閑話休題
こんな論文を読んでみました↓
A Broadly Applicable Copper Reagent for Trifluoromethylations and Perfluoroalkylations of Aryl Iodides and Bromides
Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 50, 3793-3798.
Hartwigの研究グループの報告です。
近年、網井らの研究グループがヨウ化アリールのトリフルオロメチル化の触媒システムを開発しました(Chem. Cummun., 2009, 1909-1911. )。触媒活性種は、[(phen)CuCF3]と提案されているんだけど、その単離はされておらず分光学的データもありませんでした。ちなみに、その触媒システムでは、電子不足ヨウ化アリールでは反応が進行するものの、電子リッチな基質では目的物が生成しないという課題があります(ちなみに、今、Chem. Commun.みれないので詳細は分からない)。ちなみに、網井らの触媒システムはこんな感じらしいです(この研究成果は、Cu触媒を用いたトリフルオロメチル化の数少ない成功例みたいです)↓
著者らは網井らの研究成果にインスパイアされて、提案されている件の触媒活性種[(phen)CuCF3]を合成・単離し、その活性を詳細に検討したというのが本報の内容です。
触媒の合成・単離は上記schemeの通りに行われ、その性質は↓
・orange-red solid
・DMF, DMSOに溶解。THF, CH2Cl2には部分溶解。ベンゼン、Et2Oに不溶。
・DMF中では、[(phen)CuCF3]と[(phen)2Cu][Cu(CF3)2]の平衡混合物として存在(19F NMR、導電率測定から示唆)
・室温、窒素雰囲気下で、1ヶ月以上安定
という感じです。ちなみに、-CF3が-CF2CF2CF3も同様に調製可能です(97% yield)。
←次に擬似触媒条件での反応を検討したところ、
電子リッチな基質に対しても高い活性を示し、官能基の許容性も高く、立体障害にも強いという結果が得られています。このことから、網井らの反応条件下では、[(phen)CuCF3]以外の化学種と反応しているか、[(phen)CuCF3]が十分に生成していないことが示唆されました。
ちなみに、p-RArBrとも加熱(110℃)すれば、反応が進行します(R=CO2Et: 61%; R=CHO: 66%; R=CN: 60%)。
さて、[(phen)CuCF3]の活性が明らかになったところで、著者らは、より実用的なトリフルオロメチル化反応の開発へと検討を進めていきます。
ArIに対して1.2-1.5 eq.の[(phen)CuCF3]を作用させると、種々にArIに対して、マイルドな条件下、優れた収率でトリフルオロメチル化が進行します。はっきり言って、この芳香環の電子状態に関わらない活性と官能基許容性は凄いと思います。しかも、[(phen)CuCF3]を空気中で秤量しても活性は殆どかわりません(反応は不活性ガス雰囲気下で行われる)。
さらに著者等は、[(phen)CuCF3]をin situで発生させてそのまま反応に用いるさらに実用的なプロトコールに開発に取り組みます。その結果、DMF中でCuCl、KOtBu、1,10-フェナントロリンから[(phen)CuOtBu]を発生させた後、TMSCF3 (Ruppert's reagent)を作用させることで[(phen)CuCF3]のin situ preparationを達成しています(これはとっても凄い!)。
あと、[(phen)CuCF2CF2CF3]を用いいたパーフルオロアルキレーションも効率よく反応が進みます(5 examples, 88-99% yield)。
ちなみに[(phen)CuCF3]は、TrifluoromethylatorTMという名前でAldrichから市販されていますが(18,400 JPY/350 mg)、高いです。でも、in situ preparationでいけるので、その手法で(機会があれば)是非試してみたい試薬と思いました。
あと、参考Web Site↓
http://www.catylix.com/hartwig-trifluoromethylation-new-broadly-useful-trifluoromethylation-reagent.html
http://www.bio-catalyst.com/new-trifluoromethylation-technology-from-catylix/
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