2026年7月5日日曜日

tert-ブチル基の化学 Extra Operation 3 : tert-ブチルエステルをone-potで交換します!

2人生で初めて島寿司を食べたときのメモです。

八丈島 (池袋, visited Apr. 2026)
住所:豊島区西池袋1-22-4


-喜平 生貯蔵純米酒 (825 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
柔らかい酸味を想起させる匂い。
トップに甘味、フィニッシュにはアンニュイな酸味を覚える淡麗辛口。
ミドルも仄かに甘く、やんわり米の味もする。
お通しは、お豆、ワカメ、オクラ、赤いののネバネバ和えもので乾いた、辛味がほんのり。

-赤イカ塩辛 (572 JPY)-
-RATING- ★★★
-REVIEW-
濃ゆめの甘めの酒粕感のある味付けで、ピリリとチョイ辛い。 味付けが濃いけどイカもそれに負けてないフレッシュ感のある旨さ。

-島寿司 (5貫 味噌汁付) (850 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
勘八(4貫)と岩海苔(1貫)。
ご飯は軟らかめでほんのり甘めの酢飯。
勘八の身は軟らかく口腔に気持ちよく吸い付くような食感。 味付け(漬け)は薄味で、ちょっと物足りない気もするけど上品な味わい。あと、マヨネーズチックにオイルコートされている様な感覚。

で、驚くべきことに辛子の味が物凄く映える。 っていうか、辛子が美味い。 辛子が主役で、酢飯も勘八も脇役な感じで面白い旨さ。
総じて、辛子を旨く食べるための料理と思いました。
あと、岩海苔は佃煮ですかね、結構軽やかで普通に美味しい。
味噌汁も普通に美味しい。

-白鹿 清酒灘仕込 (528 JPY)-
-RATING- ★★
-REVIEW-
燗をつけてもらいました。
セダー様の香味がします。




-明日葉天ぷら (825 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
サクパリで軽やかな衣。
明日葉はグラッシーで可愛らしい苦味が美味しさマックスハート。
この後、観劇予定だったのでビールを注文しなかったんですが、ビールとのマリアージュが鉄板と思いました。


漬けを芥子で握る島寿司には江戸前寿司や押し寿司とも違う乙な旨さがあって、ボクはとても気に入りました。
で、また島寿司食べたいなと思っていたところ、回転寿司みさきで島寿司フェアを開催するっていう情報をキャッチして爆食して参りました。

回転寿司みさき エキア北千住 (vsiited Jun. 2026)
住所:足立区千住旭町42-1 東京メトロ北千住駅 2F

-島寿司 真鯛 (530 JPY)-
-RATING- ★★★★
-REVIEW-
みさきの島寿司は、辛子はネタとシャリの間じゃなくてネタの上載せるタイプ。
鯛は身が軟らかく、脂が回ってる感じ。
漬けの塩梅が丁度良くて、辛子が鼻に抜ける感覚がいい。
綺麗な淡白な味わいに練れた旨味がプラスされて感じで、凄く美味しい。

-島寿司 生サーモン (550 JPY)-
-RATING- ★★★★
-REVIEW-
サーモンの身は軟らかいけど張りも感じられて醍醐味がある。
脂もクドくなくて、むしろスッキリさえしている。サーモンの漬けもかなりいい。
赤酢のシャリが、漬けだけだと弱くなりがちなお醤油の味を補完していい感じにワークしていると思う。

-島寿司 つぶ貝 (420 JPY)-
-RATING- ★★★★
-REVIEW-
コリコリな食感そのままに、漬けがネタ全体に満遍なく染み渡っていていいですね。
お醤油だとその味が局在化しがちだと思うんですが、味の均一感が自然な感じで丁度いい
 辛子の辛さの鼻抜けもいい。

-島寿司 まぐろはらも (330 JPY)-
-RATING- ★★★★
-REVIEW-
ネットリした舌触りに加えて、漬けの効果かどうか分かんないけど、身の張りがアップしてる気がする
スッキリした旨みと酸味で結構気に入った。

以下、爆食の記録です(オッサンなので、6日間掛けました)。







どうですか、ボクの島寿司愛は。

ところで、回転寿司みさきの島寿司は握ってなくて、ロボシャリにネタ載せて、その上に辛子載せてるだけだと思うんですが、それがいいと思うんですよね。
近年のロボシャリのクオリティってかなり高くって、島寿司とか軍艦と相性がいいと思います。江戸前の握り寿司とは違った気楽さにマッチしてるかと。
それから、30年くらい前に御徒町で食べた信じられないくらい不味いロボシャリ寿司を思うと、現在のロボシャリテクノロジーの素晴らしさに隔世の感を覚えます。


閑話休題


少し古いんですが、こんな論文を読んでみました↓

Tin(II) Chloride-Catalyzed Direct Esterification and Amidation of tert- Butyl Esters Using α,α-Dichlorodiphenylmethane Under Mild Conditions
J. Org. Chem., 2023, 88, 13291-13302.

tert-ブチルエステルをone-potでエステル(transesterificaton)/アミド(transamidation)に変換するお話です。

tert-ブチルエステルはカルボキシル基の保護基として多用されていて、保護基故に他の官能基へと変換される運命にあります。エステルやアミドへの官能基変換が圧倒的に多いと思うんですが、その場合、脱保護と脱水縮合という二段階を要します(酸クロ法を使った場合は三段階必要になる)。なので、tert-ブチルエステルをマイルドな条件のone-pot反応で他のエステルやアミドに変換できれば、コスパ、タイパ、環境負荷の観点から凄く嬉しいわけです。

そんなわけで、鋭意検討の末に見出したtert-ブチルエステルの交換反応がこちらです↓
 27 examples, 81-96% yield

tert-ブチルエステルから酸クロを経由して、エステル、アミドへと変換する反応で、フェノール性水酸基や嵩高い二級、三級アルコールとの反応も良好です。

カルボン酸、アルコールともに種々の電子状態の基質に対して高収率ですね。 因みに、一段階目の酸クロ形成は溶媒効果が極めて大きくてジクロロエタンかジクロロメタンしか使いものになりません(ジクロロエタンの方が僅かに優位)。

この反応はin situで酸クロを発生させるので、当然、アミド化や混合酸無水物、チオエステルの合成にも応用できます。 
14 examples, 89-95% yield

3 examples, 83-92% yield

2 examples, 91-94% yield

Good Yieldですね。

著者らはグラムスケール合成も行って、この反応の実用性をアピールしています。 
推定反応機構です。 

ところで、tert-ブチルエステル以外の基質で反応は進行するのでしょうか? 
安心してください。検討してますから。ベンジルエステルとアリルエステルは加熱下で反応が進行しますが、メチルエステルとフェニルエステルはno reactionです。 この結果を受けて、著者らはこの反応がtert-ブチルエステル選択的であると評しています。 

実はこの反応、アルコールの塩素化にも有効だったりします。
4 examples, 91-93% yield

どうですか、この反応。嵩高いtert-ブチルエステルを直接交換反応できるなて素敵過ぎませんか?
以上、ボク的に機会があったら使ってみたい反応トップ10にランクしたtert-ブチルエステル交換反応メモでした。

2026年7月2日木曜日

tert-ブチル基の化学 Extra Operation 2 : Magic Blue

修善寺駅にある駅弁屋さんのお弁当が美味すぎたのでメモします。

修善寺駅弁 舞寿し (visited May 2026)
住所 : 伊豆市柏久保631-7

-武士のあじ寿司 (1,800 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW- 
はじめに言っておきたのは、武士(たけし)のあじ寿司ってことです。
以下、食べた感想です。
まず鯵がびっくりするほど美味しい!
フレッシュで心地よい張りがあって、鯵の澄んだ旨味がいっぱい。
鯵と酢飯の間に桜葉が敷いてあるんですが、香味が最高ですね。筋張った葉脈的な感触は皆無で塩梅も良くてシナジーしかない。
酢飯に白胡麻が塗してあるのも芸が細かい。
新幹線の中でこの弁当を食べたんですが、こんなに旨いものが車内で食べれるなんてと感動しました。
はっきり言って、ボクはこのお寿司の美味しさを十分に表現できるボキャブラリーを持ち合わせていませんが、また修善寺を旅することが決定事項になりました。


閑話休題


少し古いんですが、こんな論文を読んでみました↓

Triarylamminium Radical Cation Facilitates the Deprotection of tert-Butyl Groups in Esters, Ethers, Carbonates, and Carbamates
J. Org. Chem., 2023, 88, 6932-6938.

OtBu基のマイルドな脱保護のお話です(オープンアクセスです)。

Magic Blue (MB•+ SbCl6-)

著者らは、マジックブルー (tris(4-bromophenyl)ammoniumyl hexachloroantimonate)とトリエチルシランを用いた、エステル、エーテル、カーバメート、炭酸エステルのOtBu基の穏和で簡便な脱保護法を報告しています。

非常にマイルドな反応で、α,β-不飽和カルボン酸は還元されず、α位のメチル基のラセミ化も起こりません。

tert-ブチルエステル以外のエステルやオレフィンが共存しても、選択的にOtBuが除去されます。
 N-Boc-L-アラニン tert-ブチルエステルは、Boc基が選択的に脱保護されます。

PMBエーテルとtert-ブチルエーテルの競合反応を行うと、トリエチルシラン無しの条件ではPMBエーテルが脱保護される一方でtert-ブチルエーテルは切断されず、選択的な脱保護を行うことが可能であることが示唆されます。

さらに、tert-ブチルエステルを脱保護して系内でカルボン酸を発生させた後、アルコールを加えることでone-potでエステル変換反応が可能です(この例では溶媒量のメタノールを使ってます)。 

ちょっと複雑な化合物への適用例です↓ 


また、官能基許容性は、アルデヒドは分解してしまいますが、ケトン、ニトリル、ニトロ基、アミドは許容です

OtBu基の他にプレニルエステル、MOMエーテル、THPエーテル、トリチル基の脱保護も可能。 

脱保護速度は、 

tert-ブチルエステル > tert-ブチルカーボネート > tert-ブチルエーテル > N-メチル-N-Boc 

の順です。

あと、著者らは反応機構についても考察していて、次に示す機構を提案しています。


ところでマジックブルーって何者なんでしょうか(恥ずかしながら、ボクは今回初めて知りました)。

この論文のマジックブルーのケミストリーの項を読んでみると、 マジックブルーことtris(4-bromophenyl)ammoniumyl hexachloroantimonate (MB•+)は一電子酸化剤であったり酸発生剤として使用される市販試薬で、PMBエーテル、THPエーテル、ジチオアセタール、シリルエーテルの脱保護や、グリコシル化、ラジカル転位、ラジカルカチオンが触媒する[4+2]、[2+2]、[3+2]付加環化反応に用いられているそうです。 加えて、三級アミンや電子リッチな芳香族化合物、エノレートを酸化したり、(E)-アリールエンインの選択的マルコフニコフ型水和反応を触媒したりするそうです(そうなんだ)。
アルドで売ってます。

因みに、著者らがこの反応を開発するに至ったきっかけは、オレフィンのヒドロシリル化の検討をしていた際に、マジックブルーとトリエチルシランの組合せで脱tert-ブチル化が起こることを偶然発見したからだそうです。

どうですか、マジックブルー。アンチモンが入っているのがちょっと気になるんですが、カックイイ名前ですよね。

以上、用途よりMagic Blueっていう名前に興味津々で頭の中をゴダイゴのモンキー・マジックが駆け巡る二流大出のテクニシャン(研究補助員)のOtBu基脱保護メモでした。

過去のtert-ブチル基のメモはこちら↓