本書は、武田薬品工業
の会長である武田國男氏の著作です。
コンキチが武田國男氏に興味を抱いたのは、「成果主義」ブームが巻き起こった数年前に、自分なりに企業の処遇制度に関する書籍を読み漁っていた折、「ここが違う!「勝ち組企業」の成果主義―対話と個の確立をめざして」と題した武田薬品の事例を記した書籍を手に取ったことが発端でした。その後、「わかりやすい人事が会社を変える―「成果主義」導入・成功の法則」も読んだのですが、これらの本では武田薬品の人事・賃金処遇制度の構造改革が元人事部長の手によって描かれています。
その構造改革たるや、巷に蔓延る人件費カットのみを目的としたなんちゃって成果主義とは全く異なる、飽くなきアカウンタビリティーの追求を志向するもので、はっきり言ってコンキチの心は強く揺さぶられました。
まあ、元人事部長の手によって著された本ですから、いくらか割り引いて読む必要があるとは思いますが、日本経済が失われた10年といわれた時にあって、粛々と改革を続け、現在も進化し続け、しかも結果(業績)も伴っているという現実を鑑みると、非常に希有なまれに見るあっぱれな構造改革と言わざるを得ません。
で、1993-2003の10年間、社長としてその構造改革を指揮したのが武田國男氏(現会長)というわけです。前置きが長くなりましたが、武田國男氏が自分のこれまでの生い立ちを綴ったのが本書なのです。話は武田國男氏の幼年期から始まり、会長職に就く(退く)までに至り、氏のざっくばらんな語り口で、お上品なエリートにはちょっと言い難い
氏の経歴は決してエリートとは言い難いものですが、社長として振るった手腕は凄いと心から思いますね。改革初期にはマスゴミからけっこう叩かれたようですが、初志貫徹で有言実行してしまうところが凄い。本書の中でしきりに繰り返されている「行不由径(行くにこみちによらず)」の精神で、
「選択と集中」
「アカウンタビリティーの徹底」
「企業風土改革」
をやりとげましたからね。正に建設的なリストラクチャリングですよ!!!
特に「企業風土改革」が素晴らしいですね。はっきり言って風土改革はパラダイムシフトですから。で、パラダイムとは変え難いからこそパラダイムなわけだと思うのですが、それを転換するというエナジーは賞賛に値します。だって、パラダイムシフトは率直なところ自己批判な訳で、周囲の不特定多数は絶対反対に決まってる。だから、どこかの国の与党のように抵抗勢力がうじゃうじゃ湧いてくる。それを押して改革を進めるのは、不退転の精神と滅私なのかなとコンキチは思います。あと、創業家の出自というのが、滅私(先祖伝来の会社のために)にプラスに働いているのかなという印象を受けました。
しかも、業績が良いときにやったのが素晴らしい。
(確か、キヤノンも業績が順風の折に成果主義を導入したんですよね。業績が良いときにそういう改革を行うことで、後ろ向きになるがちなところを抑制できて、総原資をUP↑して処遇できるから受け入れられ安いというメリットがあると御手洗社長が言ってたような気がしました。)
結果、業績はさらに飛躍して、業界屈指の平均給与です。
武田薬品工業と武田國男をしばらくWatchingしてみようと思っています。
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