品で締まりのある甘さ。辛さもそこそこ感じて、サラサラした飲み口。温度上昇で少しダレ気味。






-マグロ 北海道 (500 JPY+tax)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
「からしと塩をつけて食べるのがオススメの食べ方」なのだそう。で、実際やってみたら意外に合います。お塩で赤身が映えます(これには驚き!)。鮪はウェット感が殆どないんだけど、これが塩と合わせるときのポイントなのだろうか?但し、鮪自体のコクと身の張りは乏しく凡庸な感じ。筋はなかったです。


-だし玉子 (200 JPY+tax)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
とっても上品なお出汁!スープに脂が浮いていて、僅かにお肉の香味を感じる。玉子がちょい甘過ぎで、せっかくの上品なお出汁の味と合わない。
温度が下がると、お出汁の旨味ダウン↓(香り立ちが悪くなるからだと思う)


-菊正宗 熱燗一合 (900 JPY+tax)-

-みょうが味噌 (200 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
甘さとしょっぱさのバランスのとれたお味噌に、アクセント程度に茗荷を和えたもので、味噌が主役。淡麗辛口の日本酒に合いそう。舐めるように食べます。




-来福 超辛口 (六勺) (500 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
日本酒度+18。その数値とは裏腹に、そんなに辛さは感じなくて、控えめな甘さでであっさりした綺麗な酒質。スレンダー美人なテイストのお酒で、料理のお供(食中酒)に良さそう。(多分)雪冷えでいただきました。



店員のおねえさんに、松茸(中国産)、赤貝、鰻の蒲焼(鹿児島産)、穴子、岩牡蠣(新潟産)、マコガレイを勧めらたんですが、軽く引きました。だって、赤貝の旬って真冬っしょ。あと、鰻の蒲焼注文したら二十分以上かかりそうな気がするんだけど立ち飲みでそれってどうなのって気がします。ちなみに、ボクの隣の熟年カップルは岩牡蠣を食べながらブツブツ文句を言っていました。


次は1Fに入っている角打ちのお店のメモです。

-住吉酒販 memo-

-当店限定 生ビール住吉IPA (800 JPY+tax)-
-RATING- 
-REVIEW-
お店の人から少し軽めのIPAと説明されたけど、正にその通り。香りも味もしっかりIPAなんだけど、その密度は抑えられている。その分、フレッシュさ、爽やかな果実味が強調されていて、飲みやすく仕上がっている。暑い夏に飲むIPAとして最適。軽快系IPA。


-住吉ポテサラ (400 JPY+tax)-
-RATING- 
-REVIEW-
"うちのビールに最高に合う!人気ナンバーワン"の説明書き。 
ポテサラにセロリとカカオニブを合わせた一品。
ポテサラ自体がキメ細かい舌触りで、深みのある味で旨い!セロリと合うのか半信半疑だったけど、このセロリはマイルドなケミカルテイストに仕上がっているためか、思いの外マッチする。で、カカコニブのカリッとはじける食感と、ドライなカカオのチョコレート様かつナッティーな拡散性のフレーバーがとってもよく合う。これは真剣旨い!
(このカカオニブに苦味はほとんど無かったです)

-田中六五6513 (800 JPY+tax)-
-RATING- ★★★
-REVIEW-
peach-milkyの華やいだsweet, fruity note。この香りから想像されるほどtasteは甘くない。嫌味のない軽めの優しく柔らかい甘さで、けっこうすっきりしている。食中酒としてイケます。



-きびなごオイル煮 (400 JPY+tax)-
-RATING- 
-REVIEW-
鮮度抜群のキビナゴのオリーブオイル煮。これは滅茶苦茶旨いぞォ!お店の人から「新鮮なキビナゴを使っている」って言われたんだけど、本当にフレッショで美味しい!!!身に張りがあって、しなやかな食感です。
キビナゴの下にお煎餅みたいなものが敷いてあるんだけど、キビナゴエキスとオリーブオイルが染み込んでいて、いと旨しです。
リピート必至だね。


このお店の支払いシステムがエクストリームに変わっているので、説明します↓
まず、一枚400円の花札を15枚渡されます(400円×15枚=6,000円分)。絵柄に関わらず花札一枚400円均一です。
おサケやおつまみの値段は日本円ではなくて、花札の枚数が書いてあります。で、花札を支払って商品をもらいます(なので、商品は400円刻みです)。
そして、お勘定は手元に残った花札をレジに持って行って精算です。

この変わった(花札)会計システムは、ホントはキャッシュ・アンド・キャリーでやりたいんだけど、オサレなミッドダウンで小銭をジャラジャラさせてるのは見苦しいから花札スタイルにしたのかなと想像します。


閑話休題


これまで交換反応系の話を幾つかメモしてきました↓

(1) ZnTAC24 : Environmentally Friendly and Unique Transesterification
(2) もっと、交換反応 : NaOMe最強伝説
(3) もっと、交換反応 (2) : アセタールをつけたり、とったり
(4) またまた交換反応:今度はオニウム塩が主役

しつこく今回も交換反応のメモを書きます。読んだ文献(オープンアクセスです)はこちら↓

Zn-Catalyzed tert-Butyl Nicotinate-Directed Amide Cleavage as a Biomimetic of Metallo-Exopeptidase Activity
ACS Catal., 2018, 8, 203-218.

メタロプロテアーゼを生態模倣したメカニズムで、二級アミドを活性化してエステルにしちゃおうっていうお話です。


一般論として、カルボン酸誘導体ナンバーワンの堅固な結合であるアミドから熱力学的安定性の劣るエステルへのトランスフォーメーションは困難(無理筋)で、過酷な条件が必要となり、溶媒量のアルコールを使用することが常です。従って、複雑な構造のアルコールや希少なアルコールの使用に制約があります。

じゃ、アミドを活性化すればいんじゃね?ってことで、アミド結合の共鳴(共役平面性)を減じさせた捩れた三級アミドを用いることで、アルコールによるアミド結合の開裂が低温で進行するという報告がなされています。それから、脱離基のキレーションによる活性化もあります。例えばこんなのが↓

Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, 548-551.



Tetrahedron Lett., 1992, 33, 2171-2174.
Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 6175-6177.

ACS Catal., 2017, 7, 3157-3161.

著者らはこれらの合成法のコンセプトは優れているとしながらも、問題点として、(アミドに)特殊な置換基が必要であったり、溶媒量のアルコールが必要(アルコリシス)であることを指摘しています。そして、この官能基変換における画期的な例として、Gang等とSzostak等の報告を挙げています↓

Cleavage of Tertiary Amides (previous work)


ref.   Nature, 2015, 524, 79-83.; Angew. Chem. Int. ed., 2016, 55, 15129-15132,; J. Org. Chem., 2016, 81, 8091-8094.; Chem. - Eur. J., 2016, 22, 14494-14498.; Org, Lett., 2017, 19, 4656-4659.; J. Org. Chem., 2017, 82, 6373-6378.; Org. Lett., 2017, 19, 3596-3599.; Nat. Commun., 2016, 7, 11554.; Chem. Sci., 2017, 8, 6433-6438.; Org. Lett., 2017, 19, 2158-2161.; Nat. Chem., 2016, 8, 75-79.; Org. Lett., 2016, 18, 796-799.; Org. Lett., 2015, 17, 4364-4367.; ACS Catal., 2016, 6, 5176-3179.; ACS Catal., 2017, 7, 1960-1965.; Angew. Chem. Int. Ed., 2016, 55, 6959-6963.; Org. Lett., 2016, 18, 4194-4197.; ACS Catal., 2016, 6, 7335-7339.; Org. Lett., 2016, 18, 5872-5875.; J. Org. Chem., 2016, 81, 12023-12030.; Chem. Commun., 2016, 52, 6841-6844.; Org. Lett., 2017, 19, 1434-1437.

Gang等とSzostak等の報告した反応では、律速段階となるC-N結合への酸化的付加を進行させるためにtert-アミドであるこが必須であり、N-Ph-N-alkylとN-Boc-N-alkylといった置換パターンでアミド結合を捩れさせることでアミドの共役を弱めることが重要です。また、Boc基やPh基の電子吸引性もアミドの反応性の向上に寄与します。

著者らは、Gang等のBoc基導入とそれに続く三級アミドのアルコリシスからなる二段階合成法は理想的な三級アミドの開裂法と評しながらも、アミドの開裂(アルコリシス)は二級アミドでは起こらないことが欠点であると指摘します↓


ということで、著者等は二段階合成法による一級アミドのアミド-エステル交換反応、一級アミド→活性化した二級アミド→エステル)の開発えお試みます。すなわち、一級アミドを活性化された二級へと誘導し、遷移金属を使って非加溶媒分解条件下でエルテルの調製を試みました。そこで著者等がヒントにしたのは金属エキソペプチダーゼで、その生態模倣することで見事ブレークスルーを達成しました。

Cleavage of Secondary Amides (This work)


因みに、directing groupであるニコチン酸エステルは、tert-Bu > iso-Pr > Et > Meでした。

ハイ、それでは具体的な最適化した反応条件と基質一般性を以下に示していきます。

まず、一級アミドに対するdirecting groupであニコチン酸エステルの導入です。


1,1'-bis(dicyclohexylphosphino)ferrocene (dcpf)を配位子に用いたBuchwaldのPd G3 precatalystを使ってニコチン酸tert-ブチルを導入します(ちょっと高くね?)。

そしてアミド-エステル交換反応はこちら↓


35 examples, 46%-quantitative yield

スタンダードなアルコール(12 examples)から複雑な構造のアルコール(9 examples)、そしてアミノ酸やペプチドから誘導したアミドとアルコールの反応(13 eamples)に対して反応を検討していて、なかなか基質一般性が高いです。それからtert-BuOAcはグリーンな溶媒として採用したそうです。例です↓




分子内に二級アルコールと鎖状の二級アミンを有するアミドを用いた反応で、分子間反応は起こりません↓


電子的、立体的環境の異なる5種類のアミド結合を内包するオリゴアミドを基質に用いた反応では、tert-Butyl Nicotinateで活性化されたアミド結合以外の開裂は起こりません↓


さらに、競合する配位部位(azine nitrogen)を有し、キレート形成能のある1,2-ジアミノ構造を持つことからチャレンジングな求核剤と考えられる8-アミノキノリンとの反応もしっかり進行します↓

それなりにマイルドな条件だし、かなり基質一般性が高いように思えます。アミド-エステル交換反応自体は触媒反応だし素敵な感じがしますが、やっぱ一級アミドを活性化するのに導入する配向基がカスタムメイドだっていうのと、Pd G3 precatalystを使わなきゃいけないところが魅力半減です。でも、生態模倣による反応デザインは純粋に面白いなと思いました。

それでは最後に、反応の進行に"アジン窒素とtert-ブチルエステルの分子内水素結合"と"アミドのカルボニル基による二座キレーション"が必須なのかどうかを検証した実験を紹介してフィニッシュしましょう↓


ハイ、やはり両者とも必要です。と同時に、先に紹介したGrang等の方法では二級アミドでは反応が進行しないということでしたが、本報の方法では三級アミドでは反応が起こらないっていうわけですね。もしこの反応を使う必要に迫られたら注意したいです。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の交換反応メモでした。

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